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2022.02/03 ハラスメント(3)

はるか昔にスポコン漫画が流行した。「巨人の星」を子供の頃憧れを持って読まれた老人が多いと思う。この世代は定年まじかか大半は退職老人になっている。


「巨人の星」世代から見ると現代のハラスメントに対する判断は、おそらく信じられない光景に映るのかもしれない。民間企業では、1990年代から、すなわちバブルがはじけた頃からハラスメント対策が始まっている。


写真会社に転職して間もなくハラスメントの管理職研修を受けたときに、その内容にびっくりした記憶がある。ゴム会社と大きく異なる風土の会社だと感じた。しかし、それが社会の標準となってゆく流れに気づき風土の問題ではなく日本社会の変化として捉えるようになった。


ただ、ここで見落としていけないのは、マネジメントの進歩が追いついていない点である。マネジメントとは人を成して成果を出させることである、とドラッカーは定義している(定義からしてパワハラの原因になりそうである)。


2000年前後からコーチングが注目を集めた。今でもコーチングを主体にしたコンサルティングや書籍の出版があるが、スポーツと異なるコーチングスキルが重要であることに気がついていない。


特に技術開発では、コーチ役がそれなりの問題解決能力なりスキルを身に着けていなければいけないと思っているが、当方がサラリーマン時代に3度ほど受けたコーチングの研修では、その観点が欠如していた。


弊社の研究開発必勝法ではその問題に着眼し、この10年指導方法も研究し、従来の問題解決法のスキルに重点を置いたセミナー内容からコーチングスキルの説明も増やす努力をしてきた。


新しい技術を実用化する場面では、担当者も含めどうしても熱くなる。この熱くなる感覚を理解されていない技術者は成功体験が無いと思われるが、成功体験があればあるほど熱くなる。成功体験を積んでいるにもかかわらず、皆が冷静な場合にはたいしたイノベーションも起きない。


この技術開発の問題を理解していると、ハラスメントが起きやすい職場として日常注意するが、そこに神経質になりすぎるとマネジメントに失敗する可能性が大きくなる。


このあたりをここで表現するのは難しく弊社のセミナーを聞いて頂きたいが、マネジメントの失敗をどのように防いだらよいのか、という思いで研究開発必勝法を企画している。

カテゴリー : 一般

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2022.02/02 ハラスメント(2)

40年以上前の出来事なので、ここで公開しても時効として許されるだろう。新入社員の技術開発実習発表会における出来事だ。当方はグループでまとめた「タイヤの軽量化因子」について、この実習の成果として試作されたタイヤを前に置き発表していた。


発表が終わり、CTOから「君が目標としている軽量化タイヤとは何か」という質問があった。これは事前に想定される質問として回答が用意されていた。


すなわち、軽量化因子についてコンピュータIBM3033で処理を進めた段階的重回帰分析により軽量化した時の到達重量を計算として出していた。実は、試作されたタイヤは計算値より3%ほど重かったので、計算値をプレゼンテーションでは示さず、試作タイヤの重量を示していた。


あらかじめ用意していた計算式と最低重量、試作タイヤの重量増の原因を示し、自信をもって回答した。指導社員からは、当時一般的に行われていたリバースエンジニアリングの手法により解析を指導されたのだが、せっかく多数のデータが得られたので科学的にまとめなおそうと、新入社員で自主的にマテリアルインフォマティクスしたのだ。


このような事情もあって、当方は自信満々科学的にプレゼンを行い、質問に対しても科学的に丁寧に回答をしたところ、CTOから「大馬鹿モン」と会場全体が凍りつく程の大きな声で叱られた。


発表していた当方は、張りつけ状態となり、CTOの講評を聞くことになった。講評は「科学的に解明できても市場で品質問題を起こす可能性があるのがタイヤだ。実地試験でその品質が確認されない限り、タイヤとは呼ぶな、」という科学的な発表内容を全否定し技術とは何かを熱すぎるくらい熱く語った内容だった。


今、世の中ではマテリアルインフォマティクスが話題である。40年前マイコンが登場したばかりの時代に大型コンピューターを用いた多変量解析により、「科学的」に解析した成果で、今ならばハラスメントになりかねないシーンが展開された。


しかし、その場にいた誰もがこれをハラスメントとは思っていない。発表会終了後、懇親会が開かれた。そこには人事部の役員は出席していたが、CTOは出席されていなかった。


