1960年代にオーディオという趣味が誕生したように記憶している。高校生の時にクラスメートがベルリオーズの鎮魂歌というLPとともに名鉄電車に飛び込んだ。思春期の出来事であり、大変ショックだった。
フェノール樹脂とポリエチルシリケートとのポリマーアロイを前駆体に用いた高純度SiCの事業を住友金属工業とJVとして立ち上げていた時にFDを壊された精神的ショックも大きかったが、この事業が現在もゴム会社で継続されていることを聞き少しは癒される。
しかし、思春期における身近な友人の自殺という精神的ショックは、成人してから受けるそれと少し異なる傷跡を残す。なぜLPとともに死への旅たちを選んだのか、およそ音楽には興味のなかった当方だが、この出来事でオーディオの趣味の世界に入り込んだ。
入り込んだ、と言っても、オーディオを趣味としているような人たちと異なり、音楽を聴くときの手段としてのオーディオであり、音楽を聴くことに力点がある。当時ソニーのトランジスターラジオIC11という商品がハイファイ再生に力を入れた製品として、値段も手ごろで若者に人気だった。
クラスメートの死がきっかけとなりこのラジオを買うことになり、家にあったレコードプレーヤーへこのラジオをスピーカー代わりにつないで鎮魂歌を聞いてみた。レコードプレーヤーのスピーカーよりも明瞭な音にびっくりしたが、いわゆる大きな感動は無かった。
栄町にあったオーディオのショールームにレコードを持ち込みかけてもらったところ、鳥肌が立った感動を今も忘れていない。クラスメートは恐らくこの音を聞いていたに違いない、と当時思った。再生装置の違いで同じレコードでも感動が異なったのだ。
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ポリエチルシリケートとフェノール樹脂を反応させて高純度SiCを合成するパイロッットプラントの開発では、化学工学の専門家は一人も携わらなかった。
外部の設備メーカーと協力しながら、異形プッシャー炉を開発し、これを特許出願している。この時、それぞれの会社の技術者は、電気工学と合成化学、無機材料化学、機械工学出身で、化学工学について学んだ人は一人もいなかった。
異形プッシャー炉のアイデアを提案したのは当方で、図面を書いたのは機械工学の専門家である。電気工学の専門家は、自動化のために必要なセンサー類の配置など当方と打ち合わせながら、その図面に書き入れていった。
このとき当方は、シーケンスについて学び、今でも電気回路図を読み取ることが可能である。自宅の電気配線など街の電気屋よりも読み取るのは早い。
豊川へ単身赴任しカオス混合プロセスのプラントをたった3ケ月で立ち上げているが、これはヤミで根津の中小企業と3ケ月中古機械を分解しながら勉強した成果である。
その中小企業も二軸混練機の自動化プロセスは初めての経験で土日喧々諤々の議論をしながら図面を書いていった。図面については当方が手書きで書いたものを機械工学が専門の電気担当が器用にシーケンスまでも書き入れていた。
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「去年までは毎日最後に、1500人の踊り手がおどる「総踊り」がフィナーレとなる名物だったが、今年は突如、中止になった。
このために毎年、初日は桟敷席はどこも満席となるのだが、今年は空席も見られた。総踊りが中止になった理由は、これまで報じられているように徳島市の遠藤良彰市長と阿波おどりの有名連(阿波おどり振興協会等に加盟する阿波踊り連33連のこと。卓越した技量を披露するこれらの連は、前夜祭や選抜阿波おどり大会などの大型イベントへ参加)をたばねる、阿波おどり振興協会が対立したためだ。
そして総踊りが中止となったため、有名連が分散。4つの演舞場で踊る形に変更されたのだ。」以上はAERAのWEB版からの引用である。
昨年まで阿波踊りは阿波おどり振興協会と地元新聞社が中心となって運営されてきたが、今年から徳島市と地元新聞社が運営することになった。
この運営問題は急に出てきたわけでなく、数年前からローカルニュースで運営問題について報じられていた。インターネットの時代であり、当方はこのニュースを見つけるたびに心配していたが、とうとう今年大きな問題となった。
そもそも中止の理由そのものが「アホ」な理由である。すなわち、演舞場に均等に客を入れるためだという。総踊りが無くなった日曜日その思惑は外れ、予定よりも客の入りが少なかった。
