「 日産の不正に関する第三者委員会が今年9月に公表した報告書は「2000年代以降に排ガス測定値の書き換えが常態化した」と指摘。不正の背景について、コスト抑制に力点を置くあまり、「工場の維持・発展に不可欠な要素が失われた」と利益偏重に傾く企業体質を批判した。
日産は9月、不正の再発防止に向け、検査担当者の増員などに取り組む方針を表明したばかりだが、問題を食い止められなかった格好。多額の利益を稼ぎ出し、首脳陣に億円単位の高額報酬を支払う一方、現場は疲弊し、士気が低下している恐れがある。西川広人社長ら現経営陣の責任も問われそうだ。」
以上は12月6日配信のJIJI.COMからの抜粋である。企業体質なり風土というものが悪化した時に、それを一朝一夕には回復できない、ということを記事を書いている人が理解されているのか疑問に思ったのでとりあげた。
この記事に限らず、今回の日産の不正再発に関する記事の論調は同じようで、改善方針を示せばすぐにそれが実効化されると考えておられる記者が多いようだ。
企業体質や風土は、悪化するときももとに回復するときにも時間がかかる。仕組みを作れば、あるいは組織を改編すればすぐにその効果が現れるわけではないのだ。
特にゴーンが日産の社長となって行ったリストラは尋常なリストラではなく、人を削減しすぎて、会社の運営ができなくなった事態がリストラ一年目で起きている。この事実が当時も今も報じられていない。
コスト目標に合わせて人員を削減したところ開発ができなくなって、リストラしたスタッフを呼び戻していたのだ。
どれだけのスタッフが当時戻ったのか知らないが、当方が知人から見せられたその呼び戻しの手紙の文言であきれたことがある。その知人は、意地でも戻らない、と言っていた。
ゴーンの行ったリストラについて過去にさかのぼって検証することが必要である。検証すれば表に出た結果はV字回復であるが、企業の健全な体質を考慮したならば、カリスマ経営者と呼べない事実がいくつか出てくると思われる。
ドラッカーが指摘しているが、企業は資本家のものではなく、社会に必要な組織が残ってゆく。日産自動車が日本社会に必要な組織ならば、日本に残るだろうし、不要ならばルノーに吸収されるのだろう。
グローバル化で注意しなければいけないのは、社会に大きな影響を与える組織のリーダーの資質である。カリスマ経営者と呼ばれるには、社会に認められる組織を維持しなければいけない。日産自動車がフランスの会社になれば日本のGDPに与える影響だけでなく雇用の問題も出てくる。
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過重労働に限らず、労働というものは、人に命じられて行う場合にはその量に関わらず少なからず面白くないものである。しかし、自ら進んで行う場合には、過重労働であっても楽しい。
樹脂補強ゴムは後工程ですぐに商品化され会社に貢献した研究テーマと評価されたらしいが、指導社員も当方もそのような評価を受けていない。また入社二年間は残業手当が無いルールだったので、残業代も0であった。
さらに、テーマが完了したということで、当方は新たなテーマを抱える職場へ異動となっている。指導社員は、その立場から、新たなテーマを企画することになった。
1年間のテーマを3ケ月で仕上げたことを研究所内では批判されたようだ。当方は社会人になったばかりで陰口に対し理解できなかったが、指導社員には申し訳ないことをした、と反省した。
メーカーの研究部門において新しいテーマの企画業務は、予算が決まっているテーマを推進するよりも大変である。なぜなら、企画が採用されるまで研究所では評価されないからだ。
また、テーマが商品化されてその成否の結果から初めて評価される。当方はこの仕事を楽しく推進することができたが、指導社員は全く知識の無かった当方を指導することになり、どのような気持ちだったのか異動後想像し申し訳ない気持ちになった。
指導社員の技術者育成プログラムは1年間の計画として作られていたが、そのメニューを当方のペースに合わせ繰り上げて進めてくださった。40年たった今から当時を思い出してみても高分子科学の先端を見据えた優れた内容だった。
シミュレーションによる材料設計、ワイブル統計を用いた材料の信頼性評価、高分子の高次構造写真や豊富な熱分析データ、これらと関連付けされた粘弾性データなどお正月を返上して報告書としてまとめたが、年末年始の休みを返上しても十分に満足できる宿題だった。また、この時の教育のおかげで約30年後に指導社員から夢と言われたカオス混合装置を発明することができた。
