研究や技術開発において、データの解析力は必須である。この解析力には、二通りの流儀がある。一方、データの採取方法についても同様に流儀がある。
こちらは、業務経験などにも依存するので、何通りも流儀があるかもしれないが、大別すると解析力同様に二通りにまず分けることができる。
すなわち、データの収集法も、解析力も科学的流儀と非科学的流儀の二通りが存在する。ゆえにデータの解析力、と言ったときに4通りの流儀をすべて駆使できる人が、この力において高い能力を身に着けているといえる。
当方は20代にこのレベルに到達した。その結果、担当した業務はすべてアウトプットを迅速に出すことができた。ところが、ゴム会社の研究所では、科学的なデータ収集法で科学的な解析しかできない人が優秀とされた。
マテリアルズインフォマティクスがもてはやされる今の時代から思うと信じられない時代だった。それではそのような優秀な人は、どのような仕事のやり方で研究を進めていたのか。
科学的なデータ収集方法なので、現象から抽出できるすべての機能について調べているわけではない。これが理解できない人が多い。科学的というフィルターをかけた状態で現象からデータを収集し、研究を進めることが現象の一部の偏ったデータ(注)で結論を出そうとしていることに気がつくべきである。
研究所では、さらに仮説を立案できるのは高学歴の人物だけ、という偏見があり、学歴により出世に差がついた。博士ならばすぐに研究のリーダーとして処遇されたが、多くの博士はかわいそうなことになかなか成果をだせず、挙句の果ては否定証明を行って満足している人が多かった。
これは、仮説というフィルターをかけてデータを収集したときに、そこに解決へ結びつくデータが無ければ、すなわち外れのデータばかり収集していたなら否定証明となる。
(注)例えばフローリー・ハギンズ理論に従い、PPS・6ナイロン・カーボンの配合を検討したならば、そこから導き出される半導体フィルムは、紙のように脆いフィルムしか得られない。PPSと6ナイロンが相溶する、というアイデアは非科学的であるが、このような非科学的アイデアで研究を進めた時だけ、実用性のある高靭性の半導体フィルムを製造可能である。非科学的ではあるが、技術として成立し、それを応用した商品は18年経ってもトラブル無しで稼働している。これも実話であるが、次回は優秀な博士2名とその他高偏差値大学のスタッフ数名が1年かけて科学的フィルターによりデータ収集し、否定証明を展開した40年近く前の実話を紹介する。科学というフィルターが技術の可能性を狭めていることに気がつかない人は多い。科学は研究開発に大切な哲学であるが、それが技術の可能性を狭めるように活用してはいけない。トランスサイエンスの時代に科学ハラスメントに至っては言語道断である。
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Pythonのスキルは、それを身に着けていることが常識となった。マイクロソフトが今年8月にエクセルに実装すると発表したことにもそれが示されている。
恐らくデータサイエンスの知識も来年には常識となっているのかもしれない。マテリアルズインフォマティクスがこの10年騒がれたが、たいして難しい方法ではない。
早い話が、データ中心に相関を見出し、試行錯誤で問題解決しましょ、という学問である。データ解析の方法には2通りの流儀がある。
一つは、昔ながらの科学の方法であり、もう一つは第三次AIブームで騒がれているマテリアルズインフォマティクス(MI)である。
MIは、何も新しい方法ではなく50年近く前から企業では新QC7つ道具の一つとして実行されてきた。この10年の新しい点は、AIを使う点であり、大した話ではない。
来年3月日本化学会春季年会では、当方が43年前にデータ解析した方法と最新のPythonプログラミングによる解析方法との比較を行い、43年前のアルゴリズムが優れていた、という結果を報告する。
当方は、40年近く前には、CでSiCスタッキングシミュレーターを開発している。そしてSiCのポリタイプの謎をそのプログラムで一部解明した。今ならば、マテリアルズインフォマティクスとして発表されていただろう。
また、今Pythonを使ったなら、多数のモジュールのおかげで、プログラミングも容易だったと思われる。昔は狭いメモリー空間ゆえにガベージコレクションのルーチンまで作らなければならなかった。
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「Pythonで理解するタグチメソッド」の無料WEBセミナーを12月に行います。参加ご希望の方はお問い合わせください。
