活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2014.04/09 樹脂の熱膨張あるいは熱収縮(6)

材料の熱膨張と熱収縮を測定するとヒステリシスが必ず現れるのか、というとそうではない。例えばSiC。6HSiCは結晶系が異方性なのでa軸とc軸の線膨張率が異なる。この単結晶の線膨張率を2000℃まで計測してもそれぞれの軸にヒステリシスは観察されない。

 

それは、6HSiCの膨張と収縮が化学結合の膨張と収縮の結果であり、その構造からシミュレーションした値と実測値がうまく適合する。また、6HSiCから製造した焼結体の線膨張率については、結晶で計測された値の平均値として観察される。

 

ただし、これは、助剤としてBを0.2%、Cを2%用いたときの実験結果である。助剤がかわり粒界にガラス相が形成されると線膨張率にその影響が観察される。セラミックスでは熱膨張や熱収縮は大変分かりやすい現象である。

 

しかし高分子の熱膨張や熱収縮では、自由体積の影響、結晶化度の影響、アモルファス相が均一になっていない影響など複雑である。ゆえに樹脂の熱膨張や熱収縮ではわずかなヒステリシスが観察されたりする。高分子複合材料系になればもっと複雑な変化となる。

 

TMAはこれら複雑な変化を検出する実験装置であり、最近は熱膨張や熱収縮を実験できるだけでなく粘弾性の実験もできるように工夫した装置も発売されている。高分子材料の開発を行う場合には是非1台揃えておきたい装置である。

 

樹脂の熱膨張や熱収縮によるヒステリシスに時間のファクターが含まれていることは昇温速度を変えた実験を行いある程度理解することができる。この影響は熱衝撃による疲労に現れる。長時間熱衝撃の存在する環境で樹脂を使用していると変形やひび割れなどが成形体に現れる。微粒子分散系では靱性が下がるので破壊という結果になる。TMAを使い、これらの予測技術を開発することもできる。

カテゴリー : 連載 電気/電子材料 高分子

pagetop