9月22日(現地時間)に進次郎氏が国連で「気候変動のような大問題にはセクシーに取り組むべきだ」などと発言したことがきっかけで、WEBでそのまねをする風潮が現れた。
中には、その言葉特集を行っているサイトもある。また、「大喜利」と称して競って彼が言いそうなフレーズを取り上げているところもある。
その中の「年末年始。年の瀬。師走。こういう言葉を聞くたびにね、いつもこう思ってきました。もうすぐ新年だな、と」には、笑ってしまった。
この手の内容のない発言は進次郎氏に限ったことではなく、多くの人が日常接していても、それを批判しない。
ゴム会社では少なかったが、写真会社では多かった、というように社風とか土地柄、国民性も内容のない発言を許容することと関係しているのかもしれない。
一言何か言わなくてはならない役目の人が、周囲に慮って無難な発言をすると、皆進次郎発言のようになる。
当方は内容のある発言を具体的にする傾向があるので、時としてその内容が、真実かもしれないけれどとか、その内容を実現できるのかなどと逆に問題として取り上げられたりした。
例えば、退職前に担当した中間転写ベルトの開発では、「コンパウンドを新たなコンセプトで開発しなければ、このテーマは実用化できない」と初めて出席した挨拶として明確に言ったところ、部下の課長はじめコンパウンドメーカーの担当者まで、会議に出てくるな、という大合唱がおこった。
いくら真実であっても、その真実についてあらかじめ根回しとかされていないと、それを否定してくる。それでは、否定をしている人が代案を言うのかと期待していると、現状維持の内容のない発言しかでてこない。
その経験から進次郎発言については、内容のある発言は銀、内容の無い発言は金である、ととらえている。
内容のある発言は、その内容が共有化されてからするのが無難であり、率先して発言すればその内容が斬新であれば斬新であるほど誰かにたたかれる。
(注)コンパウンドメーカーとの打ち合わせでは、影響力の強い真実の発言となった。ただし、TPOをわきまえなければいけないことを十分に理解したうえでの発言である。開発期間も十分にない状況では、手遅れとなることが一番の問題だったので、内容の濃厚な発言となった。このように内容のある発言が、いつも良い結果を招くとは限らないし、内容のない発言で先送りしていては、何も問題解決しない。ちなみに、「会議に出てくるな」の大合唱に応えて、数年間行われてきた他社とのプロジェクト会議など当てにせず、新たなコンパウンド工場を計画しプロジェクトを成功させた。その結果、コンパウンドメーカーは市場を失った、という結末である。リーダーにはプロジェクト全体を成功に導く責任がある。新参者でも軽く扱うべきではない。
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おめでたいできごとだ。旭化成名誉フェロー吉野彰氏がノーベル賞を受賞された。Liイオンがインタカレーションされて電極に貯蔵されるリチウムイオン電池について現在の形で技術を完成された研究者である。
実はあまり知られていないがLiイオン二次電池を世界で初めて世に出したのはゴム会社とプリンター会社で、両社の共同事業の成果は1988年に日本化学会化学技術賞を受賞している。
但し、その時の電池の設計は現在のLiイオン電池の機構と異なり、電池の容量もコンデンサーに毛が生えた程度、とも揶揄されている。
ゴム会社では1984年にコーポレートアイデンティーを導入し、3つの社長指針が出され、そのうちの一つ、事業領域を拡大する、の中身に「ファインセラミックス」「電池」「メカトロニクス」を3本の柱として推進するとあった。
ファインセラミックスは、社長の先行投資判断で無機材質研究所の留学を途中でやめて始められた高純度SiCの事業が相当し、電池は1980年に企画(1977年に白川博士によりポリアセチレンの導電性デモが行われている)されたポリアニリンを正極に用いたLiイオン電池、メカトロニクスは電気粘性流体がそれぞれ相当する。
いずれもゴム会社で事業化されるが、最も長く続いたのは半導体治工具用高純度SiC事業で30年である。あとの二つは訳ありの短命であるが、実は、この二つのテーマに当方は、応援社員として関わっている。