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指導社員はダッシュポットとバネのモデルを駆使したシミュレーションから樹脂補強ゴムを用いたエンジンマウントを発明した。当時知られていたフローリー・ハギンズ理論から、配合で用いられる樹脂とゴムのΧは0であるべき、とも考察したが、実験で用いる樹脂については、ΧではなくSP値を求めるように指示されていた。
SP値の求め方についても分子構造から計算で求める方法が知られていたにも関わらず、必ず溶媒を用いて調べるように教えられた。計算値の信頼度が低いためだった。フローリー・ハギンズ理論をそのまま実務で活用できない問題について40年前から技術者は知っていた。
3カ月間で収集された樹脂のSP値やその他のパラメーターと測定された加硫ゴムの力学物性、そして電子顕微鏡で観察された高次構造から、シミュレーション結果に相当する物性を設計するためには、樹脂が海でゴムが島となる高次構造を形成できる配合でなければいけないことや、この構造をとった材料について、樹脂の結晶化度がダッシュポットとバネのモデルにおけるバネ定数を支配していることがわかった。
興味深かったのは、最適に配合された時、樹脂の配合量が少なくても海島構造の海を樹脂が形成していることや、Χは0にならなくてもこのような相分離現象を示したこと、そしてプロセスもこの高次構造形成に影響していたことだ。
わずか3ケ月間の実験であったが、大半を今で言うところの過重労働で行ったので、一年分の業務量に相当するデータと成果が得られた。指導社員の優れた実験計画と毎日の考察のおかげで、業務効率が指数関数的に加速していっただけでなく、業務の理解が進むにつれスキルも上がり、仕事の楽しさが倍増していった。
過重労働の問題は解決されなければいけないが、労働者が自主的に過重労働をする場合をどのように指導するのかは当方の経験から難しい問題だと思う。知識やスキルを習得する方法としてこのような自ら率先して行う過重労働方式が効果を上げる場合がある。
また過重労働を肯定するわけではないが、長い人生の一コマとしてこの時の過重労働を楽しく思い出すことができるだけでなく、セラミックスが専門だった当方の知識とスキルを広げるために重要な3ケ月間だった。
理解ある指導社員のおかげで集中して仕事ができて、興味深いテーマについて深く理解が進むとともに0であった高分子物理の知識が教科書や当時の論文をしのぐレベルまで高まってゆく錯覚があった。健康は何にもまして重要である。健康だったからこそ、睡眠が4時間に満たなくても2ケ月以上頑張ることができた。
そしていつの間にか睡眠学習になることもあった毎朝の座学とそれに連動した実験で全くの無知の状態から当時の先端の高分子物理の知識を習得できたことを考えると当時の過重労働を批判する気持ちになれない。
また、長い人生でこの時の過重労働以外で知識とスキルを一気に高める機会が無かったので、残業代0であっても会社には感謝している。精神や肉体を害する過重労働はあってはならないが、自己啓発の場を労働時間に組み込む時に「労働」に対する考え方をどうするのかは、特に技術者を育成するときに難しい問題となる。
カテゴリー : 高分子
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オーディオが趣味の50代以降の人ならば、このオーディオ評論家のお名前はご存じだろう。故人ではあるが、今でも信奉者のいるカリスマ評論家である。
オーディオは趣味ではないが、この評論家について学生時代から知っていた。胡散臭いオーディオ評論を書いていたからである。とにかくその文章からは、彼だけが正しくてメーカーの技術者はすべて間違っているような印象しか受けなかった。
1970年代にオーディオを事業としているメーカーはスピーカーについて独自理論を展開し、各メーカーの宣伝媒体で発表していた。彼は理論武装されたそれらの製品を自分の試作スピーカーと比較し、自分の開発したスピーカーが優れていることを示しながら悦に入った文章を書いていた。
