最近「生録」のことを空気録音というらしい。新しいオーディオ技術かと思ったら、その場の雰囲気が分かるような録音方法をこのように言うらしい。
ユーチューブなどのSNSで聴く音が何か新鮮に聞こえたためにこのような言葉が生まれ、それがオーディオを趣味とする人たちに広まって、そこに難解な蘊蓄が加わった怪しい言葉である。
これをスピーカー評価に適した録音方法として勘違いしている人がいる。あるいは、スピーカー評価に使う時に、比較対象と区別できるように録音して空気録音で比較しました、とやっているケースもある。
もしこれでスピーカー販売などしているならば詐欺に近い。昔オーディオ雑誌でスピーカーの性能を議論するのにどのようにしたらよいのか、座談会が載っていた。
すなわち、無響室で測定された周波数分散や高調波歪率などの特性グラフを示しただけでは伝わらず、部屋で聴いた音を伝える工夫のような議論へ発展し、結局オーディオ評論家がうまく伝えるしかない、というところに落ち着いている。
このオーディオ評論家もやや胡散臭い職業で、結局オーディオメーカーの太鼓持ちのようになってオーディオ市場そのものも衰退してゆく。
そもそもオーディオ業界の衰退は、技術が進化し、ひどい音で鳴るシステムが見当たらなくなったためである。TVのスピーカーでも50年以上前のステレオよりいい音がする。
当方は、アンプはROTELを使用し、スピーカーはオンキョーとボーズを同時に鳴らすスピーカーの配線をし、必要に応じてサブウーハーを使えるような環境で音楽を楽しんでいる。そしてTVの出力をこのシステムに入力し、TVの音もハイファイで聴けるようにしている。
この環境で、TVのスピーカーの音とオーディオシステムから流れてくる音を比較すると、確かにTVのスピーカー音質は悪いと分かるが、時々ステレオの電源を切り忘れるので、TVだけで聴くようになった。
高級オーディオは電源が入っていると音が出ていなくても電力を食うのである。それでTVだけで聴くようになったのだが不満はない。これではオーディオ市場も無くなるわけである。
ライブハウスと同じような音空間を再現しようとすると100万円前後かかるのである。リビングでこれを楽しむのは趣味として良いかもしれないが、実用的ではない。
そのように楽しんでいる環境で高度なテクニックで空気録音された、という音を聞くと、ただ「生録」をやりました、にすぎない音である。だから、良く聞こえるように細工をしてスピーカーの比較を空気録音でしてみました、という怪しい説明に聞こえる。
再生装置の違いで音の聞こえ方は影響を受けるので、空気録音だから良い、という言い方はおかしいのである。ただ録音しました、と同じ意味である。言葉に騙されないように。
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HansenのSP(HSP)について研究が進み、それを計算するソフトウェアーが20万円前後で販売されている。Hansen球を仮定し、その球の半径の範囲内に入れば良溶媒であり、球の外であれば貧溶媒であると評価する。
これまでの膨大なデータを活用するので、低分子であれば、かなりの精度でSPが求まるらしい。ただし注意点は正則溶液という制限があることだ。すなわちHSPで混合の問題が全て解決できるわけではない。
やはり、実際に混ぜてみて確認する作業が必要になる。それでもHSPは、溶解性を議論する時の手がかりとして使えるので便利である。注意点としては、繰り返すが、これを絶対視しないことである。
SPがかけ離れた組み合わせでも混ぜなければいけない時がある。ポリエチルシリケートとフェノール樹脂とから高純度SiCの前駆体を合成したい時には、SPやχで絶対に混ざらない、と説明されても、根性で混ぜることを考えてリアクティブブレンド技術を開発している。
KKD、勘と経験と度胸は技術者を軽蔑的に表現した言葉であるが、トランスサイエンスが溢れているときには、重要になってくる。
制御された勘の働かせ方や経験知についてこの欄で過去に書いているので興味のあるかたは過去記事をご覧ください。ヤマカンでも100%当たるのであれば尊敬すべきである。
電気粘性流体の耐久性問題では科学的に厳密に研究が進められて、界面活性剤では問題解決できない、と否定証明されたが、データサイエンスによるヤマカンでこの問題を一晩で解決し実用化レベルの技術を完成している。科学とは?
