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2017.09/09 技術開発の方法(13)

写真会社に転職して、酸化スズゾルは帯電防止層に使えない、という否定証明の報告書を読みびっくりした。科学的推論に基づき見事に帯電防止層の材料として酸化スズゾルは使えないとされていた。

 

発見の経緯は省略するが、この会社で当時から30年ほど前に出願された特公昭35-6616には酸化スズゾルの合成法から帯電防止層を製造する技術まで書かれていた。科学的に書かれた報告書とこの特許の内容とは見かけ上矛盾している。

 

導電性微粒子を絶縁体のバインダーに分散して導電層を形成するときにパーコレーション転移という現象が生じる。ところが当時のこの分野の材料設計手法では、混合則が使われており、パーコレーションの考え方は普及していなかった。

 

新入社員時代に指導社員からパーコレーションの理論について概略を聞いていただけでなく、電気粘性流体の開発ではまさにクラスターの生成を考察しなければいけなかったので、パーコレーションという現象についてそれなりの経験知と形式知を持っていた。

 

とりあえず目の前の矛盾に結論を出すためにパーコレーションをシミュレートするプログラムを開発した。このプログラム開発というアクションは、「報告書と特許が矛盾している」のではなく、「パーコレーションという現象のために見かけ上矛盾したような結果になっている」ことを示すためだった。

 

シミュレーションプログラムを用いて報告書に書かれたデータを入力し、酸化スズゾルの導電性を見積もったところ1000Ωcm程度の導電性があり、それがパーコレーション転移を起こしにくい条件で帯電防止層が製造されていたために導電性が無いとの結論になっていたことがわかった。

 

すなわち、特許と否定証明の報告書は矛盾したものではなく、後者の報告書に書かれたデータを混合則という形式知ではなく、パーコレーションの概念を取り入れて整理したならば、特許と矛盾しない結論を出すことができたと思われる。

 

科学という形式知は、その進歩を見落としているとこのような問題を引き起こす。ちなみにパーコレーションについては1960年頃に数学者の間で議論が始まり、1980年代にフラクタルの議論に進展している。理論としてわかりやすい日本語の教科書が販売されたのは、1980年末になってからである。

 

ゴム会社で出会った指導社員は数学に秀でた方で詳しかった。しかし、高分子に微粒子を分散したときの議論にパーコレーションが登場したのは1990年前後である。当方が講演で話し始めたときもその頃で、それまでは古くから用いられてきた混合則による議論で現象の結論が見いだされていた。

カテゴリー : 一般

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