無機材料科学は20世紀にほぼその体系は出来上がったが、高分子材料科学は、ダッシュポットとバネのモデルのレオロジーが破綻したように、現在もその体系を模索中である。
そもそも科学の一分野としての化学は、非平衡状態についてまだその体系が出来上がっていない。統計熱力学で議論できるという人がいるが、それはほんの狭い領域だけである。
実務の世界、例えば高分子材料の世界では、非平衡プロセスで材料が作り出される。そして製造された材料の品質は、結晶状態ではなく非晶部分で左右される。
実用化されている無機材料の物性が結晶の特性で品質が決まってくるのと比べると、高分子の世界では、話が複雑というよりも形式知が無いので科学的議論さえできないケースが多い。
これら以外に、例えば力学物性を取り上げても高分子材料では科学的にそれを議論できない場合も出てくる。
それゆえ、その材料設計には、どうしても経験知や暗黙知を動員する必要が出てくる。
最近アカデミアの世界でマテリアルインフォマティクスという概念が出てきたのはこのような背景があるのでは、と思っている。
ゴムタイムズ社から発刊された小生の著書では、マテリアルインフォマティクスも意識した事例を紹介しているのでご興味のある方はコロナサービス期間中に購入されると消費税と送料分安くなります。
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ギブソンES335の品質についてもう一つ面白い話がある。東海楽器製造というピアニカで有名なメーカーは、昔マーチン社と技術提携し、マーチン社の安価なギターをOEM生産していた。
その技術を活用して製造されたキャッツアイブランドのギター(ドレッドノート)は1970年代マーチン社のギターよりも品質が高く安いと評判になり、よく売れた。しかし、ギターブームが去り、今キャッツアイブランドのギターは全品韓国製である。
それでは東海楽器はギター生産をやめたのかというとそうではない。エレキギターの生産が中心である。そしてES335タイプのコピーも製造しており、これがギブソン社よりも品質が高いとしてマニアの間では評判である。
しかし、素人が東海楽器のES335コピーモデルを購入するとがっかりすると言われている。
実は東海楽器はES335の1959年モデルのコピーを製造しており、現在ギブソン社から販売されているモデルES335のコピーではない。すなわち、ギブソンのES335には古いタイプと新しいタイプでピックアップが異なり音色が違うのだ。
ただ、古いタイプのES335を好みの方には、東海楽器のコピー品は最高らしい。実際に楽器店で東海楽器製のES335を見てみると、細部にわたり丁寧に処理がされており、本家のギブソンES335よりも高品質である。
機械化された木工技術において日本と外国との品質差が生じるのは、恐らく職人のモラルが影響していると思われる。当方は技術者として現場で仕事をする機会が多かったが、日本の職人のモラルは諸外国と比較し高い。
人件費の高騰で日本から中国、そして今はASEANへ工場が出て行ったが、高いモラルを維持できる日本の工場のメリットを生かせる製品であれば、生産現場を日本に戻しても良いのではないか。
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コロナ禍で今年の高校三年生は、進路についてかなり心配されているのではないか?「今がすべて」とまで思い込んでいる人もいるかもしれない。
小生が高校生の時に安田講堂事件の余波で1969年の東大入試が中止になった。浪人も含めた東大生の合格者数が3桁の高校だったので、先輩たちに激震が走った記憶は、この先輩たちの影響を自分たちも受けることになるということで今でも鮮明に思い出せる。
東大を目指していた現役生の中には、浪人を早々と決めた人もいたが、その方たちの感想を50年経った今聞いてみたい気がする。
人生の捉え方は、人それぞれであり価値観も異なるので東大入試中止の人生に対する意味はおそらく人それぞれ異なるだろうと思われる。
ただ、その時東大を目指さず他大学を受験した先輩の話では、他大学でも悪くはなかった人生、ということである。
半世紀たっても「東大入試中止」にこだわっている先輩もいるかもしれないが、仮にこだわっていたとしても、東大入試中止を結果として受け入れた運命を一生懸命生きている。
コロナ禍で受験勉強に影響を受けるかもしれないが、その後の長い人生をどのように生きたのか、というほうが重要だ。
