当時の燃焼試験機としては最先端の科学の塊であったが、発泡体の測定ができない木偶の坊だった。そこで発泡体を熱プレスし、密度を上げて測定サンプルとしてこの試験機でLOIを求めたところ、自動でLOIを測定できた。
さっそくこのことを上司に報告したところ、科学的に意味がない、という。発泡体と熱プレスでできたサンプルとは等価ではないことがその理由である。
しかし、熱プレス品で難燃性レベルを上げる研究ができるのでは、と提案してみても非科学的方法だという。ダンフレームBの熱プレス品がLOIで19という値が得られており、これを21以上になるように改良しなければ大問題となる、と主張しても、非科学的データなので、と片付けられた。
そこで、全自動酸素指数測定装置の自動化用装備をすべて外し、マニュアル測定ができるようにした。指導社員がびっくりして壊しているのか、と尋ねてきたので、発泡体でも使えるようにしているのです、と答えている。
全自動酸素指数測定装置には燃焼挙動を正確に把握するために、測定時に黒いケースで覆う仕掛けとなっており、このケースをセットしないとすべてが機能しないようになっていた。
それで、各種センサーを外すとともに、この黒いケースもばらすことになって、大掛かりな作業となり、指導社員はびっくりしたのである。
自動化測定に必要な装備をすべて外し、マニュアル測定を行ったところ、発泡体でもLOIを測定できるようになったのだが、少しコツが必要だった。それは最初に粗い方法で概略のLOIを求めておいて、2回目に精度の高いLOIを測定する、という手順がコツだった。
これをフローチャートで表現し、酸素指数測定装置のマニュアルとして装置に貼り付けた。そして、発泡体と熱プレス品とのLOI比較データを求めたところ、ほぼ一致した。
上司に報告したところ、測定しているところを見せてくれ、と言われたので、披露したところ、フローチャートのマニュアルを見つけ、改善提案として社内のQC大会で発表しようと言われた。
そして、発表し見事改善提案3級を射止め、報奨金を頂いたのだが、ある日上司から、あれはすべてマニュアルで測ったのか、と信じられない質問を受けた。ダンフレームBも含め、測定を数回見ていただいていた。
だから、十分な理解が得られていると思っていたら、そうではなかった。上司とのコミュニケーションは、幼稚園生にも分かるように説明するのがコツ、と言われていたが、全自動酸素指数測定装置を発明された方なので、測定手順と実演の披露で理解されていると思っていた。
それよりも、黒いケースも含め、各種実装されていた部品が段ボール箱に入っているのを見ていたはずで、マニュアルで測定していることを理解されていると思っていた。
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酸素指数(LOI)測定法は、すでにJIS化されているが、50年近く前は登場したばかりで研究段階だった。学生時代に開発したホスフォリルトリアミドのホルマリン付加体について難燃剤としての機能を確認するためにLOIを測定し論文を書いている。
名古屋大学と同じ東山地区にある椙山女子大被服科でLOI測定を行っている。そこの美人教官のご指導を受けながら測定したが、サンプルの状態に応じて工夫が必要な装置だった。
そのためJISではサンプル形状が定められているが、当時は規格が無く測定結果にサンプルの状態を付記する習わしだった。フィルムや発泡体は燃焼速度が速いので、測定テクニックも要求された。
このような経験があったので、発泡体を研究していた研究室で全自動酸素指数測定装置を見つけたときに腰を抜かすぐらいに驚いた。さすが、最先端企業だと感心したのだが、ホコリをかぶっている理由を聞いてがっかりした。
科学的評価装置を目指して開発したのだが、発泡体について測定不能のため使い道がなくなったそうだ。使えない装置だが、高価なので簿価が下がったら廃棄する予定であり、自由に使ってよいと言われた。
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入社し9か月後に配属された研究グループは、新製品を科学的研究成果として世の中に送り出したばかりで活性が高いだけでなく、研究設備も科学の最先端設備が揃っていた。
極限酸素指数法(LOI)がJIS化される前の時代に開発された、「全自動酸素指数測定器」という科学の成果がホコリをかぶったまま放置されていた。