なお、当日使用するPythonのプログラム及びテキストをご希望の方は10000円で配布しております。本セミナーは12月中複数開講予定でおりますので、今週お申し込みの場合には、15日以降で12月20日(混練無料Webセミナー)を除くご希望の日を2-3日指定してください。
受講生の希望日を優先して設定する予定でおります。なお、Pythonの環境設定の資料を予習編として配布しますので、予習編の資料につきましてお問い合わせください。
テキストご購入の方には予習編を無償で配布しています。
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巨額の年俸を蹴って、自ら自由契約を申し出た巨人の中田選手の行き先が決まった。かねてより噂のあった中日である。今回中日は攻撃陣の大幅補強を行っているが、その中心となるべきバッターとして、問題児の中田選手を採用している。
外人で補強しなかったのは、時代の流れだろう。当たりはずれのあるメジャーリーグのバッターよりも素行に問題があっても日本人の方が期待できる。
今仮に、明らかなボール以外で常にバットを振り回したとすると、ヒットかファールか空振りの3事象が考えられ、ヒットになる確率は1/3である。
これはバッティングセンターでバットを振り回してみればわかる。当方は今でも7割近くは前にボールを何とか飛ばすことができる。野球選手ならすべて前に飛ばすことができるはずだ。
ところが3割バッターが難しいのは、そこに他の要因が働くからである。例えば、前にうまくボールをはじき返しても、ノーバウンドで捕球されたならヒットにならない。
くだらない話で申し訳ないが、中田選手がバッターとして才能があることは確かであり、来年の中日はAクラス入りを期待できるかもしれない。
しかし、チームワークはどうなるか。今年の阪神の優勝は一人のずば抜けた才能よりもチームワークの重要性を示したように思っている。来年の中日の成績で人材のチームに及ぼす影響を検証することができる。中田選手は来年も3割は打てると思っている。
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高分子の破壊と劣化のWEBセミナーを来年1月12日に開催予定で準備をしております。このセミナーは、20年ほど講師として招聘され講演してきました。
10年ほど前から一人で一日講演しているのですが、毎回講演内容の見直しを行っている、当方にとりまして効率の悪いセミナーです。理由は、1日でも時間が足りないためです。
先月大阪でこのセミナー講師を務めさせていただいて、はじめて全員からわかりやすかった、というご評価を頂きました。内容を1日におさまるように10年検討してきて初めてのことです。
今後この内容を基準にして、できるだけ多くの情報を詰め込めるように検討してみようと思っています。この分野は形式知が体系化されていないのでわかりやすく説明するのは難しい。
全員からわかりやすかった、というご評価を頂けたのは10年間の努力が実った結果と捉えています。
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1.高分子のツボ
(1)高分子とは
(2)高分子材料の評価技術
(3)高分子材料の設計手法
2.材料設計とプロセシング概論
(1)ゴムの配合設計とプロセス(樹脂補強ゴムを事例に)
(2)リアクティブブレンド(難燃性ポリウレタンを事例に)
(3)強相関ソフトマテリアルの手法(機能性樹脂の配合設計とプロセス)
(4)プロセシングも含めた材料設計技術について(まとめ)
3.素材から部材のパラダイムシフトと材料設計技術の変化
4.高分子材料の混練プロセス
(1)分配混合と分散混合
(2)剪断流動と伸長流動
(3)高分子材料の混練装置
(4)二軸混練機を用いた混練プロセス
(5)カオス混合装置
5.マテリアルズインフォマティクス
混練技術が成形体物性に及ぼす影響やデータサイエンスで問題解決した事例を解説予定。廃材利用におけるコンパウンドメーカーと組み立てメーカーのすり合わせにおけるトラブルなども事例に。
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弊社の問題解決法は、1980年代から欧米で話題になり始めたトランスサイエンスの状況を鑑み、科学と技術を中心に芸術も視野に入れた手法である。
問題の捉え方から、その解決手法まで、20世紀に流行した科学をベースにしたTRIZやUSITとは大きく異なる。これらの手法では当たり前の結果しか導けないが、弊社の手法では、非科学的なソリューションが生まれる特徴がある。