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SPについては、理想溶液から拡張された正則溶液における凝集エネルギー密度を基に定義された数値である。その発想はエントロピー効果をモル分率で表現できると仮定し、エンタルピーの効果は凝集エネルギーの変化で溶解性を求めようとしている。
このことから、すぐに高分子でSPを求めるのは難しい、と気づかれた方は、エントロピーをよくご存知の方かもしれない。また、SPの考え方が研究により進化したとしても正則溶液という制限があるならば一般の溶媒で期待が外れても仕方がない、と諦めていただきたい。
結局やってみなければわからない、ということを説明しているのだが、それでもSPを知りたい場合が出てくる。2成分以上の混合を考えるときにSPは便利なパラメーターであり、現在のところ溶解性を議論する時のパラメーターはSP以外に無い。
その時お金をかけずにSPを求めたいならばSMALLの方法がお勧めである。SMALLの方法で求められたSPに一致する溶媒に溶かしてみて間違いないか確認していただきたい。
この方法であれば、高分子のSPも求めることができる。溶解しない微粒子の表面構造が分かれば、SPを推定でき、溶媒に分散し粒子表面の濡れ性からSPの妥当性を検証すれば、無機粒子のSPも求めることができる。
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χとSPを一緒に論じるとわからなくなるだけでなく、材料開発においてアイデアも出てこなくなる。新材料設計、あるいは配合設計において混合のプロセシングは重要である。
混合装置が伝承され、既存の混合装置で材料開発をしなければいけない、と勘違いしている。既存の混合装置でも邪魔板をつけたりする改良でプロセシング効果は変化する。
あるいはスタティックミキサーの設置はそれほど投資負荷とならないのでこれを検討して隘路を打開する、という方法もある。少し乱暴だが、金属球と一緒に撹拌すれば、剪断効果を生み出すこともできる。
設備の改良はリスクが大きいので混合物のSPについて考察をする技術者は多いかもしれないが、対象が高分子の流動であれば、χを考察すべきである。
低分子の混合だけであれば、SPを用いる。高分子と低分子の場合はSPとχの両面で考察するのが正しい。SPの求め方については様々な方法が知られているが、χはOCTAで計算するのが簡単である。
しかし、χやSPをどのように求めて、アイデアを練る時にどのように使うのか、教科書には親切に書かれていない。むしろアイデアを束縛するような説明となっている。
なぜなら、χが正でも混合プロセスの工夫で相溶する系は存在する。SPが異なっても分散剤を選んでやることにより溶解することが可能となる。またリアクティブブレンドを用いれば、全く混ざりそうもないものを混ぜ合わすことだってできる。
SPやχが分からなくても、混ぜてみてうまく混ざらないならば、何らかの工夫をする、これが重要である。混合について考えるときに、まず混ぜてみてよく観察すること、これをお勧めする。
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昨日朝のニュースで愛知県旭丘高校天文部の宇宙へ挑戦する姿が紹介された。気球を成層圏まで上げて写真を撮った、ただそれだけのことであるが、手作り感たっぷりの装置がTVで紹介されびっくりした。
今の時代夢を実現することが容易になったことを示す事例であるが、さらにこれが200人以上のメンバーの集まるクラブでプロジェクト体制で行われたことにさらに驚く。
自分たちの力量を把握し、夢の実現に向けてゴールを明確に設定し、それを組織のテーマとしてやり上げることは大変なことである。
まず、最初のゴール設定が難しい。メンバーの目標としてワクワクするゴールでなければプロジェクトはまとまらない。さりとて天文学的数値の宇宙開発のようなゴールは、高校生にとっては単なる夢物語となる。
自分たちでできるかもしれないレベルで、わくわくする内容をうまくまとめている点が秀逸なのだ。今回報じられた内容は、潤沢な資金があれば町工場を動員してできるレベルであり、つまらないと思う人がいるかもしれないが、高校生が高校生の力だけで実現していることに驚く出来事である。
ただし、当方が高校生だった50年以上前に同じことができたのか、というと、GPSはじめ周辺技術が無く不可能な内容だ。夢を描く、そして実現できそうな形にまとめ成功させる、それが50年前には想像のできなかったレベルで実現できる、そのような時代に今我々は生きている。
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国民民主党のスキャンダルと「混ぜる」技術を同じコラムに書いても混同することはないが、χとSPの話を一緒に論じるとその使い分けに悩む。
SPは凝集エネルギーを論じるが、χでは自由エネルギー変化を議論している。そもそものパラダイムが異なるのに、χを見積もる時にSPを用いたりする。
ただし、フローリー・ハギンズ理論では、同じ格子の中に異なる高分子を押し込んで(凝集ではない、押し込んでいる)、その自由エネルギー変化でχを定義している。密着(凝集)しているかどうか不明なのに格子の中で密着した状態を仮定し理論展開してゆく。
