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2017.02/26 高分子材料(43)

PPSと6ナイロン、カーボンのバンバリーによる混練は試行錯誤の繰り返しであったがPPSと6ナイロンが相溶したかもしれない、という現象を発見した。ただバンバリーでは量産化が難しいので二軸混練機をどのように使用したらよいのか、バンバリー作業をしながらあれこれ考えている。

 

たまたま無端ベルトの押出成形でPPSの金属音が消えている現象を不思議に思い、押出成形に着眼した話は以前この欄で詳しく書いた。これは単なるひらめきではなく、経験知による成果である。

 

バンバリーの運転と押出成形における疑問、さらに過去の経験がかさなりカオス混合装置の開発につながった。

 

外部のコンパウンダーに提案したアイデアが却下されるやいなや、単身赴任した日にたまたま転職してきた若者と成形現場で使えない職人の二名を車に乗せ、子会社のある袋井に豊川から通う日課が始まった。

 

カオス混合装置の開発は難しい仕事ではあったが、完成すれば半導体無端ベルトの技術を完成させることができ組織に大きく貢献できる。また転職したばかりの若者は事前に情報を何も持っていなかったのでこのような訳の分からない仕事に最適だった。

 

運がよかったのは、この若者に期待していなかった大変高い基礎学力があり、具体的な指示さえ出せば的確な解析結果が瞬時に出てきたことである。これには一緒に仕事をした職人の技が役立っていた。彼が若者の実験をサポートしたので、カオス混合装置の開発は順調に進んだ。

 

「すごいですね、本当に透明になった。大学の研究よりも面白い。」これは、カオス混合装置が完成したときに、PPSと6ナイロンだけを混練し出てきたストランドを見た若者の感想である。理学部の物理化学を専攻した若者には泥臭い仕事だったが、毎日が感動の連続だったそうである。

 

なお、この開発は小型の二軸混練機と中古で購入した大型二軸混練機の二台を用いて静岡と東京で行われた。すなわち、東京で生産ラインを組み立てながら静岡でその基礎データを集めるというコンカレントエンジニアリングで進められた。カオス混合技術ができるや否やコンパウンド工場の投資について経営陣に稟議書を回議している。

 

カテゴリー : 高分子

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2017.02/25 高分子材料(42)

PPSと6ナイロンのχパラメーターは正となるので、高分子の教科書に書かれていることが正しいならば、両者の混練物の高次構造は海島構造となるはずだ。

 

しかし、バンバリーを運転していて両者が相溶したように見えた瞬間があった。実験は仮説を設定して行え、というのは科学を重視した業務プロセスでは効率的で重要な姿勢である。

 

バブルがはじけたときにホワイトカラーの合理化が叫ばれ、実験について如何に効率的に行ったらよいのか、各企業でCTOが腐心し徹底し仮説に基づく実験を推進した会社もある。

 

ただしそこに落とし穴があった。すなわち科学で正しいと思われる現象だけを重視して技術開発が進められるようになったのだ。しかし高分子材料には未だ科学で否定されるが時々発現してしまう非科学的現象が存在する。

 

あたかもSTAP細胞のようなことが高分子の研究開発で起きる。理研のSTAP細胞の騒動では否定証明で結論が出され、STAP細胞は存在しないとされた。しかしその後ドイツの研究者からSTAP現象の報告がなされた。

 

科学的方法で技術開発すべき、という考え方を否定するつもりはないが、高分子材料の開発では非科学的方法も新しい技術を見つけるために重要だと思っている。

 

この欄で、電気粘性流体の増粘問題を科学で否定証明された方法、すなわち解決できない手段と結論された界面活性剤を用いて解決した事例を紹介しているが、科学という哲学で完璧に証明できたとしても、それに反する現象が現れたなら真摯にその現象と向き合う謙虚さが大切である。

 

このあたりはイムレラカトシュの「方法の擁護」にも書かれていない科学的思考法の盲点である。高分子材料の開発ではこのような科学的思考方法の盲点を知ったうえで科学を技術開発に適用しなければいけない。そして時には科学のなかった時代の技術者のような開発を試みて、新発見のチャンスを創り出さなければいけない。

