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2014.11/24 問題解決プロセスとしてのタグチメソッド(6)

基本機能の選択は技術者の責任で、その研究こそ重要だ、と田口先生は言われた。実は基本機能がわかっている状態は、機能の実現手段が明らかになっていることであり、そうでない場合には、基本機能のSN比を求めることができないので、タグチメソッドによる問題解決ができない。だから研究が必要になるのは当たり前だ。

 

機能の実現手段が不明の場合の問題解決をどのように行うのか。過去に科学的にこれを行う方法としてTRIZやUSITがもてはやされた時代があった。しかしTRIZやUSITは、科学的ではあるが、科学的ゆえに科学で解明されていない機能実現方法を導き出すことができない。科学的ロジックで進めるロジカルシンキングでも同様である。

 

科学的に解明されていない機能を「すべてを科学的に行い開発できる」というのは矛盾を含んでいると思う。しかしこの矛盾を理解できない人もいる。32年間の技術開発人生で何度も出会い、その度に非効率的な仕事をしなければいけなかった。またやりたくない否定証明を業務としてやらなければいけないときもあった。

 

科学的に解明されていない機能をもし使用したいならば、非科学的プロセスで問題解決し、技術を用いて機能を創り出すのが手っ取り早い。なぜなら多くの学者が科学的に取り組んできて解決できていない現象を、凡人に一朝一夕に解決できるはずがないからだ。

 

また、これまでの科学分野におけるイノベーションが科学的に導き出された成果ばかりではないことに気がつくと、非科学的プロセスの重要性を理解できる。「非科学的プロセス」を科学的に管理(注)し誰でも同様の成果が得られるようにできれば、それはイノベーションを起こしうる汎用的な問題解決法と思われる。

 

話がそれるが、タグチメソッドについて田口先生におそるおそるこのような考え方でタグチメソッドは非科学的ではないか、と質問したら、田口先生は穏やかにタグチメソッドを応用してゆく過程で非科学的なところが出てきても基本機能が正しければそれで良い、と言われていた。あくまでタグチメソッドでは基本機能が命なのである。

 

(注)これは矛盾を含んでいない。非科学的プロセスの節目を科学的手段でチェックすることはできる。そうすれば、真理は一つなので、通過点における判断の正しさを確認できる。全体のプロセスは非科学的でも成否が分かれるプロセスの分岐点を科学的に管理できれば、効率良くゴールにたどり着ける。iPS細胞のヤマナカファクターはこのようにして発見された。

カテゴリー : 一般 連載

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