主鎖がSiOで構成されているシリコーンゴムは無機高分子の代表的素材である。工業的に使用されているのは、ミラブルタイプとLIMSタイプの二種類である。前者は、高分子量のシリコーンを架橋したゴムで、後者は低分子量体を反応させて高分子量化するとともに架橋を同時に進行させて製造したゴムである。
1980年代に普及が始まったシリコーンLIMSは、瞬く間にシリコーンゴムの主流になった。身近に接するシリコーンゴムの大半はシリコーンLIMSである。ただやっかいなのは、この分野の情報は特許情報が最先端であり、最近は科学論文であまり取り上げられない。理由は過去のシリコーンの科学でその理解ができるぐらいに20世紀に研究が進んだからである。
但し理解はできるが、技術内容が複雑なため誤解も多い。退職前の5年間PPS・ナイロン中間転写ベルト事業立ち上げのため、豊川へ単身赴任したが狐にだまされて転写ベルト以外に様々な仕事をすることになった。このシリコーンゴムの仕事もその一つだが、単身赴任してすぐに福建へゆくことになりびっくりした。
福建はウーロンティーで有名であるが中国マフィアの巣窟とも言われている。そこで定着ローラーを生産している日系企業の指導をすることになった。高分子学会の無機高分子研究会でシリコーンゴムについて勉強していたので予備知識があり苦労はしなかったが、困ったのは現場技術者の無理解である。技術として長年開発をやり続けてきた自信から、科学的知識を馬鹿にする。
科学では真理は一つだが、技術では技術者の数だけ真理が存在する。機能が実現できれば、その機能を支える自然現象の理解は自由だ。科学で理解を進めれば真理は一つになるが、技術者の勘と経験の世界からの理解では真理は技術者の数となる。当方は技術者の真理を尊重しているのに相手は科学の真理を馬鹿にする。これでは話が進まない。それで現場で説明をすることになり、福建へ急遽ゆくことになった(続く)。
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科学における問題解決の手法は、小学校から学ぶので誰もが身につけている。だから、風が吹けば桶屋が儲かる話を笑うことができる。逆に技術の問題解決プロセスについては、メーカーに勤めない限りは学ぶ機会も無いのが日本の現状である。弊社はこれを研究開発必勝法プログラムとして販売している。
科学が存在しない時代にも技術開発が行われていたことはマッハ力学史に書かれているが、意外にもこの重要性が知られていない。ヒューマンプロセスによるその方法は、どんどん今の時代の問題解決法にも活用すべきである。科学的問題解決法だけが優れた方法ではないのである。
科学的問題解決法の利点は、真理が一つ、という大前提を使うことができる点で、これを技術開発に安直に持ち込むと痛い目に遭う。技術開発では、機能を実現する方法はいくらでもあるからである。ゆえに特許がたくさん出願される背景になっている。特許を読むと技術が科学だけではないことをすぐに理解できる。
32年間の技術開発成果において世間に自慢したい技術が二つある。自慢したい理由は、科学的に問題解決しなかった成果だからである。その他の技術開発成果には、どこか科学的問題解決法が使われている。詳細な問題解決方法については弊社へ問い合わせていただきたい。また一部は未来技術研究所(http://www.miragiken.com)でも公開しているのでそちらもご覧頂きたい。
さてその二つの技術とは、ゴム会社が日本化学会技術賞を受賞している技術の主要部分を占める高純度SiCの合成技術と昨年高分子学会から招待講演を依頼されたカオス混合技術である。この二つの技術では、思考実験と試行錯誤というヒューマンプロセスをほとんどの開発プロセスで用いた。いずれも科学の成果であるフローリー・ハギンズ理論を使えなかったからである。
高純度SiCの合成技術では、前駆体高分子の合成についてはカプセル化し、それが炭化された部分について科学的に扱い学位を取得している。カオス混合技術では、なぜそこに至ったかは講演で一部を説明したが、やはり大半をカプセル化し、その混合技術で製造されたPPSとナイロンの相容について科学的に説明している。
