2012.10/18 ドリッピングによる高分子の難燃化技術
軟質ポリウレタンフォームの難燃化技術を開発しました時に、1.高分子を炭化促進して難燃化する方法と、2.燃焼の熱で高分子を溶融させドリッピング現象を発生させて難燃化する方法があることを知りました。1の場合には高分子を炭化促進するための触媒の添加が不可欠で、通常はリン酸エステル系難燃剤や気相に滞留し炭化を促進するハロゲン系難燃剤などが用いられます。2の場合には、溶融しやすいように可塑剤や低分子の添加が検討されますが、これだけでは不十分で1と同様の難燃剤を併用します。
1の方法で、可燃性高分子の大半を燃焼時に炭化できる技術があれば、2の手法の出番は無くなりますが、高分子の物性を損なわないように高い難燃化レベルを達成することは不可能なので、現実的な技術開発を可能とするように用途に応じた難燃化規格が設定されており、この難燃化規格を前提として2の手法の経済的優位性が出てくる場合があります。
やや乱暴な表現ではありますが、大半の高分子は実火災では燃えてしまうので、高温にさらされた時に火源とならない程度の難燃化レベル(例えばUL94-V2)の高分子材料を使用できる用途では、1の手法よりも2の手法により難燃剤の添加を減らすことができるのでコストを削減することが可能となり技術的に優れた手法ということもできます。
軟質ポリウレタンフォームをドリッピング手法で自己消化性となるように難燃化設計しました時に少量の難燃剤添加が必要で、TCPPであれば10%ほど添加しなければなりませんでした。この時LOIは19程度であり、ドリッピング手法で材料設計されていなければ空気中では自己消化性を示さないレベルです。類似処方でドリッピング促進していない軟質ポリウレタンフォームの場合には、TCPPを10%添加するとLOIは19程度なので自己消化性を示しません。TCPPを25%ほど添加しますとLOIは21となり、自己消化性を示すようになります。この比較からドリッピング手法で材料を変性すると難燃剤の添加が半分以下で自己消化性になる、と理解していました。
PETの難燃化を検討するチャンスがありましたので、ドリッピング手法で難燃剤レスにより自己消化性樹脂ができないかチャレンジしてみました。UL94-V2レベルであれば、炭化しやすい樹脂をブレンドすることで難燃剤レスによる自己消化性樹脂ができることが分かりました。燃焼している試料の下に置かれた硝化綿を燃焼させてはいけないUL規格で、ドリッピング手法による難燃化樹脂を検討するには勇気が必要でしたが、軟質ポリウレタンフォームの難燃化経験がありましたので自信はありました。技術開発では過去の経験が自信につながるので、若い技術者の成功体験は新しい技術にチャレンジできる技術者育成のために重要です。
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カテゴリー : 高分子
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