2017.07/03 アイデアを寝かせる
カオス混合装置は、2005年に瞬間芸のごとく開発されたが、そのアイデアの種は1979年に蒔かれている。指導社員からロール操作の指導を受けているときに、カオス混合の話題が出た。
日本の餅つきやパイ生地の練り方だそうで、これを連続生産装置として実現できたら天才だ、と言われた。指導社員は少し個性的な方で時々新入社員の当方の興味や能力を試すような冗談とも言えない話題を唐突に出してきた。
悪くとれば揶揄われていたのかもしれないが、当方は真摯に対応した。その結果カオス混合の話題は時折出た。しかし連続生産可能なその具体的姿については闇の中だった。それから3年後には高純度SiCの構想を立てていたので忘れていた。
その後N先生からポリマーアロイの話の中でウトラッキーの名前を聞き、注目していたら、EFMの特許を見つけた。そしてそこに書かれた図を見て指導社員から聞いたカオス混合を思い出した。
その後京都大学で行われた偏芯二円筒を用いたカオス混合シミュレーションの論文を読む機会がおとづれた。頭の中でアイデアを展開する機会は偶然重なった。
頭の中に寝かしてあった概念が少しずつ具体的に見えてきた。しかし、混練実験を行うテーマは写真会社になかった。ところが、写真会社とカメラ会社が統合し、豊川へ単身赴任することになり、コンパウンドメーカーから素人は黙っとれ、と言われた幸運に恵まれた。
そのおかげで、PPSコンパウンドの混練プロセスを堂々と内製化する口実が生まれた。そこで30年近く寝かしてきたアイデアを実行することになったのだが、それまでの間に連続プロセスのアイデアを練るだけでなく、ポリマーアロイについて実験を繰り返し、加工で高分子がどのように変性されるのか勉強してきた。
商品化の納期が迫っていた状況も幸いした。あれこれ迷う時間などなく、寝かせて練り続けたアイデアを用いる以外に道が無く、意思決定は簡単だった。それで瞬間芸的にカオス混合装置を作ることができた。
カテゴリー : 高分子
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