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2024.01/26 カオス混合

ロール混練ではカオス混合が起きているという。数㎜の間隔で表面が平滑な二本のロールが対向で回転しているところへゴムを投入すると早い回転のロールにゴムが巻き付き、混練が進行する。


初めてロール混練を体験した時にこの様子に感動している。指導社員は天然ゴムだけ混練されているところへ数粒カーボンを添加し、それがあっという間に分散して真っ黒に変わる現象を前に、伸長流動とリップで起きている剪断流動をよく観察するように言われた。


見るとロールの下に手鏡が置かれ、ロールの真下の様子を観察できるように用意されていた。指導社員がロールで起きている天然ゴムの流動を当方に説明するために手鏡だけでなく、数種類のカーボンまでTEM写真とともに用意されていた。


カーボンのストラクチャーによりカーボンの分散状態が微妙に変化した。そして、疑問に思ったらこの実験をやるようにとのアドバイスをされたのである。


レオロジーの難しい理論ではなく、実際の現象で観察することにより、混練の機構を学ぶ方法を指導してくれた指導社員は、大学院でレオロジーを研究し、ダッシュポットとバネのモデルから導かれた常微分方程式を関数電卓で解くような技術者だった。


餅つきやパイ生地練り、ロール混練で発生している効率の良い練り、カオス混合についても研究されていた。そして、当時イノベーションが起きていた二軸混練機でカオス混合ができるようにするのが当方の宿題となった。


ただ、指導社員と出会って3か月で職場異動となる。宿題はしばらくペンディングとなり、リアクティブブレンドのプロセシングを学ばなければいけなくなった。高速剪断のこの世界はロール混練とは異なり、剪断流動でナノオーダーの混合が進行するとんでもない世界だった。


それから25年経ってカオス混合の宿題を仕上げなければいけない事態になった。2005年8月に単身赴任し、PPS/6ナイロン/カーボンというシンプルな配合で歩留まりが10%前後で低迷していた半導体無端ベルトの押出成形を半年間で歩留まり100%にしなければいけないテーマを担当したのである。


日本のトップメーカーのコンパウンドだから必ずできると言われ前任者から引き継いだのだが、そのトップメーカーの技術サービスから「素人は黙っとれ、勝手に自分で工場を作ってコンパウンドを製造してみろ」と言われた。


仕方が無いので、中古機を集め子会社の敷地を間借りして粗末な建屋の中に先端のカオス混合ラインを3か月で立ち上げた。このラインから製造されたコンパウンドで半導体無端ベルトの押出成形歩留まりは100%となった。


ただし、押出成形プロセス条件を従来の条件から何も変更していない。押出成形は「行ってこい、の世界だから」というゴム会社で実習した時の現場の職長(ゴムの押出成形を40年担当していた)から教えられた教訓を守っただけである。


これは実話である。この時行ったパーコレーションの制御技術を題材にパーコレーション転移プログラムを作成しながら学ぶPythonセミナーを2月に行います。明日目次と日程を公開します。1/26に申し込まれますとプログラム付5000円で参加できるだけでなく、2月のご希望の日を指定できます。お問い合わせください。


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    カテゴリー : 一般 高分子

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