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20世紀に科学は飛躍的な進歩をとげたように見えるが、未だ解明されていない現象は多い。そのため昨年のSTAP細胞の騒動に見られるように科学で未解明の現象を扱うときにはとんでもないことが起きる。この事件では、未熟な科学者の責任が問われたり、世界的な科学者が自殺したりと散々な騒動になった。
さらに学位論文のコピペの問題が大きく取り上げられたりもしたが、40年近く前、大学の生協で購入した無機材料の教科書に、10ページ近くアメリカの学者の総説をそのまま日本語に翻訳した部分があったことを見つけた経験があったので、あまり驚かなかった。
教科書は複数の教授の共著であり、全体をとりまとめていた大御所の先生が気がつかれていなかったいい加減さに当時びっくりした。当時の当方を指導してくださっていた先生は当方の勉強熱心さを褒めてくださったが、本来は大御所の先生を批判すべきところではないかと思ったりもして、アカデミアでも大人の対応が必要なことを学んだ。
今日のこの欄では、昨日の補足の補足を書いてみたいと思い書き出したが、高分子ではなくSTAP細胞の話で書き出してしまい、改めて昨年の科学分野における騒動が当方のトラウマになっていることに気がついた。
今年は、投稿された論文に使われたマウスにES細胞が見つかった謎を解明する目的で警察へ訴える人まで出てきたが、そもそもあの騒動は技術と科学を同じまな板の上で処理しようとしたことが原因で発生しており、警察へ訴えるような問題ではなく、山中先生の巧みな問題解決法を多くの研究者や技術者が見直す機会としてとらえるべきだと思う。
STAP細胞のように、科学者が科学の研究と技術開発を同時に行わなければいけない状況になったときに、科学の姿勢と技術開発の姿勢を明確に区別すべきである。山中先生はそれをうまく行いノーベル賞受賞に至った。すなわち技術の部分をうまくカプセル化し一つの完成したオブジェクトとして扱い、そのオブジェクトの振る舞いを科学的に研究されたのである。技術開発では、この逆で科学の未解明な真理をカプセル化した機能をオブジェクトとして扱う方法となり、これがヒューマンプロセスによる技術開発となる。
もしSTAP細胞もそのように進めていたらあのような騒動にならなかった、と思っている。研究で真理が見つかるまでカプセル化すべき部分を早い段階ですべてさらけ出し、オブジェクトとしてその振る舞いを明確にすべきSTAP細胞について、研究を怠り、ES細胞でお茶を濁したのが例のマウスの実体ではないか。警察へ訴えるまでもない一部の研究者が想像しているとおりである。
高分子自由討論会の最初に行われた名大の先生の発表は科学者としての姿勢で研究が進められていた。自然界の現象には科学で未解明な事柄が多すぎるので、あのような真摯な研究は重要である。もしこの真理が30年以上前に分かっていたら、ひしゃくを5回使用するプロセスを考案した技術者は、処方を見直したかもしれない。
なぜなら当方は4元系のラテックスの処方を考えた20年近く前にある方法で必ず4成分がコポリマーとして反応するようにデザインしたのである。必ずしも今回の発表の真理に近い内容ではなかったが、科学で未解明の事柄としてカプセル化したヒューマンプロセスで問題解決を行ったのである。
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昨日高分子自由討論会で頭がすっきりした話を書いた。すっきりしたのはポリカーボネートの問題だけではない。ほかにもいくつかあるが、母校の名古屋大学の先生が発表された3元系の共重合体ブレンドの講演は、先日この欄で紹介したラテックス生産プロセスでひしゃくを使った問題の理解に役だった。
今は使用されていないが、30年以上前に開発された写真会社のラテックスAは4元系で奇妙な分子設計だった。勝手な想像だが、3元系ラテックスの混合物ができているのではないか、と疑っていた。
20年前当方が担当して開発したラテックスBも少し難しい4元系のラテックスだった。しかし、これは必ず4元系になるようにいろいろと工夫した。過去に開発されたラテックスがあまりにも複雑であり、自分が担当したからには、と意気込んだが、特許を回避しようとしていたら結局4元系の複雑なラテックスになってしまった。
ラテックスAの製造釜を覗くと、表面に光が当たった時にいつもきれいな模様が観察される。ゴム会社に勤務していたときに出席した塗料のセミナーで人間の目はナノオーダーまで見ている、という話を聞いた。実際にナノオーダーが見えているのかというとそうではなく、ナノオーダーレベルの構造を変化させたときに表面の模様の変化として人間の目が認識するという意味だ。
