2012.09/10 高分子とセラミックスの類似点
高分子とセラミックスの両方の材料について研究開発を行い、両方の材料分野の開発成果は、学会から賞を頂いております。また学位論文は、有機無機複合材料という内容です。両方の材料開発を経験した感想として、高分子の技術革新の方向について考えました。
高分子とセラミックスについては、相違点が多いですが、大局的に見ると類似点もたくさんあります。
例えば、材料物性のプロセス依存性。これは、金属も含め、材料一般に言えますが、金属よりも高分子やセラミックスは、プロセス依存性が大きいです。材料の混合から始まり、成形するプロセスまで、一定条件で取り扱ったつもりでも、できあがった成形体物性のばらつきは、金属よりも大きくなります。高分子とセラミックスでは、組成によりますが、ばらつきの大きい組成で比較しますと大差は無いです。ばらつきの小さい組成の場合には、高分子の方が小さいですが、ばらつく場合には高分子もセラミックスもおそらく同じくらいばらつき、品質安定化技術が重要になります。
ゴム材料はプロセス依存性の大きい材料です。企業を分類するときにゴム業界と窯業業界か一緒に分類されている例には思わず納得することもあります。ゴムにしろセラミックスにしろ品質管理技術が参入障壁になっている可能性もあります。
次に材料の壊れ方、破壊の様子が、高分子とセラミックスは似ているように思っています。このように書きますと破壊力学の専門家からは叱られるかもしれませんが、高分子もセラミックスも金属に比較しますと、材料の破壊についての信頼性は低いです。材料物性は総じてプロセスに依存しますので、プロセス依存性が大きいので、物性である材料の破壊に対する信頼性の低さが似てくることになるのですが、無頓着の方が多いように思います。自動車の構造材料に高分子材料が使用できる、という事実は、大きな技術革新が必要でした。
1980年代にガスタービンの部品をすべてセラミックスで作ることを目標にしたムーンライト計画と呼ばれる国のプロジェクトがあり、エンジニアリングセラミックスの技術は大幅に進歩し、オールセラミックスガスタービンエンジンの開発には失敗しますが、包丁までセラミックスで作れるようになりました。当時エンジニアリングプラスチックスは実用化されていましたから、高分子の方が技術進歩が早かったわけです。
壊れにくい成形体を作る技術として、高分子もセラミックスもある程度まで技術進歩したのですが、材料の高純度化技術という点で、高分子はセラミックスよりも遅れているように感じています。コストをかければ、高分子も高純度化できます。しかし工業製品に占める高純度材料という観点では、高分子はセラミックスに負けています。パーフェクトな単分散の分子量分布をもつ高分子とか一次構造が完全に制御された高分子とかは、工業材料に登場していません。ニーズが無いのでしょうか。光学部品には意外な恩恵があるかもしれません。またエンジニアリング分野でも信頼性向上という成果や、二律背反になっている物性を両立させたりできるかもしれません。高分子にはまだ技術革新しなければならない分野が残っているように思っています。
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