2012.11/16 実技と相関する評価技術(3)
タバコの灰付着テストにおけるタバコの灰の付着距離が20Hzにおけるインピーダンスの絶対値と負の相関を示す現象を解析するために、帯電防止層の導電性物質を変量したサンプルを作成し、実験を行った。横軸に帯電防止層に添加された導電性物質の量をとり、左の縦軸には20Hzのインピーダンスの絶対値を、右の縦軸には表面比抵抗を用いてプロットした。
グラフは、横軸の添加量に依存したパーコレーション転移を示す曲線が得られるが、興味深いのは、表面比抵抗とインピーダンスの絶対値の変化が逆向きであることと、表面比抵抗ではパーコレーション転移の閾値付近における変化が緩やかであるが、20Hzのインピーダンスの絶対値の変化は急激であることである。すなわち、インピーダンスの絶対値は導電性物質の量が増える(抵抗が下がる)とともに増加し、パーコレーション転移の閾値付近で急激に増加するので、パーコレーション転移の閾値を決めるのにインピーダンスの絶対値は表面比抵抗よりも感度が高いパラメーターであることがわかった。
さらにこの結果は、タバコの灰の付着距離と比較すると、パーコレーション転移の閾値を過ぎればタバコの灰が付着しないことを示しており、タバコの灰の付着距離とパーコレーション転移との関係が明らかになった。すなわちタバコの灰の付着距離が0になるためには、20Hzにおけるインピーダンスの絶対値が500000Ω以上にならなくてはいけないが、そのためには導電性物質の種類によらずパーコレーション転移が生じていることが不可欠である。
パーコレーション転移とゴミ付着距離との関係は、帯電防止層における導電性物質の電荷二重層を考えると理解できる。導電性物質間の距離がある場合には、そこがコンデンサー成分となる。導電性物質間の距離が短くなるとホッピング伝導で電気が流れ抵抗成分となる。すなわちパーコレーション転移がおきるとすべて抵抗成分となったつながりが一つでき、その結果等価回路は抵抗成分だけの回路とコンデンサー成分と抵抗成分が直列につながった回路との並列接続になり、インピーダンスの絶対値は急激な変化を生じることになる。
このインピーダンスの絶対値とパーコレーションの関係については、等価回路モデルを使いシミュレーションを行ったところ、実験値と同様の変化を示すことが明らかになった。このシミュレーションについては、福井大学青木幸一先生のご指導をいただいた産学連携の成果である。
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