後に社長となられたこの役員は優しかった。「とんでもない雷が落ちたが、気にしなくてよい。立派な発表だった」とねぎらってくれた。


役員が去った後、人事担当者が当方の発表に関わったメンバーが集まっているところへ来て、「CTOは指導された方たちへ雷を落としたのであって、君たちのことは褒めていた」と新入社員に配慮した言葉をかけてくれた。


当時ハラスメントなる概念すらなかった。むしろ、叱咤激励に熱を入れ過ぎた行為ぐらいに思われていた時代である。今ならばハラスメント体質の組織が日本中で常識的に存在していた時代である。


一方で今でいうところのハラスメントを受けたメンバーに配慮し、優しく励ます風土も存在していた。ゴム会社は、荒削りでありながら従業員に優しいところがある風土と社会で思われていた。懇親会ではそれを感じるに十分なアルコールと料理が用意されていた。

カテゴリー : 一般 連載

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2022.02/01 ハラスメント(1)

昨日トヨタで起きたパワーハラスメントの和解がニュースになっていた。TVの扱いも含め国内の重要ニュースの一つ、として扱われていた。


ニュースの扱いも含め、様々な問題を抱えているニュースであることを感じた。トヨタのような会社でも起きたのだ、という驚きからここで文章として表現しにくい問題までさまざまである。


類似の事件として財務省の忖度事件があり、こちらはまだ最終解決まで至っていない。ニュースの扱いも昨日のように大きくはない。


報じられた内容を比較する限りにおいては、財務省でもハラスメントが存在した可能性が高いが、財務省の裁判はハラスメントを前面に出していない。昨日報じられた内容よりもひどい状態が想定されてもである。


昨日報じられたニュースは、ニュースを聞く限り難しい問題を含んでいる、と感じたので、それを伝えるために連載として書いてみたい。


まず、誤解を防ぐために最初に結論を書いておく。


21世紀においてハラスメントとは、被害者となる受け手が訴えて、その「事実」が存在した瞬間にハラスメントとして認定される。ここで「事実」が存在しても、受け手の対応で事件となるかならないかが左右される。第三者がその程度はハラスメントにならない、と思っていても、受け手が「事実」の存在を主張し、「事実」が認定されたらアウトである。「事実」に至るプロセスや状況は、「事実」に影響を及ぼさない点に注意する必要がある。


これが今回の事件でわかりにくいと思われた方は、セクハラの事件を調べていただけば理解しやすいかもしれない。文春砲がさく裂しても裁判になっていなかったり、裁判になっても加害者側が事実を否定しているにもかかわらず、否定できない「行為の事実」が提示されたなら裁判で負けるのだ。夫婦関係でも成立することを理解できたならば、ハラスメントの特徴を把握できる。


しかし、ハラスメント事件の中には、加害者側の「思い」が強すぎたためにその意図が無くてもハラスメントとされる場合もあったのかもしれないが、それを公に述べることも「ハラスメント容認」と受け取られるリスクが大変大きくなった。「思い」が強くても、一呼吸おいて「ハラスメントになるかもしれない」と考えながら「アドバイス」しなければいけない時代になった。


これはイノベーションを必須とする職場ではマネジメントが大変難しくなったことを意味している。この「マネジメントの難易度が極端に上がった」と、今回のニュースを聞き感じなかった方は、ハラスメントについてよく理解していない人である。


もし、今回のニュースでマネジメントの危機を感じられた方は、弊社にご相談ください。

カテゴリー : 未分類

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2022.01/31 高分子の分類

金属材料やセラミックスの教科書を眺めると、結晶系を基にした分類が出てくる。セラミックスでは鉱物学の本を読んでいるような感覚になる。


学生の時にある先生が、機能性セラミックスについて問われたらペロブスカイトの説明をすればセラミストのような顔ができる、と授業で言われていた。


有機材料に比較してセラミックスという学問を簡単に感じたが、実際に両者を研究してみてもやはり有機材料、とりわけ高分子は難しいと感じている。


この原因の一つは、学術に耐えうる分類法が存在しないことによる、と思っている。また材料をリバースエンジニアリングしようと分析しても、セラミックスの様に明確な分析結果を示すことが難しい。


目の前に組成も何もわからない材料を置かれたときに、セラミックスならばX線分析法で大体の推定ができ、組成分析を行ってこの推定結果と照合すれば、リバースエンジニアリングの90%は成功する。


