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2018.10/23 今という時代(5)

1ケ月以上前の記事だが、毎日新聞デジタル版にスポーツ界のパワハラ問題について、筑波大教授で元柔道選手の山口香氏が、以下のことを述べている。

 

「私たちの目標は自立して生きられる成熟した人間を育てること。年功序列だった時代とは違い、従順で文句を言わずに働く人が求められるわけではない。選手として暴力は嫌だと意思表示できることが重要なように、社会に出たら自分の身を守るために適切な判断をできる人になってほしい。メダルを取るためだけに強化費を使うのではなく、ロールモデルとなる人材を送り出し、社会に還元することも考えなくてはなりません」

 

ここには、国でスポーツに力を入れる意味や、スポーツ界の在り方、社会とスポーツとの関係、そして今社会における組織の在り方についての考え方がうまく凝縮されている。

 

記事では指導者の世代交代について「高度成長期の精神を反映する人気漫画を例に挙げて新陳代謝を促す。野球選手を目指す主人公の星飛雄馬が父親の猛特訓を耐え抜く「巨人の星」だ。「このスポ根漫画を読んで感動した世代にはもう競技の指導や組織運営の立場を明け渡してもらい、サッカーの楽しみが伝わる漫画『キャプテン翼』世代に任せる。そんな覚悟を持ってほしい」

 

という意見などを紹介しながら、指導者の世代交代の必要性を指摘している。この記事はスポーツに関する特集だが、働き方改革にも通じる内容に思う。

 

大企業の品質データ改ざん事件も含め、企業内の労働者と組織の在り方について、特に労働者については、滅私奉公あるいは組織に絶対服従という時代ではなくなった。

 

労働を人生の楽しみの一つとして、そして組織はそれをサポートする機関であり、個人の能力を生かして成果を出させる機関として機能するよう改革を進めることが、働き方改革で求められている。

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2018.10/22 ボケ

最近やたら背景をボカした写真が多くなった。カメラ雑誌でこの10年ボケを盛んに話題にし始めたためだろう。ただ、何となくこの傾向はカメラメーカーの陰謀のような気がする。なぜなら、携帯に付属しているカメラではきれいなボケが得られにくいからだ。

 

すなわちきれいなボケの効いた写真を撮るために一眼レフを買ってください、というわけだ。20年ほど前ツアイスレンズのボケが最高とカメラ雑誌でもてはやされたときがある。ニコンの85mmF1.4のレンズでは、滲みが出てボケが汚い、とその道のプロたちが評を書いていた。

 

デジタルカメラの未来が見え始めた当時、ペンタックスからニコンに乗り換えようとF100を購入した。そしてボケの評判が良くない85mmF1.4のレンズも購入した。娘の写真を何枚も撮ったが、ボケ部分の滲みの独特の美しさがニコンレンズの特徴と感じた。必ずしもプロの先生方の評が正しいわけではない。

 

むしろ、カリッと映りすぎる点が気になった。ペンタックスのリミテド77mmF1.8の映りに比較すると、極めてシャープである。何やかやとペンタックスとニコンの両方を使い込んでたどり着いたのは、レンズの特性からくる味のほうが大切だろうと感じるようになった。

 

ボケもいつも大きくぼかせば良い、というものでもない。大きくボカせば、人物がくっきり浮かび上がり、ポートレートであればそれだけで作品としてうまく見える。しかし大きく背景のぼけた写真は、被写体に力が無ければ面白くない写真になる。ある程度被写体に物語を付加してくれるようなぼかし方であると、無難である。

 

特に家族写真であれば記録性が求められるので、ある程度背景を読み取れるぐらいのぼかし方がよい。必ずしも大きなボケがいつも良いとは限らないのだ。そしてその程度のボケではニコン85mmF1.4は、独特の滲みを見せる。

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2018.10/21 KYBの不正の意味

「「(日本メーカーは)激しい競争に直面し、コストダウンを求められる中で人員を削減してきた。余裕がなく、現場がおろそかになっている」

企業論を専門とする政策研究大学院大学の橋本久義名誉教授は、一連の不正の背景をこう指摘する。」

 

これは学者の指摘だが、昨年暮れから相次ぐ不正問題について当方は異なる見方をしている。

 

2年ほど前から、信頼性工学のセミナーをスタートした。せいぜい2-3名しか集まらないかもしれないが、昨今の状況を鑑みてライフワークのつもりで企画した。

 

予想外にも10名前後集まる時もある。二次電池を題材にしたときには、ほんとに集客は少なかったが、セミナー会社のご厚意で開催にこぎつけた。

 

一連の活動を通じて感じているのは、参加者の発言から漏れてくる品質管理技術に対する企業の意識の低さである。特に二次電池業界では、ワイブル統計に対してほとんど無関心である。

