リン系難燃剤には、大別すると低分子リン酸エステル系とその他に分かれる。その他はさらにホスファゼン系とその他縮合リン酸エステル系に分けることが可能である。
以下はポリエーテル系軟質ポリウレタン発泡体で実験を行った結果であるが、硬質ポリウレタン発泡体でも同様の結果になることを確認している。ただ、硬質ポリウレタン発泡体では、残炭率とLOIとの相関は少し悪くなる。
さて、低分子リン酸エステル系難燃剤は、600℃まで難燃剤だけを加熱するとほとんど残らない。縮合リン酸エステル系難燃剤でもほとんど残らないが、一部構造により600℃における残存量が多くなる化合物も存在する。
ホスファゼンは、600℃までの加熱であれば、P=Nの構造に相当する重量が残ってくるから面白い。
この実験結果は、ポリウレタン発泡体に難燃剤として添加してもそのまま反映される。すなわち、極限酸素指数(LOI)と残炭素率との間の相関を調べると、リン系難燃剤の3タイプに分かれる結果が得られる。
すなわち、残炭素率とLOIとが相関しないグループと、残炭素率とLOIが相関するグループとに分かれ、後者はさらに残炭素率の違いで二つのグループ分けが可能である。
以前ここで書いたように、600℃までの加熱でリン酸エステル系難燃剤はオルソリン酸に熱分解して揮発しているのでこのような結果になる
そこで、ホウ酸エステルと一緒に混合して同様の実験を行うと、反応してボロンホスフェートとなるのでリン酸のユニットが600℃まで残っている。
これは40年前に発見した難燃剤システムで、高分子学会の崩壊と安定化研究会で発表したら反響が大きかった。無機材料を専攻した技術者にとっては大したアイデアではなかった。
新入社員時代に始末書を書かされたが、その始末書に新技術として提案した内容がこれである。
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高分子について学びたいと思ったときにどのような本を読んだらよいのか。高分子について絵でわかりやすく解説した本が出版されている。しかし、そのような本で欠けているのは、プロセシングの視点である。高分子は、プロセシングで高分子らしさを見せる。だから最初に混練について何か1冊読んでおくのは参考になる。本書は高分子が初めての方にもそれなりの知識が得られるよう工夫しています。定価4800円。弊社にお申込みいただくことも可能です。お問い合わせください。
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最近のアンケートによれば保守層の間でも夫婦別性に支持層が増えてきたという。おそらく将来は、夫婦同一姓と別姓が混在した世の中になるのだろう。
当方が子供の頃、毎月の月命日の日にお坊さんが自宅までお経を唱えに来てくれた。その習慣は、父親が亡くなるまで続いたそうだが、大学に通い始めた頃、ご近所でもお坊さんが毎月訪れる家庭は、すでに少なくなっていた。
亡父の説明では、ご近所も子供の世代になると仏様を大切にしなくなった、とのこと。このような会話をしていた時代は、夫婦が同一の姓であることは重要だった。
今、お寺は檀家が少なくなってつぶれるところも出てきた、と嘆いておられる住職が多いというが、古典的な家族制度が戦後教育により崩壊してゆく過程で僧職にある人たちの工夫努力が足りなかったのだろう。
小此木啓吾氏が「家庭のない家族の時代」を著したのは1980年代であり、夫婦別姓ともなれば、家庭が無くなるだけでなく家族の形も大きく変貌しやがては無くなってゆくのである。
同一姓とすることが家族のために必要とまで言わないが、姓は少なくとも家族の名前である。そしてお墓には家族の統一された姓が刻まれている。
夫婦別姓の前に新しい家族の在り方だけでなくお墓の問題までよく考える必要がある。最近墓参りに行って気になるのは、空いている墓地が増えてきたことである。
夫婦別姓の問題は、ただ姓を別々にする、という単純な問題ではないのだ。社会に残っている暗黙のルールについてどうするのかもよく考えなければいけない。
すべてのしがらみを取り払ったときに、日本人というアイデンティーはどのような形で残るのか当方には想像できない。
グローバル化の流れにおいてそのようなものは無駄と言う意見もあるが、本当に不要だろうか。無くすのは簡単だが、復活するのはかなりの労力が必要になるのは文化遺産で十分に勉強しているのだが。