ラテックスAでは偶然結晶構造のラテックスが一部できていたのかもしれない。名大の先生の講演は開会直後の最初の講演でまだ眠くなるような位置づけではないが、難解でありさらに技術としてどのような応用が考えられるのか分からない科学の講演だった。しかし、一つの真理を示しており、その真理のおかげで、ひしゃくを使った思い出が居眠りをしている頭の中に描かれた。
昨今では技術として応用できない研究を軽視する風潮があるが、自然界の新しい真理を生み出す科学の研究は実用性が無くても重要である。なぜなら技術は自然界の現象から人間に有用な機能を取り出し活用する行為であり、自然界の理解が不可欠だからである。
技術では、必要であれば科学で理解できていない現象から取り出された機能でも使わなければいけない状況もある。そのような状況における技術開発では新たな科学が生み出される可能性があるのだが、ラテックスAの事例から分かるように、たいていはほったらかしになっているのが現実である。
そして開発した担当者が行方不明になれば、技術は単なる行為として伝承されるがその意味が不明のためノウハウとして生かされなくなる。以前科学と技術で書いたが、技術を正しく効率よく伝承するためにはその科学的理解が大切である。そのために真理を導き出してさえいれば、科学の研究はそれだけでも価値がある、というとらえ方はいつの時代でも必要ではないか。
ひしゃくの使用回数を5回とした昔の技術者が直感で優れた人物と感じたのは間違っていなかった。ラテックスAでは、ラテックスBよりも規則正しい構造ができる可能性が極めて高い。ラテックスBよりもラテックスAでは必然的に捨て材が多かったはずだ。
(補足)ラテックスの合成を経験されていない方にはさっぱり分からない内容かも知れない。またその経験のある方でも4元系などの複雑怪奇な系を合成されていない方には馬鹿な話に見えるのかもしれない。技術開発で組み立てられ機能を発揮しているシステムの中には、その機能がなぜ発揮されているのか不明の技術が製品に使用されている例、として読んでいただければありがたい。当方は半導体用高純度SiCの技術を開発後、このような技術について科学で説明できることと説明できないことを分類しながら技術開発を行ってきたが、材料技術には科学で説明できないことが大変多いことにびっくりしている。最後に担当した電子写真システムは帯電現象を情報の書き込みに利用している。すべての部品を単純化したシステムではそのメカニズムの説明に成功しているが、実際に使用されている部品は複合材料であり、その帯電現象は複雑怪奇である。例えば当方の開発に成功した中間転写ベルト(PPS/ナイロン/カーボンの設計は前任者。当方はプロセシング設計と立ち上げを担当)は、押出成形で製造されているにもかかわらず、キャスト成膜で製造されるPI並以上の性能を発揮している。なぜ性能が良いのか不明である。科学で未解明な現象から機能を取り出し利用するという行為は、科学成立以前、すなわちニュートンが生まれる前の時代に人間が営みとして行っていたヒューマンプロセスである。弊社ではこのヒューマンプロセスの見直しを行っている。
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これは6月末に参加した高分子自由討論会で勉強した結果であるが、ポリカーボネートという樹脂は高分子のからみあいが原因で面白い特性が観察されるという。T大O教授の講演であるが、当方も昨日紹介したいきさつがあり、ご発表といくつか一致するデータを持っていた。
この先生のご発表は実務に直結する話題が多く、高分子自由討論会の楽しみの一つである。発表内容含めここで書くわけにはいかないので、ご興味のある方は弊社へ問い合わせていただくか、来年度参加されてはいかが?まことに自由な討論会で楽しい。参加費も巷のセミナー費よりも安い。
さて、この先生のご発表を公開するわけにはいかないが、以下は受け売りであることを前提に読んでいただきたい。早い話が当方のこれまで悶々としていた問題を明快に解いてくださったその結果を当方の責任で書く。
