写真があれば写実的な絵画は存在意味が無くなるのでは、と言っていた人がいた。それなりに理解できる意見ではある。
しかし、写真機が登場しても未だに写実的な絵を描こうとする人がいる。例えば富士山の絵にしても、天気の良い日にシャッター押せば、日曜画家の絵よりもきれいな富士山をプリントすることができる。
このように考えている人は、絵を描いている人の気持ちを理解していない。当方も十分に理解できているわけではないが、絵を描くことと写真を撮ることには、全く異なる目標があると思っている。
例え写実的な絵画は、その写実性において写真には勝てない、という人がいたとしても、別の意味で写真よりも写実的な絵画が存在する。
これは、科学と技術に少し似ているところがある。技術は科学登場以前から存在し、その技術を考えるための思考法も存在した。ヒューリスティックな解を得ようとする問題解決法は、まさしくそのような技術的思考法である。
科学では厳密なアルゴリズムで問題解決を行う。その結果、曖昧性は排除され、時間をかけながら唯一の解を求めることになる。
絵画はいくらオブジェクトの正確な写実性をそこに求めても写真には負けるだろうし、そこを追求しても絵画の意味は無い。
絵画には同一オブジェクトを描いたとしてもそこに作者の思いが写真よりも自然に反映される。絵を描くことはオブジェクトと対峙している自分の気持ちを映し出すことでもある。
写真も同様の目的があるが、写真では絵画に比較し、オブジェクトの写実性が高いゆえに多くの制約が生まれる。ゆえに写実性という観点で、写真と絵画に優劣をつけるときには、注意する必要がある。
オブジェクトを表現するという視点で、絵画は必ずしも写真より写実性が劣っているというわけではない。
カテゴリー : 一般
pagetop
ベルト生産を終了し、押出機内に残っていたコンパウンドを清掃するために、クリーニング樹脂で押し出すのだが、早く作業を終えるために押出機のスクリュー回転速度を上げたのだ。
その結果、金型内では樹脂流動の剪断速度が上がる。PPSと4,6ナイロンのコンパウンドについて剪断速度が上がると4,6ナイロンがPPSに相溶し、透明になったという研究論文が東工大から発表されていた。
この研究論文によれば、フローリー・ハギンズ理論によるχが0より大きいPPSと4,6ナイロンが剪断流動状態でその速度が速い時には相溶することを意味している。すなわち、フローリー・ハギンズ理論では、χ>0では相溶しない、とされるが、特殊な条件下では、相溶が起きることが示された。
東工大と同様の視点、あるいはコンセプトを当方は、ポリオレフィンとポリスチレンの組み合わせで確認していた。この組み合わせもχ>0であるにもかかわらず、ある条件で相溶し、透明になるのだ。
某会社の研究者に当方のコンセプトを信頼していただき、様々なポリスチレンをそこから供給していただいた。
データ駆動型開発を進め16番目に提供していただいたポリスチレンで透明になった時には、まっ黄色な高純度SiCが得られた時ほどではないが、うれしかった。
これらの実験データから、低周波数の雑音を発生したベルトについて分析し、PPSと6ナイロンが相溶しているかどうか確認することがアクションとして重要となる。
そのアクションで相溶していることが確認されたら、押出成形プロセスを使って、PPSと6ナイロンが相溶したコンパウンドを製造し、それでベルトを生産したら面白いことが起きるかもしれない。
ただし、これをすぐに実行してはいけない。面白いことが起きなかった場合の対策が必要で、その対策のシナリオが確実に遂行できるように根回しが次のアクションとして必要となる。
そのために、面白いことが起きた場合と起きなかった場合を包含可能なコンセプトを練り上げる必要があった。
本来なら、研究開発期間を半年程度とり、人材を投入して十分なデータを集め研究として完成させてからテーマとして行うべきところだが、製品化までに残された時間がたった半年である。ヒューリスティックな解によるコンセプトを練り上げない限り、間に合わない。どうするか。
カテゴリー : 高分子
pagetop
