現在の化学系の講座で破壊力学の授業があるかどうか知らないが、50年前は無かった。50年前でも金属材料系の講座では、材料力学と破壊力学の両方を学ぶことができた。
これは、現在も状況が変わっていないが、高分子材料について破壊力学の体系が完成していないからである。しかし、高分子材料を扱っている技術者は、金属工学関係の書籍で破壊力学を学んでおいた方が良い。
当方のセミナーでは、1日で破壊力学のエッセンスと実務で遭遇するであろう材料の破壊に関する事例説明から、形式知の体系が存在しない高分子材料の破壊力学について、経験知と事例の問題解決体験から暗黙知まで伝える努力をしている。
高分子材料の破壊現象について、昨日の粘弾性同様に分子論的見地からの研究も行われているが、芳しい結果が得られていない。
また、線形破壊力学の観点からの研究では、これまで異なるパラダイムで研究されてきたゴムと樹脂のそれぞれの破壊が同一パラダイムで説明できることが分かってきた。
50年の科学の進歩であるが、その間にも破壊現象に関わる品質問題は解決されてきた。これがどのように解決されてきたかは、弊社のセミナーを受講してください。
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高分子材料は、バネのような弾性という性質と、粘っこい粘性という性質を持っている複雑な物性を示す。身近にある各種ケースやスイッチレバーに用いられている樹脂は、弾性が強く現れ、ゴム紐は弾性と粘性が混ざっていることを感じさせる。
ゆえに高分子材料の粘弾性について、弾性の性質をバネで表現し、粘性の性質をダッシュポットで表現して研究する学問が古くから発展してきた。
すなわち、高分子材料の力学物性は、ダッシュポットとバネで表現できる、という仮説を形式知にする努力が50年近く前まで、高分子科学の一分野として存在していた。
これが1980年代になると風向きが変わり、分子論的な研究すなわち、高分子1本の力学的性質から積み上げてバルクが示す力学物性を表現しようという研究へパラダイムが変わった。
当時講談社から発売された「高分子緩和現象」という本は、少し癖の強い本であったが、学術書としては異例のベストセラーとなっている。この本には、明確にダッシュポットとバネのモデルを忘れましょうと宣言されていた。
当方がゴム会社に入社した時には、このパラダイムの変換が始まった頃であり、粘弾性論の研究者は研究所で肩身の狭い思いをされていた。
そのような状況を見てきたのと、ホスファゼン変性ポリウレタンフォームの工場試作を成功させた後、始末書を書かされたこともあり、ゴム会社の研究所における科学偏重の姿勢を批判的に見るようになって、オブジェクト指向で研究開発を進めるようになった。
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樹脂材料のリサイクル材が高騰している。バージン材と同等以上の価格がついている素材も出てきた。確かにバージン材は生産可能だが、リサイクル材(再生材)は、廃材を利用するために生産量に限りがある。
例えば、HDPEの廃材でバージン材に近い再生材を得たい時には、哺乳瓶の廃材を使用する。これが少子化の影響を受けて国内では減少傾向にある。ゆえに無色のHDPE廃材は、バージン材よりも高い価格で取引されるケースも出てきた。
ゴミが付加価値を持つ時代になったのである。ここで冷静に考えなければいけないのは、樹脂廃材で分別可能な資源と分別不可能な資源があり、後者はサーマルリサイクルとしてエネルギー回収以外に資源としての活用方法が無い現状である。
サーマルリサイクルについて日本ではリサイクル技術の一つになっているが、欧米では二酸化炭素発生を理由にリサイクル技術として認めていない。
ケミカルリサイクルが他の方法として考えられるが、現在取り組まれている技術は、分別回収された技術が中心である。また、どのような組成になっているのか不明の原料をケミカルリサイクルする技術はかなりハードルが高そうである。
ここで考えられるのが、組成が不明(ただし、有害物質は取り除かれている)の樹脂をブレンドしても物性を制御可能な黒色ポリマーアロイというコンセプトである。
黒色樹脂は物性さえ品質管理できるならば、樹脂の種類を問う必要は無く用途は広い。130円/kg前後で供給できれば、自動車部品市場を狙える。
これは、難しいようで、意外と簡単に開発できる可能性がある。関心のあるかたは弊社にご相談ください。まず、特許出願からお手伝いさせていただきます。
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自動車用途にPPSフィルムの市場が拡大している。東レだけでなくリニアタイプのPPSを製造しているメーカの何社かは、東レを追いかけてその生産に乗り出した。また、中国の某ローカルメーカーもその生産を始める準備に取り掛かり人材を集め始めた。
