2013.01/28 弊社の問題解決法について<11>
探偵ホームズと刑事コロンボを例にして、問題解決に使用する「考える技術」について調べてきましたが、推理には科学的方法だけでなく非科学的方法も使えることや、推論の向きが重要であることなどがわかりました。探偵ホームズも刑事コロンボも事件を問題として解いていたわけですが、そもそも問題とはどのようなものでしょうか。少し「問題」というものについて考えてみます。
問題につきましては、P.F.ドラッカー(以下ドラッカー)は、生前のインタビューで、「コンサルティングの最初の問いは、何が問題か、と問うことから始める」、と答えています。彼の多数の著書は、ビジネスマンの羅針盤あるいは人生の参考書として読まれていますが、インタビューの答えが示すように問題解決の指南書としても読むことができ、この「何が問題か」という問いの重要性は形を変えて彼の著作に何度も出てきます。間違った問題を解決することが、無駄な時間を浪費するだけでなく新たな問題を生み出す可能性があるからです。
例えば、「山田さんが、犬に咬まれた。」という事件の情報から何が問題となるのか考えてみます。
「山田さん」という名前の友人がいるならば、この情報の山田さんが友人なのかどうかという問題が最初に頭に浮かびます。山田さんが友人でなければ、他人事の一般情報で済むでしょう。友人の山田さんの身に起きた事件であれば、犬が狂犬病であったのかどうか、あるいは怪我の程度、現在の状況など複数の問題が心配になってきます。すなわちこの情報を個人の立場で考えますと、犬に咬まれた山田さんが親しい友人であるかどうかが重要な問題となってきます。
一方で、社会的な見地から、犬の飼い主の責任を問題としてとらえなければならない立場の人もいます。山田さんが病院にかかった場合には、各種保険の適用を考えることになります。医者ならば狂犬病の予防注射の有無を問題にします。それぞれの立場において問題のとらえかたが異なり、設定される課題も変わり、発生している事件は一つですが、最初にとるべきアクションは、それぞれの立場で様々に異なることが分かります。
このように「山田さんが、犬に咬まれた。」という情報そのものは問題のように見えませんが、この情報を問題のある情報、あるいは問題を生み出す情報と感じた時に様々な問題が出てきます。逆にこの情報で何も感じなかった人は、問題など考えずこの情報を忘れてしまいます。
刑事コロンボは、事件現場の観察から様々な問題を考えます。事件現場にあるのは、単なる情報です。そこから様々な問題を設定し、犯人につながる問題を解き、犯人を逮捕します。「策謀の結末」では、殺された闇の商人を自分で演じながらウィスキーのボトルが落ちる様子を再現するシーンが出てきます。何度もトライするうちに、闇の商人と犯人との特別な関係が無ければ死体の横のウィスキーのボトルの状態を説明できないことに気がつきます。
すなわち、いつも犯人の存在を仮定しながら闇の商人が倒れ、ウィスキーのボトルがテーブルから落ちる様子を演じていたのです。ここが探偵ホームズとの違いです。探偵ホームズは常に目の前の状態をそのまま科学的観察するスタイルです。情報が揃ってから犯人との関係について推理をめぐらします。しかし、刑事コロンボはいつも犯人(答)を情報の中に置き現場観察をしています。言い換えると刑事コロンボは事件現場(情報)に犯人(答)がいた状態にして常に問題設定をしているのです。
(明日に続く)
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