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2015.10/14 創始者の評価

「中国のぱくり技術」と日本で話題になったりするが、かつて批判された日本の「猿まね技術」という評価を忘れてはいけない。日本はどちらかといえばオリジナルをあまり重視しない風土だと思っている。だから東京オリンピックロゴ問題が起きたりする。また当方も研究開発でいくつかいやな体験がある。
 
オリジナルデザインとかオリジナル技術に対する尊敬の態度、あるいは他人のデザインと比較して新しさの無いデザインが見つかった時とか特許に抵触した技術などに毅然とした態度を示すことは独創を大切にする風土を育てるために大切である。10数年前に高分子同友会開発部会の世話人代表を担っていたときに、M社の研究者U氏に技術賞受賞の体験談を語っていただき、技術マネジメントについて討論したが、この時創始者について議論になった。
 
その場に参加していた人たちの感動を呼び起こしたのは、技術賞受賞メンバーに人事異動で組織を離れていた担当者の名前を入れた話だった。すなわち、その担当者はテーマの企画から研究開発の初期の立ち上げまで担当したが数年経過した死の谷のためテーマの見直しが行われ人事異動となった。その後U氏がリーダーになってそのテーマを継続することになって事業として立ち上がったのだが、最初の立ち上げ担当者がいなければ本来育たなかった技術なので、どうしても受賞者に加えたかったというのだ。
 
研究開発テーマの中には順調に事業として立ち上がらないケースがある。事業まで難しいと思われる場合には、ゲートのチェック段階で中断するのかあるいは研究として少人数のメンバーに戦力を絞り継続するかの判断が出される。いずれの場合でも人事異動あるいは担当テーマの変更などで、研究開発テーマを最初に立ち上げたキーマンが継続して担当できない、という状況は企業では起こりうることである。
 
技術のすべてのエンジンを開発するなどいくらその担当者が重要な役割を担ったとしてもそれを無視する会社もある。しかし、M社には独創を大切にする風土があったという。結局その場では、独創の技術を生み出すには、企業風土の果たす役割が大きい、という意見でまとまったのだが、とどのつまりはU氏のような担当者まで創始者を尊重する意識が無ければこのような話は生まれない。
 
会社を退職して一年ほど過ぎた頃、退職直前の半年間、当方が企画推進した仕事が社長賞を受賞した、との連絡を受けた。そして担当者から記念品として水の入ったPETボトルが4本送られてきた。社長賞受賞の記念パーティーにはご招待できなかったが記念品だけ贈らせていただくという担当者のメモが入っていたが、素直にうれしかった。

 

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