電気粘性流体について過去にこの欄で、耐久性問題の解決や、三種の粉体、難燃製油などの成果を解説している。難燃製油はLiイオン電池の難燃剤としても使用されているホスファゼンである。
ポリアニリンLiイオン電池の事業が立ち上がった時に当方はそのプロジェクトのお手伝いをすることになったが、それをこの欄で書いてこなかった理由がある。あまり思い出したくない経験だからだ。
プロジェクトに関わるや否や上司から、ファインセラミックスの設備をすべて廃棄し、研究棟をすべて電池プロジェクトに明け渡せ、と命令された。住友金属小嶋氏と交流が始まった頃である。
役員に相談したところ、そのような方針は出ていない、と言われたので、上司に方針書を見せてくれ、と迫って、事なきを得てその後電池評価や電解質開発、電極開発などの下働き(注)をして、プロジェクトから解放され、電気粘性流体をお手伝いすることになった。
あの時、研究棟を明け渡していたら、高純度SiCの事業は立ち上がらなかった。吉野氏のノーベル賞のおめでたい話題で忘れていたことを思い出した。
(注)材料技術者は便利なので小間使いのように使われたが、それでも腐らなかった。吉野博士は、同じころ商品化に苦労されていた時期である。一生懸命電池について勉強しながら、業務を自分の経験知とすることに努力した。これは、辛い仕事を楽しくする方法である。特定のテーマを担当させてもらえるわけではなく悲しかったが、電池に関するすべての開発作業において単なる作業者として扱われたのは、堂々と全体の技術を勉強できる時間にできたので、今から思い返せば幸運なことだった。この時の経験が生きて、これまで電池のセミナーに数回講師として招聘されている。
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材料について研究するときに問題となるのは、物性のばらつきである。しかし、研究論文の大半はこの扱いに関して無頓着である。
科学では真理が解明されればよいので、導かれる真理に影響しなければばらつきを無視しても構わない、とまでいう研究者もいるほどだ。
しかし、技術ではこのばらつきは重要で、ばらつきが大きく、機能に影響が出るようであれば、その材料は使い物にならない。
複写機用の機能部品である中間転写ベルト開発を担当した時にびっくりした。半年後にその部品を搭載する機種が製品化されるというのに、押出成形の歩留まりが10%にまで達していないのだ。
歩留まりが悪い原因は、ベルトの周方向の電気抵抗の偏差が10%以上である点だ。そして歩留まりの改善が後回しにされてきた理由は、機能設計は難しいが歩留まりは生産技術の問題、という開発者の認識にあった。
材料技術において物性ばらつきは、機能の一つである。すなわち科学では新素材が数mgでもできれば論文を書くことができるが、技術ではそれを繰り返し再現性と経済性が成立した状態で市場に出さなければいけない。
すなわち、開発段階で物性ばらつきやコストの問題を解決しておかない限り、それが完成された材料にならないのだ。STAGE-GATE法で運営されていても、各GATEにおける判断基準が間違っていたら、開発の成功確率は上がらない。
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消費税が上がった。このような場合に便乗値上げをするケースがあるという。弊社では新しい試みとして、税込み15,000円で3.5時間のセミナーを10月度に企画し募集している。
10月だけの試みで、10月15日が締め切りである。セミナーの開催日も参加者の希望で設定する、という大胆な企画だ。
9月末から募集して10月開催なので人が集まるかどうか、という問題があるが、消費税が上がる時に、値下げをする会社があってもよい、と急遽募集している。
30年の技術者生活で身に着けた技術の伝承を心掛けて、セミナー会社の企画に応えてきた。今回募集をかけているテーマ以外に5Gや二次電池、パワー半導体、フィルム押出技術、フィルムの表面処理技術、信頼性工学、問題解決法、カップリング剤の使い方、ポリウレタン発泡体技術、電気粘性流体、高分子の破壊と耐久性などがあるが、今回これらのテーマについては募集していない。
募集しているのは、
1.高分子の難燃化技術
2.高分子の帯電防止技術
3.ブリードアウト
4.成形トラブルから見た混練技術
5.シリコーンゴム・樹脂技術
である。
