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2014.07/21 技術者と職人(1)

科学と技術について、以前この欄で述べた。すなわち科学者と技術者は、真理を追究する仕事に携わる者が科学者であり、自然界の現象から新たな機能を発見し、その機能実現を目指す者が技術者である。

 

それでは、技術者と職人の違いとは何か。技術者と自称する人にこの問いを投げかけると自分は技術者であるが職人は現場で仕事をする人、とか技能を有する人とかの答が返ってくる。しかし、技術者と自称する人の中に自分が職人であることを分かっていない人が多くなってきた。

 

小学校から科学について学ぶが、技術についてはその職に就かない限り、現在の教育システムでは学ぶことができない。すなわち科学は学校で学べるが、技術は企業以外で学べない。職人には職業訓練所があるので企業以外でも学ぶ機会があるが、技術者は企業で実際に製品開発を担当しながらその力量を磨かない限り育たない。

 

高学歴となった現代社会では、知識労働者の活躍できる場面が増えてきたが、一方で知識労働者である技術者の生み出した自動化ラインのおかげで職人の仕事は少なくなった。職人の仕事は少なくなったが、知識労働者の職人化が目立ってきた。

 

知識労働者の働く意味は「貢献」と「自己実現」である、とドラッカーは述べているが、自己実現の努力を怠ると、知識労働者の職人化が起きる。人事部門とか経理部門では、そのような職人は専門職として仕事を担当し、定年退職までそれを続けることが可能である。ただしこのような部門でもOA化が進み、1970年代から仕事が少なくなってきた。ホワイトカラーのリストラを1990年代から進めた結果、定常状態となり職人の存在が問題とならなくなった。

 

事務部門のリストラは進んだが、技樹部門のホワイトカラーには手つかずの企業が多い。技術部門で知識労働者が技術者として育たず、職人になってしまった場合には技術革新の激しい現代において不要の人材になる。高度経済成長下の日本でそのような人材が増えていても、市場が拡大していったので開発部門で問題にならなかった。

 

バブルがはじけ低成長下の日本で、さらに人件費の安い他のアジア諸国の新興企業と戦うことになったメーカーではリストラの進んでいない開発部門のコスト削減が重要になってきた。もはや開発部門で職人を多数雇用できない環境になってきたのである。

 

カテゴリー : 一般

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