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2018.11/20 科学では説明できない混練の世界

世の中すべてが科学的に説明できるわけではない。科学的に研究が行われていると思われている高分子の世界でも非科学的な実験が行われていることに研究者は気がついていない。

 

昔ものすごい光景を見た。ある部長がレオロジーで理論的に導き出したグラフに合うように部下にサンプルを作らせていた。

 

部下は、ロール混練条件をいろいろ変えて、なんとかグラフ上の点にあうようなサンプルを創り出した。すなわち配合が同じでも、プロセスが異なると物性が変化する高分子の特性をうまく利用し、上司の指示にうまく合うサンプルを創り出していたのだ。

 

これはサンプルの物性を測定すると測定値が再現するので捏造ではない。またロール混練条件を変えたと言っても、ナイフ作業や返しのテクニックでそれをやっていたのだから論文に掲載されない部分である。

 

グラフ上にプロットされたサンプルについて、すべて同じ条件で作った時にどうなるかとかいったことをその部長は問題にしなかった。ただご自分の理論に適合したサンプルができたことに満足されていた。

 

しかし、理論に合うサンプルを配合を変えることなく、プロセスの工夫で創り出そうと苦労していた部下の悩みなど無視していた。新入社員であった当方は、先輩社員のその悩みやボヤキを聞くことで、高分子材料におけるプロセスの役割を学ぶことになった。

 

高分子材料の物性は、主に配合とプロセシングで決定されるが、このワンマン部長は、プロセシングの寄与やそれを工夫する難しさには目をつぶり、自分の理論に合うように部下にサンプルを作らせ、その科学の成果を椅子に座ったまま吸い上げていた。この科学の成果が事業にどのように寄与しているのか不透明であったが、科学がやがて盤石な基盤技術を作り上げると信じられていた時代である。

 

これは「ゴーン=日産」という構図と似ていなくもない。ブランドへの寄与という名目で高い報酬がどんどん高くなるだけでなく、海外にゴーンの豪邸が作られていった状況は今後解明されると思われるが、事業に対して本当の寄与がわかりにくい「こじつけ」ともいえるような成果なり経費は不誠実なリーダーにより生み出される。

 

ドラッカーは、その多くの著書で誠実なリーダーを選ぶことの重要性をいつも述べていた。日産の事例は長期独裁政権は必ず腐敗するというよりも、事業において、不誠実なリーダーを選ぶな、という事例だろう。

 

 

 

 

 

カテゴリー : 一般 高分子

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