(9/9続き)酸化スズゾルには帯電防止層を設計できるだけの導電性があるが、超微粒子で水に分散しているため、何も工夫しなければパーコレーション転移が起きにくい。酸化スズゾルを用いて帯電防止層を製造するためには、パーコレーション転移を起きやすくする技術とパーコレーション転移の閾値を評価する技術が必要になる。
技術開発において、機能がうまく動作するかどうか評価する技術は重要で、基盤技術が整備されている企業では、常にそのメンテナンスが行われている。ゴム会社はその典型で、アカデミアよりも評価解析技術のレベルは高かった。しかし写真会社は特公昭35-6616の例が示すように技術の継続性すら無い会社であり、既存商品の品質評価ができる程度だった。原因は20年勤務して十分理解できた。
さて、十分な評価技術が無い会社では、評価技術開発のオブジェクトが新しい技術の開発で重要となってくる。新しい機能がうまく動作するかどうかは、それを評価できる技術が無かったら確認できないからである。故田口先生も基本機能とそれを評価する技術の研究が大切である、と述べられていた。
フィルムの帯電防止技術は写真会社の基盤技術のはずだったが、評価装置の大半が倉庫に眠っていて、表面比抵抗測定器と電荷減衰計測装置が使われている程度だった。パーコレーションを評価できそうな装置を探したが無かった。帯電について書かれた教科書にもあたったが、使えそうな評価方法は書かれていなかった。
奇妙に思ったのは、評価装置のすべてが、放電現象を直流に見立てて作られていることだ。電気には交流と直流があり、なぜ交流的な放電を前提にした評価装置が無いのか疑問に思った。
このような疑問は考えているよりも実際にフィルムのインピーダンスを計測すればよい。そこでフィルムのインピーダンスを測定したところ、パーコレーション転移の閾値と低周波数領域のインピーダンスが関係していることなど様々なことがわかった。疑問に思ったことは、すぐにアクションをおこし解決することは大切である。
実験も重要だが調査も重要なアクションの一つである。ところが何故と考える前にアクションを起こせる技術者が少ない。アクションの内容は疑問と開発のゴールで決まってくる。この時頭をあまり使わないという意味で技術者は体育会系である。
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本のマーケットが縮小する中、一部雑誌は元気が良い。しかし、感心するのは、大変良いタイミングで撮られた写真が多いと言うことだ。
それだけでなく絶妙のタイミングでズドーンと発表する週刊誌もある。散髪の待ち時間に週刊誌を読んでいるが、ゴシップ記事の中には、たとえそれが事実であったとしてもつまらない記事や社会的影響のないものがある。
一方で仮に事実で無かったとしても社会に影響を及ぼす効果的な記事を連発している週刊誌もあり、世間ではそれを文春砲と呼んでいる。
しかし、今回の山尾志桜里議員の記事については、そのタイミングや記事に載せられた写真に、これまでの文春砲と比較すると幾つか不自然なところが存在している。
記事の内容がどこまで真実かどうかは知らないが、写真が大変うまく撮られているのだ。すなわち、あたかも必ずそこに被写体が現れる、という確信の元に写真が撮られていると言って良い。
写真はいかにも隠し撮りのように写されているが、ピントは確かであり、単にカメラの性能が良かっただけでは説明のつかないショットまである。
すなわち、一連の写真を見ると、一週間の行動情報がすべて分かっていたのではないかと疑われる。山尾志桜里議員についてはガソリン代請求やその他の問題が報じられている。
今回のスキャンダルが無くても国民の代表としての資質に欠けると思われるので弁護をするつもりは無いが、この記事の発表から今日まで写真だけでなくどこか不自然さがある。
実は技術開発に成功するためのコツの一つに、現象を流れとして捉え、その流れの中で機能として不自然さが無いのかよく観察する手法がある。
QC手法では、ストップウオッチ片手に工程観察をしている挿絵が出ていたりする。ポイントとして眺めていると問題に気がつかないが、全体の流れとして眺めたときに違和感を感じその問題発見につながる。
例えば、PPS中間転写ベルトの押出プロセス開発では、生産開始から終了まで一日眺めていて、歩留まりを大幅に改良する発明のヒントが出てきている。工場内の騒音の変化がそのきっかけだったのだが、之については後日この欄で詳細を書く。
