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2019.03/02 ミラーレス1眼の秘密

ミラーレス1眼の流れを作ったのはソニーで、去年キャノンとニコンからもようやくミラーレス1眼が発売された。ソニーのミラーレス1眼をみながら早く他社から同一コンセプトの製品がでないかと心待ちにしていた。

 

材料部分に難があることを覚悟でZ6を購入したが、ファインダー設計はさすがはニコンと思わせる使いやすさだ。明らかにソニーのファインダーより良い。ソニーは高額製品ではニコン並みのファインダーが使用されているが、安いカメラのファインダーはダメである。

 

いろいろ書きたいことはあるが、各社共通したミラーレスカメラの長所がある。それは、それぞれのミラーレスカメラにアダプターを付ければ、旧一眼レフのレンズが、メーカーを問わず使用できるのだ。

 

さっそくニコンZ6を購入し、ペンタックスのレンズを取り付け撮影してみた。絞り込み測光かつマニュアルフォーカスという制約はあるが、調子よく撮影可能である。

 

もちろんニコンの一眼用レンズならば、マウントアダプターを介して、ペンタックスよりは快適な撮影が可能である。ペンタックスのレンズを使った場合には、レンズ情報がカメラに伝わらないので焦点が合ったときにマーカーが点滅しない。

 

しかし、Z6のファインダーはZ7と同一品質で大変見やすく、ピントの山をつかみやすいので、マーカーの点滅は不要である。その結果、ニコンカメラのボディーにペンタックスのレンズをつけて撮影する機会が増えた。最近は、これならばペンタックスカメラのボディーを買う必要が無い、と思っている。

カテゴリー : 一般

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2019.03/01 高分子物理は材料科学最後の荒野

今年度のナノテク展で高分子材料関係のシンポジウムを聴き、がっかりさせられた。詳細は以前のこの欄の報告を読んでいただきたいが、高分子物理に対する展望をシンポジウムでは聴きたかった。

 

1990年前後にレオロジーについて大きなイノベーションがあり、ダッシュポットとバネのモデルは忘れようと宣言されたのに、時折学会発表にゾンビのごとくバネとダッシュポットのモデルが登場していたりする。

 

バネとダッシュポットのモデルは技術では便利な考え方だが、科学ではもう使わないようにしてもらいたい。高分子物理は金属やセラミックスと異なり扱いにくい分野である。なぜなら高分子材料は、それら二つの材料に比較してプロセス依存性が大きな材料だからだ。

 

すでに特許が公開されたので話すが、オリゴマー添加剤という面白い添加剤がある。低分子可塑剤にはみられない挙動が観察される。例えば、オリゴマー添加剤を添加した処方について、カオス混合を行った場合と行わなかった場合では異なる物性のコンパウンドが得られる。

 

詳細は問い合わせていただきたいが、面白い現象は、オリゴマー添加剤はそれなりの分子量があるので、ラメラから球晶まで育つのだ。すなわち可塑剤として機能しない、といえばご理解いただけるかもしれない。

 

高分子の融点だけは下げたいが、ガラス転移点を下げたくない時にオリゴマー添加剤を活用可能である。もちろんこの添加剤はそれなりのデザインが必要であるが、今この添加剤を用いて様々なコンパウンドを開発している。

 

高分子物理がまだ未熟なのでこのあたりの学術情報は存在しない。だから技術として好き勝手なことができる。すなわち特許を多数書くことが可能である。ご興味のある方はご相談ください。

カテゴリー : 高分子

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2019.02/28 PPSと6ナイロンの相溶技術(8)

ミッドレンジの複合プリンターの中間転写ベルトには、一般にポリイミドが使用されている。理由は、ベルトの周方向の抵抗ばらつきに対して厳しいスペックが定められているからだ。

 

ポリイミドのベルトは溶媒キャスト成膜で製造するので、周方向の抵抗安定化は容易だった。これをPPSの押出成形で作ろうとすると強度の問題以外に周方向の抵抗安定性を管理する技術が必要になる。

 

強度の問題については6ナイロンを添加して靭性を高めることができたのだが、その代わり、6ナイロンの島相が動く問題が生まれ、抵抗安定化が難しくなった。

 

