ある皮革加工会社から依頼されて、皮革を難燃化した。予算が少ないので2日間の特別作業だが、何とか技術開発できた。
実は昨年、1年間の契約で同様の依頼を受け、ホスファゼンを使用し革の鞣し工程に使用可能な新技術を開発して特許出願を完了している。
しかし、その後使用したホスファゼンの生産が中止になったため今回は別の技術を開発する必要があった。しかし、予算が無いので2日間の限定で、と依頼されたので、なりふり構わず既製品のハロゲン系難燃剤を使用し、技術を作り上げた。
既製品と言っても、革の鞣し工程用の薬剤が販売されているわけではないので、うまく既存の工程に合うようそれなりの技術開発が必要になる。
あらかじめ界面活性剤を数種用意して取り組んで、無事1日で技術を作り、残り一日で効果の再確認をおこなって引き渡しした。
昔先端技術で高偏差値の研究者が数名一年間取り組み技術開発は不可能と結論が出された電気粘性流体の増粘問題を一晩で解決した「技術開発の方法」を今回用いている。
ただ、昨年は環境対策が技術開発目標としてあったので難燃剤の選択に時間が必要だったが、今回は昨年度の経験を使用でき、そこでなりふり構わず、昨年検討から外したハロゲン系難燃剤を検討することにした。
中部大学武田教授も指摘されているが、ハロゲン化合物+三酸化アンチモンの組み合わせは強力でおそらく何でも難燃化でき、今回も3時間程度でその機能最適化までできた。
ところが、昨年開発したホスファゼンシステムでは、燃焼時に煙が少なく難燃化できたのに、今回の系はいかにもの色をした煙が大量に出る。
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実験は仮説を確認するために行え、は、科学こそ技術開発の唯一の方法と信じられていた時代の考え方である。
企業の研究所において部下をこのように指導されている方は今でも多い。しかし、技術開発において実験の目的はそれだけではない。
むしろ、実験を仮説確認のためだけという考えのほうが間違っている。アカデミアにおける実験ならばそれでも十分かもしれないが、技術者にとって実験は機能確認のために行う場合が多い。
タグチメソッドでは、まさに基本機能のロバストを確認するために実験を計画する。効率を上げるためにラテン方格を利用したりもする。
また、機能を確認するためだけでなく、新しい機能を探すために実験を行う場合がある。
この実験の目的や方法が意外としられていない。昨今の新技術の話題は生化学や通信情報分野が多く、20世紀にあれだけ騒がれた材料分野では、ほとんど新技術の話題が無くなった。
生化学や通信情報分野の新技術に新材料技術も必要なはずだが、例えば高周波対応の材料については従来の素材の科学的に自明の方法による改良技術しか話題になっていない。
10年ほど前に負の誘電率が少し騒がれたが、それに対応した材料技術を特許で探しても公開されてきていない。
実は負の誘電率については1990年代に実験を行い気がついていたが、科学的にあり得ない、と否定されたのでそのままにしていたが、最近面白い実験結果が出た。
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仮説を確認するために実験を行うのは科学者だが、技術者は機能を確認するためにあるいは新たな機能を見つけるために実験を行う。
タグチメソッドでは、基本機能の確認をラテン方格を用いて行うが、これは試行錯誤法の一つである。また、故田口先生もタグチメソッドは実験計画法ではないと言っていた。
計画された実験でなければ試行錯誤である。タグチメソッドでは試行錯誤を効率よく行うためにラテン方格を利用しているにすぎないのだ。
だからタグチメソッドで時としてびっくりするような結果が得られたりするときもある。これも故田口先生は、そのために制御因子は大きく変動させるように指導されていた。
さて、実験結果でいつも科学の真理に基づく結果ばかりが得られるわけではない。
例えば電気粘性流体の耐久性問題では、界面活性剤では問題解決できないという科学的に緻密で完璧な論文があったにもかかわらず、界面活性剤を使い一晩で(今ならば荷重労働、さらに残業代も支払われていないので典型的なブラック企業の実験となる)問題を解決している。
この時、科学的に完璧な論文を見せていただいてなかったので、問題解決できても興奮しなかった。住友金属工業(当時)とのJVが立ち上がり高純度SiCの業務に専念したいために余分な仕事を早く解決したいだけだった。
しかし、これまでの人生でビックリするような実験結果は問題解決よりも、「こんな現象が起きたら面白い」という興味半分の実験で得られている。
いくつかあるが自慢話のようになるのでここで書かないが、神がかり的な実験結果を一つ紹介すると、初めて高純度SiCを製造した実験では、必死のお祈りがプログラムコントローラーを暴走させて、その結果最適条件で熱処理され、黄色い高純度SiCが得られた、という冗談のような実験がある。
