15年ほど前に開発した中間転写ベルトでは、1Ωcm前後の体積固有抵抗を示すカーボンブラック(1次粒子径2nm、比重2)を使用していた。
それを特殊な分散状態(凝集粒子径400nmから800nm)に制御して109ΩcmのPPS製無端ベルトの押出成形を実現している。
出願した特許に書かれているように、凝集粒子径が50nm前後と小さい場合には、押出成形時にパーコレーション転移が安定せず、表面比抵抗の偏差は100倍までばらつく。
この問題解決については、抵抗の低いカーボンをソフトな凝集粒子として分散させて、パーコレーション転移を制御した。
すなわち、凝集状態のパーコレーションと分散状態のパーコレーションの両者を制御する技術を混練で実現しようと設計した。
設計どおりにペレット段階で安定に凝集粒子内でパーコレーション転移を起こした凝集体がパーコレーション転移をしており、その高次構造は押出成形しても変わらなかった。
凝集粒子の体積固有抵抗は、104Ωcmであり、ペレットの体積固有抵抗は109Ωcmとなっていた。この体積固有抵抗の関係は、押出成形されたベルトでも同様だった。
パーコレーション転移を考えるときには、重量分率(w.r.)よりも体積分率(V)で考える。凝集粒子の分散を考えるときに問題となるのは、凝集状態により凝集粒子の比重が変化する。
そこで、カーボンの見かけ比重(カーボン凝集体の比重)と体積分率、重量分率の関係を求めた。
この関係からカーボンを疎な凝集状態で分散させると、同じ重量分率でも体積分率を稼げることがわかる。
また、カーボンの凝集密度を下げれば、すなわち疎にすれば、見かけの凝集体の体積固有抵抗は下がるので、パーコレーション転移が起きたときの大きな抵抗変動を緩和することができる。
すなわち、高い導電性の粒子で引き起こされるパーコレーション転移は、その変動が大きくなるが、低い導電性であれば、パーコレーション転移による変動を小さくできる。
以前開発したシミュレーションプログラムのアルゴリズムを変更し、導電性凝集粒子の凝集状態が変化しながらパーコレーション転移を起こした時のシミュレーション(Wパーコレーション転移シミュレーション)を行った。
このシミュレーション結果から、凝集体の比重が0.5前後で分散し、全体の重量分率が0.1-0.2前後であれば、安定に108-1010Ωcmの体積固有抵抗を示すペレットを製造可能であることが理解できる。
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カテゴリー : 未分類
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アルビントフラーの第三の波はあっというまに過去の著作となり、バブル崩壊から30年近くたった。そのような状況で5Gが注目を集めている。
この変化の時代に新材料の技術が求められており、来年にかけて招待講演を依頼されましたセミナーでその内容を公開してゆく。すでに取り組んでいるメーカーも注目していただきたい内容である。
各セミナーではテーマを明確に設定し解説するので、全部参加していただければ、今起きている材料技術のイノベーションを学べる。
まず、下記セミナーでは、情報通信の切り口で解説する。希望者は弊社へ問い合わせていただきたい。
開催日時:2019年12月6日(水)10:30~16:30
会 場:[東京・東陽町]江東区文化センター3階 第1、2研修室
*弊社へ申し込まれますと割引価格になります。
受 講 料:47,300円 ※ 資料・昼食付
カテゴリー : 学会講習会情報
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昨日の喜美子と父親常治の対立には胸を打たれた。きっかけは喜美子の妹百合子の進学であるが、働く意味についての激論だった。
喜美子は、絵付師深野が新しいことに挑戦するために会社を去る、すなわち、ドラッカーが言うところの働く意味における自己実現について語っているのだが、それに対する常治のセリフには胸を打たれた。
常治は、生きるために働かなければいけない、だから一生懸命働いている、それがわからなければ出ていけ、といって喜美子の前から去るのだが、働く意味を貢献と自己実現と語れるのは幸せな時代と身に染みて感じた。
豊かな時代の今、常治の「働く」論理の時代があったことを忘れていた。多くの常治により今の豊かさがもたらされたことを思い出させてくれた15分だった。
そもそも社会の安定があり、皆が仕事にありつけて食べていける状態になって初めて自己実現が問題となるのだ。
バブルがはじけて30年経ち、社会が二分化されてきた問題が指摘されている。また、仕事があってもその賃金で食べていけない状態がテレビで特集として組まれたりしている。
中国の状況を見ている当方からは、ただ富の分配がうまくいっていない、というステレオタイプ的な解釈では説明がつかないと感じる今の日本である。
カテゴリー : 一般
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半導体高分子を製造する方法として、導電性微粒子を高分子に分散する材料設計法がある。この時のパーコレーション転移の制御には高度な技術と材料設計技術が必要になる。
