2020.01/10 iPS細胞の異常
「再生医療用のiPS細胞を備蓄する京都大iPS細胞研究所のストック事業で、出荷したiPS細胞の一部を目的の細胞に分化させた際、がん化に関連する遺伝子異常や、染色体の異常が起きていた。」
これは昨日WEBニュースで見つけた記事だが、書かれた内容から深刻な問題と思っている。
すなわち、京大の関係する研究者たちが、QCの実務について知らない可能性があり、さらには「米スタンフォード大医学部の遺伝学部長を務めるマイケル・スナイダー教授は「臨床用の細胞でのがん関連遺伝子の変異は極めて重大だと考えられる。事実を公表し、オープンな場で評価する必要がある」と指摘する。」
いくら研究段階とはいえ、事実の公表だけではだめである。すべての作業の標準書を作成し、それらをオープンにして議論する覚悟が必要だ。
おそらく研究者の中には、研究作業におけるノウハウを言いたくない場合も出てくる。あるいは、作業についてダミーの作業を書く研究者も出てくるかもしれない。
研究者を信じていないわけではなく、研究者が勝手な判断をする危険があるということだ。
メーカーでQCの実務を担当した人なら理解できるかもしれないが、作業標準書とは愚直なまでに細かく記載する。それがiPS細胞の場合に、研究者全員ができるかどうかである。
STAP細胞の時の騒動を思い出していただきたい。いい加減な手順書に対してだれも注意していなかったばかりか、作業記録も取られていなかった事実が存在する。
実務経験者ならば異常と感じる状態が、研究者集団の中では異常と感じない事例をSTAP細胞の騒動で学んだはずである。
この問題では、単にエラーの事実を公表するだけでなく、すべての作業標準書を作成し、それをオープンにする必要がある。それができなければiPS細胞事業化はうまくゆかない。
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