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写真会社に転職して、酸化スズゾルは帯電防止層に使えない、という否定証明の報告書を読みびっくりした。科学的推論に基づき見事に帯電防止層の材料として酸化スズゾルは使えないとされていた。
発見の経緯は省略するが、この会社で当時から30年ほど前に出願された特公昭35-6616には酸化スズゾルの合成法から帯電防止層を製造する技術まで書かれていた。科学的に書かれた報告書とこの特許の内容とは見かけ上矛盾している。
導電性微粒子を絶縁体のバインダーに分散して導電層を形成するときにパーコレーション転移という現象が生じる。ところが当時のこの分野の材料設計手法では、混合則が使われており、パーコレーションの考え方は普及していなかった。
新入社員時代に指導社員からパーコレーションの理論について概略を聞いていただけでなく、電気粘性流体の開発ではまさにクラスターの生成を考察しなければいけなかったので、パーコレーションという現象についてそれなりの経験知と形式知を持っていた。
とりあえず目の前の矛盾に結論を出すためにパーコレーションをシミュレートするプログラムを開発した。このプログラム開発というアクションは、「報告書と特許が矛盾している」のではなく、「パーコレーションという現象のために見かけ上矛盾したような結果になっている」ことを示すためだった。
シミュレーションプログラムを用いて報告書に書かれたデータを入力し、酸化スズゾルの導電性を見積もったところ1000Ωcm程度の導電性があり、それがパーコレーション転移を起こしにくい条件で帯電防止層が製造されていたために導電性が無いとの結論になっていたことがわかった。
すなわち、特許と否定証明の報告書は矛盾したものではなく、後者の報告書に書かれたデータを混合則という形式知ではなく、パーコレーションの概念を取り入れて整理したならば、特許と矛盾しない結論を出すことができたと思われる。
科学という形式知は、その進歩を見落としているとこのような問題を引き起こす。ちなみにパーコレーションについては1960年頃に数学者の間で議論が始まり、1980年代にフラクタルの議論に進展している。理論としてわかりやすい日本語の教科書が販売されたのは、1980年末になってからである。
ゴム会社で出会った指導社員は数学に秀でた方で詳しかった。しかし、高分子に微粒子を分散したときの議論にパーコレーションが登場したのは1990年前後である。当方が講演で話し始めたときもその頃で、それまでは古くから用いられてきた混合則による議論で現象の結論が見いだされていた。
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電気粘性流体の増粘の問題を研究したメンバーは、構造が明確な界面活性剤をHLB値のすべての領域で集め、分子構造との関係も議論したにも関わらず、なぜ問題を解けなかったのか。その原因はサンプルの集め方にある。すべての領域のHLB値について集められたからといっても、その条件で界面活性剤のすべてが集められたことにはならないからである。
科学の議論で現象を述べる時に、現象を代表するサンプル群は重要であり、そのサンプル群を定義するパラメーターの客観性と普遍性、汎用性が問題となる。そしてサンプル群が誤差として広がりを持っているならば、その広がりを定義できるパラメーターまで記述できなければいけない。
しかし、技術では、それらのパラメーターが仮に不明であったとしても、界面活性剤が機能し十分なロバストを確保できるだけで良い。界面活性剤の分子構造や純度その他の特性がブラックボックス化されていても、安定な機能さえ得られれば良いのである。仮に安定な機能に制約があったとしても、市場で用いたときに、その制約条件が無関係であれば、実用化できるのである。
また、技術はそのようにして科学成立前には発展してきたのである。科学と技術を結び付けて技術開発を行ったのは産業革命以降で20世紀後半になってその結びつきは強くなった。19世紀以前には仮に科学が存在しても科学を無視した技術も多く開発されている。また当方は意図的に科学を無視して技術開発することもしばしばある。