彼の書いた評論をすべて読んだわけではないが、当方が読んだ評論はすべてそんな調子だった。だから胡散臭いと感じたのである。しかしゴム会社に入社し、この胡散臭い評論家よりも胡散臭い科学者ドクター中松を知り、長岡鉄男氏をまっとうな技術評論家と感じるに至った。
彼の傑作スピーカーと称されるスワンは、フルレンジスピーカーの一つの到達点の形かもしれない。点音源の理想と自然な低音の実現に成功している。
このスワンに至るまで試行錯誤で様々なスピーカーの箱を設計し、オーディオ雑誌で発表されていたが、その設計手法は評論を読む限り、科学的というよりも技術的スタイルだった。
残念ながら彼の製作したスピーカーをすべて聞いたことが無いが、彼の思想を追及している音工房Zという会社のスピーカーを視聴して彼が胡散臭い評論家というよりも実践主義の技術者だったという評価に変わった。
スピーカーという機械装置を科学的に完成することは難しいと思う。仮に音に関する科学的パラメーターを計測し、それらパラメーターを完璧な状態にしたとしても人の耳の形状は皆異なるし、音に対する嗜好も異なる。そのような状況の中で一つの真理を確立することは困難だろう。
B&Wは、一応それを実現したように評価されているが、一つのスピーカーがすべての音楽ソースに対して完璧な音を聴かせてくれるわけではない。やはり音楽ソースに対して得意不得意が自動車1台の価格と変わらないようなスピーカーでも存在する。
年をとり劣化した耳には、今年のONTOMO付録のスピーカーに音工房Zの2万円の箱を組み合わせた製品が今のところ人生で一番満足できたスピーカーに感じる。
アールクルーのギターを聴きながら故長岡鉄男氏を思い出したが、彼の評論は実験に裏打ちされた内容であり、彼自身スワンも含め自分の設計したスピーカーを一度は誉めつつも、すぐに否定し新たなスピーカーを開発し続けている。この故人の姿勢は、オーディオの世界が科学では解決できない問題を多数含んでいるかのように思わせる。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料
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40年以上前空前のオーディオブームが起きている。トリオ、パイオニア、オンキョー、ビクターなどオーディオ専業メーカー以外に家電メーカーのすべてがローディーやオットー、オーレックス、ダイヤトーン、パナソニックなどの独自ブランドを立ち上げていた時代である。
その後ブラウン管TVの高画質化大画面化ブームでAVの時代になり、デジタル化の波の中でオーディオメーカーが淘汰されていった。テープデッキで有名だったアカイやアンプで有名だったサンスイのような倒産したメーカーもあればパイオニアとオンキョーのように経営統合したメーカーもある。
また、日本で誕生しながら海外だけで展開しているローテルのようなメーカーもある。アイワはソニーの傘下に入った。カートリッジメーカーのオーディオテクニカは細々と事業を行っている。残念ながら当方の記憶にあるのは大衆オーディオメーカーだけで高級オーディオメーカーの動向は知らない。
団塊の世代を中心にまたブームが起きるのか、と言われて数年間その兆候があるが、面白いのは海外のスピーカー専業メーカーの躍進と国内自作サポートメーカーの勃興である。スピーカーパーツだけの販売もインターネットでは行われている。
しかし、奇妙なのはオーディオ雑誌で、旧態依然とした編集で生きている化石のように書店に並んでいる。どうもAVとの統合とは別の流れとしてオーディオという趣味が細々と昔のまま続いているようだ。
オーディオ業界を横目で見ながらジャズやブルース、ウェスタンフォークが好きで長年聞いてきた。デジタルの時代になりテープやレコードが邪魔で捨てようと思ったがレコードのジャケットには未練があったので捨てきれず、テープだけ音をデジタルで保存しメディアをすべて廃棄した。
デジタル化はオーディオの世界にイノベーションをもたらしたが、不思議なことにスピーカーの技術は昔のままである。平面スピーカーも登場したりしたが主流にはなっていない。
KRIの講演会に招待されたときに、パナソニックの執行役員の講演を聴いた。パナソニックでは新しい再生技術を開発しているとのこと。音場の再生に注力した大学発のアメリカのベンチャー企業ボーズがそれほどオーディオマニアに支持されなかったがパナソニックの試みはイノベーションを起こせるのか?