この理論の怪しいところは、このように異なる高分子が同じ格子で密着しているのを見ているところから議論を始める点である。ゆえに凝集エネルギーから計算するSPも使える、と早とちりして知識の整理をしてしまい、混合の問題で新しいアイデアを出せなくなってしまう。
異なる成分の高分子を混ぜてポリマーアロイを製造するのだが、この時χが0にならなければ相溶しないことになっている。
すなわち、χが正の場合には異なる高分子どおしの密着は起こらず、海島構造に相分離してゆくことになる。これをSPの議論で行い、SPが異なる高分子の組み合わせでは、相溶が起きない、と結論したりする。
そして、ある本では、異なる高分子のSPについて引き算の項が示され、χがSPから計算できるような誤解を与える。高分子シミュレーターOCTAでは、異なる高分子を混ぜるときにSPの温度依存性やχの温度依存性を計算することができる。
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面白いのは系によっては両者のグラフの形が全く異なる変化を示す場合がある。恐らく内部でχとSPは異なるアルゴリズムで計算しているのだろう。
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化学工学の領域で撹拌は重要なテーマである。しかし、その研究において「材料の変性」だけでなく「ナノオーダー領域」のミキシングが目標になっていないことを御存じだろうか。
50年前当方が学んだレベルから現在に至るまでの進歩は、コンピューターの利用とスタティックミキサーの発明ぐらいだと思う。ポリマーアロイの大家、故ウトラッキー博士のEFMや当方のカオス混合機もスタティックミキサーの一種である。
これらの発明が混合技術のパラダイム変換に基づくことに気がつかれていないことを残念に思う。話が飛びすぎるが、国民民主党の党首による不倫事件は男女共同参画においてイノベーションを起こすかもしれない。
玉木代表は政党のあり方として、倫理観の高い人間の集団であることが必要で「絶対に私は不倫をしない」と述べている。不倫をしない人の不倫とは何か、報道されてからの流れを見ると従来の政治家の不倫騒動とは少し異なる流れが起き始めた。
そもそも不倫とは、などと論じるつもりはないが、今回の事件が男女共同参画の場で起きたとするならば、この扱いを慎重にすべきである。男女がミキシング状態で仕事を進めるときには、今後も起こりうる問題だからである。人間は誰もが聖人君主になれるわけでもなく、ましてや選挙でそのような人を選ぶことなど不可能だからだ。
また、今回報じられた写真を見る限り、事前にロケーションを調査したカメラマンによるものと思われる。これが何を意味するかは述べないが、ミキシングの実験でもしかるべき情報を基に準備をしてそこで起きている流動状態を観察することで、コンピューターのシミュレーション以上の経験知を得ることができる。
ゴム会社に入社した時に、指導社員からポリマーの流動で何が進行しているのか、このような実験を行うとよい、と言われ、ロール混練で実験しながら幾つかの技をご指導いただいた。
すなわち、混合とは溶媒に媒質を分散する、あるいはAとBの溶液を混ぜるときに発生する流動で進行する現象である。ミキシング装置が変化しなくても、被混合物が変化すれば流動も変化し、ミキシング現象は様々に変化する。
装置で現象を律することができなければ、それを中心にした材料との関係における形式知の構築は難しいのかもしれない。文学の世界になるが、渡辺淳一の「失楽園」では奇妙な不倫が描かれている。
初めて読んだ時に不倫小説として読めなかった。この小説が文学として評価される所以かもしれないが、不倫は文化だと言った芸人も不倫というパラダイムの変換を期待していたのかもしれない。
同様に概念の扱いを慎重にしないとミキシングの研究に今以上の発展を期待できない。ミキシング技術は装置や設備の学問以外の領域まで視野を広げるべきで、平衡状態だけ扱っている物質科学の限界を超えるパラダイムで研究を進めるべきである。
それがどのようなものであるのか、当方もうまく表現できないが、科学的にうまく説明できない混合現象で新材料を創出した努力が幾つか成功した経験から、非科学の研究も受け入れる寛容さが重要かもしれないと思っている。
不倫よりも非科学を論じる方が日本では怪しくみられるかもしれないが、その意識を変えない限り、ミキシングにより材料を変性しようというアイデア展開は難しい。
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若い人は、あまり考えていないかもしれないが、今健康な日本人は80歳以上まで生きる。それより早く亡くなる人もいるが、少なくとも健康であれば70歳くらいまで現役時代と変わらない体力で働ける。
先日報じられた国民民主党玉木代表は55歳で2日間徹夜し、翌日ホテルに行っていたことが騒がれている。若い人も真っ青になる元気さである。当方は大学受験に合格した翌日友人たちと徹夜マージャンを2日間行い、くたくたになり、1週間ほどだらだらと過ごしている。
健康には個人差があり、またやる気につながる精力も個人差が大きい。さらに、これが何歳まで維持されるのか、といった問題は、平均値で議論してもしかたがなく、個人で判断しなくてはならない。