例えば、当方はゴム会社で基盤技術も何もない状態で高純度SiCの事業を立ち上げているが、FDを壊され妨害される事件が起きて、それを隠蔽化しようとした研究所の動きを受け入れることができず転職している。
高純度SiCのテーマを推進していた時の死の谷における苦労はそれだけではなかったので、今でもそのトラウマは残っているが、転職を決意したことやその後の人生について悔いてはいない。
また、転職後の写真会社では、ゴム会社で身に着けた専門を捨て写真フィルム開発を担当したが、デジタル化の波を受けリストラされている。
倉庫をパーティションで区切った部屋で仕事をしていたわけだが、早期退職を決意し、単身赴任した豊川で、ゴム会社の新入社員時代に担当したテーマの続きを実行できる環境に恵まれた。
カオス混合技術を量産プロセスでどのように実現するのか、という指導社員から頂いた課題を解決することができて、フローリー・ハギンズ理論では否定される現象を機能として活用し、PPS中間転写ベルトの製品化に成功した。
大学院で学んだ強み(注)を生かしたセラミックス技術者としての人生ではなく、転職左遷単身赴任と順調ではないサラリーマン人生だったが、ゴム会社の新入社員研修で学んだ強みでサラリーマン人生の最後に技術者として高純度SiCの事業化と同様の満足できる成果をあげることができたのは幸福だった。
(新人テーマも含めゴム会社の新人育成プログラムは秀逸だった。大学6年間の教育を凌ぐ濃度の濃い内容は、この会社が世界6位から1位になる必然性を示していた。転職してみて人材育成の考え方や仕組みが会社により異なり、昨今は当時よりも人材育成に力を入れなくなったという。今弊社ではポストコロナの社会変化を配慮した人材育成プログラムの企画を考えている。)
高純度SiCの事業化成果やカオス混合技術の開発成果について会社からそれらにふさわしい評価は受けていないが、誠実真摯に推進し成功に至った過程において、素晴らしい人生の出会いがあった。
科学者としての専門性を語ることは恥ずかしいが、とりあえず住友金属工業とのJVとして事業化できた高純度SiCのテーマで学位論文をまとめることができたのは小さな成功の一つである。
技術者として、製品化における様々な問題解決に勝利してきたのは誇りであり、その成功の体験の一つを書籍として出版できたのも幸福だ。
ところで何をもって人生の成功とするのか難しいことは、当方の人生体験を語らなくても、このコロナ禍における政治の状況を見れば明白である。
正義も誠実さも無い生き方で出世し検事長までなって、定年退職の準備をしていたら、時の権力者が保身のために総長の道を開いてくれた。
「すごろくのあがり」にたどり着いただけでなく、景品の選択肢まで与えられた。そこで、大きなつづらを躊躇せず選び、文春砲が炸裂した。さて、その後どうなるか、高校生はこの続きをぜひ見届けて欲しい。
(注)第二次オイルショックで就職状況が悪く、専門に囚われず車に興味があった、と言う理由だけでゴム会社に就職している。これまでの人生経験でコツを一つあげるならば、まずその時の自分の人生を受け入れ、最悪の事態を避ける誠実な選択をすることである。誠実な選択をしておれば、誰かがそれを見ていてくれる。不思議なことにタイミングよく、どなたかが叱咤激励してくれるのだ。また、高純度SiCの発明において、無機材質研究所の電気炉暴走は神様のいたずらである。その科学で説明できない出来事で高純度SiC技術は生まれている。人生思いがけない出来事が起きるので、まず一生懸命誠実に生きることが大切である。
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混練技術を高分子の混合技術として単純なとらえ方をしていると、そのプロセスで発生している現象を理解できず、その結果得られた混練物(コンパウンド)の正しい問題を見出すことができなくなる。
例えば、導電性カーボンを高分子に分散するとパーコレーション転移が生じるが、これはカーボンクラスターの構造がばらつくことにより、コンパウンドの電気特性に大きな影響を与える。
電気抵抗は、導電性カーボンのある添加量の領域において大きくばらついたりする。また、インピーダンスも同様に変動するが、電気抵抗よりも添加量に対して感度が高いような変化をする。
これが、カーボンの添加量だけでなく混練プロセスにも左右されるのだが、そのことに触れた混練の教科書を見たことが無い。下記にはパーコレーション転移だけでなく、混練プロセスに関わるコンパウンドの問題を考えるために必要な知識を筆者の経験知も含め整理して記述している。
ただいま、本体4800円のところ消費税と送料をサービスした価格(¥4800)で提供中です。お問い合わせください。
