高分子の改質のために無機フィラーを添加する。例えば、弾性率を上げたり、導電性を付与したり、難燃性を向上したり、と様々な目的がある。
ゴムには昔からカーボン粉末がフィラーとして添加されてきた。その目的は硬度向上であり、カーボン粉末を大量に入れると硬くなりゴムとしての性質も小さくなる。
硬くて柔らかい(衝撃吸収という意味の柔らかさ)という矛盾したゴムを設計するためには、硬度を上げる手段をカーボンではなく架橋密度に期待することもできるが、1970年代に樹脂補強ゴムという硬さを全く異なるコンセプトで向上する技術が開発された。
これは、無機フィラーだけでは性能改善が行き詰まった時にポリマーアロイでブレークスルーした事例である。
無機フィラーの組み合わせで二律背反の性能を改善した事例もある。例えば転がり抵抗とグリップ特性の改善という省燃費タイヤ技術では、カーボンとシリカの組み合わせでブレークスルーが可能となり、シリカの改良については現在でも特許出願が行われている。
高分子と無機フィラーの組み合わせについてもこのように要求される特性に対して、無機フィラーと高分子、あるいは2種以上の無機フィラーの組み合わせで検討される時代になった。
無機フィラーについては混練中にそのフィラーの組成が変わることはないので、その表面状態が高分子への添加でよく考えなければいけない問題で、溶媒に溶質が溶解するかどうかを指標で表すSPを粉体に拡張する試みが1980年前後から試みられている。
また表面を化学修飾する技術も同時に開発が進み、多くの種類のカップリング剤が販売されている。カップリング剤の知識は無機フィラーを高分子に分散するときに要求される知識の一つである。
カップリング剤技術の面白くない点は、コストが高くなるところである。カップリング剤の価格とプロセシング価格の上昇を考えなければいけない。
ゆえにカップリング剤を使用しない技術というものも発展しているが、これはノウハウとして使われることが多く、表に出てこない。当方は科学的にはよくわからない場合が多いという理由で、このような技術に魅力を感じる。
また、AIでも考えつかない技術が存在する。特許には科学的に説明が難しいためか、驚くべきことに、と説明されていたりする。それほどびっくりするような技術でなくても特許を書いている人が驚いて見せなければ発明にならないような技術だ。
ところで高分子と高分子のブレンドではχを用いるが、SPで評価することも行われる。無機フィラーもSPで議論できるので、高分子のブレンドでは、SPのほうがχよりも便利かもしれない。
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街の本屋はピーク時の半分近くになったと言われている。この原因はアマゾンで本を買うようになったから、と言われているが本当か。実は日本では本そのものも売れなくなっている。これは、ただインターネットの普及という今の時代のステレオタイプ的な見方では説明がつかない。
また若い人が本を読まなくなった、と言われているが、若い人だけでなく年寄りも読まなくなったのではないか。電車の中で文庫本を読む風景は、いつの間にか携帯電話を誰もが眺める風景になった。吊革につかまりながら化粧をしている女性を見つけて驚いたのは10年前だが、電車の中の化粧は常態化した。
身の回りから本を読んでいる人がいなくなったことからも多くの人が紙の本を読まなくなったことがわかる。紙の本もこのような状況に対応できるようオンデマンド出版技術が進歩し、3000円前後の本を200冊程度でも出版できるようになった。
ゆえに自費出版も一時ブームになったが、そもそも街の本屋が少なくなったのでブームも長続きしない。大手から売れる本しか出版されなくなった結果、購入する人が限られ、出版物の減少となり、本の売り上げが減り、街の書店が少なくなった、というのが大きな原因ではないだろうか。
このような仮説をもとに適当な統計を探したが、見つからない。しかし、パソコンブームで多くのパソコン関係の雑誌や単行本が登場し、それが次第に少なくなった流れや、デジカメブームで写真雑誌や書籍が登場し、それがほとんどなくなった駅の本屋の風景を思うと、間違いではないのかもしれない。