よく知られているようにPPSは脆い材料で、フィルムは傷をつければ簡単に引き裂くことが可能だ。繰り返し折り曲げて切れるときの回数MITをその脆さの指標にしているが、だいたい1000以下である。
通常PPSフィルムは二軸延伸されるので結晶化しているが、これをアモルファス状態でフィルムにするとMITは3000程度になり、少し脆さは改善される。
さらに、6PAを相溶させてフィルムにすると著しく靭性は改善され、20000以上となる。問題は二軸延伸で6PAを相溶させたままフィルムにできるか、という問題がある。この答えを知りたい方はご連絡ください。
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高分子材料の射出成形は、押出成形やブロー成形よりも易しそうに見えるが、ポリマーブレンドやポリマーアロイでは、難易度が上がる。
コンパウンド設計が完璧に行われておれば問題は起きないのだが、二軸混練機だけの混練では完璧なコンパウンドを製造することが難しい、というよりもできない、と述べた方が分かり易いかもしれない。
不完全なコンパウンドを何とか射出成形しているのが、現在の状況である。ところが、これをなかなか信じてもらえない。射出成形条件を多少変更すれば、カイゼンできたりするのでコンパウンドの問題をあまり深刻に考えない。
しかし、ロットが変わったら射出成形条件を再検討しなければいけない問題が発生し、いろいろOWの範囲で検討して解決できなかった時に少し疑問を持つ人がいるようだ。
20年近く前にコストダウンのため中国ローカルメーカーのPC/ABSに切り替えようとしたところ、様々な外観不良が発生した。現場で対応して、使える条件が見つかったので採用となったが、不良品を中国ローカルメーカーに見せてコンパウンディング条件の見直しを提案している。
タグチメソッドL18でロバストの高い最適条件を求めたところ、現行よりも30dBの改善効果を見込める条件が見つかった。この結果にローカル企業の総経理は驚いていた。
コンパウンディングを一因子実験だけで最適化を行っても、必ずしも最適条件となっていない原因について質問されたが、タグチメソッドを理解することです、と答えている。
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昨日80万円のローンを手取り10万円も無い新入社員が会社業務を行うために上司から命じられた話は、今なら大問題だろう。当時のこのような今の時代では信じられない話がまだあるが、少し笑える話を書いてみたい。
研究費を節約するために、OHP用紙の代わりにPETフィルムの元巻から切り出して使え、という指示が研究所長から出された。当時OHP用紙の価格が1枚100円近くした時代である。
1枚当たり1/5程度の価格となり、研究所の使用量を考慮すると大きなコストダウンになるという。そして、複写機の横に切り出しやすいようにA3幅のPETの巻物が置かれた。
A4幅になっていなかったのは、保管場所含めコストを抑えるためだったようだ。このA3幅のPETの元巻が設置されてから、複写機の故障が多くなった。A4サイズに利用者が断裁して用いていたが、2枚に1枚程度詰まるのだ。
しかも連続供給ではなく一枚ずつの処理しかできない。ひどい時には5枚に1枚成功する場合もあった。PETの巻き癖が原因とわかり、OHPとして使用する前に切り出して実験室の片隅に放置し巻き癖をとるように指示が出た。
その後もなんやかやと問題が起きたが、この所長が異動されたとたん、どなたかがPETの巻物を処分され、市販のOHP用紙を使用して良いことになった。
ゴム会社の研究所ではこのようなことまでしてコストダウンを行っていた一方で、当方の使用していた電気炉が突然出張中に廃棄される、というもったいないことも行われていた。
一人で住友金属工業とのJVを立ち上げた直後の出来事だが、我慢している。JVにより、その電気炉の使用頻度が減る話を事前にしていたが、廃棄までされるとは思っていなかった。
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表題がニュースになっていたのだが、それほど深刻ではなかったのである。まず、常識的な結論を書くが、業務上必要なモノは、雇用主が支払うのが原則である。ゆえに教師が自腹を切って学校の備品を購入するのは、問題である。
しかし、業務上必要かどうかわからないものについて、試し買いをどうするのか、という問題が残る。これは緊急性が無ければ、教師間で募金を募り、購入したらよいのではないか。
50年近く前の実話を書く。パソコンが出始めたときに、「花王のOA、パソコン革命」という本がベストセラーとなった。タイトルが少し間違っているかもしれんが、このようなタイトルだった。
