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2018.02/09 高純度SiC前駆体の発明が生まれたとき(3)

ゴム練りをやっているときに、フェノール樹脂とポリエチルシリケートのリアクティブブレンドを思いついたのだ。ただ、その時はそのようなことを言えない。ほかのことを考えながら仕事をしていたのか、と叱られるのがおちである。

 

ほかのことを考えていたわけでなく、何も考えず言われたことだけ素直に作業していた(注)ので、思いついたのである。肉体は動いていたが、頭など働いていなかった。天秤でゴムを秤量し、バンバリーを運転するぐらいは、無意識にできた。だから、便利に使われていたことも理解していた。

 

自分の仕事だけが唯一ゴム会社に貢献している、と思いあがった年上の研究者は、上司も通さず、その自分の職位のパワーで便利な当方を時々小間使いとして使っていた。ただ、そのおかげで、いくつかアイデアが生まれていたので、煩わしいと思っていても手伝っていた。

 

ゴム練りをテーマとして担当したのは3ケ月しかないが、このような小間使いをやっていたおかげで、スキルだけは上がっていった。

 

さて、リアクティブブレンドのアイデアは生まれたが、フェノール樹脂の難燃化プロジェクトの仕事として実施する時間は無かった。ゆえにプロジェクトが終了した時に、余った原材料の片付け仕事を率先して申し出た。

 

余ったフェノール樹脂や検討に用いた触媒の処理のために一日とり、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂の反応条件を調べながら、失敗した反応物を次々とごみ袋へ廃棄していった。このような実験は気楽である。ごみ処理過程で高純度SiCの前駆体反応条件の手掛かりが見つかっている。

 

(注)転職するきっかけとなった電気粘性流体の増粘問題の仕事では、お手伝いではなく、その問題解決が主の仕事になるといわれた。高純度SiC事業立ち上げのため住友金属工業とのJVを検討し始めていた時である。さらに、電気粘性流体はゴムに封入して用いるので、ゴムに配合剤が入っていなくても耐久性のあるゴムを開発するのが当方の仕事だという。

経験知から判断して不可能と思われた仕事なので、人事が発令される前に問題解決しようと一晩で問題解決できる界面活性剤を見つけた。あとから知らされたのだが、増粘問題は界面活性剤では解決できない、というマル秘の報告書が提出されていた。一年ほど検討されたらしいがプロジェクトにとってあまりにも致命的な結果なので研究所内にその結果は知らされていなかった。

界面活性剤で問題解決できたのだが、やがて上司となる方が、界面活性剤ではまずいから第三成分と呼びなさい、と言われた。配合剤の入っていないゴム開発という非常識なテーマから解放され、第三成分による電気粘性流体の増粘問題解決がテーマとなった。一応第三成分とその後の会議では言っていた。しかし、研究所内の発表会では、過去の報告書をマル秘という理由で見せていただいていなかったため、第三成分すなわち界面活性剤で問題解決した、と丁寧に説明してしまった。

それから不可思議な事件が起き始めたが、住友金属工業との高純度SiCのJVが立ち上がり、一人で二つの難度の高い仕事をしていたので、雑事を無視して真摯に仕事に邁進していた。当時新婚ほやほや状態で、何があっても幸福感という状態だったのが良くなかったのかもしれない。

今から思えば定時退社でありながらよくあれだけの業務をこなせたと感心している。電気粘性流体の第三成分による実用化と高純度SiCのJVの二つの仕事を一人でこなしていた。また、高純度SiCの研究について役員からの指示で学位論文にまとめていた。

会議では基礎データが不足している点を指摘する人が大勢いたが、新しく上司になられた方がたった一人の部下をかわいがってくださり、会議の場ではそれらの批判をうまくかわしてくださった。

基礎データなどとる時間は無かったが、実用化に向けて毎日着実に進歩し、さらに電気粘性流体用難燃性油や高性能電気粘性流体用粉体3種の構造理論と実際、などという怪しいテーマ提案をしていた。どこが怪しいのかというと、突然変異的に、それまで存在しなかった高い性能で機能するすぐに実用化できそうな電気粘性流体が会議の席で提示されたのである。

これは電気粘性流体実用化プロジェクトの会議でありながらその基礎研究に重点が置かれ、なかなか実用に耐えうるモノが見えていなかったので、会議の方向を変えるため当方が頭に思い描いた構造の物質を作って見せたのだ。2億4千万円の先行投資でスタートした高純度SiCの技術は、当時先端素材をすぐに作り出せるレベルまで上がっていた。