しかし、高分子ではこのようにいかない。例えばPPS/ナイロン/カーボンのコンパウンドの分析でもリバースエンジニアリングで類似コンパウンドを開発できないことを以前この欄で述べている。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.01/30 高分子材料の問題解決

ブリードアウトにケミカルアタック、想定外の劣化など開発段階でロバスト設計を行ったにもかかわらず、高分子材料はしばしば市場で問題を発生する。


厄介なのは、多くの場合にコンパウンド供給メーカーと成形メーカーとが異なる点である。どちらの問題なのか明確にする必要がある。


ところが、組み立てだけ行っているメーカーにとって、これは頭の痛い問題である。組み立てメーカーにも品質検査の必要性から材料担当が配置されているが、その担当者が学会活動を行っているケースは稀だろう。


高分子材料については未だに新しい現象について学会で報告されたりする。ところが最近問題に感じているのは、発表者が市場の様子をしらないので、研究で見出された現象が実務的に重要な現象であると気がついていない点である。


もっとも学会の目的は科学の発展のため、と考えておられる研究者が多いので、それが問題となっていないし、それを問題にしても笑われるだけかもしれない。


しかし、学会活動の目的の一つに人類への貢献がある以上、本来このような日常の問題についても議論すべきだと当方は考えている。しかし、それが難しいことなのでこうしてそれを補う活動を起業して行っている。


すなわち日常の材料に関する問題を高度な視点から根本的に解決するために当方は活動している。このような活動も行っている理由は、複写機の外装材で起きた問題の原因について某コンパウンドメーカーのCTOと議論した苦い経験があるからだ。


すなわち、状況証拠の数々がコンパウンド起因であることを示し、さらにコンパウンドそのものもスの入ったロットが混ざっていたりして、そのロットで市場問題が起きていても、CTOは無関係を主張していた。


このCTOは高分子技術には詳しいが大変不誠実な人でコンパウンドに問題があると気がついていても、今の科学では完璧にそれを証明することができないことを知っているので無関係を主張していたのだ。


当方はそれを見抜いたのだが、科学的に完璧に証明できない以上、追及が難しいと折れなければいけなかった(注)。ただし、再発を防がなければいけないので、ロットばらつきの是正だけでもCTOに納得していただいた。


コンパウンドメーカーのこのような不誠実な対応が存在するので、当方の起業の動機になっているが、中国ナノポリスに招聘されたときに、指導しているコンパウンドメーカーの総経理には市場問題について誠実真摯に対応することを求めている。


(注)ビジネスではこのような場合に折れた方が負けになる、という人がいるが、ドラッカーは、ビジネス交渉こそ誠実真摯に行うべきことを説いている。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.01/29 大学院へ進む若者へ

文科省が社会人教育に力を入れ始めた。ネットサーフィンをしていたらW大学で某企業フェローが大学院の学生に向けて送ったメッセージを見つけた。


そのフェローは、その内容から自己の人生には満足しながらも、一方でそれを覆い隠して後悔しているかのような不誠実な語り口であったようだ。


その内容は学生にためになることを話しているようでも、「博士の学位は企業で何の役にも立たない」とか、企業では、「専門能力が秀でていること」よりも、「皆ができることを普通にできる人が良い」とか、誤った組織論を展開していた。


一方で、「ビジョンを持った社会人になってほしい」と当たり前に良いことを発しながらも、「フェローまで昇進した自分は、そのような人生を送ってこなかった反省がある」と、聞きようによっては皮肉になるようなことを語っている。


この人物の公開されたメッセージメモを読むとドラッカーがいうところの誠実とは何か、ということを理解するのに役立つ。なぜなら、部分を見ると誠実そうに語っているようで全体が不誠実なメッセージだからだ。


ところで、このフェローの語った「博士の学位が企業で価値がない」という説だが、これは誤った認識である。「学位を持っていてもそれにふさわしい働きをしなければ、学位をその人物の価値の尺度として評価しない」というのが正しい。


これは、肩書だけあっても実力が無ければ評価されない時代だからである。また、ドラッカーは「頭の良い人が、間違った問題を正しく解いて成果を出せない」組織における悩ましい専門家の存在を指摘している。


大学院まで進学し、高度な教育を受けたならば、それを肩書だけで終わらせるのか、それを組織なり社会で役立てることができるのかどうかは、その個人の努力の問題である。


このフェローは自分の博士という肩書にふさわしい専門性を組織で生かせなかった、と後悔している。そのかわり、運よく組織を泳ぎ切りフェローまで昇進できた満足感を学生に語っている。