面白いのはコンビニに置いてある雑誌が、街の本屋と少し趣が異なる点である。これに気がついたのはこの10年のことであり、新しい動きに違いない。一定の占い本やノウハウ本が定期的に入れ替えがあり、並んでいるのだ。定点観察するとよく売れる本の話題がTVで取り上げられたりしている。
紙の本が読まれなくなったのはペーパーレスの時代の潮流で理解できる。一方で購入場所の変化という流れと出版社の対応のずれもあるのではないか。それから書籍そのものが高価になったことだ。昔ならば気軽にちょい読みができた環境が壊滅したことが本を読む人の淘汰につながり、そこで書店の廃業がシナジーを起こし、書店の減少を加速しているのかもしれない。
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AIの普及で知識労働者の仕事が奪われる、と言われている。過去の大小の産業革命が多くの職人から仕事を奪っていったようにこの未来予想の半分は当たっているかもしれない。
しかし、AIは情報を集め、それを過去の方法で知識に加工することはできても、今どのような情報を選びどのような知識を身につければよいかは、AIにはできないはずである。少なくとも現代のどんどん成長しているAIは人間の作ったプログラムとモデルの教師データをもとに動いており、情報をAIの知識に変換するときに特定のパターンになっているはずである。
分かりやすく言えば、AIの知識なるものは、そのAIを生み出した人に必要な知識であって、多くの人間にとってAIの提供する知識は単なる情報に過ぎない場合がある、ということだ。すなわち、AIの生み出す知識が情報の価値程度にしか活かせないような仕事は、人間の仕事として残ってゆく、ということだ。
知識は人間の知恵により情報が昇華されたものであり、形式知はその意味からAIは人間と同じ知識を身に着けることになるが、経験知は必ずしも全ての人間が同じものを身に着けていないという理由で共通の知識になるとは限らない。さらに暗黙知になるとAIは身に着けるのが苦手のはずである。
このように考えると、AIが知識労働者のすべての仕事を奪うとは考えにくい。経験知や暗黙知が重視される知識労働は残ってゆく。さらにその仕事において、その仕事を継続するために何を勉強してゆかなければならないのかを要求されるような研究開発職は将来も残ってゆく。
おそらく未来の研究開発職では、AIを操り問題解決できるスキルと「何が問題か」を考え出すスキルとが厳しく求められると思われる。だから今のように形式知を中心とした勉強しかできない人には厳しい時代になる。AIの時代とは、本当の「勉強」という活動、すなわち今何を学ぶべきかが求められる時代だ。
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有機合成化学について真剣に勉強したのは大学4年の時だけである。しかし、研究以外の面白さを見つけ、社会人になってもたまに専門書を一冊買って読んでいた。
専門外で専門書を読むと意外と楽しめる。ドラッカーの難解さとこのような専門書の難解さは異なるが、理解できなくて興味をもてなければ読み飛ばせばよい気楽さがある。
学生の時、専門書を読むのを苦痛に感じていたのが不思議に思えてくる。なんといっても自分のペースで読めるというところが良い。そして読み終わったあとに何か頭に残っている心地よさが良い。
ただ、有機合成関係の書物を楽しんで読んでいたのは20代だけで、それ以降はコンピューター関係の本がたくさん書棚にたまっていった。日進月歩の進歩が一種の脅迫感として感じ、雑誌から専門書まで新しい情報が載っていると買って読んでいた。
このころは本を読む楽しみなど無くなり、情報の洪水の中で遅れまいともがいていたような気分である。業務とは無関係と理解していても、なぜ時代を追いかけるようにコンピュータ関係の本を読んでいたのか不思議である。
ただ、ニュースはじめ社会に意味不明な言葉が、今以上のスピードで氾濫していた。インターネットの前身であるパソコン通信も刺激的だった。データメディアの使用方法はじめそれらが自然に社会に溢れる状況において、コンピューターの知識無しでは21世紀を生きることができない、という恐怖感があった。