実際に出来上がったモノ(製品)を示していたので、基礎データが無い点を指摘する人はしだいに減っていった。

実際にモノを示していたので、一部の科学者が行うようなデータねつ造など不要であった。技術では実際に再現よく機能するモノが必要なのだ。美しい理論ではない。

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子

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2018.02/08 高純度SiC前駆体の発明が生まれたとき(2)

昨日の続きだが、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂とのポリマーアロイについて合成条件を探索する仕事は、サラリーマンを続けるためにあきらめなければいけない妄想だった。無機高分子でフェノール樹脂を変性するアイデアは、当時特許も公開されていない画期的アイデアだったが、フェノール樹脂発泡体の開発は、このポリマーアロイの検討を計画からはずし、常識的な手段で実用化している。

 

この仕事を担当していたある日、終日他の人の仕事のお手伝いをすることになった。企業の若手研究者は、ときどきこのように小間使いとして使われる。ここで嫌な顔をしていてはサラリーマンとして失格だ。

 

他の人の仕事の手伝いなので何も考えなくてよいメリットがある、ぐらいの気持ちは許されると考えた。ここで、つまらない仕事を手伝わされている、自分だったらもう少し気の利いた方法でやるぞ、などと考えるようではいけない。ひたすら頭を空っぽにして手伝っておれば、依頼した側は、それで満足している。

 

学生時代ならば、このような依頼に対して一言二言言っていたが、社会に出て半年もすればそのような言動は、例え有益なアドバイスであっても嫌われることを自然に学ぶ。いわゆる忖度などということよりも、せっかく良いアイデアが浮かび、相手にとってメリットのある一言であったとしても、その後自分が傷つくむなしさを味わいたくないだけである。

 

年を重ねた今、当方のアドバイスでうまくいったかもしれない仕事が幾つか思い出され、どうせお手伝いだからと黙って失敗する仕事を手伝っていたのは少し不誠実だった、と反省したりする。

 

その現象が起きるメカニズムを理解すれば、用途が限定されるつまらないデバイスと思っていた電気粘性流体の増粘問題が起きたときに、高純度SiCの事業化を進めていた当方にお手伝い仕事が回ってきた。この時は早く仕事を片付けたかったので、お手伝いを頼まれてすぐに問題解決した結果、FDを壊されたような経験をしてもこのような気持ちになれるのは、ドラッカーが著書で述べている「貢献」の意味を本当に理解できたからかもしれない。

 

しかし、当時は社会で身についたわずかに素直さの欠けたこのような態度が、頭を空っぽにする機会を作りアイデアを生み出すのに役だっていたのかもしれない。一言二言言いたくなる自分を押し殺すために何も考えず、ただひたすら他人の仕事を手伝う時間は、当方にとって脳の休息時間だったのだろう。

 

バンバリーでゴムを練っていた時に、危険作業という理由でその作業に注意を払っていたが、それは職人のように身についた自然な行動であり、頭の中は全くの空っぽになっていた。すなわち、ほかのことを考えていては危険なので、作業以外のことを考えていなかったが、その作業は定常作業だったので脳を働かせる必要はなかった。

 

このような状態で、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂をリアクティブブレンドするアイデアが突然ひらめいた。アイデアと無関係な他人の仕事を手伝っていて、失敗もしていないのに突然「あっ!」と叫んだものだから、手伝いの依頼をした人はびっくりしていた。実験室では大きな声を出してはいけない。

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子

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2018.02/07 高純度SiC前駆体の発明が生まれたとき(1)

高純度SiCの前駆体は、フェノール樹脂とポリエチルシリケートとのポリマーアロイである。このポリマーアロイは、有名なフローリー・ハギンズ理論に反するブレンド物だ。すなわちこの理論によれば絶対に混ざり合わない組み合わせである。

 

ゆえに高分子の形式知を重視する優秀な科学者は、絶対に思いつかないアイデアであり、もしそのアイデアが、成功したりしたら、嫉妬にとどまらず恨みまで買いそうなキワモノ技術となる。実際にこの発明やその他形式知にとらわれないアイデアの成功でFDを同僚の研究者に壊されている。

 

この発明の原点は、フェノール樹脂発泡体の難燃化技術開発である。フェノール樹脂発泡体は、特定の反応条件で合成すれば、それ自身で高い難燃性を有する材料である。しかし、製造技術が無い場合には、LOIが21前後の発泡体しか得られず、かろうじて自己消火性を示す材料しか得られない。

 