ちなみに、当方はゴム会社で博士の学位を取得する機会を設けていただき、転職してもゴム会社およびその関係者のご尽力で学位を取得することができた。もし、企業が博士の学位に意味を見出していないならば従業員に学位取得を促したりしない。


上司の方々に感謝と敬意を表すために、学位を取得してからは学位にふさわしい仕事を目指し、学会活動を転職した写真会社でも積極的に行ってきた。


転職した会社では、単身赴任するまで高分子同友会や日本化学会産学連携懇話会の窓口担当の職に就いている。学位を組織で生かす努力をして、日本化学工業協会や写真学会から賞を頂けたような、学位にふさわしい成果も出してきた。


ただ、成果にふさわしい昇進ができたかと問われると言葉が無いが、その原因が「皆が普通にできること」をできなかった、とは思っていない。


むしろ皆ができない過重労働でもそれが必要ならば、部下にやらせず当方が行ってきた。会社が成長する方向を提案し続け、そのように仕事をした結果である。毎年届く特許報償の通知の封筒が今年も届いた。


組織における昇進は運が大きく左右すると若い人には自信をもって伝えたい。当方の退職日には東日本大震災で退職祝いのパーティーまで吹っ飛び最後まで運が悪かった。しかし、何とか部長までは昇進できたのは、今も継続している多くの学びの結果だろう。


社会に出ても学ぶ努力は大切で、その時学位は学ぶ機会を増やしてくれる。少なくとも社会は高学歴の人にその活躍を期待しているのだ。期待外れとならないように学位にふさわしい知のポテンシャルを維持し高めてゆく日々の努力が大切だ。


学位は高度な学びのスタート地点に立っている証明書ととらえるとよい。スタート地点のままならば評価されないのは当たり前で、その時学位に価値が無いと感じるのだろう。


学位を取得したならば、そこを起点として社会に還元しながら学ぶ努力が求められている。誰でも学位を取得できるわけではないのだ。

カテゴリー : 一般

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2022.01/28 データ解析(2)

最近話題となっているビッグデータの解析では、必ずしも科学的な解析とは言い難い例も出てきた。そのような例では、解析結果が普遍的真理とはならず、単なるその場限りの現象理解に終わる。


これを科学的ではないから、という理由で否定的に見ていると時代に乗り遅れるか、あるいは間違った情報を形式知としてしまうミスを犯したりする。せめて解析プロセスも含め経験知の一つ程度に考えるとよい。


すなわち、現代のデータ解析事例を眺めるときに、科学的に解析された結果なのか、単なるデータを整理し傾向を記述しただけの結果なのか、あるいは眉唾も含むその他の結果なのか、それを自ら検討する必要がある。


一方で、科学的ではないデータ解析あるいは手法の中には、技術開発にうまく取り込むと業務を効率化できる可能性もあるので、その手法がどのようなプロセスで行われているのか調べてみると面白い。


よく使われる手法として、多変量解析あるいはマハラビノスのTMがあるが、これは技術開発で集められた大量のデータから、未知の情報を絞り出すときに使える。高分子の難燃化技術セミナーで一例を示す。


15年以上前に歩留まりを10倍近く改善できた中間転写ベルトの技術開発では、それまでの開発で収集されたデータを解析し歩留まり向上のヒントを導き出している。CMCリサーチのセミナーで手法を詳しく説明する。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2022.01/27 データ解析(1)

科学の時代なので、仮説に基づき実験を行いデータを収集し、仮説との整合性をすなわち仮説が成立するのかどうか確認する。


これは義務教育の理科実験にはじまり大学を卒業するまで指導されてきた方法である。このコロナ禍の感染者報道を見て、データ解析手法には、この学校で習った方法以外にもいろいろあることに気がつかれたのではなかろうか。


すなわち、実験を行うことなく、現象を数値化しそれを解析する手法である。実は実験を行っていなくても現象を数値化するときに仮説を設定しているので、これも学校で習ってきた方法と変わらない。


現象からパターンを抽出する方法もこのように数値化が行われるので何らかの仮説が設定されたうえでの方法と言える。パターンを解析し意味不明であればパターンの数値化方法を変えて自分の意図する結果となるように試行錯誤を繰り返す人もいる。