(これは、当時の無機材質研究所で行われており、多数の目撃者や原因不明の暴走ということで安全委員会まで開催されている。ただし、安全委員会では、必死でお祈りしていたという証言をしていない。)
この30年以上前の体験は、今でも鮮明に思い出すことができる。神の存在を信じることになるのだが、どのような神なのかは無信教なので具体化されていない。
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A,B2種類の物質が固体なり液体の場合、両者に必ず界面が生じる。この時それぞれの表面における分子の自由エネルギーは、内部に存在する分子の自由エネルギーよりも大きい。この状態から系全体のエネルギーを最小にするように形状が決まる。(この捉え方は間違っていない。)
物理化学では、溶解状態と分離状態の取り扱いについて理想溶液を前提にしている。すなわち混合はランダムに生じ、エントロピー項はモル分率だけで表現できる、と仮定して溶解について議論を進める。(高分子についてこの仮定が不十分であることは明らかである)
この低分子の溶解理論において最初からすでに誤差が入っていることに注意する。さらに溶質と溶媒との間の凝集力が分散力(ファンデルワールス力)だけで議論できる、とする正則溶液(regular solution)という前提も出てくる。
有名なHildebrandの溶解性に関する概念では、液体の凝集エネルギー密度を溶解性パラメーター(Solubility Parameter:SP)と定義している。
この時の熱力学的前提条件として、溶液は正則容液であること、また、分子間力は分散力に基づく分子間力のみ、となっている。
そして、モル凝集エネルギーをE、モル容積をVとして、溶解性パラメーターδ = (E/V)1/2を表現している。この定義により、δの近い物質同士では、理想溶液の混合を前提にして相互に溶け合う。
これに対して、Hansenが、分子間力の相互作用について分散力成分のみで処理できないとし、分散力相互作用(d)、極性相互作用(p)、水素結合性相互作用(h)の総和が溶解性パラメータ、すなわち(δtotal)2=(δd)2+(δp)2+(δh)2 であるとした。
その後も、この概念の拡張は行われているが、拡張された概念であっても皆正則溶液という制限がついていることを忘れてはいけない。一般に行われる高分子の混練においてそのような系は存在しないのである。
混ざる議論について基本的にこのような原則で現象を眺めている、ということを忘れてはいけない。おかしな現象が現れてもおかしくないのである。
混練で起きている現象は、科学で論じられた教科書の内容をはみ出すことがあるのだ。それならば、アイデアも大胆に展開したほうが新たな技術を生み出すチャンスが増える。
PPSと6ナイロンを混練したところ、科学の真理に反する透明な樹脂液が出てきて、腰を抜かした人がいたが、当方はカオス混合の成功で飛び上がって喜んだ。
但し、目の前の現象は、科学を否定しているのではない。科学で解明されていない領域の現象が起きているにすぎないのだ。それは、混合に関する科学が大変狭い領域の現象について真理を明らかにしただけで、科学で解明できていない現象がまだあることを示している。
余談だが、実験を何のために行うのかについて、諸説あるが、新しい現象を見出すために行うのも実験の目的の一つであり、またこれは実験の最大の楽しみである。
仮説を確認するために行う実験は大切かもしれないが、その実験が新しい現象を生み出さないようでは、面白みが無い。単なる自己満足で終わる場合もある。
誰も見たことのない新しい現象が目の前に現れたとき、人生最大の興奮状態になる。最近は実験をするときに命を心配するようになった。
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高分子のブレンドや添加剤について机上で検討するときに、SP値が使われることが多い。
SP値は、例えば高分子や添加剤に含まれる官能基の引力定数表の値を用いてSmallの方法やOCTAなどで計算もできる。
しかし、このような計算値ではなく、SP値が既知の溶媒を用いて、高分子なり添加剤をその溶媒に溶解して、その溶け具合から決定する方法が良い。
なぜなら、Smallの方法で得られたSP値の信頼度について、筆者の経験ではせいぜい60%程度だからである。
また、SP値が既知の溶媒を用いて評価する方法では、無機フィラーの表面についてもSP値という概念に展開可能である。
すなわち、混練では、高分子へ微粒子を分散する場合があり、その時に微粒子の表面と高分子の濡れで分散効率は変わる。これは混練機の性能よりも大きく影響する場合がある。