そこでゴム会社の研究所でOA員会というプロジェクトが立ち上がり、上司がOA委員長となり、当方は事務局に任命された。事務局長は当方を3か月指導してくださった方である。
会議で議論の末に、薬品管理をOA化しようとなった。理由は、半期に一度の棚卸や消防検査の時に1週間ほどかけて全所員が在庫確認する業務が発生し、この手間が省けるので効果が大きいからである。
ところが、システム開発のためのパソコン導入は、予算が無いからしないという。予算外で申請する方法もあるかと思い、見積もりを取ったところプリンターまで揃えると100万円を超えた。
ベストセラーの本には、16万円でできると書いてあったので、これが問題となり、とりあえずプログラムを開発してからパソコンを改めて検討しなさい、という極めてバカげた指示が出た。
プログラム開発用のパソコンが無かったら、システム開発などできないのである。そこで秋葉原に行き、改めて見積もりをとりなおし、ローンの書類まで作ってもらって上司と交渉したところ、80万円のローンの保証人の欄に上司が印を押し、「それほど必要なら君が購入しなさい」となった。
当時月給は手取りで10万円無かった時代である。事務局長は、半年後までプログラム開発などしなくてよい、と言ってくださったが、それではアウトプットも出ない、と答えたら、OA委員長の責任でしょう、となった。
しかし、次のOA委員会では委員長が独身寮にパソコン1セット入ったようなので、薬品管理システムの進捗報告を聞きたい、などと平然と述べている。
しかたなく、80万円のローンをしてパソコン1セット購入し、薬品管理システムを開発、無事研究所のOA化のアウトプットを出すことができた。ちなみに研究所には、ソードの2CPU構成のパソコン1セット150万円を購入している。
これは、自腹の深刻化を越えて、悲惨な思い出となった。DX黎明期の実話である。これがきっかけとなり、コンピューターサイエンスを独学で勉強することになった。
カローラDX1台分のマイコン1セットはその後10年実戦で活躍した。多変量解析のシステムを早くからこのマイコンシステムで稼働させていたからである。
16ビットPC9801が登場しても8ビットマイコンでしばらく仕事ができていた。業務にコンピュータを導入する、あるいは問題解決をコンピューターで行う習慣は、1年間遊ぶお金もなくなったローンのおかげで身についた。
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知識労働者の時代、と言ったのはドラッカーだが、知識が身についておれば、教養人か、といえば、そうではない。このことに気がついたのは、最近である。
身に着けた知識の多さと教養の高さは異なるものである、と思うようになった。換言すれば、難しい問題を幾つも解けるのは、知識の多さであるが、だからといって、それが教養の高さに結びつかない。
教養とは、人生を豊かに楽しめる知の働かせ方も身に着けていなければならない。当方は難問を解くのが人生の楽しみであるが、これは必ずしも教養の高さではないのだろうと最近自分の学習姿勢を反省するようになった。
具体的に言えば、ギターが若いころの趣味の一つであり、今もそれが続いている。しかし、それで身についているのは、ギターという楽器の構造であり、それに使われる材料の知識や音楽理論であり、ギターを弾く楽しみは二の次になっていた。
教養の高い人であれば、ギターを弾いて楽しむところまで極めようと思うのかもしれない、これが当方の反省である。また、教養とはそのようなものかもしれない。
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先日田中投手の200勝をかけた試合は散々だったようだ。当方は見ていなかったのでニュース記事からの想像でこの欄を書いている。
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昨日書こうと思ったが、結構関心が高いようで、いろいろな人がいろいろなことを書いている。例えば200勝投手を多く輩出しているのは巨人らしい。
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これは、今回の田中投手の入団履歴から、巨人と言うチームが能力のあった功労者に対して、記録達成に協力的に取り組んできた結果、と言う解説があった。
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これは大切なことである。当方の学位についてもT大で論文を勝手に出されたり、金銭を要求されたりして、審査を辞退したところ、中部大学が審査料だけで学位審査を行ってくれると言うので改めて学位論文を書き直している。