6ナイロンをPPSに相溶させれば強度と抵抗安定化の両方の問題が解決するのだが、フローリー・ハギンズ理論から、その考え方は科学的に否定される。

 

ところで自然現象に潜む機能には、科学的に不可能であっても技術で実現できる場合がある。そもそも非平衡状態で行われる生産で発生する問題を科学で忠実に考えようとする姿勢がおかしい。

 

しかしこのようなおかしさについて意外と気がつかないものである。現場で発見した現象を現場で再現させて、それをモデル化して改めて問題を考え直す作業は、それが非科学的であっても、また、たとえ思いつきであっても新たな技術を創り出すには良い方法である。

 

思いつきの技術を否定される方もいるが、形式知や経験知、暗黙知に裏付けられた思いつき技術であれば、科学技術に匹敵する。時には、この中間転写ベルト生産技術のように科学技術の成果よりもロバストが高い場合もある。

 

当然のことだが、なんら知識の裏付けのない思いつきは、技術と呼べない。正真正銘の妄想である。単なる妄想かあるいは知識に裏付けられた崇高な思いつきであるかの評価は、科学第一主義では、全部妄想に見えてくるから注意が必要である。

 

ゴム会社の新入社員時代に2ケ月現場実習を体験しているが、これは貴重な財産になっている。科学では説明できない数々の現場の技術を目にしたとき、科学とは何かという疑問がわいた。

 

一方そのような現場を見て、非科学的な技術があふれた会社を否定し、転職して会社の社長にまでなった人物がいる。技術が科学的に開発されることが最重要という価値観の社会では当方の様な考え方は受け入れられにくいが、科学を前面に出せば容易に評価される。

 

しかし、中間転写ベルト実用化過程で開発されたカオス混合装置は、科学的というよりも経験知と暗黙知の具現化された技術であることをあえて力説したい。そのような技術でもトラブルなく20年近く安定に稼働している。

 

同様に試行錯誤で完成したフェノール樹脂とエチルシリケートのポリマーアロイを前駆体として用いた高純度SiCの事業は30年続き、昨年暮れに名古屋の会社に事業移管された。また、この技術の概念はアカデミアでも受け入れられ、同様の手法で新しい材料を生み出している研究者も出てきた。これらに限らず当方の開発成果には非科学的な成果が多い。

 

ただし、新しいモノを創り出すときには非科学的ではあるが、できたモノの解析は科学的に行うのが当方の開発スタイルであり、学位論文はその科学的成果をまとめたものである。

 

過去の雑誌「機能材料」に、2ケ月間連載で当方の学位論文の要約版が掲載されている。当方の学位論文をどなたかが編集者に推薦してくださったようだが、光栄なことである。今の時代学位論文は大量に生産されているが、このような栄誉は数少ないと思う。

 

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2019.02/27 経験知と暗黙知の重要性

20世紀には技術の世界で経験知や暗黙知がやや軽んじられていたように思う。形式知は重要だが、経験知や暗黙知も重要で、経験知を正しく伝承できるようメーカーはその仕組みを備えなければいけない。

 

PPSと6ナイロンの相溶は、形式知からは否定される現象だが、当方の暗黙知によれば発生しうる現象であった。また過去に経験知としてΧが正であっても相溶して透明になる現象を成功させた二つの経験知があった。

 

さらに、ゴム会社の新入社員研修で現場の職長から「押出成形は行ってこいの世界だ」という経験知を伝授されていた。すなわち、押出成形では、コンパウンドの完成度が低いと押出成形で狙った形状を付与することすらできなくなる、という。

 

これらの経験知や暗黙知から、PPSと6ナイロン、カーボンのポリマーブレンドの押出成形ではコンパウンドの完成度が低いことに着目し、パーコレーション転移の制御のためにはPPSと6ナイロンが相溶しなければいけない、とまで思っていた。

 

このような思いで中間転写ベルトの製造工程に立っていたので、音の変化に敏感に対応することができた。以上にのべた経験知や暗黙知が無かったなら、仮に音の変化に気がついたとしても、俊敏にDSC測定を行ったり、ベルトの廃材を集めさせる指示を出せなかったと思っている。

 

