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2019.03/22 高分子材料と無機材料

セラミックスや金属材料は、おおざっぱに言えば結晶でその物性が決まる。非晶質であるガラスについては、長い間研究されてきたが、結局非晶質体それぞれの組成に応じた研究が展開されている。そして非晶質体の組成が分かると、物性予測がほぼできるところまで科学のレベルは来ている。

 

ゆえに結晶を非晶質相でかためたセラミックスでも結晶と非晶質相の組成が分かるとほぼ電気物性ならば予測がつく。力学物性ならば、欠陥の有無や分布からおおよその予測がつく。

 

しかし、高分子材料では無機材料のようにはいかない。無機材料でも実際は先に述べたような簡単な問題ではない、と言われる研究者がおられるかもしれないが、高分子材料とセラミックスの両方を研究した経験から、予測の困難さでは、高分子材料がセラミックスよりもけた違いに困難である。

 

例えば高分子材料の結晶について知見が得られたからと言って、その電気物性まで予測できない。不純物の影響や、高分子非晶質相の影響がかなりあるからだ。無機材料にも不純物の影響はあるが、高分子材料では不純物の影響の規則性や再現性までない。

 

無機材料の結晶に不純物をドープして格子欠陥を造ることができて、その電気物性を計測し、格子欠陥から電気物性を論ずることは比較的容易だが、高分子では、静置場でできる結晶はすべて球晶であり、その球晶の構造は、ラメラと非晶質相の集合体で何が何だか分からなくなる。

 

結晶成長の速度論すら無機結晶のようにきれいにいかない場合が多い。エチルシリケートとフェノール樹脂で均一に混合されたシリカとカーボンの前駆体を製造し、それを用いてSiCの結晶成長の速度論を展開すると、反応の最後まできれいにアブラミ式に載る。

 

これは当方の学位論文の半分を占めている成果なので希望者には学位論文の要約を掲載した機能材料の別刷りをお渡しできる。この別刷りに書かれたグラフのきれいな直線を見てほしい。しかし、高分子の球晶についてアブラミ式で解析すると途中で直線がおかしくなってくる場合がほとんどだ。

カテゴリー : 高分子

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