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黒川検事長の賭けマージャン及びその後の処分に至って、なぜ?という疑問が多い。特に政権中枢部に絶大なる信頼を受け、定年延長まで厚遇されながら、その立場から絶対してはいけない賭博や、3密の禁を破る行為をしたのかは、不思議である。
自分は何をやっても許されるという、本人のうぬぼれ説がもっともらしいが、あまりにも軽薄で、このような人物が検事長まで昇進できたことに疑問が出てくる。
例え、組織とはゴマすり勝負だ、と理由付けしてみても、検察庁という組織でそのような運営がなされているとは信じがたい。
麻雀中毒で正常な判断ができなかった、という理由でも、そんな人物が検事長までなっている日本の現状が恐ろしくなる。
今回の事件は、軽い処分で幕引きをすることなく、その真相をぜひ明らかにしてもらいたい。これは、財務省の忖度から引き起こされた文章改ざん問題とは異なる。
黒川検事長という人物特有の問題とこんな人物を検事長まで昇進させる組織の問題の両者があり、国民は真剣に悩まなければいけない。
すなわち、本来検事長になってはいけない人が検事長になっていた国家組織の問題は、最終的に主権者である国民に責任が回ってくるからである。
今回の事件で、内閣支持率が大きくダウンしたという。意外と国民はこのあたりに気がつき始めたのかもしれない。検察は正義の砦とならなければいけない。
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ギターの品質では当方も面白い体験がある。53歳になり、倉庫に使っていた部屋をパーティションで区切っただけの一室が事務所となった時に、お茶の水で電車を降りて、19万円で売られていた新品のギブソンES335を見つけた。
輸入代理店である山野楽器の品質保証書もついており、値段はともかく本物である。躊躇せず購入し、2005年に単身赴任し、カオス混合の開発を始めるまでは、ES335が生活の中心になった。
しかし、豊川へ単身赴任し、中間転写ベルト用コンパウンドライン建設で寝る暇もなくなったら、当然ギターを弾く時間もなくなった。左遷されてへこんでいたことなどすでに忘れ、混練技術開発に邁進した。
その後早期退職し現在の会社を起業して、忙しい日々を過ごしていたらES335のことを忘れていた。ある日、皮革の難燃化を指導した会社の方と飲む機会があり、ギブソンの話が出たので突然思い出したが、その方に19万円で購入したとはいいにくい雰囲気だった。
ES335は高値で売れるという話が出たので、実際に持っていたES335を下取りに出してみたら16万円でひきとってくれた。
実は、ここで下取りに出す気になったのは、当方の所有していたES335は、メイプルの模様は芸術的で高級材を使っているらしいことは理解できたが、fホールの木口の処理や、そこから覗いたときの接着剤の汚れなど購入当時はうれしくて気がつかなかった品質の問題がいくつか見つかったからだ。
最も演奏者の力量では音に品質の差が分かるほどではないので、機能上の問題は無かったが、落ち着いて品質を確認したら、高いうちに売り飛ばしたくなるような品質だった。
実はギブソン社のギターの品質ばらつきは有名な話で、ナッシュビル工場とメンフィス工場とでは歴然とした差があるらしい。数年前ギブソン社は倒産しかかり、その後建て直したが、日本におけるブランド再構築のため、現在の輸入総代理店はギブソン社直営の会社である。
ちなみにギブソン社の新品ES335は、売価24万円前後から120万円まで価格の開きがある。品質が良い個体は売価が高いのだ。
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竹内まりやのプラスティック・ラブが世界中で大流行だという。山下達郎や荒井由実も再流行しているという。
シティーポップとして昔日本でヒットしていた曲の多くが今世界で流行している理由を何となく理解できる。
シティーポップが流行していた時の日本は、JAPAN AS No.1ともてはやされ、セラミックスフィーバーが最盛期となり、その数年後にはクリントン政権によるナノテク戦略を実行させるほどの輝きや力が溢れていた。
すなわち、バブルがはじける前の日本の輝きが、今の世界に求められているのだろう。これはコロナ禍ゆえのことではなく、数年前から世界で起き始めた潮流である。それがコロナで暗い世相となり、さらにこの潮流が速くなった。