開発スタート時に、無機物質とのハイブリッドにすれば、ハイブリッドの製造条件を満たす限り高い防火性を兼ね添えた発泡断熱材になるのではないかと考えた。ただ、これはひらめきではなくて、当方が無機高分子研究会の運営委員を当時担当していたので、その研究会の発表ネタとして考えた企画である。

 

詳細は省略するが、この時は、可能性のありそうな無機高分子を手当たり次第でフェノール樹脂と混ぜてみて、フェノール樹脂と無機高分子の両者の良溶媒存在下で混合すると均一に混ざることを見出した。ただし、これは両者のSP値が一致している高分子を混ぜているのでフローリー・ハギンズの理論通りの結果である。

 

ただ、得られたポリマーアロイは高い防火性と力学強度の優れた材料となった。しかし、製造プロセスは多段階となり、さらにジオキサンを用いていたので、実用化できるプロセスではなかった。その結果、無機高分子研究会で発表するための研究となった。

 

実用化できない材料ではあったが、水ガラス抽出物とフェノール樹脂とのポリマーアロイはケイ酸とフェノール樹脂が分子レベルで混合された魅力的な構造をしていた。だからこれを何とか経済的なプロセスで合成できないか、と考えるようになった。「君の名は」と問いたいが、初対面ではなかなか言い出せない、そんな気持ちと通じる、毎日が悶々とした欲求不満状態だ。

 

ポリエチルシリケートとフェノール樹脂との組み合わせが一つの正解だ、とわかっていたが、形式知であるフローリー・ハギンズ理論が邪魔をして、第一線を越えられないのだ。とりあえず形式知を総動員し、無機高分子研究会発表データを得るために水ガラスからケイ酸を抽出する実験を繰り返してみた。

 

抽出物を安定化する有機溶剤とともにフェノール樹脂と混合し、有機溶剤を真空蒸留で取り除き、同時に発泡体に仕上げる技術は、実用化は難しいが、面白い材料を生み出した。しかし、実験をやりながら、ホスファゼン変性ポリウレタンフォームの開発で始末書を書かされたことを思い出した。欲求不満の上に、これをテーマ提案した時に受けるパワーハラスメントが頭に浮かんだ。

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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2018.02/06 アイデアがひらめくとき

4日日曜日夜9時のNHKで脳について放送していた。シリーズの特番物でタモリ氏と山中博士がが司会を務めている。その番組の中で、ひらめきが脳のどのような状態で生まれるのか、を説明していた。

 

説明によると、ボーっとしているときの脳は、ひらめきを生み出す状態を作っているという。そしてひらめいたときには、脳の情報ネットワークが活発に動くとの説明があった。

 

山中博士は、自身の体験としてそれが1回しかなくて、その一回はお風呂に入っていた時だという。論文を読み、一生懸命考えていてもなかなか思いつかなかったが、たまたまお風呂に入っていた時に、突然iPS細胞のアイデアがひらめいたという。

 

おそらくたった一回は謙遜だろうと思う。あるいは、科学者ゆえにひらめきだけで仕事をやっていないことを表現されたかったのかもしれない。この思いに至った時に、昨日この欄で書くことをためらった。

 

なぜなら、当方のしてきた仕事がすべてひらめきの成果と誤解されるのを恐れたからだ。ただ、日曜日のひらめきについての説明は、当方の仕事のスタイルで成果が出たことをうまく説明できるので、ここで誤解を恐れず公開することは、社会貢献になると思い、明日から少し連載で書いてみたい。

 

すなわち、日曜日に解説していたひらめきを生み出す脳の話は、仕事のやり方を工夫すると、日々活用できるからだ。小生は、日曜日の解説を知らなかったが、高純度SiCの事業を推進していたある日、アイデアが出やすいタイミングに自分で気がつきそれを今でも実践している。

カテゴリー : 一般

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2018.02/05 高分子の難燃化技術(10)

高分子材料の中には、耐熱性が高く難燃性の優れた高分子が存在する。例えばPPSは難燃剤を添加しなくても空気中では自己消火性を示す。ゆえに電子機器に普及している。

 

耐熱性が高ければ難燃性も優れているかというとそうではない。耐熱性が優れていても可燃性の高分子が存在し、さらに基本的な骨格(一次構造)は難燃性がありそうに見えても製造プロセスにより高次構造が変化すると一気に燃えやすくなる高分子も存在する。

 

例えばフェノール樹脂は、硬化触媒の種類や製造条件で、LOIは30以上から19前後まで変化するから要注意の高分子材料だ。

 