 

PPSと6ナイロンを相溶させることに成功したカオス混合の発明は、ゴムの混練経験を基に生み出した成果である。科学的ではなく30年前の体験を懐かしく思い出しながら、時には情緒的な思考(注)を重ねヒューマンプロセスで開発している。

 

(注)PPSと6ナイロンでは溶融温度が大きく異なり、両者を溶融状態で混練する場合には、極めて粘度差が大きい高分子を練り上げなければいけないことになる。それをうまく実現できたコンパウンドメーカーR社の技術は、例えベルト用のコンパウンドを完成できなくてもコンパウンダーとして高いレベルにあったと尊敬していた。しかし、せっかくのアイデアの申し出に対して、「素人はだまっとれ」という謙虚さの無い態度では、お客も新しい技術や成功の機会も皆逃げてゆく。ドラッカーは誠実真摯であれ、とその著書でよく説いているが、マネジメントだけでなく技術開発を推進する当事者にとっても大切な心構えである。もし外部のコンパウンダーが適切に対応してくれたなら、当方が休日返上の過重労働をしなくても済んだのである。ただ貢献と自己実現を目標にかかげ努力した成功体験が過去に何度もあったので、苦労を楽しさとして味わうつもりで素人でも黙っていることができず行動した。苦しい仕事と予想されるなら、それを実行しようとする自分を褒めてやることが大切である。オリンピックの女子マラソンで二位となり、インタビューで「自分を褒めてやりたい」と発言した美人ランナーがいるが、本当の苦労の仕方を知っている人である。大変リスクが高いが自分以外は成功の可能性が見えていないという状況は人生で時々現れる。そのようなリスクの高い状況でも結果が組織に対して大きな貢献となるならばたとえ報われることが無くても、チャレンジすべきである。そのチャレンジしようとしている自分を、さらにチャレンジした自分を本当に褒めてくれるのは神と自分しかいない。周囲には成功したときに妬みすら持つ人がいるのが人間社会である。電気粘性流体や高純度SiCの事業化を成功に導きながらゴム会社から転職しなければいけなくなった状況を思うたびに美人ランナーの言葉の意味を考えてしまう。

カテゴリー : 高分子

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2017.02/24 高分子材料(41)

試行錯誤で見出したバンバリーの運転条件で混練されたコンパウンドは、PPSの海に浮かぶ6ナイロンの島とその島に偏在し分散するカーボンという高次構造の特徴があった。

 

そして、このコンパウンドを用いて無端ベルトを押出成形したところ周方向で抵抗のばらつきが極めて小さい半導体ベルトが得られた。ただしカーボンを抱きかかえている6ナイロン相のサイズはベルトの靭性に影響を与えるに十分な大きさだった。

 

中間転写ベルトの開発において問題となっていた周方向の抵抗ばらつきを無くすことに成功したが、紙のように脆い力学物性では実用化できない。ちなみにMIT値は100前後だった。

 

開発部隊メンバーの落胆は大きかった。このままでは開発の士気に影響するので、「今までできていなかったことがうまくいったので安心しろ、あとは6ナイロン相の島をPPSに相溶させてカーボンの凝集をソフトにすれば完成だ」とゴールの姿を示した。

 

しかしこれは高分子科学を無視したはったりだった。フローリー・ハギンズの理論によればPPSと6ナイロンが相溶する現象はSTAP細胞同様に非科学的な妄想に過ぎない。

 

非科学的な妄想かもしれないが、バンバリーを用いた実験でその非科学的現象を実現できる自信ができた。すなわち高剪断力で6ナイロンとPPSが相溶したように見えたのでロール混練あるいはカオス混合を行えば6ナイロンとPPSを相溶できると科学的根拠は無いが体験から得た自信があった。

 

科学的には否定される妄想になぜ自信を持つことができたのか。それは科学という哲学の限界を幾度も経験し、そしてその限界を超えて成功した体験をしていたからである。

 

