活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2017.02/02 高分子材料(22)

高分子の実務では、プロセシングに対する考え方が重要になってくる。ここでプロセシングの知識としなかったのは、ノウハウや体で覚えている具体化できない暗黙知の扱い方も含めたいからだ。

 

これだけ科学が進んだ時代でも「カン」という、言葉で表現しにくい暗黙知、技術者の心眼以外では見ることのできない世界が高分子材料技術には存在する。当方がこの年になっても、光散乱熱伝導樹脂などという科学的には設計が難しい材料を実現できたりするのは、この心眼のおかげである。

 

また、単なるスリットを通すだけでカオス混合を実現できるプロセシングを考案できたのもこの心眼のおかげである。ただしこの心眼はヤマカンや第六感ではない。言葉では表現できないが心の中で思い描くことができる知識の体系である。

 

高分子をひもの塊で表現し、高次構造として非晶質相ができ、それがガラスと自由体積部分に分かれる様子は心眼だけで描くことのできるイメージである。高次構造を設計するときに当方はいつもこのイメージを用いる。カオス混合を考案したときも剛直と言われていたPPSの分子と6ナイロンを並べたイメージが描かれそれが狭いスリットを通過したときに働く機能が頭に描かれた。この描かれたイメージをすぐに実行してカオス混合装置を発明した。

 

カオス混合装置から出てきたPPSと6ナイロンの相溶し透明となった様子をみながら、PPSは柔軟な分子ではなかろうか、という疑問を持った。芳香環とイオウ原子の結合は芳香環と酸素原子との結合のように柔軟で、その結果6ナイロンを非晶質相で相溶できたのでは、などと頭の中で思い描いたりした。

 

このような心眼による自由な発想は、たとえそれが非科学的であっても高分子材料を考えるときに大切である。それは高分子材料が成形体になるときに多くの場合非平衡状態だからである。逆に学会の研究発表や教科書に書かれた話は平衡状態を仮定している内容が多い。

 

統計熱力学が進歩したといっても非平衡状態を科学で論じることが難しいため未だに怪しげな材料設計手法が大切になってくる。怪しくても新しい材料を設計でき実用化できればそれは立派な技術である。技術が出来上がってから科学的にそれを考察し公知の科学理論でその技術を表現し、その結果を知識として共有化する仕事のやり方が高分子材料開発では必要になってくる。

 

この欄でゾルをミセルに用いたラテックス重合技術について数日にわたり書いたが、この技術で科学的に明らかにできたのは、シリカゾルの周りに高分子活性剤が一分子巻き付いている様子だけだった。ラテックス重合時やゼラチンを投入したときの変化などうまく解明できていない。科学で不明点の多い技術だがロバストは高かった。

カテゴリー : 高分子

pagetop