半年しかなかった開発時間において、形式知だけで対応していたら技術を成功させることはできなかった。また、カオス混合装置の発明はロール混練の経験知があったからこそ少ない実験で実用化可能な設備を完成させることができた。

 

退職直前に頂いたチャンス、高分子学会賞の審査会ではこのあたりを正直に述べて落選しているが、ポリマーフロンティアで講演できる機会を頂いた。またカオス混合装置については元神戸製鋼の技術者が自分の発明と称して講演されるぐらいの評価を頂いている。

 

ただし特許はコニカミノルタと、その別のバージョンが小平製作所から出願され登録されている。芸能界では物まねが出てくれば一流と言われているが、技術の世界でもパクリが現れれば一流である。しかも混練の世界では一流と言われている人にパクられたのだから技術者として本望であるが、偽物に騙されている人に同情する。

カテゴリー : 一般 高分子

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2019.02/26 セミナーのご案内

お客様の個別ニーズに応じて課題を絞った内容で弊社事務所において少人数セミナーを開始しました。それ以外に下記一日セミナーも従来どおり行っております。参加をご希望される方は弊社へお問い合わせください。

 

1.開発手法を中心にした信頼性工学の基礎

日時 2019年3月5日 (火)10時30分から16時30分

場所 千代田プラットフォームスクエアー

受講料 50,000円

<内容>

開発設計段階からロバストの高い製品開発を行うための手法、タグチメソッドの基礎とツボからワイブル統計まで、従来の信頼性工学の教科書よりも幅広い内容を紹介します。故田口玄一先生は、タグチメソッドは統計ではない、とおっしゃっていたその意味は重要で、一方でSN比の計算などタグチメソッドに現れるパラメーターは統計の体系とそっくりです。この点も故田口先生から直接伺ったお言葉をもとに解説します。

2.高分子の難燃化技術

日時 2019年3月29日

場所 大井町きゅりあん

<内容>

高分子の難燃化を科学で体系化するのは難しいですが、アカデミアのチャレンジ結果も出そろい経験からおおよその体系が見えてきています。混練技術にまで遡及し、経験知による体系を提示します。

カテゴリー : 一般 学会講習会情報

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2019.02/25 昨日の「いだてん」

ストックホルムまでの旅費1800円を四三の兄が田畑を売って用立ててくれた。そのいきさつも粋である。

 

一方、彼の同級生たちは後援会を組織し、募金を行い1500円を集金した。アマチュアスポーツゆえに国が派遣費用を払わなかったために生まれた小噺である。

 

昨日の噺から、四三がマラソンで十分な実力を発揮できず初回に紹介されたような結果であっても、彼が人生をスポーツに捧げた健全な精神が育まれた背景を理解できた。

 

人は、皆、多くの人に支えられて生きているのである。その意味を正しく考えてゆくと人生でうまくゆかないときにどのようにふるまわなければいけないのか、正しく判断できる。

 

決して自死では報いることはできないのだ。なぜか円谷選手のことを思い出し、涙が出てきた。昨日の「いだてん」は笑う場面が多かったのだが。

 

人生、苦しいことの方が多い。腹が立つほどの元気があれば生き抜くことができるが、絶望感に苛まれたときにどうするか。解決策として、それを一人で抱え込まないことである。

 

多くの人に支えられた体験があるとうまく抜け出す道が見えてくる。あるいは誰か支えてほしい、と願うと不思議にも誰か現れるものである(注)。それは60年以上の人生体験から若い人たちに自信を持って言える。

 

これは社会に甘えろ、という意味ではない。人が支えあって生きているのが人間社会であり、支えてくれる人を期待するのは、そこに身をゆだねたに過ぎないのだ。昨日の「いだてん」はそのような人間社会をうまく描いていた。

 