アカデミアの成果で個性的なスピーカー開発を行っているボーズがそれほど成功していないオーディオスピーカーの発展史を見ると、オーディオの世界は未だに科学的と言えない技術が重視されている分野のように感じる。
その結果、オーディオ雑誌に載っている評論家の機器評価を見ると、値段の高い機器が高評価を得る傾向にある。また、B&Wのスピーカーに至っては値段が高くなるほど聴感上の違いを利用してよいスピーカーに思えるように商品設計している(注)。
要するに良い音を聴くためには高級オーディオを買わなければいけない、という誤解で現在のオーディオマーケットは形成されている。スピーカー自作メーカーの勃興はそのような事情を背景にしているが、けしからんことにパナソニックはマーケットの状況から富裕層のデバイス開発を目指しているという。
オーディオ分野は、お金ではなく感性の世界のように思うので、高級オーディオを目指すのではなく誰でも気軽に良い音楽を楽しめるようにすることがあるべきイノベーションの姿である。戦略として高級オーディオで成果を出してから、という考え方を理解できないわけではないが、本当に技術があるならばお金ではなく戦略として感性を切り口に誰でも良い音を楽しめるオーディオを目指して技術開発をすべきである。ちなみにパナソニックのオーディオ分野の執行役員はピアニストでCDを数枚発表している。
(注)自作サポートメーカーの音工房Zの視聴会では、B&Wの高級スピーカーと自作品との比較視聴を行っている。そこでびっくりしたのは5000円の雑誌の付録のスピーカーが100万円前後のスピーカーと変わらない音楽を聞かせてくれた。低域にやや物足りなさを感じるがサブウーファーを併用すれば解決する。オーディオは価格でその価値が決まらない世界である。自作すれば20万円前後となる市販パーツを使った一本100万円を超える価格のスピーカーもあるので購入時には注意をしたい。視聴をすれば弊社のコンサルティング料がいかに良心的価格か、と感じる商品である。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料
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午後の時間は、当方の自由時間の様なものだった。指導社員は当方にすべて仕事を任せてくれて、当方はただ翌日の座学の最初に一日の実験報告をするだけだった。
その報告の中である日、実験方法について議論になった。材料の振動エネルギー吸収能力の評価時間が材料開発の律速段階となっていたからである。すなわち混練し加硫したサンプルについてスペクトロメーターでデータを収集していたのだが、その測定時間が2時間近くかかっていた。
当方は、目標からほど遠いサンプルについても同じ測定するのは時間の無駄で、とりあえず80Hzと10Hzの2点だけ測定すればよいのでは、と提案した。
当時開発していたのは防振ゴムであり、振動周波数の広い領域で振動を吸収できることが材料に要求されていた。しかし、高分子材料はある特定の狭い振動数の領域だけエネルギーを吸収し、それ以外はバネの効果が大きかった。
ゆえに80Hzと10Hzの二点でエネルギー吸収能力の大きい材料ができれば、それが目標の材料物性を備えていると考えた。
このエネルギー吸収能力のわかりやすい例として、室温付近にTgを有する材料でボールを作ってみると、ほとんど弾まないボールになる事例がある。
すなわち、このボールは室温付近でエネルギ吸収能力が大きいので、弾ませたときにエネルギー吸収が生じて反発できない。
測定周波数を変えながら、このエネルギー吸収の大きさをスペクトロメーターで測定していた。そして気がついたのは、80Hzで損失係数が高いときには、10Hzで低くなり、10Hzで高いときには80Hzで低くなる、という当たり前の現象だった。
目標は80Hzで測定しても10Hzで測定しても損失係数が高い材料なので、この2点だけで評価を進め、両方の周波数で条件を満たした材料だけすべての周波数で測定すればよい、と考えて評価時間の短縮を提案した。
そして用意されたすべての樹脂を1ケ月で評価し終える、と宣言したら、これは1年間のテーマだから急がなくてよい、と指導社員は応えられた。