酸化第二スズゾルを用いた薄膜導電層の設計では、(1)酸化第二スズゾルが、水溶性コロイドの状態で超微粒子のクラスターを形成しており、形状の異方性が期待されたこと及び、(2)形状の異方性とバインダーの組み合わせでパーコレーション転移の閾値が変化すること、この2点を制御因子として超微粒子の添加割合が18vol%という低い値でパーコレーション転移を安定に実現している。
導電性微粒子のアスペクト比(長径/短径)が変化した時のパーコレーション転移について、微粒子の導電性を100Ωcmと仮定した時のコンピューターシミュレーションを行ったが、統計的確率に制御されてパーコレーション転移が起きている場合には、アスペクト比が、大きくなる、すなわち異方性が大きくなるほど導電性微粒子の添加率が少ない領域でパーコレーション転移を起こすようになることが明らかとなった。
ちなみに、酸化スズゾルクラスターの見かけのアスペクト比は4であり、コンピューターのシミュレーションでは、アスペクト比4の場合に0.175(17.5vol%に相当)に閾値が現れているので、実験値をシミュレーションはほぼ再現している。
カテゴリー : 高分子
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昨年末にKRI開催のクローズドセミナーで招待講演を受けた際に自動車用材料としてPPSが注目されている調査結果を報告している。
自動車関連メーカーのデバイス用材料として難燃性と低誘電率の観点で特許出願が増えており、また価格も下がってきた。
弊社ではPPSの用途拡大のためには流動性と靭性の改善が重要と予測し、PH01という新素材を開発しており、すでに実用化技術を完了した。
この実用化では、カオス混合で添加剤の性能が最大限発揮され、通常の二軸混練機だけでは単なる可塑剤としての機能しか出ないという面白い結果が出た。
可塑剤としての機能だけでも既存品と異なる特徴があり、それがカオス混合でさらに高機能となる結果は、この化合物の分子設計段階で期待していた。
カテゴリー : 未分類
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近所にあった書店は無くなって10年経ち本を買おうとしたら、10分-15分歩いて駅まで行かなければ新刊本を手に入れることができない。ただしその途中に古本屋が1件生き残っている。
漫画が多いのでこれまで覗いたことは無かったが、たまたま1冊100円3冊200円と書かれた張り出しを見て、その棚を見てみた。
偶然10年以上前に購入しようと立ち読みし、面白くなかったので購入しなかった本が2冊あった。1冊は麻生太郎著「とてつもない日本」で、他の一冊は三浦展著「下流社会」である。
いずれも今購入する必要もなく、また本が書かれてから10年以上経過しているので読む時間の無駄になりそうな本である。
ただ、新刊の時にベストセラーになっていた本でもあり、10年の変遷との比較も面白いと思い、購入してじっくり読んでみた。
両者を読んで気がついたのは、時代の変化を単純にステレオタイプ的にとらえている点である。10年間社会の変遷を見てきたためにそのように感じるのかもしれない。
「日本は必ずよくなる」というメッセージや「中流意識の終焉」など、その時をとらえれば間違ってはいないのだが、両者とも人口構成の変化に対しての視点が欠けている。
その結果、ただ激励するだけ、あるいは警告を発するだけで終わっている。社会を改善するための具体的な提言が書かれていないのだ。
バブル崩壊後GDPは停滞したまま30年近く経った。いまさらこの30年間の日本の変遷に触れないが、人口構成の大きな変化は今の日本を語るうえで重要である。
すなわち50歳以上の労働者を社会でどのように活用するのかが今後の日本の成長を促すためのカギである。
カテゴリー : 一般
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本当は面白い話なのに笑えない話というシーンに何度も出会っている。例えば、無機材質研究所留学時に高純度SiCの合成実験を新品の電気炉を用いて行ったときの出来事は、人生最高の笑えない話である。
もっともこの話、第三者にとって笑えない話となるかどうか、というと「ウソだろ」という人もいれば、「わけわからん」という人まで様々だ。
しかし、実際に起きたオカルト的な出来事である。
昇進試験に落ちた、と人事部長から連絡が入り、無機材質研究所猪股先生のはからいで1週間だけ昇進試験に書いた新事業推進のエンジンとなる高純度SiCを合成するチャンスを頂いた。
この話は以前、詳しく書いているのでここでは簡単に、そのチャンスを生かした実験での出来事としておく。
1週間の実験という時間的制約があり電気炉を1回しか使えないので、そのたった1回の実験でよい結果を得られるようにお祈りをしていた。
すると、電気炉が突然暴走し、その後の偶然のアクションも加わり合成条件として最適な結果となり、1回の実験で最良の高純度SiCを合成できた。