(注)湾岸戦争が始まったバブルがはじける直前、FD事件で会社を辞める決心をした。しかし、セラミックス関係の企業以外に転職先が見つからない。高純度SiCの事業化を推進したキャリアだから当たり前のことだった。その時、某ヘッドハンティングの会社から研究管理業務という提示をうけた。高分子技術分野の会社と言うことで、写真会社へ転職先を決めている。50歳を過ぎ、豊川へ左遷されたときに退職を控えた無機材研副所長から涙が出る様なお手紙を頂いた。20年近く前に約束された基本特許の報奨金を小生にくださるという。その時頂いたお金で、押出技術や混練技術に関する当時の先端情報が詰まった一冊8万円以上と言う高価な書籍を多数買い勉強することができた。サラリーマン人生は必ずしも組織から報われる人ばかりではない。人が運営する組織とは人の欲望がその機能をゆがめるものである。ゆえに処遇に嘆いたり腐ったりしてはいけない。社会に対して常に前向きに進む努力をすれば、不思議なことに組織外から支えてくれる人が現れるものである。サラリーマンは社会に向かって努力することがコツである。そもそも現代の企業活動の目標はその存在が社会のためにあるとドラッカーは述べている。

カテゴリー : 一般

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2019.02/24 PPSと6ナイロンの相溶技術(7)

コンパウンドを外部から購入しなければいけないという制約があったので、子会社の空き地に工場を建てられるように交渉を始めたら、運が良いことに豊川の近くの袋井の子会社に空き地があるという。

 

下見をしたところ、二軸混練機を2ライン置ける広さの空き部屋が偶然見つかった。その部屋の図面をもらい、形状だけ写し取って、根津にある中小企業の社長にお願いして、埼玉にその写しの形状と同じ広さを取れる空き工場を探してもらった。

 

埼玉の空き工場に、中古の二軸混練機1台設置し、ラインを組み始めた。1ケ月ほどでカオス混合ラインは完成した。そのかわり土日の休日は全部潰れるとともに、新幹線代が個人負担になった。

 

このあたりを細かく書くと愚痴しか出てこないので、ここでやめるが、問題解決の方法が見つかっても組織の協力が得られない場合には、このような個人の犠牲を払うのか、問題解決をあきらめるかの選択になる。

 

犠牲を払ったとしてもサラリーマンとして報われないことが分かっていたが、世界初のカオス混合ラインという魅力に自腹を切る覚悟をし、新たなテーマ企画をDRにかけて審議してもらった。

 

秘密の混練ラインで生産したコンパウンドを用いたところ、リサイクルコンパウンドよりも歩留まりが向上し100%に到達した。しかし、最初の企画提案で行ったDRの資料には、押出成形工程で作ったコンパウンドのデータを用いて説明している。そして、この押出成形工程を子会社の敷地にコンパウンドラインとして作り上げ3ケ月で完成させるシナリオを審議してもらった。

 

コンパウンドの生産ライン建設に本当はどれだけかかるのか知っている人などいないので、無事この企画は通過した。センター長は8000万円の設備投資を許可してくれた。この設備投資の許可を受けて、二回目のDRでは、カオス混合プロセスによる本格的なコンパウンドライン建設提案を行っている。(続く)

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2019.02/23 PPSと6ナイロンの相溶技術(6)

ゴミベルトが15kgほど集まったところでそれをハサミで切り刻み粉砕しコンパウンド代わりにベルト生産を行ったところ、歩留まりが一気に80%を超えた。

 

歩留まりが悪いので廃材リサイクルのテーマが以前から上がっていたが、それの見通しが立った、と部下の課長は喜んで今後のテーマについて話してくれた。その話をひっくり返すようで申し訳ないが、ベルトの製造ラインを使ってコンパウンドを生産しようと思う、と話したら、冗談でしょうとなった。

 

さらに、コンパウンドメーカーにお願いし、ここで使っている金型を混練機に取り付けてコンパウンド生産をしてもらおうと思っている、と続けたら、コンパウンドメーカーは承知しないでしょう、という回答が課長から返ってきた。

 

コンパウンドメーカーの担当者は承知しないだけでなかった。実際にコンパウンドメーカーとの打ち合わせの席でその話を出したら、コンパウンドメーカーの技術者から、素人は黙っとれ、と言われたのだ。

 

仕方がないので、自分でコンパウンド工場を立ち上げてコンパウンドを内製化しようと考えたら、部下の課長から、このテーマは外部からコンパウンドを購入して進めるようにDRで決まっている、とアドバイスがあった。

 

課長は真面目な人間で、堅実な仕事の進め方をしていた。歩留まり10%以下で、リサイクルコンパウンドを使えば、コストダウンが可能だという。しかしPIを用いたときよりもそれは少し改善できる程度だった。