科学の誇り、ではなく、使い物にならなかったのでホコリをかぶっていたのである。LOIは別名「ろうそく試験」とも当時言われていて、空気中における燃えやすさを指標にしたものである。
極限酸素指数値とは、サンプルが継続燃焼できる最低限の酸素濃度を指数化したものである。試験法は、酸素と窒素の混合ガスを一定条件で流せるように工夫したガラスの筒の中でサンプルに着火し、継続燃焼できるかどうか、を観察するだけの分かり易く、科学的にも再現しやすい燃焼試験である。
また、実火災が空気中で起きている点を考慮すると、LOIが21(空気の酸素濃度は約21%)以上であれば、空気中で燃えにくい、という感覚とも適合し、燃焼試験の本命と言われた時代もあった。
これを科学的な測定装置とするために機械で自動化し、実験者によるばらつきを無くすように改良した装置である。マイコンが登場したばかりであったが、まだ高価だったので、アナログ回路ですべて構成された自動化装置だった。
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トランスサイエンスという言葉は50年ほど前にアメリカで使われ始めた言葉だが、日本では科学論がブームでこの言葉は無視された。というよりも、似非科学者が多数誤った科学論を展開し、経営者がそれを信じていた、と言った方が正しいかもしれない。
研究所ブームから10年経過し、企業の研究所がそれなりの体制ができ始めた頃であり、科学、科学と夢中だったのだろう。当方はたまたま研究所に配属されて、トランスサイエンステーマ、高分子の難燃化技術を担当したので、サイエンスに掲載された論文を深刻に考えることになった。
配属された部署では、ダンフレームBという商品が大成功し、大変活性が高い状態だった。そこへ配属されたばかりの当方は水をかけるようなデータを出してしまった。すなわち、難燃性と言われたダンフレームBは、空気中でよく燃える、という実験結果を出したのである。
当時のリーダーは、すぐにそのデータを否定し、当方は科学を知らない人間と叱責した。日本ではトップの国立大学の先生が優れたアイデア技術だとダンフレームBをほめちぎっていたそうだ。
確かに、厳しい建築基準であるJIS難燃2級試験に世界で初めて合格した唯一の発泡樹脂だったので、「規格に合格した」優れた技術と言って良いだろう。
しかし、難燃化規格が欠陥規格だった場合には、事情が変わる。その後この規格は新たな簡易耐火試験に変更されるのだが、当時誰も規格の問題を疑わなかった。
その後、ダンフレームBを採用した建築で火災が発生して問題となり、初めて当方の指摘の正しさが証明されるのだが、当方を叱責したリーダーは、何故かダンフレームBが空気中で燃えやすい、というデータを忘れて、建築基準の見直しをお役所へ提案していた。
火災という現象について、すべて科学で正しい答えを出すことは、今でも困難である。しかし、空気中で燃えやすいかどうかは、マッチでサンプルに火をつけてみればすぐにわかる。これ以上は書かない。
当時は生活の常識が非科学的と言われたのである。「裸の王様」とか「王様の耳はロバの耳」とか子供向けには教訓となる話が多いが。
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トランスサイエンスなる言葉は、50年以上前に雑誌「サイエンス」に掲載された言葉だが、ようやく日本でも一般化しつつある。弊社は設立以来この問題を扱ってきた。
日本では50年以上前に起きた研究所ブーム以来、科学を絶対視している人が大半で、非科学の方法で問題解決したりすると笑われる社会だ。笑われるだけでなくいじめも起きる。
当方はゴム会社で6年科学的に研究が進められた電気粘性流体のテーマを非科学的な手法で実用化レベルまで完成させたところFDを壊されたり、様々な嫌がらせを受け、高純度SiC半導体治工具事業のJVを住友金属工業と立ち上げながらも転職している。
電気粘性流体は、当方が転職後、当方がデータ駆動の方法で発明した耐久性問題解決技術や傾斜機能粉体を用いて、テストマーケティングが行われたらしいが、磁性流体と競合し、撤退したと聞いている。
電気粘性流体は静電気を利用したデバイスでありトランスサイエンスの課題を幾つか含むデバイスである。科学で問うことはできても科学の唯一な答えを出すことはできない。
