2022.04/12 高分子成形体の信頼性(3)
射出成形体にボイド(穴)が存在することをご存知ない方が多い。射出成形条件を最適化し0にできるかどうか知らないが、巣の入ったペレットを使ったりしたときに多数発生することがある。それ以外でもナノオーダーのボイドは0にできないのでは、と思っている。
この10年機会があれば射出成形体の破断面を観察し、このようなことを考えている。ナノレベルのボイドならば力学物性に影響しないが、このボイドが成長する可能性が出てくると、ボイドに対する考え方が変わってくる。
20年近く前にレンズ材料でこの現象に遭遇し、この現象がレンズ機能の耐久性と相関したので特許を出願している。光学的にも影響のないボイドなのだが、アニールしてやるとこれが大きく成長する。
科学的な研究を行っていないので空想のような話になるが、高分子材料には自由体積が存在する。もしアニール前後で自由体積の変化があればこのようなボイドの成長を理解できる。
おもしろいのはこのボイド観察を行った樹脂のDSC測定で得られたTg部分のエンタルピーを比較してやると、ボイドの変化と相関が出たのだ。
このような面白い現象が話題にならない点が不思議だが、その気にならなければ見つからない現象なのでご存知ない方が多いのかもしれない。
また、ボイドの成長の仕方は樹脂により異なる。もしこのようなボイドが経時で力学物性に影響を与えるほどの欠陥まで成長する可能性があるならば、射出成形体の劣化メカニズムの一つとしてとらえる必要が出てくる。
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