試行錯誤を繰り返していながら、何か最初に仮説があったかのように説明するので、すごい眼力だと感心させられたりするが、昔ならばともかく今はコンピューターがあるので大したことではない。


科学の便利なところは、データを解析するときに仮説が正しければうまく推論を展開できて答えを出せる点である。データ解析は科学的に行えば誰でもデータが意味している範囲の真理に到達できる。


解析とか分析では科学のありがたみを必ず感じるはずである。それゆえ当方は時間さえ許されれば、すでに完了した仕事でもデータ解析を行って考察したりしている。


この時実際の生データは特に必要は無いのだ。グラフの形さえ再現できれば良い。もっともこのような結果を学会で発表しにくいが、Wパーコレーションという現象については、高分子学会無機高分子研究会で7年ほど前に発表させていただいた。

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子

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2022.01/26 フェノール樹脂とエチルシリケート

表題の組み合わせは、高分子の難燃化技術開発の過程で生まれた技術シーズである。ホスファゼン変性ポリウレタン発泡体の難燃性を評価した時に、その高い難燃性が燃焼時に無機高分子を生成するため、と思われる現象が観察された。


すなわち、リン酸エステル系難燃剤を添加型で用いたときに反応型として用いた時より、同等の難燃性レベルを得るためにリン原子の添加量が多く必要だった。


ところが、この性能差よりもホスファゼンの添加効果が高かったので、燃焼時のリン原子の挙動を研究した。すると、リン酸エステル系難燃剤では燃焼時にオルソリン酸の形態で揮発し、燃焼後の残渣にリン原子の単位が残っていないことがわかった。


それに対し、ホスファゼンを用いたときには燃焼時にオルソリン酸は検出されず、添加されたホスファゼンのリン原子の大半が燃焼後の残渣に残っていることが確認された。


そこで、燃焼時に揮発するオルソリン酸を燃焼時の系内に保持する目的で、リン酸エステルとホウ酸エステルの組み合わせ難燃化システムを検討した。


組み合わせたホウ酸エステルは期待通りに燃焼時にリン酸エステルと反応し、ボロンホスフェートを生成することが確認されただけでなく、この組み合わせ難燃化システムでは、ホスファゼンと同等レベルの難燃性能が発揮されることもわかった。


この成果から、フェノール樹脂とポリエチルシリケートを組み合わせてSiCを合成するアイデアが苦労なく自然に生まれている。ところが、この組み合わせのχパラメーターは十分に大きく相溶しない問題があり、これをどのように解決するのか、という高い技術の壁が存在した。


しかし、リアクティブブレンド技術を習得していたので、解決手段とその効果はフェルミ推定で予測された。すなわち、未体験の技術について、その技術要素を抽出し、それぞれの機能や役割効果を概略評価することでブレークスルーするための実験計画とその結果を予測したのである。

カテゴリー : 未分類

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2022.01/25 高分子の難燃化技術セミナー

弊社ホームページ新着情報にご案内しておりますが、テキストが出来上がりましたので見本としてテキストの一部を貼り付けました。


セミナー会社が主催する難燃化技術セミナーには20代からご招待いただき講演をしてきましたが、ポリウレタンの難燃化部分は、今回も昔発表した内容と同じです。科学でまとめられた実験結果は形式知として不変です。


20年ほど前からタグチメソッドの項目を加え、最近はマテリアルインフォマティクスも取り入れた内容で講演しております。


また、20年ほど前に高分子同友会で環境問題と高分子について開発部会で議論されましたが、今回の無料セミナーではこの辺りはご紹介程度の説明になっています。環境問題につきましてこの数年大きな変化がありました。


3年前に皮革の難燃化処方を開発しました時には、ノンハロゲンで技術を完成いたしましたが、プロセスもオイル分散を用いず、すべて水系の環境対応技術として完成しています。


水に不溶な物質を水に分散してコロイドとして仕上げるには、これまでオイル分散が唯一の方法だったのですが、最近新たな技術を開発し、ただいま特許の審査請求中です。詳細は弊社出願の特許をご覧ください。


高純度SiCの製造技術開発からカオス混合プロセス開発まで様々な技術開発を50年以上続けていますが、高分子の難燃化技術開発はライフワークのひとつになっています。


難燃化技術論文資料


セミナーテキストサンプル

カテゴリー : 一般 学会講習会情報 電気/電子材料 高分子

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