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2016.06/15 科学の方法(4)

1979年にゴム会社に就職したが、当時の高分子科学は今ほどの進歩は無かった。この40年間に高分子科学にはものすごい進歩があり、東工大中浜先生がリーダーとなり進められた「高分子精密制御プロジェクト」は、その中間点の進歩を産業界に導入するための役割として大きな成果をあげた。
 
また、そのプロジェクトよりも2年前に文科省のプロジェクトとして名古屋大学(当時)土井先生によりOCTA開発プロジェクトがスタートしている。このOCTAとは、高分子の本格的シミュレーターである。
 
アカデミアにおける進歩は、大学の授業の中身を見ても理解できる。当方が大学で学んだ高分子科学といえば重合が中心の科学である。すなわち合成化学の延長線上にある科学である。今は高分子物性論が必ず2単位どこの大学にも存在する。
 
当方も恥ずかしながらその特論として、2つの大学で特別講義を行っている。福井大学では、セラミックスから高分子材料まで含めた講義を客員教授として2単位分させていただいた経験がある。
 
セラミックスから高分子材料まで扱ったのは、1980年代に日本中を熱狂的にしたセラミックスフィーバーを経験し、ゴム会社で高純度SiCの事業を立ち上げた経験があったからだ。セラミックスと有機高分子では水と油のように全く異なった分野に見えるかもしれないが、その材料開発の方法論の視点では同じである。そこを伝えるために講義の内容は当方の開発体験を中心に構成した。
 
仮に科学の視点で見ても当方にはセラミックスも高分子材料も同じに見えるが、それぞれの専門家の先生方は全く異なる分野だという。材料科学として捉えてしまえば、金属だろうがセラミックスだろうが皆同じ土俵で議論できるはずだ。
 
粘弾性論はそのような視点で生まれた学問ではないだろうか。そして、高分子材料に適用してみて材料科学として幾つかの限界が指摘されている。今粘弾性は、高分子1本の粘弾性測定からはじまり、それを積み上げる形で研究が進められている。OCTAもそのような思想で考え出されたシミュレータで桁違いの大きさまでズーミングできる。
 
面白いのは未だに旧来の粘弾性論で高分子の論文を書いておられるアカデミアの先生がおられることだ。1979年にであった当方の指導社員はアカデミアに属していないがすでに粘弾性論が10年後には高分子材料で使われなくなる、と予言していた。当時は科学が技術を先導していた時代だったが、指導社員の言葉は技術が科学を先導し始める兆候と当方は捉えた。

 

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