2026.04/11 上手な実験のやり方
新材料開発を行う時に一番心配なことは、情報が少ない中で特異点を見落とすことである。これを理解していない人が多い。特異点があってもロバストが高いとは限らない、とか、特異点を見落としても実用的なものができればよいとか思っている人がいる。
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確かにそれらの意見にも一理あるが、特異点の存在を知らずに実用化した時に、ライバルから性能が高い特異点の領域で特許を出されると大変である。
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ゆえに、上手な実験のやり方として、まず開発領域を明確にすることから始めることをお勧めする。これは故田口玄一先生の言葉で表現すれば、システム設計を行い基本機能を明確にする、ということだ。
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そして、システム設計を行うためにタグチメソッド(TM)で実験を行うことになる。ところが、システム設計がうまくできない場合も出てくる。その時は、システム設計を行うための実験を行うことになる。
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この時にも直交表を使うと良い。直交表を使うのだが、TM実験のように大掛かりに行う必要はない。システム設計できたなら改めてTM実験を行い、調整因子で最適化を行う、というのが従来の実験方法である。
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10年ほど前からベイズ最適化の手法がもてはやされているが、ベイズ最適化がいつも最適であると限らない。昔ながらのTMによる最適化で十分な場合がある。
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ベイズ最適化実験を行う時でも、最初にL8かL9程度の直交表でTMを行うことをお勧めする。これにより、特異点の存在を伺い知ることができる。数個実験を行って、ベイズ最適化で攻めても最適点に到達できるが、特異点の不安が残る。
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1980年代にコンビナトリアルケミストリーが流行ったのは、新素材が思いもよらぬ条件で見出されたりしたからである。この20年ほどは驚くような新発見はiPS細胞くらいなので、全部の条件で実験を行うというのは野暮に思われるかもしれない。
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ベイズ統計を用いるプログラムが身近にあれば、それを少し手直しして誰でもベイズ最適化ができる時代である。しかし、この半世紀に様々な実験方法が開発されてきた。山中博士のあみだくじ方式には驚いたが、良いものができれば、それでもノーベル賞である。
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実験のやり方、戦略や戦術の立て方は重要で、弊社はそれを販売してきた。中国では、小さなローカル企業が大きくなるという成果が出たが、日本では全然販売実績が無いのが寂しい。
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TMが日本に普及し始めた90年代にも似た空気がベイズ最適化にも感じられる。AIとの親和性もありこれからどんどん発展するのだろうけれど、これまでの実験方法が悪いわけではない。目的や戦況に応じた実験方法を選択するのが正しい。
カテゴリー : 一般
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