 

相次ぐ不正問題でガバナンスなどの指摘はもっともだが、そもそもバブル崩壊前の時代のように品質管理活動が全社に展開されておれば、不正という発想は起きないはずだ。

 

おそらく最近の経営者の中には品質管理活動の基本精神を御存じない方もおられるのではないか。バブル崩壊から20年以上経過し、QCに基づくデータの扱いを知らない若い技術者も増えてきた。

 

来年は開発設計段階から販売まで、信頼性をあげるモノ創りに関するセミナーをスタートする。また、弊社事務所でも希望者にセミナーを開講しているので問い合わせください。

カテゴリー : 一般

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2018.10/20 高分子の運動(5)

高分子の自由体積部分では、そこに存在する高分子の主鎖の一部、あるいは側鎖基、その一部分は、活発に運動している。

 

回転運動や屈伸運動様々な動きが観察される。このことは教科書に書かれているが、もう一つレプテーション的な運動は、今書店で販売されている教科書のどこにも書かれていない。

 

レプテーションとは、高分子の主鎖の方向の運動で、OCTA開発で有名な土井先生が発案されたモデルである。すなわち、ウナギを50匹ぐらいバケツに入れた状態を夢想していただきたい。その時観察されるウナギの動きがレプテーション的運動となる。

 

このレプテーション的運動は、Tg以下においても大変ゆっくりとした速度で自由体積部分でなくても行われている(と思われる)。だから、球晶の成長や射出成形体の変形、樹脂消しゴムがPS製ケースと接着する現象なども起きるのだ。

 

10年以上前にPPSと6ナイロンをカオス混合装置で相溶させて透明なストランドを作った。記念に退職後も持っていたが、ある日それを見て驚いた。白濁していたのだ。

 

そして透明感のある白濁から真っ白へ変わっていった。およそ10年かけてスピノーダル分解を起こし、相分離してしまったのだ。室温でこのようなことが起きるかもしれないと思っていても、実際に起きてみるとびっくりする。

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2018.10/19 高分子の運動(4)

光学用ポリオレフィン樹脂を射出成型すると、非晶質の成形体が得られる。無機ガラスならば全体は密度が均一なガラス状態である。

 

ところが高分子のガラスでは、自由体積と呼ばれる、分子運動が可能な空間が存在する。

 

すなわち、高分子のガラス相には、分子運動が凍結されている構造部分と、室温でもぴくぴくあるいはぶんぶんと、分子の一部が動ける自由体積部分との二つが存在する。

 

20世紀に高分子結晶に関する科学が著しく進歩し(注)、球晶の中にも非晶質部分の存在することが分かってきた。無機の結晶子に相当するのはラメラであるが、このラメラの生成の様子もわかってきた。

 

すなわち、光学用ポリオレフィン樹脂に限らず高分子の構造では、室温ですべての運動が凍結されているのではなく、自由体積部分のように分子運動が活発に行われている部分が存在する。

 

 

(注)当方が学生の頃、新規高分子合成が研究の花形であったが、高分子結晶に関する研究は盛んにになりつつあった。ゆえに授業では、シシカバブが出てきても球晶の詳細については講師から説明が無かった。また講師がシシカバブの名前の由来を御存じなかった時代でもある。ゆえに社会人になって学会に出かけその進歩の様子を見ていてアカデミアの活躍に圧倒された。もっとも企業ではおいそれと研究発表の許可が出なかっただけかもしれない。

カテゴリー : 高分子

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2018.10/18 高分子の運動(3)

高分子量のポリオレフィン樹脂の一分子が、室温で空気中に浮いていることは無く、樹脂として何かの形になっている。例えばポリエチレン袋やアペルやゼオネックスの様なポリオレフィン樹脂レンズである。

 

ここで面白いのはポリエチレンは結晶性樹脂として知られているが、アペルやゼオネックスは非晶性樹脂と言われている。後者は嘘である。15年以上前にゼオネックスやアペルを結晶化させた経験があるからだ。

 

すなわちアペルやゼオネックスは結晶性樹脂である。これらは、側鎖基に嵩高い分子構造の基をくっつけて結晶化しにくくしているだけである。それがわかると結晶化させることが可能となる。

 

カタログには結晶性樹脂と本当は記載すべきであるが、射出成形では結晶化しにくいので問題になっていない。呼び名は問題になっていないが、この樹脂が非晶性樹脂と信じていると、レンズの射出成型で問題が起きたときに原因がわからなくなる。

 

さて、レンズ用ポリオレフィン樹脂では、全体が非晶質となっていることを信じ、高分子鎖1本がどのようになっているのか夢想してみよう。

 