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一世を風靡した元予備校講師金ぴか先生の話題が、まだWEBに出ている。お亡くなりになってからこれだけ話題にされる方も珍しいが、この先生はもしかしたら私たちに警告を発しているのかもしれない。
お亡くなりになる1ケ月前のインタビュー記事を読むと、改めてドラッカーの指摘していた知識労働者が本当によく考えなければいけないことの重要性が語られている。
すなわち、組織の寿命と人間の寿命とが、というとわかりにくいが、退職してからの知識労働者の寿命が極めて長くなった問題がある、ということだ。
これは、年金の2000万円不足問題よりももっと深刻だ。ドラッカーは、二つ以上の世界を持つことの重要性を説いていたが、人は社会との関わりから離れて生きられないので、一つは必ず社会と関りをもつ世界だ。
ボランティア活動はその一つであり、これは、若い時から心がけなければいけない。その他にドラッカーは幾つか人生を充実させる方法を解説している。
それは現代の幸福論と言っても良いような内容であり、弊社ではその内容を講演するためのソフトウェアーをまとめていますのでお問い合わせください。
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ゴム会社の主要事業部門では、トヨタ同様に日常の活動にカイゼンが求められていたが、研究所の風土は異なり、当方の日ごろの改善提案活動が浮いた行動に見える様な運営だった。
ホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームの技術やフェノール樹脂天井材の技術から生み出された高純度SiCの事業はその部門で運営されていたが、職場では異質な仕事と周囲から見られていた。
高純度SiCの事業テーマを研究開発テーマとしてスタート後5年経過して開始された住友金属工業との高純度SiCのJVを抱えながら、電気粘性流体のテーマを新たに担当することになった
このテーマに関する下記の主要技術を一人で提案できるほど貢献できたのは、それまでに担当したテーマで材料技術基盤が当方のスキルとして完成していたからである。
この電気粘性流体の仕事を担当するや否や、そのテーマに関するいくつかの改善技術について企画を提案している。
テーマそのものが先端であり、ゴム会社がその先頭を走っていると説明を受けていたので現場を見ただけでまとめた、まさに「カイゼン」企画である。
世界の先頭を走っている状態を材料技術者の立場で実用化の視点から眺めたときに、現場で行われていたのは極めて奇妙な研究が多かったからである(「添加剤がまったく入っていないゴム開発」という当方に課せられたテーマはその一例である)。
科学の研究として推進されていた状態を見て、新たに企画提案したテーマから以下の発明が生み出されている。いずれも科学的ではなく材料技術で生み出した成果である(この時の企画立案に研究開発必勝法が使われている)。
下記発明が他のメンバーにより推進されるようになって実用化が加速し、当方が転職後電気粘性流体は上市された。
<高純度SiCの事業化を一人で推進しながら出した成果事例>
1.電気粘性流体の増粘防止耐久性向上技術(特開平3-124794、特開平3-157498)
2.ホスファゼンを用いた電気粘性流体、あるいは難燃製油(特開平3-139597、特開平3-139599、特開平4-202295、特開平4-202296、特開平4-198189、特開平4-198190)
3.電気粘性流体用特殊粉体(特開平3-181597、特開平3-252498、特開平4-227796(傾斜機能粉体)、特開平4-227996、特開平4-227997(微粒子分散型微粒子)、特開平4-348192、特開平5-810、特開平6-279018)
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亡くなった助役から金品を受け取っていた関西電力役員には「恥」の価値観が無いのだろうか。記者会見の様子も含めて、一流企業のトップの姿として見苦しい。
関西電力の事例に限らず、最近経営トップの羞恥心が世間の感覚からずれている事件が多くなった。
そう思っていたら、神戸市須磨区の市立東須磨小学校の20代男性教員が、同僚の先輩教員4人に暴行や暴言などのいじめ行為を昨年から継続的に受けていた、とのニュースが報じられた。