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リン系の難燃剤では240℃を超えたあたりでオルソリン酸の揮発が観察されるときがある、と以前書いた。
ホスファゼンではこれが観察されない。また、実際にオルソリン酸が揮発する難燃剤でそれを補足できるかどうか実験を行ったところ、10℃/minの昇温速度で270℃を過ぎたあたりの温度領域で発生していることを40年前確認している。
この当時は、アカデミアよりもアカデミックな研究を行っていた部署に配属されていたので、丁寧な実験データを採取していた。
ゆえに熱重量天秤の校正なども真面目に行い、機種間の差異を評価したりして、真空理工の熱天秤以外使用しない方針にしたことを記憶している。
真空理工の熱天秤では、TGA計測中の発生ガスを補足する実験も行いやすかった。特製注射針を突っ込んでガスを取り出すだけであるが、他社の熱天秤ではこのような作業でもやりにくい構造だった。
真空理工の熱天秤はシンプルな構造で実験が容易だった。TGA測定中のサンプル状態の観察もやりやすかった。とにかく真空理工の前園社長がその道の専門家だったので研究者のことを配慮して設計していたのだろう。
とにかくTGAの計測で難燃性ポリウレタンに用いるリン系難燃剤には2タイプ、細かく分類すると3タイプ存在することがわかった。
また、大八化学工業が頑張っていた時であり、この研究を行っている時にも協力してくれて、難燃剤の細かい分析情報を提供してくれた。
最近はあまり細かい分析データを質問しても教えてくれない材料メーカーが多いが、昔はどこも丁寧に分析データを教えてくれた。
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5日に富士フイルムが公開したコンパクトデジタルカメラ「FUJIFILM X100V」のPR動画に「盗撮を推奨するような内容」などと批判の声が寄せられ、まもなく削除されたらしい。
動画を見ていないので、いくつかのWEBニュースからの想像となるが、とんでもない時代になった、というのが実感である。
動画では写真家の鈴木達朗氏が「X100V」を手に渋谷の街を歩き、ストリートスナップを撮影している様子を映し出したものだったらしい。
10年以上前になるが、秋葉原でニュースに表現されたような同様の撮影スタイルでスナップ撮影をした経験があり、びっくりしている。
当時は事件になっていないし、そのような撮影スタイルで撮られた写真は、写真雑誌や展示会でも多かったスナップ写真の一手法である。
だからX100Vというカメラを手にしたときに、当方はすぐにこのカメラのコンセプトを理解できた。まさに日常を映すために設計されたカメラなのだ。
撮影に必要な条件は、ダイヤル操作ですぐに設定できるし、設定状態はダイヤルの表示ですぐに確認できる。銀塩カメラを彷彿とさせる設計でコンパクトである。
しかし、今そのカメラを持ち歩き日常で撮影できるエリアはかなりの制約を受ける時代になったようだ。肖像権の問題で許可なく人物を撮影することは許されないし、また撮影した画像を公開することも許されない。
街の撮影で許されるのは、ネコかカラス、雀、そしてたまに道路を走るネズミぐらいしか動的な被写体は無い。X100V、いいカメラだが時代を読み間違えた企画かもしれない。
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1980年に発泡ポリウレタンの難燃化研究を担当していた時に、プロジェクトの一員として熱重量分析を担当していた。
先代の管理職が熱重量分析が好きで、何台も熱重量分析装置を買っていた、と上司が批判的に言っていた。
職場には真空理工の熱重量分析装置と理学電機の熱重量分析装置があった。しかし、以前にはまだ数種類存在し、置き場所が無かったので廃棄されたという。
もったいないと思ったが、上司の説明では、機種によりデータが異なるので厄介な問題が起きたからだという。どのような厄介な問題かは、その後上司の仕事のやり方を見ていて想像がついた。
残された二台の熱重量分析装置の測定データには、機種間の差異が小さかったが、それでも丁寧な実験を行うと、その差が大きく現れることもあった。
定時後この機種の差がどのような原因で現れるのか研究してみた。詳細は理学電機に悪いので書かないが、真空理工の装置のほうが優れた設計であることを見出した。
高純度SiC合成について速度論的研究を行うときには、迷わず真空理工に熱重量分析装置の発注をしている。