余談だが、混練のシミュレーターを使ってみて理解できたことだが、シミュレーターには配合成分の相互作用に関する情報を入力できないものもある。また入力できたとしても、不十分な情報しか入力できないソフトウェアーも存在する。
混練のシミュレーション結果ぐらい当てにならないものはない、というのがそれを使用した印象である。
さて、計算により求められたSP値の信頼度が低い理由として、低分子の溶解理論から高分子の相溶に至る理論の拡張に原因がある、と思っている。
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情報通信分野で5Gが注目を集めています。5Gで世の中がどのように変革されるのか。
高分子材料の誘電率制御に関して、下記のようにセミナーを開催します。
弊社へ申し込まれますと、36,000円(消費税含まず)となります。
記
1.主催 サイエンス&テクノロジー
2.日時 2019年8月30日(金)10時30分-16時30分
3.場所 品川区大井町きゅりあん
4.詳細 https://www.science-t.com/seminar/B190850.html
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混練では、異なる一次構造の高分子(ポリマー)を複数ブレンドするケースは多い。ここでは、形式知のポイントの整理にとどめ、混練時に注意すべき現象については経験知に基づき説明する。
具体的な細かい議論については、バーローやムーア、最近であればマッカーリとサイモンによる物理化学の教科書、あるいは高分子の物理に関する書籍を読んでいただきたい。
ただし、高分子関係の教科書の中には、低分子の溶解理論から議論せず、いきなりフローリー・ハギンズ理論が出てくる場合もある。
物質の溶解現象に関して熱力学の形式知は体系化されたが、低分子から高分子にかけての拡張についてその体系に少し危うさがある。
そのまま実務で使用していると大切な現象について形式知に邪魔されて見落とす場合もある。
高分子材料の混練技術について考察するときには、形式知と経験知を日々正しく分離して整理する努力をいとわないことがコツである。
混練プロセスでは、時として形式知を疑いたくなるような現象が起きたりする。しかし、それは形式知が正しいとか正しくないとかいう議論の前に、非平衡における現象について形式知の体系が未だできていないことに注意する必要がある。
そのため、奇妙な現象に遭遇したら、信頼できる専門書かアカデミアの研究者に相談されることを勧める。
ただし、アカデミアの先生の中には泥臭い現場情報を不得意とされる方もおられるので注意を要する。「know who」は、「know how」同様に重要である。
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高分子の材料強度は、経験的に弾性率と靭性の関数、すなわち強度=f(弾性率,靭性)と表現できる。
弾性率はマトリックスとその補強成分で決まり、成形体密度と相関する。しかし、靭性(シャルピー衝撃強度やアイゾット試験データ)は密度に依存しない。
横軸に射出成形体の密度を、縦軸には弾性率((測定値/100)-10)と曲強度、シャルピー衝撃強度をとり、各種ポリマーアロイと混練条件の異なるサンプルについて物性測定された結果をプロットする。
得られたグラフにおいて、Y軸に平行なプロットの群は、ある試作条件におけるサンプルについて曲強度、シャルピー衝撃強度を測定して得られたデータの平均値の1セットである。弾性率データは曲強度のSS曲線から採取する。
ポリマーアロイに配合された成分は皆異なるため、マトリックス主材以外の成分とプロセシングの異なるポリマーアロイに関して強度の密度相関をこのグラフは表している。
弾性率は主にマトリックスとサンプルの密度で決定されるが、同一マトリックスなのでこのグラフでは密度だけに相関している。
曲強度については、弾性率と相関するサンプル群以外に相関しないサンプル群があり、相関しないサンプル群を整理すると衝撃強度に相関している。
すなわち、このグラフから経験知である強度=f(弾性率,靭性)と捉えてよい。
さらに、このデータは、強度のばらつきは弾性率と靭性のばらつきに支配されている、と読み取ることも可能である。
この時、弾性率は密度に依存し、靭性は構造の不均一性(靭性に影響を及ぼすサイズ、800nm以上のサイズ)や欠陥に支配される。
このような考察を進めてゆくと、常に一定速度で押し出されているストランド段階のばらつきは、密度あるいは欠陥のばらつきが正規分布で揺らぐと期待され、人手による射出成形では、そのスキルに左右されたばらつきとなることが予想される。