国民民主党が党首の分党構想発表で揺れている。発端は立憲民主党が仕掛けた国民民主党との合流案だが、それがうまくゆかず、合流後の党名については、合流後に決めると立憲民主側が譲歩したところで玉木党首は覚悟を決めたのだろう。
おそらく国民民主党の中には、立憲民主党に合流したいという人が相当数いるのだろう。そこを当て込んでの党名にこだわらない戦術が出てきたのかもしれない。
立憲民主党にしても国民民主党にしても今中国で起きているコロナ禍以外の変化、それを受けた世界の動きを十分に理解されていないのではないか。少なくともそれらを理解しているように感じさせないのは、何故か。
さらには、現在の日本人が目指している、あるいは望んでいる日本の政治を具現化できるだけの政治家としての能力を備えた人材が立憲民主党にはいないのではないか(申し訳ないが、政治家としての能力を採点してみると国民民主党のほうが平均偏差値が高いように思われる。但しこれは表に現れた政治家個人の発言とか行動から当方が採点した結果で、国民民主党が地味な政治家が多いためかもしれないので、間違っていたらお許し願いたい。両党とも大した人材がいないとも思っていない。とにかくこの合流騒動で、政治家の能力が試される事態になった。国民は、その行方を注視している。)。
今求められている政党の機能はイデオロギー集団ではなく、政治機能組織集団である。イデオロギーで統一された共産党が、存続すれど永遠に政権が取れないと国民に思わせるのは、その人材の薄さである。すなわち、イデオロギーで統一化しようとしても国民の多くの支持は得られず、一国の政治を担える人材を揃えるように政党は活動しなければならない。
また、政治家は、一国の政治を担うための知識と誠実さを身に着けた人物が投票で選ばれるべき時代である。不倫に対して国民が厳しい判断を下すのは、誠実さを求めるためである。
文春砲がさく裂し不倫騒動で騒がれた山尾議員は、文春砲の威力が小さかったのか、年齢差から有権者がそれを信じなかったのか不明だが、不誠実にもかかわらず、政治家に求められる知識についてそのレベルの高さと活動実績から選ばれ、禊を行った。
その後、立憲民主党に愛想をつかして、国民民主党に移っている。この異動は、党の雰囲気を考慮すると理解できる。
田中角栄氏がいるので、この発言も正しいと言えないが、安倍政権が誕生した時に、亀井静香氏は「東大卒以外が首相になる時代」と、政治家に求められる資質の変化を表現している。
自民党は、すでにイデオロギー集団ではなく政治機能集団へと生まれ変わっている。野党にも自民党に対抗しうる政治機能集団の登場を渇望するのだが、以前民主党時代にshadow内閣を発表し、失敗したような愚行は辞めた方が良い。
およそ政治のわかっていない人でそれを構成されても国民は投票しないのである。情報化時代となり、国民は政治家一人一人の資質を知ろうと思えばその情報を入手できる時代になった。本物の政治という実務を理解した野党勢力が登場することを渇望する。
カテゴリー : 一般
pagetop
妄想は、時としてヒューリスティックな問題解決法につながる。PPSと6ナイロン、カーボンの3成分からなるコンパウンドが、押出成形でベルトに変わる。
その瞬間、PPSは結晶化してベルトは金属音を放つ。フローリー・ハギンズ理論の正しさを示すかのように6ナイロンがPPSに相溶せず、溶融状態のPPS分子が折れ曲がり、ラメラを形成後それが集まり球晶となる。
その結果、6ナイロンは島相として、PPSの海に分散する。これは妄想ではなく高分子化学の教科書に書かれていても良い話である。
島状に分散した6ナイロンもパーコレーション転移を起こせば、カーボンもパーコレーション転移を生じる。だから、カーボンは6ナイロンの分散の影響を受け様々な分散状態となる。この辺りから妄想の領域に入ってゆく。
ベルトの押出金型には必ず中子が必要で、中子をどのように固定するのかで金型形状が異なるが、固定部分でウェルドが発生する問題がある。
固定部分があっても流動状態が均一であれば大きな問題にならないが、6ナイロンの油滴やカーボン粒子が流動を不均一にする。その結果ウェルド部分は他と異なるパーコレーション転移を起こす。