40年近く前、初めてレゾール型フェノール樹脂発泡体を合成してびっくりした。ポリウレタン並みによく燃えたのだ。しかし、熱分析すると窒素中の耐熱性は高い。空気中の耐熱性はポリウレタン並みである。

 

自主研究でいろいろと調べ、ある結論にいたり、フェノール樹脂とポリエチルシリケートの相溶した高分子を発明したのだが、これは高純度SiCの前駆体として発展した。

 

小生が講師をする高分子の難燃技術の講演会では、これまでこの周辺技術を話してこなかったが、次回の講演会ではフェノール樹脂の難燃性について経験知としてお話する。論文にも公開されていない話である。

 

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2月13日に高分子難燃化技術に関する講演会(弊社へお申し込みの場合には参加費30,000円)を行います。詳細は弊社へお問い合わせください。経験知伝承が第一の目的ですが、形式知の観点で整理したデータも使用します。形式知のデータは、30年以上前高分子学会や無機高分子研究会、高分子の崩壊と安定化研究会で発表した内容です。経験知につきましては、中国ローカル企業を指導しながらその再現性を確認した結果で、樹脂の混練技術も講演会の中で説明致します。高分子の知識が無い技術者でもご理解いただけるよう、テキストには初心者用の説明も付録として添付します。形式知よりも経験知の進歩が著しい分野です。

カテゴリー : 高分子

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2018.02/04 WINDOWS10で注意すること

インテルCPUの脆弱性の問題でWINDOWS10の自動更新が行われ、PCが使えなくなった話を先日書いた。修復することをあきらめ、新しいPCを一台購入したのだが、CPUが3年前自作したものより新しいのに何か遅い。

 

以前のマシンはハードディスクをRAIDで使用していたが、今回の新品のマシンはSSDである。ゆえに起動は早いのだが、パワーポイントを作成したり、同時にWordを起動して編集したりを繰り返すと、何か以前とペースが異なる。

 

古いマシンも新しいマシンもCorei7であり、何が違うのかは、後日書くが、3年前の自作マシンが壊れた原因について症状の再現ができたのでWINDOWS10を使用されている方に注意を喚起する意味で、本日は当方の推定を以下に述べる。

 

システムは壊れたがデータはすべて復旧できた。ただダウンロードして購入したソフトウェアーはすべて失った。手作りマシンを復旧できても過去のソフトウェアーをOSは消去したのだ。ただ、データは別ドライブだったので消去されずに無事だった。

 

ここで、データをすべてファイルサーバへ退避し、あらためてデータドライブだけRAIDに組み上げたところ、OSがまたおかしくなった。どうやらドライブの単純な増設については大丈夫だが、BIOSの変更を伴うハードウェアーの変更を行うとOSが壊れるようだ。

 

今回の更新ではBIOSをOSが勝手に変更していると言われている。当方のパソコンもBIOSを変更された痕跡があった。RAIDの状態がデフォルトになっていたのはショックだった。

 

これは想像だが、CPUの脆弱性の問題はストレージのI/Oに関する部分ではなかろうか。AMDは今回の問題に関して、インテルと異なるアーキテクチャーゆえに無関係を表明している。AMDとインテルではメモリーのアクセスに関してアーキテクチャーが異なる。AMDのCPUのほうが安全かもしれない。

カテゴリー : 一般

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2018.02/03 プログラミング(14)

C#がオブジェクト指向の言語としてよく考えられていること、そしてオブジェクト指向のプログラミングについて当方の視点でいろいろ書いてきたが、プログラミングの教科書を読むと、プログラミング言語の発達を促しているのは、1.可読性、2.チームワークプログラミングだそうだ。

 

すなわち、OSも含め最近のシステムは膨大なプログラムを必要とし、その肥大化したプログラムを過去のFORTRANレベルのプログラム言語のコンセプトで書いていたのでは、システム開発やその後のメンテナンスが難しい、ということだ。

 

BASICやFORTRAN、Cは、文法の概念はわかりやすく、文法書をさっと読んですぐにプログラミングできた。また、Cでは、構造化や、オブジェクト指向的なプログラミングが可能な自由な仕掛けがあった。しかし、それを使わなくても動くプログラムを作成できた。

 

しかし、他人の書いたプログラムを理解するには少し時間が必要だった。C#のプログラムはオブジェクト指向を理解していると、プログラム内容を容易に理解できる。すなわち何をしようとしてコードを書いているのかが、一目でわかる。

 