ちなみに、電気粘性流体の耐久性問題は、京都大学の博士や大阪大学の博士など高学歴スタッフ6人が1年間集中的に投入され、「界面活性剤では解決できない」という科学的に完璧な否定証明を完成させた。
当方は、この否定証明のおかげで、「加硫剤も可塑剤も何も添加されていない加硫ゴム」という馬鹿げた材料開発を担当させられるところだった。それで一晩かけてMZ80Kを走らせて耐久性問題を解決できる界面活性剤を見出している。
その後、性能が不安定だった電気粘性流体の品質を安定化させるためにヒューリスティックなアイデアの傾斜機能粉体や超微粒子分散型微粒子、コンデンサー分散型微粒子を1カ月で開発し、性能が安定し耐久評価も合格した電気粘性流体を完成させている。
非科学的方法だったので短時間の開発が可能だった。トランスサイエンスの問題では、このように、まずオブジェクトの実体を生成させてプロパティを検討するオブジェクト指向が有効である。
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昨日都心に用があり、車で出かけたのだが、帰りに車のスイッチをいれたところナビが起動途中で暴走し、フリーズした。あわてて日産のディーラーに電話し対処方法を聞いたところ、すべてスイッチを切り、車からおりて5分後再度起動するように手順を教えてもらった。
ところが手順通り行っても、ナビはフリーズしたまま。カップヌードルでも3分待つだけなのに、5分以上待ってから、などと怪しい説明である。
ナビが暴走状態でも車が動くのかと思ったら、正常に車は走り出したので、首都高速道路で帰宅したのだが、途中怖い思いをした。
首都高速道路上で自動運転にセットしたのだが、前を走るベンツにぴったりとくっついて、コーナーに来ても減速しないで高速のままベンツを追従しながら走っている。
クルーズコントロールはナビに連動して動作する、とマニュアルに書いてあったが、ナビが暴走状態では道路情報が入ってこないので、前を走る車に従うだけなのだろう。
よくできた制御と感心したが、コーナーに入る時に減速しない経験は初めてであり、やや怖かった。しかし、ベンツと同じコーナリングスピードで安定に道路の真ん中を走るオーラもなかなかの性能である。
恐らく価格はオーラの二倍と思われるベンツに自動運転で負けていない。さすが、技術の日産である。ナビが暴走状態でも車は自動運転で安定して走っている。但し日産の技術を信頼していても、ソフトウェアーが一部暴走している状態(注)であり、少し怖かった。
家についてから、WEBでナビの暴走対処方法を調べたら、ナビのリセット方法が公開されていた。さっそくリセットしたところ、正常に戻ったのだが、ディーラーの担当者がこの情報を知らない、という問題が残った。
(注)自動車用のOSでは、一部サービスが異常でもそれに対応したプログラムになっている、という説明を読んだ経験がある。すなわち、運転が危険な場合には、車は動かないようになっているそうだ。ディーラー担当者がナビだけの暴走であり、他は問題ない、と言われたので高速道路で帰ったのだが、正しくは、自動車を運転しない指示あるいはナビのリセット方法を指導すべきだろう。ナビが暴走していても大丈夫、といわれても怖かった。怖かったが、誤操作防止動作がすべて正常だったので、車を信頼して高速道路で帰宅したのである。
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研究の調査には文献検索以外に現象からテーマを導き出す作業の二通り存在する。40年以上前にゴム会社で研究が始められた電気粘性流体は、当時から40年前にウィンズローが発見した現象を利用しており、研究論文が多数存在していた。
それで実用化が近いと判断されて研究所のテーマとして6年研究が行われたが、6年目の研究で「電気粘性流体の耐久性問題は界面活性剤で解決できない」という科学の典型的な否定証明を完成させている。
そこから、「加硫剤も可塑剤も添加されていない加硫ゴム開発」というとんでもないテーマが設定されている。ゴム会社の研究所でこのような企画が生まれたことを画期的ととらえるのか、馬鹿げたこと、情けないことととらえるのかは、ゴムについて知識がどれだけあるかに依存するだろう。
当方は常識的な人間なので、これを馬鹿げたとんでもないテーマととらえ、そもそも調査研究として行われた電気粘性流体の耐久性問題(そもそも研究の最初の段階で当方ならこの問題を検討するが。)の解決を一晩で達成している。