妄想が少しずつ膨らんで行くが、もし6ナイロンがPPSに相溶して流れていたらどうなるか、とか、相溶しない組み合わせだから、金型を出てサイジングダイに接触した瞬間にスピノーダル分解を起こす、とか、スピノーダル分解して6ナイロンが析出するときに6ナイロンと相性の良いカーボンは6ナイロン相の島に集まってくるとか、までたどり着くと、カーボンの分散状態を制御してベルト抵抗を均一に安定化するヒントも見えてくる。
ものすごい妄想であるが、白日夢を見ているかのようにボーとしていた瞬間、低周波数音が聞こえてきたのである。
6ナイロンがPPSに相溶したままならば、PPSは結晶化せず、ベルトは金属音とならない。また、相溶という現象は、非晶質相だけで起きる現象、というのは科学の世界の話である。
低周波数の音を発生しているベルトでは、PPSに6ナイロンが相溶するという信じられない現象が起きているかもしれない、と思っても、妄想は妄想として扱い、現実に取るべきアクションを冷静に考えなければいけない。
カテゴリー : 高分子
pagetop
研究開発における実験以外でも新たなコンセプトを考案できる瞬間は多い。これも俳句と同じである。
「古池や、買わず飛び込む、松坂屋」とは、古池君が松坂屋デパートへ入った瞬間に詠んだ句であるが、その後松坂屋美人店員と交際が始まったならば、単なるパクリの句ではない。
このような句を詠める能力と行動力があれば、りっぱな研究開発リーダーになれる。あるいはイノベーションを起こせる企画立案さえも可能だ。
カオス混合装置は、古池君と同じような心境で生み出されている。豊川へ単身赴任前に何か面白い情報はないか、一日PPS中間転写ベルトの生産工場に飛び込んでみた。
現場の改善を目的にしていないので、古池君と同じスケベ根性である。眺めていたのは、PPS材料だけであり、女性店員だけを眺めていた古池君と大差ない行動である。
納入されたPPSコンパウンドは、袋詰め状態もあれば、フィーダーに入っている状態などさまざまである。
一軸押出機の中に入れば見えなくなるが、制御盤には押出機の中で樹脂がどのようになっているのか、妄想は可能である。
また、頭に描いているのが妄想であることも十分に自覚しなければいけない。現実と交錯させるとよからぬことになる。妄想は妄想のまま妄想として楽しむストイックな姿勢はどのような場合でも重要である。
詳細は省くが、工場の中には、このような材料変化の妄想を描きたてる情報があふれている。湧き出た妄想の中で金属音から低周波数音に変化した瞬間は、絶世の美女と心が通った瞬間と等価であった。
しかし、これは妄想であることを忘れてはいけない。現実であることを確認するために、低周波数音に変わったサンプルを東京へ持ち帰った。
カテゴリー : 未分類
pagetop
温故知新の理解能力と情報があれば、あとは汗を流すだけで新しいコンセプトを考案することは誰でもできるのだが、「汗を流す」ところが難しいのだろう。
汗を流せば塩分が出てゆくので、塩分の補給が重要となってくる。この時知識の補給ができる人とできない人がいる。
汗を流しているときに、多くの情報と接することになる。情報をただ眺めているだけではダメである。情報をまず分類することが必要になってくる。
既知の情報と実験により新たに生まれた情報とに分類する。この段階で知識が身に着くのだが、実験をどのように企画したのか、その実験をどのように観察したのか、その実験から得られたデータをどのように整理したのかにより、得られる知識の量が異なる。
せっかく英知を集めて企画された実験を行っても、情報を集めるだけで終わる人は多いが、そのことに気がついていない。もったいないことである。
実験の報告を聞くだけの立場になった時に、情報を集めるだけで終わる人の特徴を理解できた。今発達障害が話題になっているが、かつてアスペルガー症候群と分類されたような人は残念ながら実験で知識を身に着けることができない。
