2026.05/05 研究開発プロセス(17)
研究成果発表会で、あらゆるHLBの界面活性剤の効果を確認しても電気粘性流体の耐久性を改善できないことを示す科学的データにより完璧な科学の方法である否定証明と力説していた。そして、本部長はそれを世界的な研究だと称賛した。
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このような否定証明は、それを否定できるデータを一つ示せば、容易にひっくり返すことが可能である。その一つをどのように見つけたらよいのか、という問題となるが、その前に、「その一つが存在する可能性を示す実験データ」が必要である。
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この否定証明では、HLB一因子だけについて劣化現象との相関を界面活性剤の分子構造との関係や機器分析による現象解析など科学的に完璧な方法で実験データが積み上げられていた。
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報告書を読めば読むほど科学的に完璧であることに納得できる否定証明だったが、仮説ではHLB一因子だけと劣化現象との関係だけが設定されていた。
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確かに教科書に書かれた界面活性剤の形式知による説明では、HLB一因子だけで現象を説明できそうに思われるが、教科書の事例にある洗濯用の洗剤の説明を読むと明らかなように、1種類の界面活性剤だけで溶液の現象を説明できない。
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すなわち、当時多相系のコロイド科学について形式知は存在しないが、生活の中に経験知としてHLB以外の因子の重要性を示す商品は存在した。教科書は、科学に配慮しそこを明確に述べていなかっただけである。
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ゆえに、界面活性剤の物性値を主成分分析し、HLB以外の因子に寄与する界面活性剤が存在するかどうかを最初に知りたい。
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そこで、MZ80Kで稼働していた多変量解析システムのデータベースにゴミのように扱われたカタログデータを入力し、主成分分析を行った。
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当時、上司から指導されて趣味としてデータ解析を自宅で行っていたので、今でもセミナーでは当時の解析プロセスとFD事件の話をするのが定番となっている。
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解析結果のグラフでは、HLB因子の寄与が著しく高い第一主成分の軸の周りに70%の界面活性剤が集まっていた。ところが、HLBの寄与が低い第二主成分と相関する界面活性剤も30%存在した。
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そこで、この30%について、耐久劣化試験を行ったところ、1時間以上の耐久性を維持する界面活性剤が一晩の実験で複数見出すことができた。
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カテゴリー : 一般
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