会社よりも早く、DOSの時代に家庭内にはLANができ、子供たちはゲームを楽しんでいた。ウィンドウズ95が普及し始めたとき、家庭内には自作のAXパソコン(今のDOS/Vパソコン)がPC98に代わり動作していた。有機合成化学の知識よりもコンピューターの理解が優先された。
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「文部科学省の私立大学支援事業を巡る汚職事件で、受託収賄容疑で4日に逮捕された同省前科学技術・学術政策局長の佐野太(ふとし)容疑者(58)(4日付で大臣官房付に異動)が昨年、東京医科大学(東京)側に対し、同大が支援事業に応募する申請書類の書き方を指南していたことが、関係者の話でわかった。東京地検特捜部は、佐野容疑者の行為が贈賄側への便宜供与にあたるとみている。」
上記は、7月6日付読売新聞電子版からのコピーである。ひどい話である。他の新聞には、今どきこのような古典的手法で逮捕されるのか、というような感想が書かれていた。すなわち悪事が簡単にばれる様な事件である。ツイッターには犯人の息子が受験前に合格が決まったような書き方の投稿をしているという。
起業してから補助金関係の公募に「カオス混合技術の開発」をテーマとしていくつか応募してきたが、すべて落選したので中国企業の支援を受けながら技術開発を進めてきた。サポインの応募では、何度も中小機構のアドバイザーにご指導を受けたが、そのたびにこのサポインはテーマがよくても通るかどうかわからない、と言われた。
税金で運営されている国家の補助金公募では本来公平でなければならないが、応募した立場では不公平感が常にあった。今ようやくカオス混合装置について注文を頂けるようになったが、もし公募で開発された技術だったならもう少し安く提供できるところ、弊社のこれまでの投資を回収するための費用を載せるので少し高くなり、恐縮している。
また、今回特許が公告となった画像処理技術についても国の補助金で開発したかったが、落選している。ただし、応募すれば誰でもいただける20万円の補助金はかろうじて頂くことができた。
国の補助金審査は本来公平であるべきだが、応募した体験からは不公平感が残る。カオス混合技術や画像処理技術は、国に雇われていたアドバイザーの方々から毎度採用される可能性が高い内容と言われ続け、落ち続けた実績がある。
カオス混合技術や画像処理技術、新規概念による樹脂用添加剤の開発など公募に落選した技術は、へぼな技術ではなく、すでに中国企業で実用化され稼働している。技術流出など批判的な言われ方をするが、国の公募がこのような状況では仕方がないことである。
野党は国の公募事業について調査したならば、森掛問題よりも成果が出るのではないか。少なくともカオス混合技術の審査の経緯だけでも知りたいと思っている。審査員が無能だったのか、不正があったのかだけでも知りたい。書類はアドバイザーのご指導で完璧に仕上げて提出していた。
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すでに無機材質研究所へ留学が決まっていた時に、趣味で有機合成について勉強していた。学生の頃は試験勉強など大変だったが、試験とか仕事とかにとらわれず優れた研究者の書いた専門書を読むと面白い。
すなわちその書を読むことで、研究者の思想に触れることができるからだ。学生時代はクラム・ハモンドが書いた英語の教科書が授業で使われ、それを使って予習するのが大変だった記憶がある。
教科書の内容は有機電子論に基づく有機合成化学の体系であり、当時は最先端の名著で、4、5年後にはその日本語版が発売されている。またこの本を模した日本の研究者による著書も発売されている。この日本の研究者による著書は、当時日本語版が無かったので重宝したが、中身の薄さを十分感じることができる内容だった。
有機合成反応がただまとめられていただけであり、有機合成反応の体系というよりは情報集という本だった。この本を購入し、前期のテストを受験してから気がついたのだが、英文を読みながらノートを作れば出来上がるような本だった。
学生時代は研究者の思想を意識してゆとりのある読み方などできなかったが、およそ業務とも無関係で、趣味でもなく、単なる読み物として読んでみると難解な本でも面白く読める。
亡父が古典を読んでいたのもおそらく同じような気分だろう。本の中に新しい発見があるとさらに読み続けたくなる。これは文学書の楽しみ方とも似ているのかもしれない。