当方がこの界面活性剤の問題を解決するにあたり、界面活性効果のありそうな材料、すなわち水や油に添加するとその表面張力を変化させる可能性のある材料を片っ端から無作為に集めた。集められた材料には界面活性剤と呼ばれていないものや、界面活性剤と呼ばれていても構造や組成が不詳の怪しい材料も含まれていた。
すなわち、およそ科学の研究では対象として選ばれない界面活性剤も含めて検討したのである。そのため、見つかった界面活性剤は、HLB値こそカタログに載っていたが、分析すると多成分の混合物で、何が効いているのか分からない状態だった。もっとも効果の高かった材料が問題解決用に採用されたのだが、効果は若干落ちるが実用性のある材料もいくつか見つかった。その結果を見ると、検討した界面活性剤よりもまだ効果の高い材料の存在が期待された。
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科学の方法で、界面活性剤が関わる問題を解くときにHLB値というパラメータが使われる。このHLB値とは、界面活性剤が親水基と疎水基と呼ばれる構造をもった分子であると仮定し、その比率を表している値である。
この時、問題となる現象を表す特性値を縦軸にして、HLB値を横軸にとり、その相関を考察し、界面活性剤の特徴が現象をどのように制御しているのか論じたりする。
そもそも界面活性剤とは、親水基と疎水基を持った分子の総称なので、この議論をすべての領域のHLB値で行えば、すべてのHLB値の界面活性剤で議論したことになる、と勘違いする。
これは同じHLB値でも異なる界面活性効果を持つ界面活性剤が存在した場合の条件を見落としている。ところが、教科書にはこのことが書かれていないし、公開されている2000年までの論文でも、この点を扱った研究は極めて少ない。さらに大学の先生の中にはこのことを御存じない方もいらっしゃる。
仮にこのことを心配し、化学構造が明確に分かっている界面活性剤を集めてきて、HLB値の議論を進めたとしても、得られた結果は、界面活性剤のHLB値というパラメーターについて現象を議論したに過ぎない。電気粘性流体の増粘問題を研究したメンバーもさすがにこの点も心配し、HLB値以外の特性についても収集した界面活性剤について、実験を行い、問題となる現象との関係を調べている。
科学的に厳密にHLB値以外のパラメーターについて配慮したにもかかわらず、なぜ問題解決できる界面活性剤を見つけられなかったのか。その原因は、研究するために集められた界面活性剤のサンプル群に問題がある。研究における議論を厳密にできるように、構造が既知の界面活性剤だけを集めたからである。その結果、当方が見つけた問題解決可能な界面活性剤の群を見落としたのである。
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電気粘性流体の増粘問題を解決するためにせっかく住友金属工業とスタートしたばかりのJVを止めたくなかった。さらに電気粘性流体の増粘問題を界面活性剤で解決できないので、添加剤の入っていないゴムを開発するという発想は技術者の経験知から判断してばかげている、と思った。
本当にこの問題を解決できないのか確認するために、手当たり次第に界面活性剤を集め、それを増粘した電気粘性流体に入れて確認した。具体的には300を超えるサンプル瓶に増粘した電気粘性流体と界面活性剤を混ぜて一晩放置しただけである。翌朝サンプル瓶を眺めたところ、一つ完全に粘度が下がっているものがあった。また、いくつかヘドロ状態から粘度が改善されているものも見つかった。
ところで、この実験の発想は、ゴムから配合剤がしみだして増粘した電気粘性流体の問題が解決された状態を想像して得たアイデアである。さらに、このような問題が解決できるとしたら界面活性剤を用いる以外に方法が無い、と経験知から判断したのである。
これは、問題解決のゴールを経験知から想像し、そこで界面活性剤が機能している状態を最初に確認しようとした行動である。
科学の視点ではこのような仕事の進め方をしない。素性の明らかな界面活性剤を添加して電気粘性流体を製造し、それを耐久試験にかけて得られた状態を考察する、という手順になる。この方法のどこが悪いのか。結果が出るまでに時間がかかるだけでなく、仮説により界面活性剤の種類を絞り込む作業が行われ、ゴールに到達する道筋を少なくすることになる。
