2014.11/07 問題解決プロセス(5)
CTOの質問は、ドラッカーの「何が問題か」という質問と同じたぐいの質問であった。しかしそれに気がつかず安直に答えたのでカミナリが落ちたのだ。昨日のカミナリを詳しく説明すると、タイヤという商品は命を預かる商品で、多くの安全検査に通過してもなお実地テストで問題がないと確認されない限り、「タイヤ」とは呼ばない、という内容を語っていた。
このCTOのカミナリは、企業における技術開発の精神を新入社員に伝えるために落とされたのだが、カミナリのきっかけとなった質問は大変哲学的な問だと思った。科学では真理を求めるために仮説を立て実験を行う。仮説が間違っていたならば真理を得ることができないわけで、そのため仮説立案に時間をかける。しかし、扱っているテーマそのものを問題にするプロセスはない。
なぜならその時代に追い求めている方向は、たった一つの真理であり、科学ではゴールが明確なためである。仮説を見直すことはあっても、ゴールそのものを見直す機会は少ない。もしそのような機会に遭遇したならばノーベル賞のチャンスとなる。現象に遭遇しないで仮説だけで異なるゴールの話をすれば、STAP細胞同様の騒動になる。
これは学校で学ぶ科学的姿勢が社会で役立たない、などと言われる原因の一つとなっている。社会の問題解決では目の前に遭遇した現象からまず問題を抽出しなければならない。この問題抽出作業について学校ではトレーニングプログラムを用意していないのだ。問題の抽出に失敗するとどうなるのか。問題が不明のままならばまだ良いが、間違った問題を抽出し、それを解くことになる。間違った問題を正しく解いて得られた答は正しい答か?
間違った問題から目の前の現象の正しい答など得られるはずがない。ドラッカーが、まず「何が問題か」とよく考えることの重要性を説いている理由である。CTOは軽量化タイヤの技術を開発するにあたり、新しいコンセプトの重要性を説いていた。
リバースエンジニアリングで他社品を解析する前にまず自分たちの設計技術を見直し、新しいコンセプトを考えろ、という内容の発言は、新入社員へのメッセージというよりも研修した部門のリーダーへのメッセージに思われる。しかし、CTOのカミナリは新入社員にとってその後の行動指針となった。
カテゴリー : 一般
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