このような人には的確な指示を出さないと、実験結果の報告が単なる情報だけになっていたり、偏った情報で整理されていたりする。注意しなければいけないのは後者で、時として天才的な偏った情報整理がなされることがある。
それが正しい時には研究開発にイノベーションを引き起こすが、単なる偏見の時には研究開発を誤った方向に導く。
タグチメソッドはこのような問題を防いでくれるので助かるが、実験結果の報告が単なる情報だけになっている場合に、管理者が実験から知識獲得経験がない場合には、研究開発が無限ループに陥ったり、二律背反の壁に突き当たってもそれを超える実験を指示できなかったりする。
温故知新ができるかどうかは、研究開発の管理者あるいは担当者の自己評価に用いることが可能である。
松尾芭蕉は不易流行という良い言葉も残している。これは、どのような時代にも通用する古典的な考え方と時代の流れにより生まれる新しい価値観とを結びつけることにより、良い俳句を生み出せる、という意味だが、コンセプトを生み出すときにも言える。
実は、科学的に企画された実験において実験の場が異なれば、科学で解明されていない現象が現れることがある。ここでその現象に気がつくかどうかは、良い俳句を生み出すことと通じるところがある。
不易流行の理解ができれば、発達障害ではない普通の人であり、実験もうまくできるようになり、そこから新しい知識をどんどん獲得できるようになる。ただし、ほんの少しのコツが必要で、悩まれている方は弊社へご相談ください。
松尾芭蕉は、だれでもよい俳句を詠むことができると言っている。ただし温故知新や不易流行を正しく理解しなければいけない。俳句を詠むこととコンセプトを考案することは通じるものがある。
カテゴリー : 一般
pagetop
今さら人間が社会的動物であることを説明する必要はないだろう。社会的動物ゆえに何らかの組織を形成したりするが、ドラッカーは組織の機能に着眼し、組織とは平凡な人間誰もに非凡な成果を出せるようにするのが良い組織だと説明している。
すなわち、企業の組織に限らず政府やNPO、さらには家庭(家庭の無い家族の時代とはなったが)の組織をどのように形成するのかにより、その機能の質は変わる。
コンセプトの重要性に開眼した体験を書いているが、当方がそこにたどり着けたのは組織の成果とも言える。また、この組織ではユニークな「燃焼時にガラスを生成して難燃化する手法」や「世界初の台所用フェノール樹脂断熱天井材」を生み出している。
当時のゴム会社の研究所組織は、アカデミア同様の基礎研究を推進するのに適した体制であり、その風土もゴム会社全体の風土と異なり、アカデミア顔負けの「科学こそ命」の組織風土となっていた。
1970年前後の研究所ブームで日本企業の多くは基礎研究所組織を内部に作っている 。しかし、時代の流れとともに企業内の基礎研究所の運営について疑問を持つ企業も出てきた。
高校生の時に読んだドラッカー著「断絶の時代」には、企業における知識労働者の台頭による社会との断絶や、間違った問題を解いていることに気がつかず正しい答えを出す頭の良い人が成果を出せない問題が指摘されていた。
ちなみに、間違った問題の正しい答えほど扱いが難しい。ゆえに経営者は答えを管理するよりも、正しい問題が設定されているのかを管理しなければいけないが、とかくアカデミア的風土のマネジメントでは、答えの正しさや、そこに至るアルゴリズムを管理したりする。この問題は後日事例を基にここに書く。
余談だが、ドラッカーといえば経済活動の研究者として知られているが、問題解決法の専門家でもある。早くからヒューリスティックな問題解決法を提案している。
ところが、ヒューリスティックな問題解決法は、アカデミア顔負けの科学重視の活動をしていたゴム会社の研究所では、水と油のような関係になりがちである。
基礎研究の組織であっても成果を上げるためには、ヒューリスティックな問題解決法は重要であるにもかかわらず、その手法が科学に要求される緻密な論理を満たしていないという理由で、敬遠される。
しかし、ノーベル賞を受賞したヤマナカファクターもその解決法で見つかっている、といえば、緻密な論理よりも社会に役立つ成果こそ重要であることを理解できると思う。必要があれば、成果について、厳密な科学的アルゴリズムで検証すればよい。