いわゆる、仮説を確認するための実験を行う、ということだ。この方法では、仮説が正しければ必ずゴールに到達し、ゴールに到達しなければ仮説が間違っている、と判断を進めるが、これは科学では、仮説が真であれば、いかなる場合にも真にならなければいけない、というルールに基づいている。
しかし、技術では、仮に仮説の範囲で機能しない特異点があっても、それ以外の仮説条件の下でロバストが高く機能するならば、実用化できる。科学の実験では、機能しないという結果は、仮説を否定していると見なされる。
すなわち仮説の範囲に真とならない現象が存在したときに科学では偽と判断するので、前向きの推論で進める科学の方法では、技術では有効な解決手段(想定したゴール)を棄却する場合がある。
論文を書くためであれば、ゴールが存在しないときに否定証明を論じればよいが、技術開発では機能するゴールを開発しなければいけない。否定証明に陥るのを防ぐためには、ゴールである「機能している状態」から逆向きの推論を進めたほうがよい。
余談になるが、iPS細胞のヤマナカファクター発見もこの当方の実験に似ており、24個の遺伝子を細胞に取り込ませる実験を行っている。そしてこの非科学的方法で結果が出るや否や、これまた非科学的なあみだくじ方式で4個の組み合わせを見出している。ノーベル賞を受賞するような仕事でも非科学的方法が用いられているのだ。
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樹脂補強ゴムの開発を担当したときには、オブジェクト指向など知らなかったが、QC手法を新入社員研修で学んでいた。すなわち日科技連のQC手法による業務解析は当時の流行だったが、研究所ではこの手法を馬鹿にしていた。研究所では科学の方法がすべてに優先していた。
ただし科学の方法では技術開発の効率が悪いだけでなく、モノができないこともある。当方がお手伝いをする前の電気粘性流体の増粘問題における仕事の進め方は、まさにその典型例だった。
当方は増粘問題の解決だけでなく、実用化された傾斜機能粉体の開発まで0.5工数でお手伝いを命じられてから半年の間に成し遂げている(特許が公開されている。この粉体以外に電気粘性効果が大きい新規構造粉体について開発し、特許出願している。この3部作は少し有名で転職後セミナー講師を依頼されたが、時期尚早とお断りしている。)。
もちろん住友金属工業とのJVも、たった一人で業務を進めた。(これは30年後の現在も事業として継続されているが電気粘性流体の事業は当方が転職後無くなっている。研究開発を事業化するコツは、売り上げを見込める盤石な出口を確保しておくことである。)。
ところで、この問題解決の業務を担当したときには、オブジェクト指向をマスターしC++でプログラミングをはじめたときだった。ただ、当時の処理系は、コンパイルするとLattice Cのコードを吐き出すタイプでプログラミングの効率が悪かった。
プログラミングの効率は悪かったが、C++のコンパイラーがはき出す中間コードとしてのCのプログラムを見ると、構造化プログラミングからオブジェクト指向への進化を容易に理解できた。さらに、Cでもその気でプログラミングすれば、オブジェクト指向のプログラミングが可能であることも分かった。
この理解は、業務解析を行うときに、業務の構造化が最初のステップとして重要で、その構造化のコツは、業務のアウトプットとしての最終ゴールを眺めながら行うというアイデアにつながっている
企業の業務において科学の抱える問題は、仮説設定こそゴールを意識して行うような仕組みであるが、その証明は順に行わなければならず、さらに途中の論理を飛び越すことは許されないことだ。
すなわち、これが科学の方法で業務プロセスを組み立てると効率が悪くなる原因である。電気粘性流体の増粘問題では多数の優秀なスタッフで取り組みながら結論を出すまでに1年かかっている。
さらに本来のゴールは問題解決することだが、添加剤の入っていないゴム開発というとんでもないテーマ提案をするような取り組み結果になっていた。
(注)企業における事業開発という視点で研究開発を眺めたときに、科学的研究の意味を明確にしておく必要がある。企業の研究テーマとしてふさわしくない内容はここで述べているような技術開発の方法に切り替えるべきである。電気粘性流体の増粘問題について界面活性剤で解決できない、という結論を出した科学的研究がその後ゴム会社にどのような利益をもたらしたのか不明であるどころか、明らかにテーマ設定からその進め方までいかにも教科書的だった。STAP細胞の騒動も同様な状況だが、国民の税金で行われた研究である。科学的研究テーマは、企業の場合に誠実真摯に企業の永続性の視点で選び進めるべきである。
