2015.10/11 技術者は環境技術を軽視してはいけない(1)
技術が完成していない状態で、製品を市場に出さなければいけない状況というのは製品開発を行っていると遭遇する可能性がある。その時技術者はどういう選択をしたらよいのか。フォルクスワーゲンの事件で学習できたように絶対に不正な商品を市場に出してはいけない、ということだ。そしてこの不正の中には、環境に悪影響を与える「可能性のある技術」も含まれる。
不正ではないが、環境に悪影響があるかもしれない灰色の技術について、技術者は悩むことになる。しかし、今の時代は悩まずにそのような商品を出してはいけない、という決断をして欲しい。環境問題は、フォルクスワーゲン社の不正プログラム同様に企業が突然死(フォルクスワーゲン社はまだ死んではいないが)となるような事態を招く恐れがあるからだ。
20年以上前の話なので公開するが、転職してびっくりしたのは発がん性物質Aがフィルムに使用されていたのである。ただし、Aは反応前に変異原性試験で陽性となるが、フィルムの表面加工に使用されて商品になった時には、変異原性試験で陰性にかわる。ゆえに消費者には危険が無いので使用されていたわけだが、それでも、その使用については経営判断が常に必要なルールがあった。
すなわち写真会社の経営陣は環境問題に厳しい姿勢をとっていたのである。しかし、問題は技術陣である。とりわけフィルムの表面加工を担当していた技術陣は何故か脱Aという技術を特にテーマアップしていなかったのである。理由を聞くと解決策が無いので製品開発の中でそのための実験を行い、あわよくば問題解決しようという姿勢だった。
製品になった段階で危険性は無くなるのでそのような判断でも許されたのかもしれない。しかし、製造段階で関わっている人はどうなるのか。工場の現場でも保護具を始め安全対策で対応しているから問題ない、という答えがすぐに担当者から返ってきた。しかし、技術者は環境問題を軽く見てはいけないのである。
今の時代、環境問題は技術者全員が解決しなければいけない重要な問題なのである。たとえ経営判断が環境問題の評価を下げたとしても技術者は環境問題について妥協してはいけない時代なのである。環境問題は人類の努力とりわけ技術者でなければ積極的な解決ができないからである。
転職後グループリーダーになった時に脱Aをテーマアップした。しかし案の定予算を掛けられず、結局テーマアップしたものの、その進め方は製品開発の時に一緒に進めるというマネジメントになった。
カテゴリー : 一般
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