当方は玉木代表のような自信は無かったので、50歳ほどになった時に興味のある研究で仕事にできるようなことを考えていた。体力に自信が無ければ頭脳労働、というと学生時代に体力が無ければ頭脳労働もできない、と言っていた先生を思い出す。
夕方5時になると当方が忙しくてもキャッチボールの相手をさせられた。30分のキャッチボールでどれだけの体力が養われたのか知らないが、70歳を過ぎても、研究意欲は衰えていない。
意欲さえあれば70歳を過ぎても働けるのである。最近のデータでは70歳以上で45%以上が仕事をしているそうだが、納得のゆく数字である。この数字から老後も働かなければ食べていけない日本、と見てはダメである。
老後も仕事のある日本と考えるべきである。住むところがあれば、70歳以上なら年間50万円あれば生きて行ける。これは、生活保護費よりも低い。生きていて必要になるのは生きがいであり、その生きがいとして働ける職場がある。
働くとは貢献と自己実現であると意味づけたのはドラッカーであり、働くことは十分に生きがいなのだ。当方は、サービスセミナーを開催しているが、これは若い人限定である。リスキリングを考えている人やスキルをレベルアップしたい人は休日に利用していただきたい。
若い人は学ぶ意欲を失ってはいけない。当方はそのような若い人の意欲をサポートできるように頑張りたいと思っている。
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ガラス成分となる有機化合物をポリウレタンに分散し、燃焼時の熱でガラスを生成し、ガラスに固定化されたリン酸ユニットで難燃化するアイデアは大成功した。
この技術は、高分子をセラミックス前駆体に用いるアイデアに発展し、事業として最初に提案したのは1980年である。そしてゴム会社の50周年記念論文募集にこの技術を用いた事業シナリオを応募している。
残念ながら佳作にもならず、評価されなかった技術だが、1983年に無機材質研究所で実証し、炭素助剤だけでHPすれば高純度ヒーターという商品を開発できる、という研究者の助言に従い、実験している。
見事に助剤を炭素だけでHP焼結できて、半導体用高純度SiCヒーターという商品の可能性が出てきた。しかし、技術が実証されても事業化ができなければ商品を世に出すことはできない。
幸いなことにゴム会社で事業化が決定され、2億4千万円の先行投資が決まり、それから30年事業として続いて、当方が定年退職年齢となる時に愛知県にある(株)MARUWAに事業譲渡された。
技術があっても事業として成功しなければ商品を世に出せないのである。また、魅力的な商品を作る技術があってもそのシナリオが不十分では投資も引き出せない。2億4千万円の先行投資で学んだことは多い。ゴム会社の経営陣の力を示す事例だろう。
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混ぜるには混合装置が必要である。混合装置とその運転条件により、発生する流動が変化する。この溶液で発生した流動により、2成分以上の物質が混ざるのである。
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ここで、静置していても拡散で混ざるだろう、という人が出てくるかもしれない。その話は後日説明するが、拡散を主張される方は水と塩を混合せずに放置して均一になる時間を計測してみて欲しい。
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見かけ上均一でも、10分ぐらいの放置では塩分濃度が不均一となっていることに気づく。また、すき焼きのシーズンになってきたが、砂糖を鍋の片隅に追加して放置してもすぐに皆が食べられる状態にならない。皆がおいしく食べるために攪拌操作が不可欠である。
ただし、その流動で混ざっているときの次元が問題となる。分子レベルで混ざっているのか、ある大きさのドメインを形成しながら混ざっているのか、という流動状態の構造サイズである。
分子レベルで混ざっている混合状態が、いつも良い状態とは限らない。創造したいオブジェクトに応じて、それを制御しなければいけない。例えば、単なる抽出操作を目的とする混合であれば、分子レベルまで混ぜると、不便あるいは不利な状態になる。
このとき希望する抽出相がうまく相分離してくれればよいが、溶媒和のため細かい懸濁状態で分散し、抽出に失敗する場合もある。あるいは、リアクティブブレンドで反応速度を制御したい時には、この混合時の次元は制御因子になる。
フェノール樹脂とエチルシリケートとの混合では、酸触媒を用いて高速剪断混合を行うが、反応が開始すると懸濁状態から透明になってゆく。酸触媒の種類や混合条件により、この現象は様々に変化し、反応を均一に進行させる混合状態を実現するためのOWは複雑で狭い。
これは、合成された前駆体を用いて高純度SiCの生成反応を速度論的に解析すると明らかになる。OWを外れた前駆体を用いると、高純度SiCの粒度分布が広くなったり、ひどい時にはシリカ不純物が残ってきたりする。
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