当たり前である。観光客は総踊りを見に来ているのだ。約10%ダウンの客の入りは少ないダウン率だと思う。市長のお粗末なアイデアのために地元市民との間に亀裂もできてしまった。
振興協会が市長の中止命令に反発し、総踊りを決行すると発表された昨晩は、その成り行きが心配でyoutubeのライブを見ていた。日曜日同様に総踊りが始まる10時までの各演舞場には空席が目立った。
昨晩は毎年総踊りが開催される演舞場ではなく、外の商店街で総踊りが行われるためらしいが、この状況を見る限り、市長は阿波踊りや市民のことがまったくわかってなかったようだ。
夜10時になると、総踊りが振興協会の計画通り商店街で始まり、会場は例年通りの活況を呈しお祭り騒ぎになった。そもそもお祭りは市民の文化であって、市長の独断で中止できるものではない。
以下は本日のヤフーニュースからの引用だが、「踊る阿呆に、中止求める阿呆な市長、それを眺める阿呆な野次馬、同じ阿呆ならおどりゃなソンソン」という状況である。総踊りを中止するのではなく、運営そのものに知恵を絞るのが市長の役目である。弊社へご相談いただければ売り上げ倍増の運営方法をご教示します。
「遠藤市長は総踊りの実施を受け、「再三にわたり実施しないよう求めておりましたが、それを無視して行われたことは誠に遺憾。今後の対応については、実行委で十分協議したい」とするコメントを発表した。」
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20世紀はまさに科学の時代と呼んでもよいような、科学が技術を牽引した時代である。しかし、素粒子論の状況や固体物理の動向を見ても科学が完成の域に達したように感じる。
但し、それは従来の学校教育の視点からの見方であって、少し視点を変えると科学の処女地とも呼べる広大な世界が存在する。
ジジイと呼ばれてもよいような年齢なので、そこへ飛び出そうとは思わないが、望遠鏡でのぞいては、技術ネタを探している。起業してからすでに一つそれを見つけ、わけのわからない技術を生み出すことができた。
高分子物理は、従来の科学知識だけでは手におえない分野だと思っている。統計熱力学がかなり昔から研究されているが、その成果は高分子物理の世界でまだ実力を十分に発揮できていない。
生命科学分野は、少しづつ進歩しているが、20世紀の材料科学における進歩のスピードにはまだ追いついていない。これらの理由は簡単である。新しいコンセプトにより創り出さなければいけない科学の研究領域の情報が全くないからだ。
このような話は、どうしても雲をつかむような話であり抽象的になる。具体的に語ることができた瞬間に科学の新領域が誕生する。若い人は今学校で学んでいる知識を少し疑ってみることをお勧めする。
大学の先生の中には、すべてわかっているような講義をされる方が多いが、例えば高分子の世界については、わかったように話してはいけない知識が多い。単純に思えるTgでさえ満足な説明が難しい。
高分子の非晶質状態は無機材料のそれよりも大変複雑であり、そのため無機材料のTgと高分子材料のそれとは少し意味が異なる。これを当方が体感できるのは、セラミックスや金属の研究を若いときにしていたからだ。
学生時代に研究分野を変えなければいけない不運が今にして思えば幸運だった。個性的な先生に指導されたり、高純度SiCの発明をゴム会社で躊躇なく推進できたり。専門がわからない状態は、研究者としては三流になってしまうが技術者として便利なキャリアである。
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週刊誌を読んでみたが、おそらくご本人は全く罪の意識などなかっただろうと思われる。ただセクハラというものが、相手がアウトと言ったらアウトになるハラスメントなので男性諸氏は注意する必要がある。
ここでオジサン連中はよく学んでほしい。酒の席と言えども軽々な発言が許されない時代になったことを知ってほしい。仕事上で酒を飲むときには、その時も仕事をしている心構えが必要である。
また冗談もその内容をよく吟味して言わなければいけない。昔ゴム会社のある役員が大甘な企画を説明した主任研究員に対して「女子学生より甘い」と叱責したが、これもアウトである。
40年ほど前は、ありとあらゆるハラスメントが横行していた。しかしそれらのハラスメントについて怒りよりも懐かしさとして思い出されるのが不思議である。
ホスファゼン変性ポリウレタンホームの工場試作の成功で始末書を書かされた時の上司の指導態度は、明らかにパワハラである。何度も書き直しを命じられた。