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樹脂補強ゴムの開発では、指導社員が用意した汎用樹脂についてすべてを基本処方のゴムに配合して評価する作業が仕事になっていた。ところが、時間がかかる粘弾性の測定は面倒な作業であり、夜間運転を行っても1日せいぜい3サンプルの測定しかできなかった。
計画では、ゴールの条件を満たすゴムのデータだけでなくゴールを満たさない「ごみ」となるデータもすべて計測することも考えて余裕の時間を十分にとってあった(収集されたすべてのサンプルの粘弾性データを比較し、ゴールを達成したかどうかの判定をすることになっていた)。
一方、樹脂補強ゴムというのは世界で初めての材料、すなわちできるかどうか不明の材料だったので、指導社員が実験目的で用意してくれた汎用樹脂だけを検討して指導社員の見出したサンプルよりも良いものができるという保証は無かった(また、指導社員のサンプルは、耐久性が不足していた。)。
そのため当時普及が始まっていたエラストマー成分と樹脂成分とのコポリマー(TPE)も評価対象に加える提案を当方はしている。その結果、提案が受け入れられ、業務量は増えた。
業務量が増えたという理由で、指導社員が高次構造の解析業務を分析グループへ依頼してくださった。この配慮で自分の担当業務は、ゴムサンプル作成と粘弾性測定、そしてゴールを達成したゴムについて品質データを揃える作業だけになった。
具体的な作業時間を計算できる状態になったので、QC手法による業務解析を行った。長時間かかる粘弾性測定について、全体作業との関係を考察した。
この時、指導社員が測定していたデータや粘弾性理論を実験目的に絞って考察したところ、サンプルの合否を特定の測定点で計測した粘弾性データを用いて判断できることに気がついた。
すなわち、全ての条件でサンプルの粘弾性測定をしなくても、ゴールを満たすサンプルを見つけ出せる簡単な判別法を考案した。
換言すれば、基本機能の最適化を含むオブジェクトの具体的アクションは、粘弾性のある特定の測定点で樹脂補強ゴムを評価し、その測定点で比較サンプルより良いものを見いだす作業となる。ただし、このアクションでゴールを達成できる配合を見出すことができるが、その他の情報はすべてカプセル化される。
それでも、この作業の結果は、ゴールオブジェクトのインプットとなる。このインプットデータを用いて、すなわち比較サンプルよりある特定のデータが優れたサンプルについてだけ、ゴールとして要求されている様々なデータを集めれば良い。これがゴールの振る舞いのオブジェクトである。
業務解析して合理化された全体の作業をおおざっぱに言えば、ゴールを満たしたサンプルだけが必ず達成している特性値を評価することで、ゴールを満たすサンプルを見つけだすことができ、そのサンプルだけ最適化と品質評価を行えばよい、ということだ。
(注)実際には、ゴールを2ケ月で達成したが指導社員に叱られている。ただ、特定の測定点のデータで、高次構造の予想を立てることが可能だった。そこでごみの中から報告書を書くために必要なサンプルを拾い出し、実験を行っている。その作業は1ケ月もかかっていないが、新入社員として配属された部署は配属後3ケ月でリストラされた。このリストラを予測していたわけではないが、リストラのおかげでテーマをまとめることになり大変勉強になった。さらにゴム会社に入社してゴムの混練を業務として行ったのはこの時だけであり、最後の一週間は指導社員に終日くっついていろいろと教えていただいた。今でも思い出として鮮明に記憶している密度が濃厚な3ケ月間だった。リストラで配属先が変わり、ポリウレタンの難燃化技術を担当することになるが、この樹脂補強ゴムはリストラされた部署の初めてのアウトプットとなり、後工程で処方が採用され某社のエンジンマウントに搭載された。しかし、評価されたのは後工程だけで指導社員がかわいそうだった。特許が公開されているので誰の発明であるかは明らかだったが、発明の価値など成果を基に組み立てだけを行っている人にはわからない。指導社員は神がかっているぐらい優秀な人だった。いくら優秀で、大きな成果が出たとしても、サラリーマン技術者の宿命で運が悪ければ評価されない。