ただし、一目でわかるから自分がすぐにコーディングできるかどうかは別の問題で、分厚い文法書と格闘することになる。格闘して理解できれば良いが、オブジェクト指向そのものとコンピューターの仕組みが少しわかっていないとちんぷんかんぷんの部分が少なからずある。

 

当方は社会に出てからコンピューターを独学で学んできたので文法書を2回読み、プログラミングができるようになったが、コンピューターに忖度して考え出された文法の部分は、コンピューターを理解していないと使いこなすことが少し難しいと思う。次回からこの辺りを考慮してC#のプログラミング手法について具体的に解説してゆく。

カテゴリー : 一般

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2018.02/02 パチンコとゼロックス

パチンコ業界は縮小し続けている。今回は出玉規制で倒産する店がすでに40店舗を超えたという。数年前ご近所のパチンコ店が2店舗ほど消えたと思ったら、1件大型店が登場した。しかし、中をのぞくと閑古鳥が鳴いている。

 

パチンコは戦後名古屋で生まれた。創業者の正村の名を冠したパチンコ店が西区にあり、豊川へ単身赴任していた10年ほど前まで正村ビル3階に博物館が開設されていた。名古屋の産業観光の目玉になるのかと期待していたら、資金難で閉鎖されたままだ。

 

パチンコ業界の心配をしていたら、富士フイルムホールディングス(HD)は31日、子会社の富士ゼロックスと米事務機器大手ゼロックスを経営統合させたうえで買収する、というニュースを見つけた。

 

球体のトナーを静電気で操作して情報を紙に表示する技術は、ゼロックスで発明され、当初ゼロックスは複写機の代名詞だった。少なくとも当方が学生時代までは、高価な複写機は、U-BIXもゼロックスと呼ばれていた。

 

輪講の資料作りは、例の臭い青色コピーが使われた。A4一枚当たり二倍ほど値段が違うからゼロックスは使うな、と言われた。研究室には複写機が二台あり、一台は臭い複写機で、もう一台にはU-BIXと書かれていた。間違えてそれを使用したら叱られた。

 

U-BIXと書かれていてもゼロックスと呼ばれていたのだから、ゼロックスの影響力はパチンコの正村以上である。名古屋人であれば、パチンコは正村の発明であることを皆知っているが、名古屋を一歩出ればパチンコが趣味だという人でも正村の名前を知らない。

 

当方が上京した時、パチンコは郊外の大型店が発展している最中だった。いわゆるデジモノが登場し始めた時代である。フィーバーが登場した時には、バブルと重なり日本中フィーバー状態だった。当方はセラミックスフィーバーに夢中でいつの間にかパチンコとは疎遠になった。

 

パチンコ玉もトナーも球体であるが、その大きさは異なる。パチンコ玉は、天4ピンにはじかれ、なかなかヤクモノに球がはいらないが、トナーは器用に99%近く静電気で描かれた情報通りの場所に鎮座し、紙にそれが転写されその後加熱されて画像となる。

 

ハジキと呼ばれる汚れは1%以下である。パチンコ玉とは正反対の挙動だ。これはハジキを少なくしようと技術開発を進めた結果である。パチンコはいくらスキルを上げても大半の球は天4ピンに弾き飛ばされる。

 

だからトナーで情報が美しく描かれるという現実を見たらそこに努力した技術者たちの汗を思い浮かべるとともに、ゼロックス社の発想に感動しなければいけない。当方は学生時代に見たU-BIXの汚れた画像が、転職した時にゼロックスよりも美しい画像になっていたのを見て、複写機をゼロックスと呼ばなくなった。

 

努力が進歩として結果に表れないと飽きてくる。レーザープリンターの画質は著しく向上したが、パチンコで生計を立てているという人を知らない。技術開発には飽きは無いが、パチンコには飽きる人も多いと思う。

 

しかしゼロックス社が複写機を世に送り出した時にトナーは、パチンコ玉の様なきれいな球体ではなかった。画像の美しさを追求する技術の進歩がトナーをきれいな球体に仕上げていった。

 

カラー複写機は写真画質を目指していたが、インクジェットの写真画質には追いつけなかった(注)。大きさと精度でインクジェットに負けてしまった。ゼロックスの衰退は同じ市場においての勝敗だが、パチンコは多くの規制の中で発展してきたのに時代の流れで消えゆく運命にある。

 

パチンコの衰退については、衰退が始まった20世紀末から多様なゲームが登場したことが原因とされているが、本来は賭博でありながら賭博として扱ってもらえなかったことが大きいのではないか。名古屋では一時換金率が75%まで高かった時代がある。寒い日でも毎日店の外まで行列ができていた。