ゴム会社で開発した高純度SiCの前駆体合成技術や電気粘性流体の増粘問題の解決、さらに写真会社では酸化スズゾルの導電性発現、ゾルをミセルに用いたラテックス重合技術など科学的アプローチでは成功できなかった仕事を非科学的問題解決法で成功に導いている。

 

科学でその姿を100%記述できていない高分子材料分野では科学に頼らない技術開発が時には必要となる。科学とKKDのバランスをどのようにとるかは重要で、科学バカの仕事のやり方ではAIの普及が近い近未来に技術者として生き残ることはできない。

 

 

 

 

カテゴリー : 高分子

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2017.02/23 高分子材料(40)

PPSと6ナイロン、カーボンをある条件でバンバリー混練したときに、押出成形でウェルドの出ないコンパウンドができた。

 

そのプロセス条件は、バンバリーで混練しながら考えた条件である。すなわちバンバリーで混練しているときの温度やトルク変化、混練物の状態などを観察しながら手探りで条件を探し見出した。

 

まさに心眼を用いたKKDによる条件探索である。まったく科学的ではないこの方法でたった一つだけのプロセス条件を見出すことができた。一日で見いだせたのでタグチメソッドよりも効率が良い。

 

科学の知識という形式知と経験という暗黙知をうまく組み合わせて開発を進める手法はAIの時代にコンピューターに負けない唯一の手法である。もし形式知だけで研究開発を行っているならば、その研究開発組織はAIですべて置き換えることが可能で、あとは作業者がおればよい。

 

AIに負けないためには暗黙知を如何にうまく育て継承し成果に結びつけるというマネジメントが重要になる。このあたりのマネジメントノウハウは弊社にご相談いただきたいところだが、バンバリー混練のコンパウンドには、科学の知識を中心に非科学的手順でくみ上げた処方ゆえに致命的な問題があった。

 

このコンパウンドの高次構造は、PPSが海となり6ナイロンが島となる相分離構造である。そしてその島の面積から推定される割合よりも多い6ナイロンが添加されていた。

 

すなわちフローリーハギンズの理論では相溶しないはずの6ナイロンが相溶していたのだ。また、カーボンはすべて6ナイロン相に偏在し、PPSの海にはまったく存在しなかった。

 

それは、科学に反する現象と科学的に当たり前の現象とが共存する問題だった。一番大きな問題はカーボンが偏在している6ナイロンの島が大きく硬い(注)ために紙のように脆いベルトになったことである。

 

<注>面積比率からカーボンが分散している6ナイロン相の体積分率を計算することが可能である。カーボンは今回のプロセス温度280℃以下で絶対に溶けないので全量電子顕微鏡で見えているはずである。6ナイロンはフローリーハギンズの理論に反するがPPSに相溶する場合もありうる。このような考え方で、カーボンの分散するナイロン相を考察すると、カーボンが55vol%ナイロン相に分散している、との計算結果が出た。

 

カテゴリー : 高分子

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2017.02/22 高分子材料(39)

昨日の続き。業務を引き継いで最初に試みたのは、PPSと6ナイロン、カーボンの3成分をバンバリーで練り上げるプロセスだった。

 

小型のバンバリーを製造販売している会社の設備を借りて、混練時間を工夫したり投入順序を工夫したりしてプロセス検討を行った。ここではゴム会社における新入社員時代の経験が生きた。

 

約30年ぶりの作業だったので顔はカーボンで汚れ精神的にも疲れたが、幾つかうまくできたという実感のあるコンパウンドが得られた。

 

樹脂の混練など初めての経験だったが、混練しているときの感覚というものはゴムも樹脂も高分子材料という点で同じである。すなわち高分子材料は紐の塊ととらえると心眼を働かせることができる。

 

本当に心に描いた通りに混練が進行している、という科学的な保証はないが、与えられた時間が少ないので、自己責任で最もうまくゆく技術手段を用いて誠実真摯に最善を尽くす以外にない。

 

ゴム会社で事業が30年近く続いている高純度SiCの技術を起業したときもそうであったが、組織で報われない仕事と分かっていても誠実真摯に取り組んだ時には思いがけない神がかった結果が出たりする。

 