当方は提案について指導社員が否定されなかったので、翌日から提案した方法で仕事を進め、1ケ月どころか1週間ですべての樹脂の評価を終えて、いくつか製品の候補になるような樹脂補強ゴムの配合を見つけることができた。
このような仕事のやり方について指導社員から特に注意を受けなかったので、見つけた配合について耐久試験に移ろうとしたところ、指導社員から分析グループの女性を紹介された。
そして当方が候補として選んだ樹脂以外に指導社員が評価済みの樹脂の中からいくつか樹脂を選び、それらについて細かくデータを収集するように指示を受けた。そして、作成したサンプルはすべて分析担当の女性に渡すように、とも言われた。
翌日から座学の半分の時間は、分析担当の女性が撮影した電子顕微鏡写真とゴムの製造プロセスも含めた処方の議論が行われるようになった。
この業務状態は1週間ほどで軌道に乗ったので、それから平日は夜中まで仕事をするようになった。すると評価サンプルがどんどん増えたので、分析担当の女性がもう一人つけられた。ますます仕事は加速し、3ケ月で材料開発と報告書作成が完了した。
カテゴリー : 一般 高分子
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毎日午後は、自由に実験できる時間だと言われた。そのため、配属されて最初の一週間は、社内の実験設備を使用する方法を指導された。
指導社員が設計して創作された世界に一台しかない粘弾性測定装置スペクトロメータは、現在市販されている粘弾性装置の4倍の大きさだった。
当時マイコンが無かったのでミニコンで動作しており、この制御部分が半分の面積を占めていた。またサンプル取り付け部分やサンプルに信号を送るモーター部分はじめすべてが大きく頑丈に作られていた。
このスペクトロメータは指導社員の管理装置だったので自由に使えた。それ以外の設備はすべて予約や設備管理者との調整が必要だった。
指導社員は使う必要のない設備も含めてすべていつでも使用できるように設備管理者を紹介してくれた。おかげで名刺ホルダーがすぐにいっぱいになった。
勉強になったのは、ゴムの混練製品開発の実用化を考えたなら必ずパイロットプラントの試作設備でゴム材料を混練しなければいけないといわれたことである。
また、製作したゴム材料について早い段階で繰り返し引張による耐久試験器を用いて信頼性のチェックを実施することが実用化を失敗しないコツである、と指導された。
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毎日午前中は指導社員による座学が行われた。これは大学の講義よりも面白く大変に役立った。この指導社員の講義を聴きながら、なぜ大学の授業がつまらないのか考えた。
指導社員は、ダッシュポットとバネによるレオロジーの議論は将来無くなるだろう、と予測されていた。粘弾性論を大学院で学んでいた時には面白かったが、実務でゴムを扱うようになってその体系に疑問を持ったそうだ。
確かに電磁気学の体系と粘弾性論とは美しく似ているが、実験で遭遇する様々な現象について考察を進めたところ学んできた粘弾性論を怪しいと思うようになったという。
大学の授業ではこのような話の展開にならない。学問の体系は絶対であり、すでにそれが完成された体系として学ぶ。その結果理解よりも記憶が優先されるような講義になる。
講義している本人から、怪しいがとりあえずこれを知らないと仕事にならない、などと言われると、頼りなさよりもなぜ怪しいと感じているのかという点に興味がわいてくる。
指導社員による朝の座学はこのような調子だったので、質疑応答が中心となって進んでいった。しかしそれは当方が仕事を体得するまでだった。
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NHKの大宣伝で4Kと8K放送が開始したことを知らされた。我が家のTVは4K対応TVであるが、今年の10月以前に購入したのでチューナーがついていない。だからせっかくの4KTVであっても高画質放送を楽しめないのだが、不思議なことに特に残念な気分にならない。
4Kチューナーはそれほど高くないのでやがては購入しようと思っているが、心配なのは衛星放送用のアンテナとブースターだ。NHKの説明によると4K放送はチューナーだけで大丈夫だが8Kを楽しむためにはアンテナやブースターまですべて8K対応にしないと受信できないそうだ。