カテゴリー : 一般
pagetop
始末書をまとめているときに、ホウ酸エステルを合成し、それをポリウレタンの変性材として使用する実験を行ってみた。
ホウ酸エステルを持ち出したのは「温故知新」という行動である。始末書でごたごたしているときに新しいアイデアを考えているゆとりなど無い。
当時は高分子技術において難燃化技術の関心が高まっていた時代であり、古代の難燃化技術について書かれたコラム記事が研究室の隅に放置されていた。
この状態は誰かがそれをすでに検討してダメだったことを示している。すぐに検討された人に尋ねたら、ホウ素系の化合物には高い難燃効果は無いという実験結果だったらしい。
幸運だった。ダメな実験結果から予見される、ダメな実験をやらなくても済んだからである。「温故知新」とは、過去を振り返りそのまま実行することではなく、「新しいコンセプトの下で過去の知見を見直すこと」なのだ。
古きをたずねて、古い技術をそのまま見ていても、古いだけである。新しきを知るためには、過去と異なる視点を持たなければならない。過去と異なる視点とは新しいコンセプトで見つめなおすことである。
すぐにホウ酸エステルが過去に難燃剤として検討されていないことに気がついた。ホウ酸エステルに着眼したのは、無機アルコキシドからガラスを合成する研究が当時の花形テーマだったからで、当方の独創というよりも、情報として周囲にあふれていたからである。
当時の先端の情報をもとに古い現象を見なおした。この段階で、まだ、新しいコンセプトは生まれていない。
自己評価するときに、無能かどうかという能力の捉え方の方が努力目標を設定した時に実現可能性が高くなる、と思っている。
とかく有能であらんとすると高い目標設定をしがちであるが、無能ではないかと自己を見つめるときに、無能にならないように努力する行動を起こすことができる。
ホウ酸エステルについて難燃剤としての検討が過去にされていなかったので、複雑に考えることなく、まずそれを合成することにした。ここで大学4年の時に有機金属合成化学の研究室で学んだ経験が生きた。
配位子という視点で、エステル化反応にジエタノールアミンを用いたのである。未経験者ならばホウ酸エステルの合成にグリセリンとかを選んでエステル化の研究として行うかもしれない。
有機金属化学を1年間学んだ経験があり、当時の研究室の諸先輩の顔を思い出し、無能と笑われないために、迷わずジエタノールアミンとホウ酸の組み合わせを実験している。
そして合成された化合物とリン酸エステルとを組み合わせて加熱する実験を行い、ボロンホスフェートを簡単に合成できることを見出している。
この実験結果は、ホウ酸エステルとリン酸エステルをポリウレタンに添加しておけば、燃焼時の熱で容易に反応してボロンホスフェートができることを示している。
あとはボロンホスフェートの難燃効果を調べれば、新しい難燃化システムの完成である。
たった2日間の実験で、「燃焼時の熱でガラスを生成し、高分子を難燃化する」というコンセプトが生まれた。
新しいコンセプトは、温故知新と学生時代に厳しいがレベルの高い研究室で学んだ知的財産と、実験という体力勝負をいとわない愚直さで生み出された。
学会で発表した時の懇親会で多くの先生が褒めてくださったが、能力というよりも始末書騒動から始まった業務に対する姿勢の変化が大きいと思った。
新しい発明を行うには、コンセプトが重要となるが、汗を流すことをいとわない心がけで、コンセプトを見出したならば、すぐにそれを具体化する行動を起こす必要がある。
カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子
pagetop
弊社のWEBセミナー用ソフトウェアーのテストのため今週7日金曜日に問題解決法に関する無料セミナーを予定しています。聴講ご希望の方は、申し込んでいただきたく。テキスト代は5000円となりますが、テキストは無くても大丈夫です。
