PC/ABSは、PCにABSをブレンドしたポリマーアロイだ。ABSは三成分のポリマーをブレンドし高靭性化に成功したポリマーアロイで、PCは非晶性で透明度が高く高靭性のポリマーである。
PC/ABSは、高靭性のポリマーの組み合わせなので、高い靭性とPCの特徴である意匠性の優れた樹脂になる、と信じられている。
ところが、PC/ABS以外にPC/PSやPC/PETなどが開発されると、高いPCに安い樹脂をブレンドしてコストダウンを図った樹脂ではないか、と思いたくなる。
この視点で、PCに廃材となったいろいろなポリマーをブレンドしてみると、PCが70%以上含まれている限り、そこそこの活用できそうなポリマーができる。
PCで簡単にできたなら、廃材であるPETボトルを70%以上含有した樹脂も簡単にできるだろうと思ったら、これが難しく、PETボトルの射出成形体よりも優れた物性の樹脂を作り出すのに3ケ月必要だった。
マトリックスを構成するポリマーがPCからPETに代わると、樹脂の結晶化を制御しない限り、高靭性の樹脂を開発できない。
結晶化を制御できても樹脂の溶融時の粘度の温度依存性を射出成型に適合するよう制御しなくてはいけない。
少なくともこれらの問題を解決しなければ多成分のポリマーアロイを開発できないことが、開発をスタートして明らかになったので、データ駆動型開発手法とカオス混合の両者を用いて3か月で目標となる樹脂を開発した。
できあがったポリマーアロイは、難燃材を使用していないのにUL94-V2試験に合格する難燃性を新たな機能として獲得した。ポリマーアロイの面白さである。
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現象を眺める視点は、科学誕生前と後では大きく変わった。科学誕生以前は、とにかく自然界に潜む機能をよく観察しようと、人類は現象を眺めてきた、と「マッハ力学史」には書かれていた。
たとえば、火の発見は、人類の進化の歴史において重要な出来事だったが、このヒントが山火事だった、と小学校の教科書に書かれていた。
すなわち、人類の生活に役立ちそうな奇妙な現象を見つけては、それを観察し、生活に導入してきた歴史がある。それを面白く描いた漫画「テルマエロマエ」は、文句なくおもしろかった。
ローマ時代の職人が、現代にワープし、観察したお風呂をローマ時代に再現するのである。電気やガスなど無いのに、ウオッシュレット付き水洗便所まで作り上げている。
科学誕生後、現象を眺める視点が変わった。仮説を設定してから現象を眺め、仮説との整合性を人工的な現象で確認している。
しかし、科学誕生以前から人類が続けてきた観察の姿勢は重要である。少なくとも技術者には、現象の中に新たな機能を見出す視点が求められる。それができなければ新技術の発明などできない。
仮説を設定してから実験を行う姿勢は科学者として大切である。しかし、実験で発生した現象を単なる仮説の検証の視点だけで見ていると、新発見を見落とすことがあるから注意が必要である。
仮説の検証とともにそこで機能の確認もできる実験を行いたい。タグチメソッドはその一つの方法である。
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STAP細胞の騒動は、その後どうなったのだろう。ドイツの科学者がSTAP現象を発見したとのニュースが騒がれた後、週刊誌に小保方氏の私生活が紹介されていた。
この手のキワモノ事件は傷つく人が多いので隠蔽化されたりするが、その結果悪者が得をするような状態になる。小保方氏と自死されたその関係者だけが不幸をしょいこむような状態を見ると、やはり触らぬ神にたたり無し、というのは本当だろう。
当方が高純度SiCの経済的な合成技術開発をたった4日の無機材研における実験で成功させたとき、無機材研の先生方は冷静であった。
当方が企業の研究者であったこと、アイデアがその当方から出ていたが企業は見捨てていたこと、実験のゴーサインとその場の提供は無機材研だったことから、丁寧にそのあたりの調整も進められて、小生は無事(でもなかったが)ゴム会社に戻ることができた。
ゴム会社では2億4千万円の先行投資がなされ専用の研究所も建設された。当初こそ20名弱のプロジェクトで動き出したが、住友金属工業とJVを立ち上げるまで一人で死の谷を歩くことになった。
JV立ち上げ後電気粘性流体の耐久性問題を一晩で解決したり、傾斜機能粉体はじめ特殊な構造の粒子を3種ほど合成したところFDが壊され始めた。
やはり触らぬ神にたたり無し、は本当である。一人でJVの仕事をしていたので大変だったので、電気粘性流体とのかかわりなど持たねば良かったのだが、電気粘性流体の事業化まで程遠い状態を見捨てておけなかった。
転職後、負の誘電率というキワモノと遭遇した。福井大学で客員教授をしながらその扱いを悩んだが、結局インピーダンスに絶対値をつけて材料設計パラメーターとした。
このころになると、たたりを避ける道を選ぶようになっていた。科学ではなく化学の世界には化け物が今の時代でも登場する。
PPSと6ナイロンの相溶も化け物現象である。これをカオス混合という技術で製品化したが、いまのところ何もたたりが無いがーーーー。