しかしこのような説明があるにもかかわらず、ネットには早々と4K放送がチューナーだけでは映らなかった、という書き込みがある。まだ放送が始まったばかりなので、どのような場合に受信できないのか情報不足で今すぐにチューナーを購入する気持ちになれない。
かつて衛星放送や地デジが始まったときには、まったく異なる放送として説明されたのでわかりやすかったが、今回のNHKによるPR内容では既存のTVでもチューナーを購入すれば簡単に映ると誤解している人も多いかもしれない。
実はNHKが盛んに宣伝しているような単に番組が高画質になるというわけではなく、高画質番組を始めた新しいTV局の電波で放送される、というのが正しい理解だ。
だから単純にチューナーを購入しても高画質を楽しめない可能性があるから注意したほうが良い。NHKのサイトの説明では4K放送はチューナーの購入だけで良いような説明がなされその他の問題について詳しく説明されていないのは不親切である。
ところで40インチ前後のTVでは、4K対応のTVであればハイビジョン放送でも十分な画質で大相撲を楽しめる。観客の顔も従来のハイビジョン対応のTVよりもくっきりと見えて、貴景勝の優勝が決まった瞬間映し出された高安の表情と観客の表情が面白かった。大画面TVになるほど画素の問題は大きくなるが、30-40インチ程度ならばハイビジョンでも十分楽しめると思っている。
レコードをCDの音質でデジタル化した場合とDVDの音質でデジタル化した場合にはその違いを劣化した耳でも聞き取ることができた。これはヘッドホーンでなくてもスピーカーから十分に離れて聞いてもその差が分かるレベルだ。
しかし40インチ前後のTVでは、2m程度画面から離れて鑑賞する場合に、先日行われたNHKのPR番組で見るかぎりハイビジョン放送と4K放送の画質の差はそれほど大きくない。よくわからなかった、というのが正直な感想だ。
おそらく4K以上の放送を感動して楽しむためには、50インチ以上の大画面TVが必要と思われるが、このような大画面TVを購入できる世帯がどれだけあるのだろうか。設置場所だけでも大変だ。天井に照明と兼用して利用している光景を思い浮かべ笑ってしまった。
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1979年10月1日にゴム会社の研究所へ配属された。指導社員は神様のようなレオロジストで、ダッシュポットとバネのモデルから導かれた常微分方程式を関数電卓で解く人だと紹介された。
1年間の新人テーマとして、指導社員が材料設計した樹脂補強ゴムの実用処方を開発し、大衆車の低コスト高性能エンジンマウントを製品化する業務が用意されていた。
テーマ説明を受けて奇妙に思ったのは、すでに配合処方が出来上がっていたことである。それを標準配合として、さらに適した樹脂を探索するのが仕事だと補足説明を受けた。
指導社員が1年かけて行ったダッシュポットとバネを組み合わせたエンジンマウントのモデルについてシミュレーションされた結果と、指導社員が考案した標準配合のゴムの特性が見事に一致していた。
ただ、指導社員からここだけの話として聞かされたのは、その標準配合は彼のKKDで見出したものだという。シミュレーション結果と見事に一致した特性のゴムを見出すことはできたが、どのような樹脂とゴムを組み合わせればそのようになるのかは不明だという。
それを明らかにするために20種以上の樹脂を用意したので標準配合の樹脂成分を変えたときに物性と高次構造がどのように変化するのかを科学的に探るのが当方の仕事だという。
すなわち、業務として簡単にまとめると、標準配合の樹脂成分を他の樹脂に置き代えた処方のゴムを幾つか混練し加硫後のゴムの分析と物性測定を行い、もっと最適な樹脂が無いのか探るだけである。そしてその実験過程で得られたデータから処方設計の法則をまとめ上げるのは研究所としての成果だった。
ただし分析項目や測定すべき物性もわかっているので、科学的に仕事をといわれても、これはほとんど頭を使う必要のない肉体労働だった。修士課程の2年間無機材料の講座で学び、高分子の知識が皆無に近い新入社員の当方には最適なテーマだと思った。
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