高分子の非晶質体はすべてTgを有するのでガラスである。面白いのは無機ガラスと異なり、全体を細かく区切って部分部分の密度を比較すると、大変大きな密度差が観察される。

 

この時最も低密度の部分は自由体積と呼ばれ、その部分には、ガラス状態でも分子運動が行われている。すなわち、成形体全体はガラス化され運動が凍結されているが、自由体積と呼ばれるところでは、高分子の一部がそこに存在すると運動できる空間があるおかげで、分子運動が可能となる。

カテゴリー : 高分子

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2018.10/17 高分子の運動(2)

原子では一個の玉を想定して、室温において高速で飛び回っている運動だけを考えればよい。球が自転していたりする運動をここでは無視しているが、それは飛び回ることで衝突したりして費やされるエネルギーの方が大きいだろうから、誤差として扱うこともできる。

 

ところが分子では、飛び回っている運動と分子を構成する原子の回転運動を原子のように扱えない場合も出てくる。これは、分子がいくつの原子でできているのか、分子の形はどうなのか、原子がどのような結合でつながり分子となっているかなどいろいろ考えなければいけないからである。

 

これは人間でも同じで、独身であれば一人の世界で何かしていても問題とならないが、夫婦という関係ができたとたんに一人の世界が壊滅状態になる夫婦生活もあれば、ある程度の一人の世界が許容される夫婦関係もある。子供ができればこの関係も変わる。

 

夫婦の片方が大変活性な運動をしている場合もある。夫婦の関係では不倫となるが、相手が独身の立場では訴えられない限り問題は起きない。原子と分子の夢想をこのように行うと話が進みづらくなるが、似ているところもある。

 

化学反応など一定のルールの中での結合形成である。科学的ではない反応が起きた場合など化学だけでなく物理も動員して考えなければ新たなルールを生み出せない。LGBTの問題は少し似たようなところがある。

 

さて、高分子は炭素原子が大量につながった構造をしている。1本の手、σ結合だけでつながっている高分子をポリオレフィンと呼んでいるが、このポリオレフィンにおいて炭素原子は、室温に相当するエネルギーでくるくる回転している。

 

その回転に合わせてσ結合が振り回されるから、もしポリオレフィン分子1本が空気中に浮いていたならば、ものすごい状態で動いている様子を観察できるだろう。但しこれは少し不気味で気持ち悪いかもしれない。粗視化モデルで温度を下げると異なる世界が見えてくる。

カテゴリー : 一般 高分子

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2018.10/16 高分子の運動

あらゆる原子や分子は、その原子や分子のすぐ近くで測定された温度に相当する熱エネルギーで運動をしている。すなわち熱エネルギーを受けてそれを運動エネルギーに変えている、あるいは原子や分子は絶対零度であれば安心して寝ていることができる、というのが分子運動論の考え方である。

 

ここで温度は強度因子であり、エネルギーは容量因子なので、単純に測定温度からエネルギー量を決めることができない。測定温度からその空間のエネルギー量を決めることができるのは、平衡になっているときだけである。すなわち、25℃と計測されたときに、平衡状態となっていない酸素分子は必ずしも25℃ではないのだ。

 

26℃の酸素もおれば、20℃の酸素もいる。この温度とエネルギーの関係について専門家でも勘違いされている方がいるので気を付けたい。ここを正しく理解しておかないと、Tg以下でもスピノーダル分解が起きたり、クリープが起きたりする現象を理解できない。

 

さて、高分子はこの熱エネルギーによる運動をどのように行っているのか。これを夢想すると少し笑える。思い描く世界によっては艶美な風景となったり、エッチ恋(レン)だったりする。ここでは、それぞれの趣味で高分子を頭に浮かべてほしい。

 

まず、教科書には、溶融温度(Tm)以上で高分子は流動性を示す、と書いてあったりするが、ガラス転移点(Tg)以上でも以下でも夢想世界では時間軸を変えて高分子の流動性を描くことができる。すると教科書の記述はこれでよいのか、という疑問が出てきたりする。

 

大した話ではないが、難解な高分子物理の論文と格闘するよりも、物理化学の教科書の最初のページに出てくる形式知だけでも頭の中で楽しめるので、明日もこの奇妙な話を書く。

カテゴリー : 高分子

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2018.10/15 講演会のお知らせ

9月は台湾ITRIからの依頼で講演会がありましたが、国内の参加者はいらっしゃらないと思い、案内を掲載しませんでした。10月には下記3件の講演会が開催されますのでご案内いたします。参加ご希望の方はお問い合わせください。また、弊社にて特別価格で行うセミナーもございますのでお問い合わせください。例えば高分子の専門外の方が高分子について学ぶ特別少人数セミナーを弊社事務所で休日の午後を利用して安価(15000円/1名、基礎の基礎編は時間が短く10000円です。)に開催しておりますのでお問い合わせください。このほかの技術セミナー(料金は内容により異なります)についても随時受け付けておりますのでお問い合わせください。