購買担当からは理由を聞かれたので、この難燃化研究時代のデータを添付し、優れた機械だから、と説明している。優れた装置が市場で生き残るとは限らないので注意が必要だ。
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今回ゴムタイムズ社から発刊された混練の本は学術書ではない。当方が2005年にPPS無端ベルトの開発を担当したときに、たった半年でコンパウンディングプラントを立ち上げた。その時に活用した知識で構成した内容である。
当時一流コンパウンドメーカーからコンパウンドを購入し、押出成形で半導体無端ベルトの開発が進められていた。
しかし、一流メーカーの混練技術者が開発したコンパウンドでは歩留まりが上がらず事業に失敗すると思われたので、コンパウンドの改良を一流技術者にお願いした。
その時に一流混練技者から「素人は黙っとれ」と言われたので、しかたなく、ド素人の当方が10万円前後の混練の本を数冊買い込んでコンパウンド工場を建てるために勉強した。
しかし、せっかく買い込んだ高価な本から得られた知識では、改良されたコンパウンドを生産できる工場を生産できないという問題に遭遇したのである。
高価な混練の本に書かれた形式知を駆使して技術サービスしているのだから、一流コンパウンドメーカーの技術者は優秀だ。しかし、残念なことにお客の問題解決ができない。
ドラッカー流にいえば、「困ったことに優秀な人がしばしば成果を出せない」状態だった。すなわちコンパウンドの何が問題であるのかさえも高価な混練の本は教えてくれなかったのだ。
具体的には、分配混合と分散混合で混練について論理展開する従来のパラダイムでは、パーコレーション転移を安定化するために何をしなければいけないのか、という問題について明らかにできなかった。
そもそも混練とは、高分子を混合し練り上げるプロセスである。そこで問題となるのは、高分子のレオロジーであり、相溶現象であり、諸々の高分子ゆえに生じる現象である。
これはゴム会社で初めて混練を学んだときの指導社員の言葉だ。分配混合や分散混合によるパラダイムとは異なる世界である。
高価な本を読み、巷に常識となっている混練技術の問題に気がついた。すなわち、そもそも高分子のプロセシングとして考察するためのパラダイムがおかしい。
そこで、とりあえず当方が学んだ混練のパラダイムを公開するために本を書いてみた。混練技術者だけでなく、広く高分子の実務に関わる方にも読んでいただきたい。
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高分子の熱重量分析を材料の評価ルーチンとして行い、データ観察を行っていると面白いことに気がつく。
例えば、窒素中と空気中の評価結果では、空気中の重量減少速度の方が早いと思いがちだが、これがある温度領域では逆転する現象が観察されたりする。
そのような場合に雰囲気ガスの流入速度を変えてやると、窒素中では浮力による誤差が観察されるだけだが、空気中では重量減少速度が変化する。
これは高分子の熱分解に酸素が関わっているためで、リン系の難燃剤が添加されていると表れる。
何が面白いのかと言うと、単純に右から左へ受け流されるような変化とならない場合がある。このような現象に出会うと、ムーディー勝山の歌について別の側面の面白さが見えてくる。
ムーディー勝山の持ち歌には、上から下へ落ちてゆくものを見る男というのがあるそうだ。聞いたことは無いが、右から左にしても上から下にしても、このような取るに足らない点を笑いとする発想に感心する。
エントロピーは、自然現象においてただ増加するだけである。これが減少するようなことは、自然現象で起きない。自然界でエントロピーはただひたすら増加する。
しかし、化学反応では、触媒が存在すると反応機構が変わり、見かけの活性化エネルギーが下がり、左から右へ変化を促す場合が出てくる。
これが不触媒になると、左から右に進行していた反応を止めたりする。リン系の難燃剤は、270℃から350℃の範囲の温度領域で、高分子の脱水反応を促し、二重結合を生成しその後のチャー生成を促進するように働く。
しかし、リン系難燃剤の中には、簡単にオルソリン酸を生成して、低温度から活発にこの反応に関与する化合物からそうでない構造の化合物まで存在する。
問題となるのは、オルソリン酸が240℃前後に沸点を持っていることだ。すなわち反応に関与しているオルソリン酸は240℃前後で揮発してゆかないが反応に関与していないオルソリン酸は揮発するので、重量減少カーブに影響する。