組織内のいじめについて、この小学校の様な派手ないじめから陰湿ないじめまで含めると意外と多いのかもしれない。当方もゴム会社でセラミックス事業を立ち上げたときに同僚からいじめにあっている。
いじめにあっても耐えて事業を立ち上げ、その事業は30年間ゴム会社で継続され、昨年愛知県のセラミックス会社へ売却された。
このゴム会社におけるいじめではFDの破壊というところまでエスカレートしたので、当方は事件を公にして転職している。
この時に感じたのは、会社への貢献ではなく出世だけを考えて他人のテーマを妨害する破廉恥さであり、犯人はじめ組織リーダーまで「恥」の感覚に欠如していたことだ。彼らは当方はじめ創業時に関わった方たちが生み出した事業が30年続くのをどのように眺めていたのか。
当方は使命感からゴム会社で基盤技術0からの事業立ち上げを推進し、住友金属工業(当時)とのJVとして立ち上がったところで身を引いている。関西電力の経営者は、創業者である当方の身の引き方を知ったらどのように感じるだろうか。
<補足>10/9朝日新聞デジタルによると、関西電力の八木誠会長が辞任する意向を固めたことが8日分かった、とのこと。9日には第三者委員会が設置される予定なので覚悟を決めたようだが、追い詰められ決断したような遅い意思決定だ。東京電力のトップもおかしな役員だったが、これでは日本経済も良くならない。
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今月特別にセミナー(info@kensyu323.com へ問い合わせてほしい)のテーマとしてとりあげた高分子の難燃化技術や混練技術、帯電防止技術は、形式知で説明しにくい分野の技術である。どうしても経験知を用いることになる。
この時大切なのは、経験知も形式知同様に体系化されているとわかりやすいだけでなく、現場で活用した時に新たな経験知を生み出せる可能性がある。
注意しなければいけないのは、経験知と形式知をごちゃ混ぜにして解説するやりかたである。市販されている教科書にはこのようなものが多い。
混練の教科書の中には、分配混合と分散混合で巧みに解説し、科学で完璧に説明できない現象について、すでに自明となった現象として解説している場合がある。
このような状況のため、中間転写ベルトのテーマを引き継いだ時に、外部のコンパウンドメーカーの技術者と口論になっている。その時当方は、専門家と称する技術者に素人と決めつけられたので、外部のコンパウンドメーカーの考え方に対抗して、当方の経験知に基づくコンパウンド工場を建設している。
結果は、当方の考え方が正しかったわけだが、コンパウンドメーカーの技術者が主張していた内容は、教科書的には間違っていなかった。ただし、その知識の体系では製品を作ることができない形式知だった。いくら論理が正しくとも製品を生み出せなければ使い物にならない。
この点に関し、ドラッカーは、「優秀な人が仕事ができないのは、間違った問題を正しく解くからだ。」と指摘している。日本を代表する研究所が設立した会社の技術者だから優秀な人である。間違った混練技術でコンパウンドを開発しようとしているので開発できなかったのである。
材料技術ではこのようなケースは多い。例えば20世紀の教科書に載っていた混合則は、当方が日本化学会で初めてパーコレーションを用いて現象を考察して以来、今では多くの現象がパーコレーションで解説されるようになった。知識は、現場で鍛え上げなければいけない。
そのためには、有機材料から無機材料まで幅広く材料に関する形式知の引き出しを整えておくと便利である。おかしな引き出しは空っぽにして、そこに経験知のファイルをぶら下げていくような知識の整理方法は一つのコツである。
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難燃性ホスファゼン変性ポリウレタン発泡体や難燃性ホウ酸エステル変性ポリウレタン発泡体は、最先端の技術だった。
当時、ホスファゼンが市販されていなかったという理由だけでなく、ホスファゼン変性ポリウレタン発泡体の工場試作に世界で初めて成功(すなわち量産可能)している。
また、燃焼時にガラスを生成し高分子を難燃化する技術に至っては、リン酸エステル系難燃剤の開発競争が激化していた時代であり、リン酸エステル系難燃剤の2世代後の難燃化技術という位置づけとなる。