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おかげで自分のまとめたい内容でまとめることができ、当方の学位論文100冊はすぐに希望者へ実費で配布された。それだけでなく、機能材料に要約版を掲載する話など出てきて大変だった。
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だいたい、草案を出したらそこからちゃっかりと自分の名前で論文を出す先生もすごいが、奨学寄付金を要求してくる先生もすごい。公務員と言う自覚があるのかどうか疑いたくなる。
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さて、田中投手の試合だが、前日に10名ほどで焼肉パーティーをやっていた、という記事があった。そのパーティー費用は田中投手が全部支払ったそうだが、試合では、皆カチカチになってエラー続出と言う解説があった。
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このような記事はどこまで信じてよいか不明だが、まさか焼き肉パーティーが翌日の試合に影響したとは思えない。むしろ達成者の少ない200勝という記録を他の選手が過剰に意識した結果だろう。
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昔のように先発完投型の試合運営ではなく、投手は分業体制になったので、なかなか200勝という勝ち星そのものも取りにくくなった。昔は300勝を越える投手もいたが、今は投手の起用方法からよほどの能力が無ければ200勝は難しい時代である。田中投手は2群落ちしたが、今シーズン200勝の大台を是非達成してほしい。
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現代を「知識労働者の時代」と表現したのはドラッカーだが、AIの登場でその知識労働者の立場が揺らでいる。例えば、形式知について、AIに質問さえ適格にできれば、もう専門家は必要ないと言える。
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むしろ、chatGPT登場時に話題になったプロンプトエンジニアリングの専門家一人おればよい。ところがこのプロンプトエンジニアリングは、少しコツを覚えれば誰でも専門家になれる。
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弊社ではそのための教材を用意しており、セミナーの依頼があればいつでも対応可能である。当方は外部セミナーでこれからの技術者はPythonとプロンプトエンジニアリングを身に着ける必要性を指導している。
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専門家以外に形式知で稼いでいる職業は、すべて何らかの影響を受ける。弊社は経験知と暗黙知を中心に活動してきたのでAIの登場で、日本においてむしろ仕事が増えるのでは、と期待している。
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AIの弱点が経験知に依存した回答に現れることは、ハルシネーションの問題を考えるとすぐに理解できる。例えば、高分子のフラクトグラフィーでは、プロンプトの工夫が必要で、これを行わなければ、新バージョンでもうまく解析できない。
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高分子のフラクトグラフィーができることに驚いたのは2年前だが、金属やセラミックスの形式知から器用に回答を生成してくれる。
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この事実は、アカデミアの高分子物性研究者を慌てさせるかもしれない。なぜなら、この分野でフラクトグラフィーは、学問として完成していないのである。
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学問として完成していない知をセラミックスや金属で体系化された形式知から学んで回答をする、この「芸」は驚異的である。このような芸ができても、タグチメソッド解析プログラムのPythonコード出力になるとうまくできない。
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それらしいコードを吐き出してくれるが、ハルシネーションがよくわからないコードであり、逆に害がある。タグチメソッドについては、第一次AIブームの成果で生まれたエキスパートシステムのような考え方でAIを構築しないと難しい。
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