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教科書を読むと誘電率は正となることを前提に式が展開されている。しかしロシアの科学者が負となる現象も存在することを予言してから、その存在はタブー視されてきた。
STAP細胞と似ている話だ。当方は酸化スズゾルを用いて写真フィルムの帯電防止層を開発していて負の誘電率と遭遇した。
従来の評価技術と異なるインピーダンス法(容量法)でサンプルの電気特性を調べていて発見した。しかしキワモノ的現象なので、インピーダンスの値に絶対値をつけてパラメーターとした。
これは1994年の出来事だが、2005年には中間転写ベルトの開発を行っていて出くわした。この時は、負の誘電率のベルトでは使い物にならないので廃棄すればよかった。
二つの体験は、パーコレーション転移を制御していて偶然発見している。最近この負の誘電率に関し、アカデミアの先生方による特許出願が相次いでいる。
すでに11件出願されているが、いずれも概念特許に近いものだ。実際に量産可能なメタマテリアルではない。
しかし、当方は量産機で負の誘電率の物質を偶然作り出したのだ。負の誘電率の材料は、帯電防止層には活用できたが、中間転写ベルトでは転写効率が悪いだけでなく画質も欠点が出たのでボツとなっている。
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PETボトルに使用されているPETや、ポリ乳酸樹脂は、溶融すると粘度が低く燃えやすいので、難燃化が難しい樹脂である。
さらにPETは、高温度から温度を下げてゆくときに、結晶化速度が速いので射出成形が難しい樹脂で、フィルムやブロー成型用として用いられてきた。
PETボトルのリサイクル材を複写機に環境対応樹脂として搭載しようとすると外装材であればUL94-5Vbレベルの難燃性試験を通過しなければいけない。
内装材であれば、やや低いUL94-V2レベルで良いが、それでもリサイクルPETを環境対応樹脂として電子写真機などの電子機器に用いるには、難燃化技術と良好な射出成形体を製造しうる配合設計技術が不可欠である。
この時PCという非晶性樹脂に分類されている結晶化しにくいが結晶化する樹脂とのポリマーアロイが重要な機能材として利用される。
PCは、50年前「象が乗っても壊れないアーム筆入れ」として有名になったポリカーボネート樹脂のことである。旅行鞄にもこの樹脂が用いられている。ただし、コストダウンのためにPCに30%程度ABSやPSなどの安い樹脂とのポリマーアロイを用いている鞄もある。
このPCの優れている点は、靭性が高いだけでなく高分子量体では空気中で燃えなくなる。すなわち難燃性が高く強度の強いマトリックスとして利用可能で、PCをマトリックスに用いて多くのポリマアロイが開発されている。
強度と難燃性、コストのバランスを取るとPCは、65%から75%程度含有されている必要がある。電子写真(レーザープリンター)複写機に外装材用に搭載されたポリ乳酸樹脂にはPCが70%前後含まれている。
ゆえに外装材用リサイクルPET樹脂は、PCを70%前後含む樹脂として設計され実用化された。しかし、これよりもPETの含有率が高いPET80%を含み難燃剤を含有していなくて、UL94-V2に通過し射出成型性も良好なリサイクルPET樹脂というものも開発されている。
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PPSは、電子機器用高分子として売り上げが伸びている。欠点はその脆さである。結晶化しやすいので、容易に結晶成長し脆くなる。
押出成形でフィルムを製造すると金属音のような高い音を発するので、弾性率の高さを音で実感できる。
このPPSにカオス混合で6ナイロンを相溶させると、非晶質PPSフィルムを製造でき、その音色はボコボコと低い音となる。
PPSと6ナイロンはフローリー・ハギンズ理論のχの値が0より大きいのでスピノーダル分解するが、その速度は室温で3年以上と遅い。
また、スピノーダル分解したとしても生成する6ナイロンの島相はナノレベルなので、PPSと6ナイロンを通常の方法で混練したコンパウンドから作られたフィルムよりも靭性が高い。
PPSと6ナイロンのポリマーブレンドの基本特許は切れているが、カオス混合による変性技術の基本特許は、まだ6年残っている。
ただし、この特許抜けを可能とする技術が存在し、まだ出願されていない。ご興味のあるかたは問い合わせていただきたい。
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チタン酸バリウムというセラミックスは強誘電体として知られている。ところがこの微粒子をポーリングしてポリウレタンと複合化しても、10vol%前後ではそれほど複合体の誘電率は上がらない。
面白いのはポリウレタンのソフトセグメントの活性化エンタルピーが下がり、誘電緩和が早く起きるようになる。
これは、よくわからない現象であるが、1ミクロンほどの粒子でも一次構造のブラウン運動に影響することを示している。