その後、この時合成された粉体に対してゴム会社社長から2億4千万円の先行投資を受けたので、人生の大逆転劇となった本来は「笑える話」だ。
しかし、電気炉の前でお祈りして、その結果電気炉が暴走した、という現象は、無機材研の安全員会で、原因不明の出来事となり問題となった。
科学的な原因を解明するまで実験しなければならず「笑えない話」となった。
人生、誠実真摯に努力していると神様が報いてくれると亡父は口癖のように言っていたが、神様が報いてくれた出来事で結局再現できないことを示す実験結果をまとめ事態を収拾している。
カテゴリー : 一般
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アルビントフラーの第三の波はあっというまに過去の著作となり、バブル崩壊から30年近くたった。そのような状況で5Gが注目を集めている。
この変化の時代に新材料の技術が求められており、来年にかけて招待講演を依頼されましたセミナーでその内容を公開してゆく。すでに取り組んでいるメーカーも注目していただきたい内容である。
各セミナーではテーマを明確に設定し解説するので、全部参加していただければ、今起きている材料技術のイノベーションを学べる。
まず、下記セミナーでは、情報通信の切り口で解説する。希望者は弊社へ問い合わせていただきたい。
開催日時:2019年11月27日(水)10:30~16:30
会 場:ちよだプラットフォームスクウェア ミーティングルーム B1F
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-21 → 会場へのアクセス
受 講 料:45,000円 + 税 ※ 資料・昼食付
*弊社へ申し込まれますと割引価格になります。
カテゴリー : 一般 学会講習会情報 宣伝 電気/電子材料 高分子
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昔笑う犬とかいうお笑い番組があったが、笑わない男が流行語大賞にノミネートされたりして騒がれている。
笑わない男とは、ラグビー選手稲垣啓太氏だが、笑えないのかと思い、ネットで調べてみたら、思い切り笑っている笑顔が出てきた。
その他に何かのイベントで驚いている顔も出てきたりして表情豊かであり、笑わないのはセカンドキャリア目指し(?)努力中であることが分かった。
それにしても笑わない男としてプロである。そのキャラクターが崩れたシーンをTVで見かけることは無い。
かつて北海道へ出張した時に「居酒屋兆治」の撮影ロケ現場へ飛び込んだ失敗経験がある。リハーサル中なのか本番だったのか知らないが、交差点で青信号の点滅を見て走っている人と一緒に歩道を駆けだしていた。横断歩道へ飛び込もうとしたところで当方を制止した人物がいた。
にこやかに笑っているオヤジだった。最初状況が分からず、その人物が高倉健であることに気がつかなかった。思わず「あなた誰」と若気の至りで尋ねててしまった。
「うわさの健さん」と笑顔で応えられても分からなかった。役者のオーラなど出ていなくて、普通の薄汚い皮ジャンを着た「おっさん」だった。
交差点の反対側から赤信号なのにかけてきた人が、「君、申し訳ないけど撮影中なので」と言われて、その時に何かのロケと理解できた。
当方が撮影の邪魔をしたらしく、「申し訳ない」と謝りその現場を離れたが、その日の夜「居酒屋兆治」の撮影中だったことを知った。
また、「うわさの健さん」と笑顔で当方を制止した人物は故高倉健氏だった。汚い皮ジャンを着ていたこともあるが、全く気がつかなかったのは、居酒屋兆治になりきっていたのだろう。
カテゴリー : 一般
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恐らく多くの会社でもこのような状況ではないか。世界が注目するほどの大成果でも出せば、そのような人材を悪く処遇すると会社としてみっともないので大切に扱うが、国内の受賞程度では社業にいくら貢献しても軽く扱われる。
また、ゴム会社では他人の仕事を妨害し、出世競争に邁進する輩もいた。高純度SiCの事業を住友金属工業とJVとして立ち上げた後、当方が転職した原因でもある。
それが日本のサラリーマン社会と言ってしまえばそれまでだが、成果を多少出しても出さなくてもサラリーマンの終わりは変わらないのである。
ちなみにゴム会社では、先日のノーベル賞よりも早くLi二次電池を商品化し、日本化学会化学技術賞を受賞しているが、その受賞者の一人は、受賞直後に事業をたたみ他社へ転職している。
インタカレーションに気がつくかどうかが分かれ道となり、負けが見えていても事業化し技術賞をとる鮮やかさは、ドラマを見ていたような展開だった。
組織に定年というものがある以上そのシステムをどのようにうまく機能させて年配技術者を定年まで満足に処遇するかは難しい問題ではあるが、テーマを強引に推進して技術賞をとる、といった会社の活用の仕方も問題である。
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