あまり指摘される人はいないが、植木等のスーダラ節からシティーポップへの大衆音楽の潮流は、日本独特の文化あるいは社会風土ゆえであり、中国や韓国、あるいは欧米では見られない。
日本人はバブル崩壊で自信を喪失し失われた10年と言われた時代をそのまま引きずり、今や失われた30年とまで揶揄する人がいる。
実際に、世界のGDPは増加しているにもかかわらず、日本は停滞したままでコロナ禍に突入している。これは、ひとえに政治家や実業界における日本のリーダー層の責任である。
企業においては、東芝や日産自動車、東電など日本を代表する企業のトップのだらしなさが、ニュースで報じられた。
政治の世界では、民主党政権による訳の分からない時代で東日本大震災の混乱につながった。そして、緊急事態宣言下に、余人に代えがたい黒川氏による賭け麻雀である。
検察庁は面白い組織で、これだけの不祥事でも直属の上司が謝罪しないだけでなく、公務員としての報酬は減額なしである。退職金は約7000万円支払われるという。
日本の有権者や株主は、今一度リーダーがこのままでよいのかよく調べなければいけない。シティーポップが流行していた時の日本のリーダーは、皆夢を持っていた。
ゴム会社の故服部社長は熱い夢を酒を飲みながら語ってくれた。トップリーダーの賭け麻雀に対してお咎めなしの検察により告発されて犯罪者にはなったが、田中角栄は列島改造論で地方創生の夢を語っていた。
結果として悪人とされても、国家のためにリーダーシップが発揮されていた時代である。
私腹を肥やしたゴーンだけならばよいが、悪人が本当の悪人ではますます日本は悪くなる。7000万円の退職金を悪びれることなく受け取るのは、本質的にゴーンと変わらない。
このようなリーダーが何ら反省することも無く、またそれを促すような処罰も無い状態を寛容な社会と大衆は捉えず憤りや怒りを持つようになってゆく。シティーポップとは、お互いを信頼している大衆が安心して輝けた時代に生まれた音楽である。
植木等のスーダラ節に代表される無責任男から、井上陽水の今降っている雨を前に傘が無いことが社会問題よりも大きな問題という世界観、そして都会暮らしの若い女性による自由恋愛、いずれも現代や未来に何の心配もないから生まれた歌である。
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「誠実真摯に生きる」とは、ドラッカーの思想の根底にある重要な考え方である。彼はこの前提で資本主義社会の終焉と知識社会の到来を述べている。
また、高度の知識を持った労働者は、誠実真摯に働くことが求められ、一方で知識は可搬性があるので不誠実な組織から誠実な組織へ知識労働者は流れてゆくと述べている。
ゆえに経営者は誠実真摯でなければ企業経営ができなくなるので、リーダーは後継者選びに当たり、誠実真摯な人材を選ぶことがコツだと述べている。
誠実と真摯という言葉は抽象的であるが、当方のこれまでの人生で、ドラッカーがのべているような本当に誠実真摯で聖人とも呼びたくなる人は1名しかいない。
もっともドラッカーがどこまで完璧さを求めていたかは知らないが、人間は知らず知らずのうちに不誠実な行動をとっていたりする。それが極端になれば、社会にとって悪人となる。法に触れれば犯罪者となる。
今回のコロナウィルス禍では、使い捨てマスクが1つ1000円以上まで高値がついて売られた瞬間があった。定価販売された町の薬局では売り切れ状態が続き、インターネットオークションの転売が横行した。
しかし、多くの人はこれをやっている人を悪人とみなした。そこで政府は取り締まりの法律を作った。それでも法の抜け道を探り、マスクで儲けようとする人が現れる。誠実に生きることが社会で求められているのに、である。
また、不要不急の外出自粛が求められている中、東京高検の黒川弘務検事長が賭けマージャンをしていたという。3密の禁をマージャンごときで破ったことに驚くが、さらにこれは賭博である。
次期検事総長として余人に代えがたい人材と言われ、定年延長が議論されていた人である。池袋で母子をはねても、すぐに謝罪もせず逮捕されなかった元リーダーの老人が批判の対象になったりした。その姿には誠実さのかけらもなかった。
ドラッカーが誠実さでリーダーを選べ、と言い続けた理由は、ともすれば誠実さなど関係なく要領よく出世する人材がリーダーとなる現実を見てきたためでないか。
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ギターの面白い点その2として、20世紀末に半導体製品についてファブレス企業がもてはやされたが、ギターの世界では、メーカーと商社が分かれていたので、楽器商は同様にファブレス企業とみなすことが可能だ。
