活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2018.01/12 高分子の難燃化技術(6)

1980年前後は、高分子の難燃化技術の体系化が進み始めた時代である。しかし、日本のアカデミアの関心は低く、もっぱら欧米の研究成果が目立っていた。日本では高分子学会内の高分子の崩壊と安定化研究会と無機高分子研究会で難燃化研究のテーマが扱われていた。そのため、高分子の難燃化技術の体系化は、各企業の研究開発の努力に依存していた。

 

アカデミアの先生の中にも難燃材料に造詣の深い先生はいらっしゃったが、その先生曰く、アカデミアでは扱いにくい分野という発言をされていた。その先生は、難燃化技術の体系化された著名な書籍を翻訳されていた。

 

その後、名古屋大学武田先生がこの分野の研究を始められ、中部大学に移られても続けていた。そしてハロゲンとアンチモンの組み合わせを越える効率の良い難燃化システムは無い、といった一つの結論を出されている。

 

1980年代のアメリカではUL規格が普及し始め、日本ではLOIがJIS化されたりと評価技術の進展はみられたものの、欧米ほど積極的な科学的研究は武田先生が登場するまで成されていない(建築研究所が建築規格を策定するための研究は成されていて、若かった当方もそのお手伝いに駆り出された)。

 

武田先生の出された結論は、1980年前後に企業の研究者達が経験知(ポリウレタン発泡体では1970年頃に塩ビと三酸化アンチモン粉末を用いたGT処方が注目された)として蓄積しており、研究開発の中心は環境対応のノンハロゲン系難燃化システムへの関心が高まってきた。

 

この環境対応のノンハロゲン系難燃化システムへの関心は、1990年代に環境関連法案が次々と成立していた時期と重なり、環境技術の流れの中で取り上げられることが多いが、実は1980年前後から建築火災における有毒ガスの問題としてクローズアップされていた。このときハロゲン系の難燃剤の問題として刺激性の高い燃焼ガスが発生する問題が指摘されている。

 

また、欧米でもハロゲン系難燃剤の発煙や煤発生量が指摘されており、ノンハロゲン系難燃剤研究の潮流ができあがり、ホスファゼンが新素材として扱われオールコックらの研究が当時注目を集めている。

 

欧米の論文を読んでいて感心したのは、ノンハロゲン系システムを探索するために様々な化合物が難燃剤として検討されたことである。そしてアラパホ社が開発した簡易煙量測定器は、ホスファゼン系難燃剤の優れた性能を容易に証明できる評価装置だった。

 

<PR>

2月13日に高分子難燃化技術に関する講演会(弊社へお申し込みの場合には参加費30,000円)を行います。詳細は弊社へお問い合わせください。経験知伝承が第一の目的ですが、形式知の観点で整理したデータも使用します。形式知のデータは、30年以上前高分子学会や無機高分子研究会、高分子の崩壊と安定化研究会で発表した内容です。経験知につきましては、中国ローカル企業を指導しながらその再現性を確認した結果で、樹脂の混練技術も講演会の中で説明致します。高分子の知識が無い技術者でもご理解いただけるよう、テキストには初心者用の説明も付録として添付します。

 

カテゴリー : 高分子

pagetop