反省していないと思われたのかもしれないが、新入社員発表の企画を自分で立案し、それが認められたので頑張ったところ、あれよあれよと思う間に工場試作までやってしまったのだ。
ただ工場試作が駆け出しの新入社員の社内調整でできるわけのないことは誰もが知っていたので、始末書もその責任者が書くべき、とどうしても顔に出てきてしまった。
何を反省したらよいのかもわからなかったので、始末書へホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームの企画を書き、難燃剤コストがkg単価250円以下になりそうな企画ですと提出したら、そのまま受け取ってくれた。
新入社員発表会では、代表でプレゼンを行った当方は張り付け状態になった。たった1ケ月半の研修で作り上げた軽量タイヤを商品のように説明し、CTOから「大馬鹿モン」と叱られたのだ。その後、延々と続いた説教から技術とはどういうものかを学んだ。
しかし、これは今から考えればものすごいパワハラだった。当時の人事部長が心配されて、当方はじめ発表に携わったメンバーを集めて「君たちに言ったのではないから心配しなくてもよい」と慰めてくださったが、人事部長が心配されるほどの強烈なパワーだったのだ。
パワハラを容認すると誤解されては困るが、この時の体験で全員学生気分が抜けて職場で即戦力の技術者として活躍している。職場に雨霰のように降り注いでいたパワハラにも耐性ができていた。当方もホスファゼン変性ポリウレタンの工場試作における始末書程度で腐らなかった。
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「「石の上にも3年」という発想は、今の若手社員にとって、過去のものになりつつあるのかもしれない。
直近の有効求人倍率が44年ぶりの高水準を記録するなど、高度成長期以来ともいえる売り手市場だ。「成長できない」「同じ仕事の繰り返し」と感じた若手は、躊躇なく退社という道を選び、転職市場へ飛び出す。」
以上はビジネスインサイダー8月10日の記事から抜粋した内容である。一方でトーマツイノベーションによる下記の記事も存在する。
「トーマツ イノベーション株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長 眞﨑大輔)は2014年度から、新入社員を対象とした調査を毎年実施しています。キャリアに対する意識が年々変化する中、今年度の調査では、就社意識がますます低下していること、ワークライフバランスを重視する傾向が高まっていること、専門家を志望する新入社員が多い中、キャリアがはっきりしない新入社員も引き続き一定数いることが明らかになりました。このことから、新入社員に長く勤めて活躍してもらうためには、①仕事の醍醐味を伝えて自社で働き続けることの魅力を感じてもらう、②ワークライフバランスを保てる職場環境をつくりつつ、生産性を高める必要性を理解してもらうことが重要だといえます。」
これらの記事を読むと、昔ながらのがむしゃらに働きたいタイプとテキトーにワークライフバランスランスというタイプ、あるいは専門家を目指したいタイプなど多様化しているようで、早期に転職する理由もさまざまであることがわかる。
当方はがむしゃらで働くタイプとして新入社員をスタートし、社歴が2-3年なのに高純度SiCの事業企画を何とか実現しようと奮闘努力した経験がある。
当時は今ほど社会の意識が進んでおらず抵抗勢力の圧力のためポリエチルシリケートとフェノール樹脂とのリアクティブブレンド技術の研究を闇研として進めるが、住友金属工業とのJV立ち上げ後FDを壊されるなどの妨害を受け、事業が存続する状態になったのを確認し転職している。
下積みレス願望の若者にアドバイスしたい。日本の組織社会において早期に能力発揮し頑張るためには抵抗勢力の業務妨害を覚悟して臨め、ということだ。そして、どのように行動したら周囲のサポートを得られるのか考える習慣をつけることだ。
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学生時代に化学工学の授業を受けたが、今思い出すとあの授業は何だったのか、という記憶である。講師の批判をしているのではない。授業の中身である。プラント工学と呼んでもよいような授業だった。
現在の応用化学関係のカリキュラムからは化学工学は無くなったという。化学工学科も無くなったようだ。この話を聞いたときに、そうだろうと納得した。
化学工学では、化学反応も少し扱っていた。この化学反応を扱っていることで化学工学の体裁が取れていたのかもしれない。とにかく授業を受けていて、やがてこの学問は無くなるという予感がしていた。
