2017.09/15 風が吹くと桶屋が儲かる
科学的な推論の進め方には向きがあり、仮説に対応して推論を結論に向けて進める前向きの進め方と、結論から推論を展開する逆向きの進め方がある。
そして両方向で成立すれば必要十分条件となる話は、高校の数学で学習する。風が吹くと桶屋が儲かる、というのは、前向きの推論の問題が見え隠れするので面白い。
風が吹いたときに発生する現象は、ゴミをまき散らすだけではない。洗濯が速く乾いたり、着衣に風がまとわりついて歩きにくかったり、さまざまである。
本来この風が吹くことにより発生するそれぞれの現象について検証をしながら、次の議論を進めなければいけない。それが科学的な推論の展開方法である。
しかし、風が吹くと、の話はそのような厳密な展開がとられていないために、風が吹いて本当に桶屋が儲かるのか保証されない。また、仮に保証されたとしても桶屋が儲かるのは、いくつもの事象の中の一つの結論であり、それが「風が吹いたときに」いつも成立すると保証されないどころか、この話において風が吹いたときに起きる現象について全てを網羅し考察することは至難の技である。
ところが、結論である桶屋が儲かっているかどうかという事象や、風呂桶がネズミにかじられて故障している現象が多いかどうかは、調査すればすぐにわかる。さらに、結論となる事象から逆向きに推論を進めると、結論につながる一つの推論の道筋だけを確認することになるが、それだけで結論に確実につながる一つの推論を示すことが可能となる。
このように、結論から逆向きの推論を進める方法、すなわち全体が十分条件であることを示す方法は、必要条件を述べる前向きの推論よりも圧倒的に効率が良い。
技術開発も同様で、市場で要求されている機能とその機能を実現する方法を考案し、プロトタイプを創りそれをまず市場でテストする手法は従来の技術開発の進め方を革新する。
ゴム会社のU取締役は、「女学生より甘い」なる迷言も残されているが、「まずモノもってこい」という一喝はアジャイル開発を命じた名言である。この一喝により、SiCるつぼやダミーウェハー、SiCヒーター、SiCターボチャージャー、SiC切削チップなどが、試作され市場調査が可能となった。
高純度SiCの粉を持って社外のメーカーにお願いし、製造設備を借りながら試作実験を進めた苦労は楽しい思い出として今でも夢に出てくる。滋賀県の某メーカーの現場で出されたお弁当で腹痛を起こし苦しんだこともあったが、O157でなくてよかった。食事前は必ず手をあらいましょう。
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