その数年後各社から次世代技術と称された臭素系難燃剤の上市が始まったことを思うと、会社としては難燃化コンセプトも含め機密扱いにすべき先端技術だった。
しかし、上司が高分子学会の崩壊と安定化研究会の委員を担当していた、という理由で、すんなり学会発表を命じられている。当方から学会発表を申し出たわけではない。これはありがたかったが、技術の内容を経営者が理解できていたなら企業としては大問題となったはずだ。
難燃性発泡体技術の展開として行われたフェノール樹脂天井材の開発テーマでは、発泡体製造プロセス装置の開発を行っている。ただ開発したばかりの発泡機を研究として使う間もなく、すぐ工場へ設置されたのには驚いた。
市場において難燃性発泡体の競争が激化したためであるが、新入社員研修でQCを重視した仕事の進め方を習ったのに乱暴な開発に巻き込まれ憤慨した。
しかし、材料技術とはコンセプトが正しければ、ばくちの様な開発でも成功するものであることをこの時学習している。フェノール樹脂発泡体では、発泡の均一性が力学物性に影響しそれが難燃性能に効くため、発泡装置が重要である。
そこで発泡装置を最初に開発している。処方の完成度について不十分な状態だったが、機械で発泡させたら、不十分な完成度の処方でも仕様を満たす発泡体ができた。
この学習成果は、QMSを導入していた写真会社でカオス混合のプラントを開発するときに生かされた。単身赴任したばかりで、企画も認められていない技術について研究開発と工場建設をコンカレントに行っている。
QMSに反しないようにDRを巧みに行い、規定の段階のDRを消化したところで工場が立ち上がっている。これは開発に関係した部署が協力してくれたおかげである。
今から思えば、部下になったばかりの新参者の提案に対して、センター長は8000万円の決済を「よくぞ思い切って決断してくれた」。
但し、30年前に獲得した材料技術の応用であり、発案者の当方は少し不安だった。しかし、センター長が投資をしようと言われたので、80,000円もする混練の技術書を3冊ほど自腹で購入し勉強しなおした。その結果、30年前の知識から見ると、世間の形式知が間違った方向へ発展していることに気がついた。
当方の経験知が正しいのか、合計24万円の書物に書かれた形式知が正しいのか、丁半ばくちを打つような工場建設だったが、工場から出荷されたコンパウンドの性能は、外部の形式知で開発されたコンパウンドの性能をはるかに超えるものであり、そのばくちに勝ったのである。
そこで10年以上経過したのでこの経験をもとに最近新たな考え方の混練に関する本を書くことになり、この12月にはゴムタイムズ社から発売される。
また、10月度の特別廉価セミナーでもこの混練技術の講演を15,000円で予定しているので問い合わせていただきたい。分配混合だの分散混合だの考える前に、混練を進める力をよく考え、プロセスを設計することが重要である。
市販されている本にはこのような考え方は書かれていないが、3ケ月で量産工場が無事立ち上がったことから、この考え方の正しいことが実証された。
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タイヤの軽量化因子探索では、多変量解析の手法をドロ縄式で勉強している。統計手法のマスターから独自のタグチメソッドもどき手法の発明に至る知識獲得がこの時できたので思い出深いテーマとなった。
材料技術におけるコンピューターの役割を体験し、これが動機となり登場したばかりのMZ80Kを購入した。そして、テープベースで動く多変量解析プログラムをS-BASICで、その後F-DOSベースのHu-BASICで作成している。
このHu-BASICはゲームのハドソン社が設立されたばかりの頃に開発されたプログラム言語である。このシステムで計算した時に5000件程度のデータならば一日で処理できたので、タイムシェアリングでいつ計算結果が出てくるのかわからない3033より便利だった。
出勤前にコンピューターを走らせて、昼休みに独身寮に様子を見に行くと計算が終わっていることもあった。
MZ80Kは個人で購入し、一年後にはF-DOSを導入している。当時のお金で80万円前後会社の仕事のために投資したことになる。