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ストランドと成形体それぞれの物性評価結果において、ロバストにどのような差異が出るのだろうか。
この場合、タグチメソッドではなく、ワイブル統計を使用して信頼性の評価を行ったほうが良いのかもしれない。
すなわち、ストランド段階の物性評価試験データと、そのペレットから製造された射出成形体の物性評価試験データについてワイブル解析を行い、両者にどのような関係があるのかが得られればペレット段階の品質評価の位置づけが明確になる。
例えば、高分子成形体の物性で必ず測定されるのは、引張強度や曲強度、あるいはシャルピー衝撃試験またはアイゾット衝撃試験などの力学物性である。
これらの力学物性は、射出成形体であればISO527あるいはJIS-K-7161に測定が記載され、その測定に用いる試験片作成のための金型も市販されている。
この比較実験を行う時に、ストランドの試験サンプルをどのように作成するのかが問題となるが、仮にストランドのまま評価したならば、射出成形体サンプルでは複合ワイブル分布となり、ストランド段階では破壊モードが一様となる可能性がある。
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13日の夜に「理想の住まい」という講演を拝聴した。実は講演者は同級生で、我が家を建てるときに旭化成ヘーベルハウスにするのか講演者に頼むのか迷ったが、旭化成の営業担当が3000万円台の見積書を持ってきたので旭化成に決めてしまった。
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決めてからびっくりしたのだが、見積内容は外側だけの価格と言われた。内部の設計まで詳細を決めてゆき、最終段階に渡された見積書では、軽く倍になっていた。契約書に判を押した後である。最初の見積書段階で友人に相談すべきだった。
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最初は友人の誠実な見積書の価格が高かったが、内装も含めた最終見積もりでは友人の見積もりが3割以上も安くなった位置づけになる。しかし、その後ローンの手続きやら何やかやを営業担当が親切に進めてくれたので結局旭化成ヘーベルハウスで建てることになった。
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友人には悪いことをしたという後悔は、25年経った今も残っている。講演を拝聴してその思いはますます強くなった。
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後悔の理由について事実のみを書くと、大手メーカーの建築だから安心と言うことではないのだ、という一言に尽きる。杭打ち不正まがいのことも体験する。今なら迷わず久間建築設計事務所に依頼する。
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講演では今も昔も大手プレハブの新築に占める割合は変わらないと説明された。大手の後悔するような建築体験の噂の影響もあるのだろう。
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ヘーベルハウスで遭遇した問題は以下。これは噂ではなく事実である。
1.新築直後の雨漏りと、天井の補強板施工忘れ。それでも合格として引き渡された。
2.建築後やれ外壁塗装のメンテやら屋根のシート張替やら、スケジュール通り実施しないと品質保証が受けられなくなる、としつこい営業訪問。
3.2に反して定期補修工事後のクレーム対応が悪い。施工後ヘーベル板の破損や外観不良などのクレームを伝えて半年たっても未だに満足な対応ができていない。
4.外壁の工事でヘーベル板が痛み、ところどころ欠けたり、外観不良があっても点検は合格となっている。
5.外壁工事の時、扉の養生を忘れたために玄関扉が汚れたので、紆余曲折後張り替えたがその料金を支払うことになった。
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大手メーカーはどこでもこのような問題が起きており当たり前のことなのだろうか。扉の養生を業者が忘れた問題から見えてくるのは、クレーム対応では責任回避のためにいかにしてロジックでお客様を説得してお金を支払わせるのかと言う不誠実さである。個人の設計事務所では次の仕事が無くなるような問題である。家を建てるなら個人の設計事務所の方が安心なのかもしれない。料金も決して高くない。家を建てられる方には久間建築設計事務所をご紹介します。
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