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武漢受け入れ業務を担当していた内閣官房職員の自殺が報じられた。ただ右から左へ仕事を受け流すことができない、生真面目な人だったらしい。
自殺された方が、内閣官房と武漢帰国者との板挟みになられ、ストレスで自殺に至った様子を組織で類似の板挟みについて経験された方なら理解できるかもしれない。
社会における組織業務では程度の差こそあれ、責任ある立場になれば、誠実真摯に仕事を遂行しているときにこのような板挟みが生まれる。
板挟みを解消するためには、第三者がどちらかの板を取り除かない限り、挟まれている本人は、自殺するか退職するか、二者択一以外に逃げ場が無くなる。
組織のあるべき姿は、本来このような板挟みを解消できるような運営ができていなければいけないが、組織を運営しているのが人間である限り悲劇的問題が起きたりする。
例えば、板を取り除く役割の担当者が不誠実であると自殺者が生まれる。板を取り除く役割の担当者に勇気が無く、板挟みにあっている人に生きる勇気があれば辞職者となる。
STAP細胞の時にも職場における自殺者がでたが、職場を死に場所とする自殺の多くは組織に対する沈黙の抗議というメッセージと言われている。
新入社員時代に半年もかけずに開発したホスファゼン変性ポリウレタンフォームを工場試作まで行い始末書を書かされた経験があったが、これは、本来書くべき人が下位職者に責任を押し付け、それが最下層まで落ちてきた結果だ。
テーマ決定権の無い新入社員に始末書を書く資格があるかどうか不明である。女性の指導社員によれば新製品会議で課長が新入社員がやりたいといったのでやらせたと応えたそうだ。
当方がごねれば、指導社員が板挟みになったのかもしれないが、指導社員は始末書の書き方について課長に相談するように、と板挟みとなるのを回避しているので誠実ではないが賢明な人だった。
当方は、ごねる代わりに、始末書で新テーマの提案(注)を行って製品化という成果を出したが、学会発表の役割を頂く以外の評価はもらえなかった。
ただ、当時は板挟みとなってもそこからするりと逃げ出す判断ができるだけの余裕があった。
他社買収後はそのような逃げ道はふさがれ、とんでもない事件が起きている。右から左へ受け流す仕事が許されるような風土は今回の事件を防ぐ一つの運営方法かもしれない。
しかし、組織のあるべき姿を目指しそれぞれの職位が誠実真摯に業務に当たればこのような事件は起きないだろう。組織運営では板挟みを発生させてはいけない。
(注)燃焼時にガラスを生成し、ポリマーを難燃化する、という斬新なアイデアでできるかどうか不明だった。しかし、始末書の相談時にそのプロトタイプを用意していたので課長は納得した。課長が右から左へ流しやすいように相談をしたのである。
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お笑い芸人が反社会勢力の宴会に出ていた問題で自粛していた芸人の復帰をめぐり、NETにいろいろな見解が出ている。
40年以上前に出版された「花王のパソコン革命」という本が引き起こした騒動の思い出について昨日書き上げたが、その時の上司の特異な能力がムーディー勝山の歌の面白さであることに気がついた。
実は、最初にこの歌を聴いたときにただ右から左へ受け流すと生真面目に歌っている姿に面白さがあると思っていたが、WEBに公開されている歌を改めて聞いてみたら、「左から右へは受け流さない」と面白いことを歌っていた。
おそらくムーディー勝山の歌を聴いて笑っていた人の中には、組織で見かけるただひたすら右から左へ仕事を必死に流している上司を思い浮かべ聴いていた人もいるのではないだろうか。
残念ながら当方は最初にこの歌がヒットした時にそれほど面白い歌と思っていなかったが、「花王のパソコン革命」の思い出から、上司の特異な能力に気がつき、改めてこの迷曲を聴いて笑ってしまった。
ただひたすら右から左へ仕事を流している人にお願いをしなければいけない時には、右側からお願いをすればうまく成果を他の人に受け流してくれる。
組織活動において、とにかく組織外へ成果が出ていかなければ大きな成果とはならない。右から左へしか仕事を流せない上司ならば、右から話をすればよいのである。
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