人生で何度もそれを経験すると、科学的に考える余裕がある、ということは恵まれた環境にある技術者の特権で、そうではない道を歩かされている技術者は腐らず誠実真摯にKKDで一発勝負を行い、新しい科学の芽を出す楽しみに人生を賭ける、という考え方になる。

 

博打と同じようなヤクザな仕事のやり方だが、高分子材料には、そのようなやりかたでチャンスが生まれる可能性が、科学の時代と言われていても残っている。

 

ただし「誠実真摯なKKD」が重要であり、これを実行できないとSTAP細胞のような騒動になる。ニュースで公開された実験ノートなどの情報をみると、頭にノーベル賞がちらついていたようで、誠実真摯な業務遂行ではなかった。

 

せっかくSTAP細胞の芽を出せるチャンスに遭遇したのに誠実真摯に努力しなかったので自殺者まで出るような世界中を巻き込む大騒動になったのではないかと当方は事件をとらえている。

 

KKDといっても科学者として未熟な技術者がヤマカンで業務を行っていては神様にも見放される。やはりKKDで業務遂行する前にその業務の科学的知識を誠実真摯に学ぶことは大切だ。

 

科学的知識を身に着け、科学へKKDで挑戦したときに新技術の芽を見出すことができる。

 

樹脂のTm未満の温度領域において剪断流動で想像していたよりも混練が進むという発見と添加順序で混練状態が大きく変わる処方系という情報などが、バンバリーの作業で得られた。

カテゴリー : 高分子

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2017.02/21 高分子材料(38)

この欄で紹介したことがあるPPSと6ナイロンの相溶した中間転写ベルト用コンパウンドについてもう少し詳しく書く。

 

このコンパウンドを外部のメーカーから購入し、押出成形を検討していた仕事を2005年に某部長から引き継いだ。その時の条件は、配合処方はそのままで業務を完成させてほしいという難題だった。

 

すなわちコンパウンドプロセスを検討する以外は、何もやるな、という希望である。その意図は明確で、表向きは商品化ステージであり、処方変更できない開発フェーズであるという理由であるが、これまでの業務をすべて正当化したまま業務を完成させろと言っているようなものだった。

 

失敗すれば引き継いだ自分が責任を負うことになる悲しい役回りである。サラリーマンの退職前にはこのような仕事が来たりする。

 

しかしこの業務はハッピーエンドで、当方に引き継ぎを申し出た部長はセンター長へ昇進し、当方は豊川の田舎における5年の単身赴任を終えて担当部長として東京へ戻ることができた、と過去に書いている。

 

この話で大切な点は、外部メーカーからコンパウンドを購入し中間転写ベルトを開発していた業務をそのままのスタイルで半年後に開発が成功している点である。

 

ただし開発に成功したときの外部メーカーは、6年間コンパウンドを供給してきたメーカーではなく、当方の所属した会社の子会社に代わっていた。

 

その子会社に樹脂の混練技術があったわけではなく、まったく基盤技術のない状態で、すなわち当方の知識だけでそこで樹脂専門メーカーより優れたコンパウンドを生産できるプロセスを開発できたのである。

 

高分子材料では、プロセシングというものをよく理解しているとこのようなあっと驚く開発が可能である。ただし、あっと驚くような開発では周囲の同意が得られないので仕事は自然な流れになるような、周囲から歓迎されるような、それでいて報われない大変な苦労を重ねた。

 

カテゴリー : 高分子

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2017.02/20 高分子材料(37)

加硫ゴムの混練プロセスを簡単に説明すると、バンバリーを用いるノンプロ練プロセスとロール混練によるプロ練プロセスとなる。

 

実際のプロセスでは、バンバリーにかける前にロール混練を行ったり、ロール混練をニーダーと組み合わせたりとゴム種により複雑なプロセスが組まれたりする。

 

またバンバリーの混練時間は5分から長くても10分だが、ロール混練では30分以上の時間を費やす場合もある。

 

このように混練時間だけを見ると二軸混練プロセスによる樹脂の混練時間が如何に短いか分かっていただけると思う。

 

