2017.06/10 産学連携における問題(4)
無機材質研究所で卵をかえすことができ、さらに共同研究を進めてフェノール樹脂を助剤として用いる高純度焼結体製造技術や粉末の粒度調整技術など様々な成果を出すことができた。この高純度SiCの事業は、ゴム会社で現在も続いているが、無機材質研究所との共同研究の成果や住友金属工業とのJVの歴史は、当方の転職後隠されてしまった。
当方の転職は、住友金属工業のJVの業務と電気粘性流体の業務を担当しているときに起きた、データフロッピーを何者かに破壊される、という事件がきっかけだった。2枚まで壊されても黙っていたが、3枚目が壊されたとき、目撃者もいたことと、その壊し方がM氏のフロッピーを当方のデータフロッピーへべたコピーするという方法だったので、犯人を特定することができた。
犯人も同席する会議の席で、この事件の問題を訴えたところ、研究所では事件を隠す方向で動いた。その結果、当方の立場が悪くなり、せっかく出口が見えた高純度SiC事業を残して、ヘッドハンティングの会社が紹介してくださった写真会社へ転職することになる。写真会社を選んだのは、転職後の業務がそれまで担当していた業務と全く異なっていたからである。
その後、写真会社で某学会賞の審査委員を担当していたら、住友金属工業とのJVの歴史までをそっくり隠した開発の歴史が書かれた高純度SiCの事業化という候補技術の推薦書が出てきた。そこには無機材質研究所との共同開発の歴史が無いだけでなく、受賞者としてふさわしい無機材質研究所研究員の名前が載っていなかった。
このあたりはこれ以上詳しく書けないが、結局この年の審査には落ちて、無機材質研究所を含めた形の推薦書が出しなおされて受賞するという結末である。
産学連携の問題を考えるときに、このような不誠実が原因となる問題をまずつぶさない限り、健全なアカデミアとなるような産学連携など実現できないと思っている。
ゴム会社の創業者は誠実に産学連携を進められた。その精神はゴム会社に残っていたが、あいにく研究所にはその香りもない状態だった。当方が入社したときのゴム会社は研究所の風土と商品開発部隊の風土とがたいへん異なる会社だった。
カテゴリー : 一般
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