わずかながらの知識で理解できる範囲で気楽に専門外の本を読むのは、うまくはまると十分な楽しみの手段になる。コンピューターのプログラミング技法の本についても同様で、学生時代にカーニハンとリッチーの書いた論文にはまったのである。
この論文はたまたま複写機のところに複写ミスとして落ちており、興味を持ったので図書館に行き全文読んでプログラミングの勉強を始めた。授業として情報科学を聞いたときにはプログラミングに興味などわかなかったが、ユービックスの横に落ちていたジャムった論文は、それを全部読みたくなる意欲を掻き立てる内容だった。
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中国から帰国し、途中の流れをネットで見ないまま、わけもわからず月曜日からの展開にはらはらしながらNHK朝ドラを見ていた。
このドラマ、漫画家として成功するドラマでなかったのか、と予想を裏切る展開に少し戸惑っている。しかし戸惑いながらも主人公と秋風先生との会話を聞いていてうなってしまった。
漫画家を志望していた主人公へ見事なまでの引導を渡したのだ。主人公はよい指導者に巡り合った、とも思えるが、当方ならば、漫画家として生きる道も、もう一度考えるようにアドバイスしたかもしれない。
秋風先生は、才能が無ければ苦労する道なので引導を渡したのだろうが、構成力以外の才能は人並み以上にあったはずである。ドラマではそのように主人公を描いていた。その強みを生かした生き方を指導するのも指導者の役目である。
秋風羽織はプロ中のプロとしてドラマでは描かれているが、多くの漫画家は少なからず主人公の様などこか才能が劣っていてもプロとして仕事をしながら劣っている部分を人並みまで持ち上げる努力、あるいは周囲のスタッフがその協力をしているのではなかろうか。
本当に才能が無ければ生きてゆけない世界があることはスポーツ番組を見ていて十分に理解できる。しかし、わずかな強みを生かして仕事をしてきた当方としては、引導を渡すのではなく、強みを生かす指導のシーンを見たかった。
誰でも何か一つは強みを持って生きている。少なくともこの年まで生きてきて出会った人で何も強みの無かった人はいなかった。しかし、その強みを自覚しないで生きている人は多い。
秋風先生は主人公の強みを見出し、叱咤激励して漫画家デビューまでさせたのでその先の秋風先生の指導者としての手腕を期待していた。しかし、あっけなく引導を渡したシーンを見てその意外な展開に戸惑っている。
このドラマ、今後の展開がどうなるのか楽しみであるのと同時に、過去の「純と愛」のような無茶苦茶な展開にならないことを望む。少なくともここまでは面白い展開だったので、後半は朝ドラにふさわしいエンディングを目指していただきたい。
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「日本代表は、2日に行われた決勝トーナメント1回戦のベルギー戦を2-3で敗戦。史上初のベスト8進出を
逃した。
本田はこの試合で81分から登場し、FKなどで存在感を発揮したものの得点を奪えず。敗退決定後に
「これが僕にとって最後のW杯です」と、4年後のカタールW杯には出場しないことを口にした。」
以上は7月3日GOAL電子版の記事の抜粋である。この記事ではさらに次の本田の言葉が添えられて
いた。
「現実ですよね。これがワールドカップ。僕自身にとって最後になるんですけど。正直、自分がみんなを
もう一個上のステージに連れていってあげたかったっていうのはありますけど、そこで決めれないのも
僕の実力。やれることはやった、ベストを尽くしたという思いはあります。仲間にはありがとうと言いた
い」
サッカーという競技はスター選手一人おれば勝てる、という競技ではないことを今大会ではロシアが勝つ
など決勝トーナメントの結果も示していた。
直前の監督交代でどうなるのかと見ていたら、日本はかなり検討したのではないか。監督の存在がチームに
与える影響を明確に示した結果だったように思われる。
西野監督の力量なのかコミュニケーションの問題なのか不明だが、同じメンバーでありながら大きく変貌
したパワーにサッカーの面白さを見た。
今年は日大アメリカンフットボール監督問題もあり、リーダーの在り方をスポーツで考える年なのかも