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8ビットマイコンの時代はアセンブラーあるいはマクロアセンブラーがプログラミングの道具で、満足なプログラムを組むことができず、あのゲームのハドソンが販売したHuBASICに飛びついた。フロッピーもサポートしていたので、主成分分析や重回帰分析のプログラムを走らせることができた。
16ビットの時代になり、Lattice C を購入した。この言語の良いところは、構造化プログラミングが可能で、BASICのサブルーチンに相当するところをライブラリーにして他のプログラムで再利用可能なところであった。
その後MIWA C++が販売された。これは、プログラムをコンパイルすると一度Cのプログラムを吐き出してくれたので、オブジェクト指向を勉強するときに便利だった。このC++が中間コードとしてCを吐き出す機構は、わざわざオブジェクト指向の言語を用いなくても、Cでオブジェクト指向のプログラミングができるということを意味している。
実際のオブジェクト指向の言語は、Cでわざわざ組むよりも容易にプログラミングできる仕掛けが用意されているのだが、Cでオブジェクト指向的にコードを書いてみると、次のことに気がつく。
プログラミング全体の構造設計、特にデータに着目した構造の整理が重要である。その時、プログラムの処理結果に着目して整理すると作業が容易であることだ。
このプログラミングの仕組みを業務解析に応用すると、1.ゴールを中心にして、業務の構造を解析整理する。2.複数の構造が出てきたならば、業務のゴールに直接関係する構造とそうでない構造に分類する。という作業が見えてくる。
昔、チャート式数学という受験参考書があったが、そこに書かれていた、問題解決の極意として「チャート:結論からお迎え」が、単なる入試数学のためだけでなく、実務にも役立つチャートであることを思い出した。
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二つのオブジェクトが求まれば、それぞれのオブジェクトの関係を検討することにより、業務を合理化できる。
すなわち、各オブジェクトが直列の関係なのか、並列の関係なのか考察し、並列の関係ならば、二つのオブジェクトのそれぞれのアウトプットを出さなければいけない。
しかし、それが直列の関係であれば、インプットに仮のデータあるいは整理された実験で得られたデータを入れて、ゴールとなるオブジェクト以外のオブジェクトの実体を生成すれば、これらからゴールとなるオブジェクトの実体を創り出すことができる。
これはゴールとなるオブジェクトだけを業務として行えば良いことを意味する。
多くの研究開発業務は、最終製品を一つに絞ることが可能である。すなわち、オブジェクトの設計を工夫して、ゴールを含むオブジェクトを含めすべてのオブジェクトを直列の関係に設計することが可能である。
このように設計された業務の流れの中で、ゴールを含むオブジェクトについて、一番最初に開発を行うのがアジャイル開発手法だ。
これが可能になるためには、最終製品であるゴールを含むオブジェクトのインプットデータに仮の値を入力できなければいけない。科学による推論でそれが可能になるが、科学で解明されていなくてもKKDによる成果でもよい。
KKDによるデータを活用した場合に、もしゴールを含むオブジェクトの振る舞いがおかしければ、インプットデータをKKDで変更すれば良いだけである。
このようなオブジェクト指向による方法を採用すると、科学という形式知は知っていれば便利(注)という位置づけになる。セラミックスの専門外であった当方が高純度SiCの合成に成功できたのは、このオブジェクト指向の方法を用いたからである。(続く)
(注)今ある事業について技術開発を行うに当たり、高卒で営業経験しか無かった人物と化学など関わったことのない新入社員の二人で業務を進めたが無事技術開発に成功している。当方はたまに状況をのぞきに行っただけである。オブジェクト指向による技術開発の良い所はこのような点だ。
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