非科学的だからだめだ、というのは20世紀型判断であるが、非科学的な解決案で新しい科学が生まれた体験を基に問題解決法としてまとめたので、新しい科学を生み出す手法といってもよい。
この1年STEAM教育が叫ばれ、科学と技術、芸術に工学と数学を加えて横断的に教育する手法が文部科学省を中心に推進されている。弊社のホームページを見ていただけば納得していただけるが、弊社が元祖である。
また、他の「未来科学研究所」のホームページも見ていただきたい。このホームページはこの10年近く更新していないが、毎日訪問者がある珍しいページである。弊社の問題解決法の精神を伝えるために開設している。
さて、弊社の問題解決法で生まれた非科学的技術の実績を例示すると、ゴム会社を退職する原因となった電気粘性流体の耐久劣化を解決した技術、高純度SiC製造技術、ホウ酸エステル変性ポリウレタン発泡体、酸化第二スズゾルを用いた帯電防止技術、有機無機複合ラテックス、カオス混合技術などである。
12月に予定している混練技術の無料セミナーでも弊社の問題解決法で生まれたカオス混合技術を解説するのでご興味のあるかたは、午後だけでも参加いただきたい。
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PETのポリマーアロイであるPC/PETは、30年以上前に開発された技術でフィルムだけでなく射出成形体としても活用されてきた。それゆえPETも射出成形可能と誤解されている人がいる。
しかし、PC/ABSでは任意の比率で製造されたポリマーアロイが活用されているのに対し、PC/PETでは、PETが30wt%未満となる配合組成のポリマーアロイだけが射出成形用樹脂として使用されてきた。
これは、PETの比率が高くなり樹脂のマトリックスとして機能した時に射出成形性が悪化するためである。それでは、PETが60wt%以上の樹脂で射出成形を可能とするコンパウンドを設計してみようと実験を行ったところ、結構難しかった。
PETにSP値を考慮した樹脂を選んでみたり、コンパチビライザーを添加してみたりしても簡単に強度の高い樹脂を設計できなかった。
そこで、直交表を用いたデータ駆動の実験を行ったところ、PETを80wt%含むコンパウンドでも良好な射出成形体が得られる配合を見出すことができた。
この時用いた手法について混練のセミナーで公開しております。来月の無料セミナーでは、この樹脂についてこの10年の間に研究した面白いデータを初公開したいと思っています。
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今年度開催されました混練技術のセミナーの内容を一部見直し、来月12月20日10:00-16:00の予定で無料WEBセミナーを開催いたします。内容につきましては今週公開予定にしております。
昨年の法律の施行で再生材の活用が活発になり、高分子材料のプロセシングに興味が集まっております。混練プロセスが成形体に及ぼす影響について新たに加える予定でおります。
なお、テキストとセミナーの中で紹介しましたPythonプログラムにつきましては、有償(10000円)となります。テキストは電子ブック形式で提供いたします。
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ペットボトルに使用されているPETは、射出成形に適さない樹脂である。そのためフィルム成形やブロー成形用樹脂として使われている。
PETで射出成形を試みると、良好な成形体が得られない。表面の転写性が悪くガタガタになっていたり、金型の端まで樹脂が回っていなかったりと不具合が多い。
それだけではない。成形体の均一性が悪く、ふにゃふにゃな成形体となったりする。これは、290℃からゆっくりと温度を下げていったときの温度変化に対して、粘度が急激に変化するためである。
この急激な粘度変化は、結晶化が進行するためであるが、粘度上昇が起きる前は、シャバシャバであり、流動性が良好である。この特性は細かいところまで樹脂が流れ精密成型に向く。
PETボトルの回収材をそのまま、飲料用のPETボトルに用いる取り組みがなされ、一部の企業でケミカルリサイクルではない回収材を用いたPETボトルを飲料用に用いている。
しかし、できれば飲料用ボトルはバージン材で作っていただきたい。これは気分の問題であり、贅沢な望みかもしれないが。そこで、回収材の用途を増やすために、80%がPETで残り20%が、他の廃材高分子で構成された射出成形用の樹脂開発を15年ほど前に行っている。
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