昨日ポリオレフィンの混練時間とその変化について行った実験を紹介したのは、このように同じ高分子材料でありながらゴム業界と樹脂業界では混練時間に対する感覚に大きな違いがあり、樹脂の改質においてプロセシングをもう少し検討すべき、と思っているからだ。

カテゴリー : 高分子

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2017.02/19 高分子材料(36)

樹脂材料の混練では二軸混練機が多く用いられている。しかし二軸混練機を1pass用いた混練では十分な樹脂の混練を実現できていない、ということに気がついている技術者は少ない。

 

色材や各種老化防止剤などの添加剤を分散する目的ではそれほど問題にならない。仮に色材の分散状態が不完全であれば、スクリューセグメントや回転数などを変更して修正可能である。

 

ただしこれも見かけ上対策できたように見えるだけである。何も問題が起きなければこの不完全性は実務上忘れ去られてしまうが、そのコンパウンドが押出成形で用いられたときにボツや色むらとしてその問題が突然現れたりする。

 

あるポリオレフィン樹脂でバッチ式混練を行い、Tgで観察されるエンタルピー変化をモニターしたところ30分以上の混練でようやく一定値となるようになった。しかし実際の二軸混練機で樹脂が混錬される時間はせいぜい10分未満である。

 

加硫ゴムの混練を経験しているとこの10分未満の混練が如何に短い時間であるかを理解できるが、樹脂の混練しか行ったことのない人はこの混練時間の問題に無頓着である。

カテゴリー : 高分子

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2017.02/18 高分子材料(35)

高分子材料の力学物性においてプロセシングの影響は大きいが、経験的にセラミックスほどではないと思っている。

 

しかし、退職直前に開発したPETボトルのリサイクル材が80%を占める材料は当方が開発したカオス混合装置を用いなければ転写性の良好なコンパウンドを製造できない、という極めてプロセス依存性の大きな樹脂だった。

 

また、力学物性以外に難燃性もカオス混合装置を取り付けていない二軸混練機ではどのようなスクリューセグメントでも良好な成形体を実現できるコンパウンドを製造できなかった。

 

この原因はコンパウンドのレオロジーを計測して明らかになったが、カオス混合装置を通過したコンパウンドではポリカーボネートに近い粘弾性特性を示したのに対し、二軸混練機だけで混練されたコンパウンドはPETの粘弾性特性そのものだった。

 

すなわち異なる混練プロセスで同じ組成の樹脂でも粘弾性特性が大きく変化する場合ではプロセス依存性が大きくなる。

 

退職直前に開発したリサイクル材を80%含むPET樹脂の残り20%には5種類の樹脂が添加されており、難燃剤は添加していない。難燃剤は無添加であるがUL94試験のV2に合格する難燃性樹脂である。

 

またその力学物性は、PC/ABSの弾性率より10%前後低い物性で電子写真機の内装材として使用可能で、転写性はPC/ABSよりも優れウェルドの発生がほとんど見られなかった。

カテゴリー : 高分子

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2017.02/17 高分子材料(34)

高分子材料もセラミックス材料もその材料の混合および成形プロセスの履歴がその力学物性に影響を与える点で、プロセシングと材料物性が切っても切れない関係にある。

 

しかしこの視点で書かれた教科書に出会えない。教科書が無いので技術者はその経験を伝承する必要があり、そのシステムが完備しているメーカーは技術の基盤がしっかりしていることになる。

 

ゴム会社では製造現場とタイヤ開発現場の両者にそのシステムが存在したが、残念ながら研究所には無かった。指導社員がその理由を教えてくれたが、もっともな理由だった。

 

技術の伝承システムが研究所に存在していなかったので、研究所の技術者は指導社員の力量でその後の技術者人生が決まってしまうところがあった。当方は技術者として優秀な指導社員に指導されて幸運だった。

 

その指導社員が最初に指導してくださった重要なことは、ゴムのプロセシングは実際に体験してみないと理解できない、ということだった。

 

これはゴムに限らず樹脂もそうである。またセラミックスに至っては教科書の説明だけではまともなプロセスを組み立てることが難しい。

 

カテゴリー : 高分子

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