しれない。
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プレの準備不足でも引き受けたのはCMFデザインには関心があり、会議そのものに興味があったからだ。
招待講演者であれば宿泊費や交通費だけでなく破格の講演料も出るという。先月支払いを受けた某社の3回分の講演料を越える金額が45分の講演で得られるとあって躊躇なく引き受けた。
ただ、これが甘かった。会議の一日前の飛行機で訪中する計画になっていた。搭乗した飛行機はエコノミーではない。
破格の扱いで空港に着くと、「倉地先生」と呼ぶ声が聞こえた。迎えに来たのは、以前日本へ遊びに来た陳君である。
陳君の話ではこれから某樹脂会社で技術相談にのってほしい、という。当方はホテルでプレの練習をする予定でいたが、人の好さが裏目に出た。気楽にOKと応えてしまった。
技術指導内容は、朝飯前の内容だったが、大切な時間が無くなった。さらに夜はそのお礼の夕食会で、とうとう準備不足でぶっつけ本番となった。
講演当日は、朝9時陳君の電話で、会場に呼び出され「先生はここに座っていてください」と言われた。一番前の席である。少し期待していた自分の講演までのわずかな練習時間も無くなった。
ただ年を重ねて蚤の心臓は十分にタフになっていた。用意した資料を読むだけ、と覚悟を決めた。
このような状況で講演をしたのだが、散々だった。なぜ壇上で亡父に叱られなければいけないのかは自分の講演を客観的にみて明らかだった。お化けの話が似合う季節になった。
しかし、スポットライトの当たっている状態で出てくるお化けの話など聞いたことが無いが、お化けならば柳の下が定番で、お立ち台の上では目立ちすぎる。よほど我慢ができなかったのだろう。
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6月29日にCMFデザインに関する国際会議が上海で開催された。招待講演者として演題に立ったのだが不思議な体験をした。講演は前日に書き上げた文章を読んでいるだけなのでセミナーよりも楽だったのだが、演題に立った瞬間、突然脳裏に若い時の思い出や父親が現れたのである。
青春時代の白日夢であれば楽しかろうが、その時の自分の置かれた立場や自分が果たさなければいけないゴールの状況では悪夢以外の何物でもない。振り切ろうと大きな声で用意した文章を読み始めたのだが、口が乾き始め、おまけに脳裏に現れた父親が説教をし始めたのだ。
このような状況をここに書くのはお恥ずかしいが、依頼されてからの依頼元の説明不足や準備までの時間を考慮すると45分間のプレゼンをただ英文を読むしかない、と高をくくっていた。
起業してから生活面で改善されたのは睡眠時間である。いつのまにか夜九時に寝て4時ごろ起床するのが習慣になっていった。仕事もほぼ計画的に進めている。ところが、この国際会議について依頼されてから当方の発表内容を告げられたのが開催まで1ケ月を切ったところである。
依頼された発表内容のそれぞれは大したことではなかったのだが、つながりがない。大きなカテゴリーとして日本の家電状況と新素材について講演してほしいというものだが、新素材について透明導電材料や透明材料についてと条件を付けてきた。
デザインx透明導電材料x透明材料とくれば、LCDディスプレーの厚みと材料の変化について講演すればわかりやすいと思ってまとめ上げたのだが、パワーポイントの資料を送ったところダメ出しが出た。まず画面が横長だそうだ。そして内容についてPC/ABSの話や人工大理石の話を入れてほしいといってきた。
自己紹介の中で透明導電材料を語る流れに資料を作成しており、その流れの中で日本のCMFデザインの話やPC/ABS、人工大理石の話など盛り込むには無理があった。とにかく2回ほど依頼側と意見交換してプレの資料が英語で出来上がった。それが中国出張の2日前だった。
通訳と自分のために講演用の文章ができたのは上海出発の前日であり、練習を当日自分の発表時間までに行う予定でいたが、その時間も無くなった。中国における当方の行動予定がすべて先方により決められており、練習などできない状態だった。
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