事例として材料開発の課題解決体験談を使いますが、専門外でも役立つ内容です。日頃の技術開発で、どのようにアイデアを出すのか、という内容です。
午前中は、主としてアイデア創出に重点を置きますが、午後は企画の方法に重点を置いて問題解決法を解説します。午後は午前の続きとして講義いたします。
- 午前の部
9:30~11:30
- 午後の部
13:00~14:30
今回のセミナー参加者募集は終了致しました。
カテゴリー : 一般
pagetop
研究開発におけるコンセプトの重要性について、始末書でもめているときに気がついた。ところが、マネージャーが無責任であることはマネジメントにおいて重要な要素の一つかもしれない、と一瞬誤解したことがきっかけである。
この誤解は、有能で責任感のあるマネージャーがそのようにふるまったときに部下のマネジメントとして成功するかもしれないが、本当に無責任な上司のもとでは、その後の災難も予見して部下は行動しなければいけない、という過剰な行動原理まで身に着けることになる。
この体験は、退職前の中間転写ベルトの開発にいたるまで役立っているが、担当者の立場では残酷な結果を生み出す恐れもあり、好ましくない行動原理と思っている。
企業において、多くの場合に部下は上司を選べないので、健全な組織運営のためには、部下の立場でもリスクマネジメントが重要となってくる。
それは、上司の顔色を窺ったり、忖度という気の使い方ではなく、部下と上司の関係においてどのような役割を担当者は果たすべきなのかという発想に基づくものであり、その推進過程では、自分が社長になったつもりでリスクを予見し、上司に「謙虚にかつ果敢に」提案を行う行動が重要となる。
ちなみにドラッカーが言うところのマネジメントの定義とは、人をなして成果を出すことであり、幸運にも頼りないマネージャーを前にした場合にスタッフはこの組織のリスク回避のためにマネージャーを助け自分が頑張らなくては、とモラールアップにつなげなければいけない。
健全なこのような発想ができる様になれば、企業において発生する悲劇を少なくできると思っている。
注意しなければいけないのは、本当に頼りない人を前にしたときに、その人に代わって自分が組織のマネジメントまでも行うつもり(あくまでも「つもり」である。実際のマネジメントは上司を通じて実現する)で仕事を請け負わないと、成果に関わらず、さらなる倍返しの災難が襲う。
新入社員ではあったが、工場試作を成功させても始末書を命じられたので、行動の反省として高校時代から読み続けてきたドラッカーの名言の数々を思い出し、コンセプトの明確化の重要性にたどり着いた。
すなわち、始末書を書く事態になっているのは、研究の目的と意味が十分に周囲へ伝わらず、経済性だけの議論になったためであり、問題となったホスファゼンの研究が、研究所として事業を見据えた明確なコンセプトに基づくもので、この試作の成功により、新たな基盤技術が作られることを始末書に書く必要がある、と気がついたのだ。
今思い出してみても、この始末書騒動は自己の成長のために大変役立った。研究として成功したにもかかわらず、新入社員2年間は下がらない規程になっていた給与が100円下がっていたりしてサラリーマンの苦い思い出となっているが、企業の研究開発というものを社会人1年目で真剣に考えるための貴重なきっかけとなった。
また、この時の経験から、無機材研留学時、正解を書いたにもかかわらず昇進試験に落ちた時、迷わず高純度SiCの合成実験を是が非でも成功させる決断をしている。
体力という自己の強みを生かした過重労働により5日間という短期間で実験を成功させて、給与明細書の数値が大きく変化しただけでなく、社長から2億4千万円の先行投資まで得ている。
この高純度SiCの発明まで当時の業務スタイルにおいて共通している上位のコンセプトは、無機高分子を用いたプロセシングの工夫であり、このコンセプトは学位論文の骨子となった。始末書騒動は、30年ゴム会社で続いた異色の事業ともつながっていた。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
pagetop