 

1.テーマ:リチウムイオン電池の信頼性向上・難燃化技術

開催日時:2018年10月9日(火)10:30~16:30
会 場:ちよだプラットフォームスクウェア 5F 503

(終了しました。来年1月ころにもセミナーが企画されています)

2.テーマ:プラスチック/ゴムの劣化・破壊メカニズムとその事例および寿命予測法

開催日時:2018年10月19日(火)10:30~17:30
会 場:日本テクノセンター研修室
参 加 費:48,600円(税込) ※ 資料代含

3.KRIワークショップ’18

2018年10月24日京都リサーチパークで開催されますが詳細は直接KRIへお尋ねください。本件につきましては弊社で受付できません。

以上

カテゴリー : 学会講習会情報 宣伝 高分子

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2018.10/14 ハゲタカジャーナル

「インターネット専用で、質が十分に保証されていない粗悪な学術誌「ハゲタカジャーナル」が増えている問題で、名古屋大と新潟大は、研究者のヒアリングや論文の投稿ルール作りなど独自の対策に乗り出す方針を決めた。両大は、ハゲタカジャーナルに学内から多数の論文が投稿されていたことが毎日新聞などの調査で判明している。」

 

少し寂しい記事をヤフーニュースで見つけた。この記事のどこが寂しいのかというと、アカデミアの先生が金を払って論文投稿している点とハゲタカジャーナルへの投稿を悪い、と決めつけている大学の見識である。

 

さて、このニュースの内容では、研究者が自分でお金を払って論文を載せてもらっているのだという。当方のこの年齢になるまで、お金を払ってまで自分の研究成果について論文を投稿する研究者がいるとは夢にも思わなかった。これはお金を払って学会発表するのとは少し異なる。

 

学会発表では自分の研究の審査を受ける意味あるいは反響を探る意味があるから有償であり、それ以外は学会発表でも招待講演者には交通費ぐらいは出る。6月に上海で行われた国際会議に招待講演者として講演する機会があったが、ビジネスクラスの飛行機にホテルはスイートルーム、謝礼は封筒がたつほどの束を頂いた。この経験から研究成果の価値を考えた時にお金を払って論文投稿する、という行為など考えられない。

 

せいぜい学会に依頼され、その雑誌へ無料奉仕として投稿するのが我慢できる限界だろう。論文を書くにはそれなりのエネルギーと時間を使う。労働対価を頂くか、社会奉仕のために自分のエネルギーと時間を提供するのかどちらか目的になるだろう。

 

価値ある研究成果を公開するためにお金を払う、という条件では論文を書く気にまずならないはずだ。逆に何か惨めな気持ちになり、筆が止まる。

 

少し話が変わるが、会社設立時に出版社数社から社長インタビューのためお伺いしたい、というご提案をいただいた。設立したばかりの会社なのに、と不思議に思っていろいろ質問すると、雑誌を数年購読してほしい、という依頼が目的の取材だった。

 

手の込んだ商売方法になると有名女優のインタビューを持ち出してくる。それだけでなく、その女優と楽しそうにツーショットがのっているインタビュー記事が書かれた立派な紙質の雑誌を送ってくるなど、ものすごいエネルギーで勧誘してくる。そのようなエネルギーに対しても有償であれば、徹底してお断りしている。

 

今時の先生の中には、お金を払ってまで自分の研究を雑誌に投稿される人がいるようだ。当方には原稿料を頂ける原稿依頼がよく来るので、お金を払ってまで投稿する研究者がいることなど考えたことが無かった。

 

ところで、お金を払って論文を投稿する行為の善悪だが、旧国立大学ではこのような教員に対して善悪の議論ではなく、もうその行為を理由に減給処分あるいは退職勧告してもよいのではないか。

 

税金で運営されている大学で、お金を出さなければ論文を掲載されない研究者はそれだけで失格である。国立大学の研究者には有償で掲載を依頼に来るぐらいが当たり前と思っていただきたい。

 

次にお金を出して雑誌に掲載してもらう行為だが、これは国税が使われていない研究者であれば、悪くない行為だと思う。研究の広告費として考えればそのような方法も現代ならば許される時代だと思う。ハゲタカジャーナルは少し言い過ぎだ。

 

研究内容が保証されない、云々と記事にはあるが、特許の世界では簡単には実施できない実施例が多い。しかし、その簡単には実施できない実施例を信じて苦労して実現した結果、賞を頂いた例もある。科学的に正しくても実務では使い物にならない研究もある。

 

 

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