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2015.09/18 SiCのホットプレス焼結(3)

常圧焼結よりもホットプレス焼結が容易な理由は、焼結反応時にかかっている圧力に違いがあり、ホットプレス焼結では、その圧力で異常粒成長が抑制されるため、と言われている。
 
高純度SiCの事業化で苦戦しているときに、切削工具の企画を立案せよと指示が出た。この時の企画は「まずモノを持って来い」企画である。SiCは鉄と反応するので切削工具は難しいと言われていた。しかし、そんなことは言っておれない。
 
一発勝負でSi-Ti-B-Al-C系の組成で切削チップを開発することにした。当時クラチメソッドという怪しい方法を開発していたのでその方法を用いた。この方法はタグチメソッドと似ており、ラテン方格を用いる。但し外側因子には相関係数を割り当てる。切削チップなので、硬度測定における荷重と特殊な圧痕サイズから求めた相関係数を用いた。
 
実験計画法と同様の方法で相関係数が最小になる、すなわち圧痕がつきにくい材料組成を求めたところ、複合組成にもかかわらずSiC並の硬度の組成を見いだすことができた。驚くべきことに硬度はSiC並だが、靱性は部分安定化ジルコニアに近かった。
 
この開発で驚いたもう一つあり、それはホットプレス焼結における挙動だ。収縮カーブのモニタリングデータから、この組成において液相ができる領域があり、それを活用すると低温度で焼結できることも発見した。
 
その他にも興味深い現象が観察されたが、まずモノを作る必要から、最良組成の試料で、実際に切削チップを作って鋳鉄を削ってみた。切削チップは和井田製作所のご協力を得て製造し、鋳鉄の研削は赤羽の工業試験所で指導してもらい実験を行った。
 
結果は大成功でSiCで鋳鉄の切削ができ、工業試験所の先生もびっくりされていた。早速企画にまとめ研究テーマとして半年遂行したが、マーケッターの報告から、今回得られた組成を中心とした事業ではマーケット規模が小さいことがわかり開発中断を申し出た。
 
住友金属工業と半導体治工具のJVを立ち上げるまで、このような事業企画は数多く検討されたが、技術的な理由ではなく、マーケット規模ですべてアウトになっていた。半導体治工具の事業も一度つぶれた企画である。しかし、住友金属工業が当時としてはそれなりのマーケットを持っていたので、会社からJVの許可が下り20年以上経過した現在まで事業として続いている。

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料

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