そもそも分子やその集合体、あるいは一般的には材料を使用できるようにするには、必ず何らかのプロセシングが必要になる。
その時、プロセシングを考えるのは、プロセシングの専門家、ということで化学工学分野が考え出されたのだろう。
ところが現実には、化学工学の専門家が活躍できたのは狭い分野だけで、多くのプロセシングは、応用化学や合成化学、その他の専攻の専門家により開発されているのではないか。
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日本ボクシングの山根会長問題が無かったら、おそらく桃田選手の記事で溢れていただろう。そんな想像がしたくなるほど山根会長の記事の間に桃田選手の話題がニュースとして報道される毎日だ。
それらの記事を読んで思うのは、NTT東日本の職場環境である。おそらく上司も含め最高の職場だったに違いない。
「出場停止処分中の約1年間、桃田の心を根本的に変えたのはNTT東日本での勤務経験だった。総務人事部の労務厚生課に所属する一社員として、事務作業を始めとした社業に従事した。高校生から社会人選手となり、成功を手にし続けた才能の塊は、自らを支えてくれる仲間の存在を肌で感じた。16年8月の個人面談では「会社の中で他の社員が働いている姿を見て、バドミントンが出来ているありがたさが分かった」と吐露した。競技に専念する自らの給料、練習環境が誰のお陰で保たれているか。企業スポーツの根幹を強く認識し、心を入れ替えた。」
これは、WEBで見つけた記事の抜粋であるが、多くの記事が彼の勤務経験に触れている。職場の上司や同僚の影響は大きい。当方は今でもゴム会社で出会った様々な上司を思い出す。
恐らく、出場停止処分中に指導してくださった上司のことを桃田選手はいつまでも忘れないのではなかろうか。
組織人として働いているときの人間関係は、組織から受ける制約で無味簡素になりやすい。しかしOJTにおける人材育成では、組織風土からその効果に影響を受ける。
たった3ケ月間ではあったが樹脂補強ゴムの開発を指導してくださった上司からは、社会人としての当方の仕事のスタイルに大きな影響を受けた。
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「関係者によれば、今年4月、瀬古氏はハーフマラソンの解説を担当後、関係者との飲み会に参加。そこにいた女性アナウンサーに対し、セクハラ発言をした。女性アナウンサーがテレビ局に訴え、関係者が異動になるなどしたという。
瀬古氏に聞くと、「セクハラ?! 覚えてないよ、そういうこと」。
瀬古氏が現在総監督を務める横浜DeNAランニングクラブに事実関係を詳しく質問すると、「発言があったことは事実です。瀬古本人には厳重に注意しました」と認めた。」
以上はlivedoor newsからの抜粋である。走る修行僧と揶揄された瀬古氏がセクハラをすることが信じられないが、生臭坊主という言葉もあるので、信じられない当方が世間知らずなのかもしれない。
記事によれば酒の席での発言のようだ。それも番組の打ち上げの席での発言がアウトになっている。半年前にも官僚の酒席における発言がセクハラとして騒がれて更迭されている。
酒席といえども軽軽とした発言が許されなくなった。さらに関係者が異動となっていることから、複数の男性による女子アナへのかなりひどいと判断されたセクハラ疑惑だったようにうかがわれる。
ニュースでは発言となっていたので行為は無かったようだ。処分された瀬古氏含め男性諸氏について、同姓として同情する。このようなことを書くと、批判されるかもしれないが、酒の席の出来事である。男性諸氏の言葉に対してさらりと受け流す能力を女性は身に着けていただきたい(但し、セクハラはいかなる場でも許されない、という認識が正しい。)。
酒席での発言については、対応の仕方によりエスカレートし喧嘩にもなるので、そのための礼儀をわきまえて酒を飲むことが要求されている。セクハラについてもそれを封じ込める礼儀作法があるように思う。女性の対応一つで猥談の方向は変わる。
酒席における男性の猥談というのはそのような性質である。特に高齢になれば猥談だけで2時間なり3時間過ごすことなどありえないと思われる。いまだかつてそのような酒席を経験したことは無い。
各種ハラスメントが社会で問題視されるようになったのは、この20年ほどの間である。その中で分かりにくいのはセクハラである。職場でのセクハラは、仕事中に冗談を言ってはならぬ、と注意すれば防ぐことができるが、酒席でそのようなことを言えば一気に酔いはさめてしまう。