このMZ80Kを用いて、ポリウレタンの熱分解に関する反応速度論や、難燃化因子に関する多変量解析、フェノール樹脂発泡体を用いた天井材開発などで成果を出した。
「自分で買ったら」と言っていた上司に、最初の成果である多変量解析で処理したLOI予測式を自慢げに説明したら絶句していた。この驚きの後の沈黙という上司の態度に、説明をした後に後悔の念が出てきた。
ただ、サービス残業が常態化していると分かっていても残業代20時間制限をミーティング時に部下へ淡々と説明していた上司だから、沈黙の意味は他にあったのかもしれない。
当時、材料技術におけるコンピューターの重要性をこの上司へ提案しているが、「それほど便利なものなら自費で購入したら」とあっさり言われ、採用されなかった。この一言により自前で購入したのだが、それで成果を出しても、その価値がうまく伝わらない時代だった。
残業代が無かったことよりも深刻だったのは、ポリウレタン発泡体やフェノール樹脂発泡体の業務を遂行するために、シリコーン界面活性剤の知識が重要であるにもかかわらず、この知識獲得に自腹を切らなければならなかったことである。
科学文献調査は図書室の女性が親切にサービスしてくれたので、仕事を進めるうえでの形式知獲得には不自由しなかった。しかし、経験知については外部の技術セミナーの活用が必須だ、とこの上司から教えられていた。
上司の指導に従い、セミナー会社で企画されたシリコーンに関するセミナーに参加したいと願い出たら、それほど行きたいなら年休をとっていってこい、という許可が出たのである。手取り10万円程度の時代に30,000円の支出は厳しかった。
コンピューターの購入も、セミナー参加費も自腹となったが、これはこれである意味「よい上司だった」と今は感謝している。
ガラス生成の難燃化企画を始末書に書くことを許可してくれたことに始まり、無機材質研究所留学に至るまで当方の希望をほとんどこの上司は受け入れてくれた。唯一の不満は、半期ごとに課内の誰もが認める成果を出していても良い査定をつけてくれなかったことだけである。
セミナーやPCその他も含め、この上司の下では年収300万円も満たない駆け出しの時代に、年間100万円ちかく知識獲得のためにお金を使っていた。残業代も無かったので、生活は苦しく結婚などできる状態ではなかった。成果を出しても評価されない不満はあったが、学ぶ意欲がそれに勝っていた。
10月度の特別セミナーでは、高分子の難燃化や混練技術だけでなく、当時から今日まで勉強してきたシリコーンのセミナーも15,000円で開講している。当時のセミナー代の半額である。さらに当時のセミナーよりも経験知の中身は2倍以上濃い。
実は、大学4年時にトリメチルシリルグリニヤ試薬を用いてジケテンを開環し、テルペノイド前駆体を合成した経験がある。そしてこの前駆体を用いてシクラメンの香りを合成し、その成果はアメリカ化学会誌(J.A.C.S.)に掲載された。
有機合成は学生時代、成績も良かったので自信がある分野だ。有機合成の講座の教授に勧められて大学院に無償で進学しているが、この教授が退官し講座が閉鎖されるということになった。大学へのささやかな反旗のつもりで受験時に希望先としていなかった、定員満杯の無機の講座へ進学している(注)。
この選択が社会人になってから材料技術者として自己実現を目指すときに役立った。材料技術者は幅広く物質に関する形式知を獲得していたほうが企業で活動しやすい。
(注)名古屋大学では専門に対する教育的配慮ではなく、形式的にその講座に進学予定であった学生を一人ほかの講座へ異動させている。成績順というルールがあったからだ。当方が進学したことで、はじき出された同級生には悪いことをした、と今は反省している。当時は、このような出来事のため、一心不乱に研究し、2年間に3報論文を執筆し、就職してからも2報ほどこの時の研究成果をまとめている。同僚が、学生気分で仕事をやるな、と言われたが、当方は学生気分で仕事をしていても、言われたことが無い。団塊の世代にとって学生気分とは遊び半分ぐらいの気持ちを指すのかもしれないが、2度のオイルショックを経験し、就職難の世代は、当方の世代の学生は皆一生懸命勉強していた。ゆえに当方の世代で学生気分とは一生懸命研究に打ち込む姿を指す。
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