調査研究をどのように行えばよいかについて書かれた本は多い。しかし、そこから結論を導き出しても、それを正しく評価する方法を述べた本はドラッカーの著作ぐらいである。
ただし、今ならばデータサイエンスの手法が、調査の各段階で有効であり、この手法をどのように活用するかにより、調査研究の成否が左右される。
ちなみに電気粘性流体の問題を一晩で解決できたのは、依頼してきた人物が情報を見せてくれなかったので、界面活性剤のカタログデータをデータサイエンスで解析して結果を出している。
情報を統制し、課長補佐格まで昇進していた人材を奴隷のように使おうと考えるような研究所の風土だったので、一晩で問題解決することに拘って、徹夜で実験している。
また、当時住友金属工業と高純度SiCのJVを始めた頃であり、今後出てくるであろう電気粘性流体の性能向上のために、傾斜機能粉体や超微粒子分散粒子などの特殊な粉体を開発し、提案している。
当方が転職後、傾斜機能粉体と当方が発見した界面活性剤を用いた処方でテストマーケティングを行ったらしいが、その結果磁性流体より劣るとの結論となったらしい。これも情けない調査結果である。
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学生時代に研究調査と言えば、自分の研究分野について毎月ケミカルアブストラクトを調べるのがお決まりの方法だった。
これがゴム会社の研究所に配属された時に新入社員の業務ではなく、基幹職の仕事と教えられた。ただし、入社3年目あたりから意識の高い人は自分で調査をしてる、とか噂されていた。
学生時代は、学生も含め研究調査を行うことが常識と教えられたのに、ゴム会社に入ったとたん、その作業は偉い人の仕事と教えられたので戸惑った。
ただし、これには裏があり、偉い人が調査をした結果は新入社員まで情報が回覧されず、いわゆる係長クラスあたりで情報がストックされていた。
新入社員が情報を知りたい時には係長職のところへ相談に行き、新しい情報を見せてもらう仕組みになっていた。すなわち、情報統制することにより縦社会の組織を維持していた。
これは当方が転職するころまで続いていた。電気粘性流体の耐久性問題について当方のところへ依頼にきた基幹職は、テーマを依頼しながらも情報を開示できないという。すなわち自分で0から調べよというわけである。
ところが、調査時間など与えられず1週間後に仕事を命じるからその通りやれという。当方は課長補佐格まで昇進していたのにひどい扱いである。そこでデータサイエンスを用いて一晩で問題解決したところFDを壊されたり、嫌がらせが始まった。
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アメリカから伝わったと言われている表題の言葉がはやっているそうだが、当方が社会に出て12年勤務したゴム会社の研究所は、無駄な仕事を生産するリーダーが多かった。担当者のFDを会議前になると壊すリーダーまで現れて、これは隠蔽化されたため3人が転職する事件にまで発展している。
当方の経験から申せば、静かな退職者は、無駄な仕事を生み出すリーダーよりもはるかに組織のために害は少ない、と申し上げたい。
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また、ワークライフバランスが叫ばれる今日の風潮では、静かな退職者が増える社会となっているが、静かな退職者を問題とするよりも、無駄な仕事を生み出すリーダーについて対処したほうがよい。
なぜなら、静かな退職者は無駄な仕事をしている可能性もある(注)からで、静かな退職者に対して、リーダーは他のメンバーに対するよりも仕事のマネジメントに気を配らなくてはいけない。
当方が転職した時に、組織に静かな退職者が1名いた。当方がリーダーとなり、彼と対峙することになるのだが、暖簾に腕押しである。人事に相談してもらちが明かない。人事との面接ではうまく人事担当者を丸めこむのである。
人事担当者に対して散々当方を褒めちぎり、仕事をやってます感を伝えている。忙しいグループの仕事を手伝わせてもスキルが無いので、グループメンバーからは、足手まといとなって仕事が増えると断られる。