そのような場合に、仕事の一環としての酒席があるといわれるが、もし仕事の延長における酒席といういい加減な仕事であれば、今の時代において女性は遠慮すべきである。少なくとも60代以降の男性諸氏の酒席における言葉の節操のなさは若者の理解を超えるところにある、と認識すべきだ。
60代以上の男性は、こと性に関して全員が発達障害と呼んでもよいような青春時代を過ごしている。同棲時代という映画に夢中になって鼻血を流していた純情な世代なのだ。さらに団塊の世代以下は性に対し開放的な流れが出てきた時代で、現代の価値観からすれば少し性について感覚が歪んでいるかもしれない。
そのような世代が年を取り酒を飲んで箍が外れれば猥談の一つや二つは出てくる。もしセクハラを避けたいならばこのような世代の同席する酒席には出ないことだ。
うっかり発言で犯罪者を増やさないために女性諸氏の協力が必要だ。お酒ぐらいは何も気にせずおおらかな気持ちで飲みたい。
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高純度SiCの発明では、その事業シナリオを述べた会社創立50周年記念論文が佳作にも選ばれなかったり、「あなたがやりたい新事業は何ですか」という問題に解答として書いた昇進試験に落ちたり、住友金属工業とのJVを推進していてデータFDを壊されたりと散々な目にあっているが、この事業は今でもゴム会社で続いている。
事業企画からその心臓となる技術開発、さらには事業立ち上げまで行った人物が全く報われていない、というのは日本の技術開発シーンでは珍しくないそうだ。しかし、そのように慰められると将来の日本に不安を感じてしまう。
技術立国日本と言われた裏側の実態はお粗末だったから失われた20年や品質データ改ざんなどのお粗末な事件も起きてしまうと説明されても、寂しくなる。やはり、健全な社会であることを信じ明るい未来を描く努力をしなければいけない。
高純度SiC合成実験で還元炉の暴走があったのは、幸運だった。未だに原因はわかっていないが、暴走の時の温度パターンが最適条件だった、ということがその後の研究でわかり、さらにびっくりした。誠実真摯に努力しなければいけない理由がここにあると実感した。
神や仏の存在をあまり信じていないが、人生においてひどい目にあったとしても、それに相当する神がかり的な幸運も訪ずれることを信じるようになった。その結果不幸という事態に陥っても次の幸福を信じ努力できる考え方を身に着けた。
もっとも子供の頃からどちらかと言えば楽観主義で、親からはもう少し慎重な人生を諭されたが、半分青いサラリーマン人生だった。ただしフェノール樹脂とエチルシリケートのリアクティブブレンドの発明に関しては、この親の教えが生きた。
リアクティブブレンドについては、ポリウレタンの合成技術として学び工場試作なども経験し技術の特徴を熟知していた。しかし、50周年記念論文で落ちたことやその他の状況からフェノール樹脂とエチルシリケートの反応に関する研究を急いで進めるのではなくヤミ研で機会をうかがいながら進める選択をしている。
ところが昇進試験に落ちたことで無機材研の先生の心を動かし、この研究が表に出ることになったが、ひとたび社会や組織で受け入れられた後の展開は加速度的だった。
SiC化の反応速度論的解析も2000℃まで昇温可能な熱重量天秤が無いとわかると、2000万円を投資してすぐに開発し、それで実験を行っている。(この時のデータをアカデミアの先生に勝手に論文にされたのはその5年後である。)
多くの研究者から発明として優れていると褒められてもフェノール樹脂とエチルシリケートの合成反応に関しては、シクラメンの香りの合成に成功したときほどの大きな感動は無かった。あまりにも長期にわたり気を使いながら研究を進めたからである。
フェノール樹脂とポリエチルシリケートのコポリマーを高純度SiC前駆体に用いる夢をあきらめかけたこともあったが、シクラメンの香りを思い出しながら根気よくそのチャンスがおとづれるのを待った。
研究者として駆け出しのころの初めての成功体験は重要で、このような研究の喜びを学生に指導できる先生という職業は神にも匹敵する、と思っている。
「世界の研究者と競争している自覚を持て。今着想したアイデアを他の人も気がついたかもしれない。すぐに実験だ。」これはその指導をされた伊藤先生の言葉である。
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