 

彼は、それでも大きな進歩だという。量産開始までの残された時間を考慮すると、コンパウンドの生産など経験のない企業では内製化という判断は非常識だった。しかし、歩留まり10%以下の状態で量産を開始するというのも情けない。

 

リサイクルコンパウンドで歩留まりが80%を超えるならば、それを内製化コンパウンドにする考え方もある。コンパウンドメーカーが押出金型を二軸混練機に取り付けるのを拒否するのであれば、自分たちでそのようなラインを立ち上げれば問題解決できる。(続く)

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2019.02/22 昨日東大で6時間講義を拝聴した

昨日東大横井英俊教授の最終講義を拝聴しました。安田講堂で6時間行われ修了証もいただきました。講義の内容は、過去にTVで紹介された、射出成形のその場観察による研究成果。

 

大変面白かった。射出成形プロセスで大変なことが起きていることをビデオで見て鳥肌が立ちました。また高分子融体が見せる流動場での複雑な挙動を想像できる映像は、混練プロセスの重要性を認識するのに十分な情報だった。

 

カーボンファイバーが射出成型機の中で折れる映像は、圧巻だった。必殺仕事人で首の骨を折るX線映像のように何かBGMを流したくなるような迫力だった。剪断流動下でフィラーが受ける力について映像があれば難しい式はいらない。

 

一般用のビデオ映像としても使われているらしく、女性のナレーションが流れたのはご愛敬だった。シルバーなどの成形故障もあのように映像とともに解説されると何か技術として利用できないかと考えたくなる。

 

しかし、久しぶりに6時間の長丁場の授業で疲れました。一日セミナーで自分が講演するときには疲労感は無いのだが、あれだけ興奮するビデオを見せられると居眠りする時間が無く大変である。DVDも販売されているというので、購入しようと予約した。

カテゴリー : 学会講習会情報

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2019.02/21 PPSと6ナイロンの相溶技術(5)

DSCの測定結果が出るまでに、金型の図面を精査した。詳細はここにかけないが、PETフィルムに用いるTダイと明らかに異なる構造が多数存在した。

 

担当者に説明を求めると6年間の開発成果だという。すなわち、コンパウンドに問題があるにもかかわらず、金型の改良で問題解決してきた結果だった。

 

担当者は、それぞれの改良ポイントを科学的に説明してくれた。もし、歩留まりが80%を超えていたならば、その説明は称賛されるような素晴らしい内容だった。

 

担当者の科学的に完璧な説明に関わらず、現実には歩留まりは10%以下と散々な状態である。6年間科学的に金型改良を進めた結果は、半年後に生産を控えている状態ではなかった。

 

それでも担当者は、改良した瞬間はその効果が現れた、と胸を張っていた。どうやらコンパウンドのロットが変わると改良効果が消えるので、コンパウンドのロットが変更になるたびにモグラたたきのごとく改良を進めてきたようだ。

 

「科学的に完璧な説明」については、転職の原因になった電気粘性流体の開発にかかわったというトラウマがあった。担当者の説明にむなしさを感じながらも表情には出さないように配慮した。

 

中間転写ベルトという複写機の部品で一番重要なスペックは、周方向で均一な電気抵抗になっている必要があった。それも10の10乗Ωという導電性カーボンで実現するには中途半端な値である。この値を実現するにはパーコレーション転移という現象を安定に制御する技術が必要だった。

 

詳細は省略するが、カーボンの分散が究極のレベルまで実現されておればカーボンの添加量に相当する抵抗となるが、分散が中途半端であるとプロセスの途中で分散が進み、抵抗が変動することになる。

 

金型の改良の歴史は、それを意図してはいなかったが、視点を変えると分散を進める様な工夫に見えた。その工夫の中で、カオス混合に相当する分散を実現できるような工夫があった。すなわち、その工夫を一つの機能性部品として捉え、二軸混練機に取り付ければ、汎用の二軸混練機を用いてカオス混合が可能になる、と考えた。

 

DSCのチャートを見て、歩留まり向上の問題解決方針ができたことを確信し、生産の最後に毎回行われる、速い押し出し速度によるシリンダー清掃で得られるゴミベルトを収集するように指示をだして東京へ帰宅した。

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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