会社内で有名な人物であり、異動先を探すことができなかった当方は最後に諦めたが、その結果、組織の効率が上がっている。当時は成果主義ではなかったので年功給で本人は仕事など無くても十分満足していたのである。
毎日出勤しては自分の読みたい本を図書室で一日読んで帰宅する「真正さぼりタイプの人物」だった。このような人物に企業としてなすすべがない。
このような人物は静かに本を読んでいるだけなので、組織メンバーの理解が得られたならば、そのままにしておくとよい。草むしりをさせたりしたら労働問題になりかねない。
(注)2005年に単身赴任した時にも退職をまじかに控えた静かな退職者が現場に一人いた。コンパウンド工場建設を決意し、彼に声がけしたところ「面白いからやりましょう」となった。そして1名中途採用で優秀な技術者を獲得し、たった3か月でコンパウンド工場を立ち上げることができた。静かな退職者にはいろいろなタイプがいる。面白い仕事ならば能力を発揮して素晴らしい成果を出してくれる場合もあり、リーダーは静かな退職者の本音を聞く必要がある。本音を聞いてみると、静かな退職者には身勝手に働く意味を捉えている人物とそうでない人物とに分かれる。後者は仕事について十分話し合って決めれば、うまく能力発揮してくれる。まず、本音をよく聞くことである。この話し合いがうまくできないリーダーが多い。当方が早期退職を申し出たときに、ある役員が2011年の新製品に搭載できる環境対応樹脂を好きなように仕事を進め開発してほしいと相談してきた。そこで当初予定を伸ばし、中途半端であるが2011年3月11日(金)を最終出社日にしたいと申し出たところ、その日に最終講演と盛大な送別会を約束してくれた。そして、PC/PETとPET基ポリマーアロイの2品種を開発するのだが、マネジメントの意味を良く理解していた役員である。毎月2週間中国へ出張し実験をして帰国する楽しい日々を最後まで過ごすことができた。当方が退職後この成果は社長賞を受賞し、元部下は記念品のPETボトルを20本送ってくれた。
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これはターゲット材料によりさまざまである。未知の材料であれば、いつできるのか不明の場合もある。それで、当方は、3か月と1か月、3日、1日という体内時計を使っている。
すなわち、目標を定めて1日でできた経験もあれば、3日かかった経験もある。長ければ1カ月である。但し、3カ月以上かかる時は、ペンディングにして頭を冷やして考える期間を設けている。
例えば、高純度SiC前駆体ポリマーは、構想から2年かかっているが、仕切り直しを行って1日で前駆体ができ、3日で高純度SiCができている。
初めてポリエチルシリケートとフェノール樹脂とのポリマーアロイを混ぜ合わせたとき、3日かけても相分離し、満足なものができなかった。いろいろ調査しながら実験を行い、3カ月過ぎた。1980年頃である。
フェノール樹脂天井材の開発を終えた1983年初めに、開発で用いたフェノール樹脂の廃棄作業を一人で請け負い、同じく廃棄対象のポリエチルシリケートと混合しながらゲル化し、廃棄物の姿にしていた。
このとき直交表を用いて触媒の酸やアルカリ、温度条件を大胆に変化させて、廃棄物処理を行ったところ、ある領域で、安定して透明な液体が得られる条件が見つかり、触媒の有機酸の量を注意深く変量したところ均一状態でゲル化した。
すなわち、3カ月かけてもできなかった均一なポリマーアロイが1日でできたのである。これで、新材料というものは、できるときには1日でできるという自信がついた。
電気粘性流体の耐久寿命を改善する技術も1日でできている。この電気粘性流体の傾斜材料も1日でシーズが生まれ、3日で芽がでて、1カ月で果実となった。
昨日のPETのポリマーアロイもデータ駆動の実験をするために3回中国出張をして完成している。中国で行った理由は人海戦術を使えたからである。次から次へと配合をストランドとし、ペレット、そして射出成形、物性測定と毎月10人かけて実験を行い、30種ほど配合を検討している。
この時仮説など用いず、ただひたすら、データ駆動により、良い方向へ配合設計しながら、難燃剤を用いずにUL94-V2試験に合格する処方を見出した。3カ月でできるかどうかは、体感で判断できた。
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