楽器商には、単なる流通に関与しているだけの楽器商と、例えば荒井貿易の様な楽器の企画までしている楽器商がいる。
その商社もギターブームが去ったら淘汰されて、ギターの企画や設計部隊を抱えているところだけが生き残っている。
荒井貿易は、アリアブランドやアリアプロⅡというブランドで新製品を提案している。ドラムTAMAで有名な星野楽器は、アイバニーズという世界に通用するエレキギターのブランドを持っているが、荒井貿易も星野楽器も直営のギター工場をもっていない。
20万円以上する日本製のアイバニーズはフジゲンやタカミネで製作されている。20万円以下のアイバニーズブランドのギターは、韓国や中国、インドネシアの工場で製造されている。
面白い点その3として、この海外工場の品質の差である。WEB情報だが日本以外ではインドネシア産が最もよいと言われている。ところが星野楽器のホームページを見ると海外生産品については日本で品質検査をしている、と書いてある。
日本で品質検査をしているのなら、本来は品質が同じにならないといけない。しかし、辛口の評価によると産地により品質が明らかに異なるという。ギターを購入するときには、自分の目や腕で確かめて購入しなくてはいけない。
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界面活性剤は、親水基の構造部分と疎水基の構造部分でできており、水の中では、親水基で水との界面を形成し、疎水基部分を内側にした球体で分散している。
水に界面活性剤が分散し、形成されたこのような構造をミセルと呼ぶが、疎水基の凝集している内面には、水に溶けない油を溶かし込むことができる。
すなわち、洗剤で衣類の汚れを取ることができるのは、洗剤が界面活性剤でできており、水に分散してミセルを形成するからである。
これは、界面活性剤の教科書に書かれた説明である。さらに教科書には親水基と疎水基の比率、これをHLB値と呼び、界面活性剤の特性を表す指標である、と図とともに丁寧な説明が書かれている。
研究をする場合にはこれでよいかもしれないが、技術開発で二律背反問題を解いたりするときには、この説明が新しいアイデアを阻害したりする。
そもそも界面科学の形式知では、まだその十分な体系が出来上がっていないことを知るべきである。
この件について語りだすと、この欄では不足するので、この程度にしておくが、界面科学の進歩は著しいが、その体系に技術者は疑問を持ったほうが良いことを指摘しておく。
さて、界面科学で説明しにくいものに洗剤がある。洗剤には界面活性剤が含まれているが、界面活性剤以外の物質も含まれている。
形式知の体系からはこのような書き出しとなってしまうが、洗剤について書かれた古い教科書には、これも界面活性剤であるような書き方がされている。
ただし、このような教科書は、もはや黄ばんで古紙独特の香りがするが、同時に新しいアイデアを刺激する。
古紙の匂いを我慢して読み進めると、ゾルでミセルを安定に形成する方法のアイデアが生まれる。
これは21世紀の新しいアイデア、とある科学雑誌(Langmuir)に論文が載っていた。当方らのグループではこの論文よりも早く技術開発し、高分子学会技術賞に推薦されたが、某大学教授に、そんなことは新しくない、と言われ落選している。
その教授の名誉のために名前を伏せるが、例えばシリカゾルでミセルを形成し、ラテックスを重合するという技術は、1990年代では世界初の技術だった。
大学の先生は、本来知の歴史に精通していなければいけないはずだが、このような先生もおられるので注意を要する。
新型コロナウィルスのコメントではワイドショーに怪しい先生が出てきたりしているが、肩書に騙されてはいけない。
世の中には、当方のゴム会社の指導社員のように肩書では評価できない凄腕の技術者がいることを忘れてはいけない。ちなみに、彼はレオロジストでありながら1970年末にダッシュポットとバネのモデルの終焉とそれに代わる概念を指導してくださった。
当方は、その概念で最近混練に関する実務書を執筆(ゴムタイムズ社刊)している。今月中に限り、申し込まれた方には、送料と消費税をサービスした価格にて提供します。
コロナ禍でセミナーがすべて無くなり売り上げが激減したのでその対策としてのサービス販売です。消費税10%と送料が安くなるので昼食一食分お得なお値段です。個人購入の場合にはかなりお買い得感があるかと思います。この機会にぜひ1冊ご購入ください。
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