誘電緩和速度が速くなるということは、誘電損失に有利となり、この観点の特許が出ている。
5Gで求められているのは、低誘電率化とtanΔの低減であるが、伝送損失に関しては、誘電率は平方根で影響するが、誘電正接は1次の項で影響する。
ゆえに材料設計にあたり、誘電正接だけでも下げてやろうという時にこの不思議な現象を応用することができる。
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コロナ禍で新しい生活様式が叫ばれている。一つはマスクである。最近マスクをめぐっては飛行機の搭乗でひと悶着があった。
時代とともに価値観が変われば生活様式も変わる。今は、誰が感染しているのかわからないからマスクをしましょう、というのが常識になった。
最初マスク不足で社会が騒ぎ始めたとき、当方は妻が手作りのマスクをして乗り切った。今も様々な模様のマスクを毎日楽しんでいる。
価値観にもよるが、世の中で一つの流れができて、それが慣習となるのなら、早めに取り込んで楽しんだほうが精神衛生上好ましい。
誰だってマスクをつけて歩くのは不快だろう。だったら快適にマスクをつける生活を工夫した方が良い。
TVで断捨離が報じられた時に、ギターはじめ一部の趣味の用品を廃棄し始めた。老後の生活様式の準備と思ったがコロナ禍である。
高校の同級生の友人が70万円でクラシックギターを発注した、と聞いて気がついた。老後に備えた断捨離が果たして楽しいか、ということを。
亡父は死ぬ間際まで読書をしていた。そしてその感想を書いている途中で、入浴して亡くなっている。残された兄弟は4人だが後片付けは当方に託された。
その時大量の本の始末が大変だった思い出があるが、父親の生き方を知ることができた。一度は断捨離に走ったのだが、コロナ禍でいつ不遇の死を遂げるかもしれないなかで、その準備をする考え方がよいのか、と疑問に思った。
残されたものに迷惑をかけない生き方はそれなりに共感を得るかもしれない。一方で残されたものに対する思いやりも大切である。
宗教も消えてゆく時代に死者との離別をどのように清算するのか。残されたものに結論を出すのが難しい問いである。
生きている間は力いっぱい生きる、やはりこれが大切である。残されたものも故人が力いっぱい生きることができたことを知れば救われるところもある。少なくとも当方と亡父との関係において、力いっぱい生きた証は一つの救いだった。
今後土日を利用して無料セミナーを行いますので希望者は問い合わせていただきたい。他のセミナー会社に影響しないように、当方の知識の伝承を毎回2時間程度で行います。
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高分子の誘電率を分子設計で制御するときに、科学的で有名なClausius–Mossottiの式がある。光学では屈折率に置き換えた、ローレンツ・ローレンツ式として知られている。
この制約から、誘電率を高分子の誘電率を上げるときにも下げるときにも制約を受けることになるのだが、上げる方についてはペロブスカイトでも混ぜてやれば高分子単体で実現できない領域まで上げることが可能となる。
しかし、2.5より下げる場合には結構むつかしい。これは、セラミックスでも難しく、low k 物質が2000年前後に話題となった。
この時にはシリコーン系の発泡体で実用化されているのだが、高分子でも空隙を入れて低誘電率化する以外に科学的には方法がない。
しかし、周波数領域を限定してやれば方法がありそうにも思われる。どのようなアイデアがあるかは、火曜日のセミナーでお話しするので弊社にお問い合わせください。
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材料の誘電率制御について、これまでHighkからLowk材料への流れが20世紀末から21世紀にかけて起きている。
当時は特に高分子材料に限定されていなくて、シリカの空隙材料が注目された。そして層間絶縁膜として実用化された。
今、高分子の低誘電率化が技術ニーズとして注目されている。そして低誘電率ポリイミドが開発されたりしている。
高分子の高誘電率化では、フッ化ビニリデンの類で実用的な材料が商品化されたが、低誘電率化については、誘電率が3前後の材料が限度で、誘電率2以下となると空隙材料以外では実現が難しい。
ところが、負の誘電率が21世紀になって真剣に議論されるようになり、数年前から特許も出始めている。
負の誘電率については、当方も帯電防止剤の開発や中間転写ベルトの開発で実際に測定してびっくりしている。アカデミアの先生にご相談したら「キワモノ」的だ、とのアドバイスがあったので、インピーダンスに絶対値をつけて発表した。
負の誘電率の「偶然」開発体験から、高分子の低誘電率化の可能性を高める技術になるのではないかとの予感をしている。詳しくは来週火曜日に開催される技術情報会のセミナーで説明するのでご興味のあるかたは問い合わせていただきたい。
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