 

(注)普通紙に印刷した時には、圧倒的にトナー画像のほうがきれいである。インクジェットに対するレーザープリンターのアドバンテージはどのような紙に印刷しても同じような品質が得られるという点である。10万円以下のカラーレーザープリンターでは、magicolorブランドが最も美しい出力である。これは雑誌などの商品テストでも明らかにされている。高いオフィス機と同じ中間転写ベルトが使われているからだ。

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2018.02/01 高分子の難燃化技術(9)

高分子に難燃剤を添加するときに問題となるのは、その分散状態だ。直感的に考えて理解できるように難燃剤の分散が不均一であると難燃剤の機能発揮の効率が悪くなる。

 

具体例を示すとポリエーテル系軟質ポリウレタンでは、塩ビと三酸化アンチモン微粉をポリエーテルポリオールに分散させて使用する。この時、ポリエーテルポリオールにうまく分散できたとしても、工程で沈殿する問題がある。

 

沈殿を防止するためにポリエーテル系ポリオールのタンクの中では、ノウハウが必要な攪拌が行われている。この攪拌がうまくゆかないと、所定の処方で自己消火性の発泡体が得られない。

 

分散がどの程度影響するのか調べたことがある。分散状態の数値化が難しいので、ポリエーテルポリオールに塩ビと三酸化アンチモンを添加して攪拌時間を変えた実験を行い添加量の影響を調べた。

 

およそ5wt%程度の違いがあった。すなわち分散時間が長いほうが添加量が少なくてポリウレタンを難燃化できたのだ。同様に、ホスファゼンと呼ばれる化合物に反応性の基を導入して反応型難燃剤として用いたときと添加型で用いたときと調べてみた。

 

こちらは5-10wt%程度の差が現れた。反応型のホスファゼンのほうが少ない添加量でポリウレタンを難燃化でき、難燃性能のばらつきも小さかった。

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2月13日に高分子難燃化技術に関する講演会(弊社へお申し込みの場合には参加費30,000円)を行います。詳細は弊社へお問い合わせください。経験知伝承が第一の目的ですが、形式知の観点で整理したデータも使用します。形式知のデータは、30年以上前高分子学会や無機高分子研究会、高分子の崩壊と安定化研究会で発表した内容です。経験知につきましては、中国ローカル企業を指導しながらその再現性を確認した結果で、樹脂の混練技術も講演会の中で説明致します。高分子の知識が無い技術者でもご理解いただけるよう、テキストには初心者用の説明も付録として添付します。形式知よりも経験知の進歩が著しい分野です。

カテゴリー : 高分子

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2018.01/31 Windows10の自動更新に注意

インテル製CPUに脆弱性が見つかり、その対策がマイクロソフトから発表された。パソコンが自動更新に設定されている人は要注意である。当方は、自動更新にしていたため、突然PCが無限ループで修復を繰り返す状態になってしまった。

 

一週間前に、このような状態になったため、新しいPCを買うことになった。予定外の支出だったが、事務所でストレスなく使えるような環境にするためには、デスクトップのマシンが必須だったからである。

 

事務所では節電のため、使用しているパソコン1台で音楽を聴きながら仕事をしている。ファイルサーバーは節電と安全性を考慮し週末以外は稼働していない。このため、デスクトップマシンには仕事に必要なデータをいれている。

 

20年以上前から自宅ではこのスタイルであり、データ保護のためデータディスクはRAIDで運用してきた。さらに10年ほど前からシステムディスクもRAIDにした。

 

今回CPU脆弱性対策におけるマイクロソフト社が行ったシステムの自動更新では、BIOSを操作したようだ。BIOS設定をみたら、RAIDがデフォルトのモードにされ、システムの一台がRAIDのグループから外された状態になっていた。

 

このような状態だったために、ハードディスクのデータは無事だったのだが、WINDOWS10のシステムは自動更新で破壊されてしまったのだ。復旧対策を試みても、どうやら更新の最中にシステム情報が破壊されたらしく修復不可能と判断し、新しいマシンに買い替えた。

 

今回の教訓は、OSのサポートがこのような形式で行われる場合に、自作マシンはリスクが大きいということだ。ゆえに今回は自作をあきらめ既製品にしたのだが、今どきは自作マシンが高いことに気がついた。SSDがついていてもCorei7で10万円以下で購入できるのだ。パソコンも安くなった。

カテゴリー : 一般

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