まず、PCの難燃化について。一部のPCを除き、PCの難燃性は高く難燃剤を添加しなくとも自己消火性を示す。しかし、これがポリマーアロイになると難燃剤が必要になる。ところが混練条件により難燃性が変化するのである。PCマトリックスにおける難燃剤の分散状態が変わるため、と予想していたが、「なぜ」が分かっていなかった。
難燃剤の分散状態にPCの絡み合い密度が関係している可能性があり、混練条件によりそれが変化するため、と勝手な想像をしてみた。昨年行った実験結果を見てみると、その傾向が出ていた。この絡み合い密度の問題は難燃剤の分散状態に影響があるだけではない。
射出成形性にも影響がでる。これは極端なサンプル比較を行うとわかりやすい。例えばカオス混合を行ったPC/ABSと行わなかったPC/ABSでは、前者の方が射出成形のOWが広くなる。これは、粘弾性の周波数分散を見ても理解できるが、O教授の考察を拝借すれば見事に説明できる。
科学は技術開発で遭遇する現象を解明してくれる。科学において技術とは全く異なる実験の場で出されたデータとその考察を技術開発の現場で用いることができるのは、真理が一つという信頼があるからである。
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PC/ABSやPC/PET、PC/PSなどポリカーボネート(PC)系ポリマーアロイは、高い難燃性と力学物性、及び成形体の高品位な外観が得られるなどバランスがうまくとれた樹脂なので、テレビやオフィス機器はじめ電子機器の外装材として多くの分野で活用されている。
ところが射出成形体でエラーが多発しやすい材料でもある。現場ではPSに比較して射出成形条件のウィンドウが狭い問題や、力学物性ばらつきの問題などが指摘されている。単身赴任した5年間でもいくつかの問題に立ち会った。コンパウンドの製造工程におけるトラブルが主原因で起きた謎のケミカルアタック問題以外は、PCという高分子の根本的な問題だろうと思っている。
例えば、様々な混練条件で混練されたPCの熱分析を行うと、DSCで測定されたTgのプロファイルが変化する。Tgが二つ現れる場合もある。粘弾性特性も変化する。これがポリマーアロイになるとさらに複雑な変化となる。最も市販品ではそれなりに品質管理が成されているのでその変化は小さいが、例えばPCとABSをそれぞれのバージン樹脂を用いて混練してみると混練条件で力学物性は大きく変化する。
難燃剤などの添加剤を加えてゆくと射出成形性に影響が出てくる。こうした実験を行うとPC系のポリマーアロイが単なる混合物ではなく高い技術に基づき生産されている樹脂であると理解できる。そしてコンパウンディング技術の重要性を認識でき、二軸混練機の限界まで分かってくる。
謎のケミカルアタックの問題でPC/PSというポリマーアロイを提供しているメーカーの技術者と議論したら、手離れの良い樹脂だった、という発言が飛び出した。おそらく現場で起きるであろう様々なエラーなど考えずに開発を行ったと思われる。納入されたコンパウンドをカオス混合で混練しなおすとはるかに成形性が良くなったのだ。
例えば、納入された樹脂で外装材を成形すると、部位により40%以上の強度のばらつきが生じるが、混練しなおしたコンパウンドでは15%程度のばらつきに収まった。明らかにコンパウンドの混練不足であることがわかる。このコンパウンドについて謎のケミカルアタックの問題が起きたときにはコンパウンディングの現場でエラーがあったことも判明した。ところがエラーが無いときでも射出成形体の各部位において力学物性がばらついていることも調査してわかった。
5年間の単身赴任で学んだのはコンパウンディングメーカーの不誠実さである。射出成形現場で問題が起きたときに協力する姿勢を見せてくれるのだが、根本的問題解決をしない。謎のケミカルアタックの問題では現場監査を強引に行って解決できた問題である。PC系のポリマーアロイではないが中間転写ベルトの問題解決では予定外のコンパウンド工場を建てるところまでやらなければならなくなった。
コストの問題もあると思うが、PCという樹脂の複雑さを理解してコンパウンドメーカーは対応して欲しい。もし対応できなければ弊社に相談していただくと問題解決のお手伝いをいたします。
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エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド車が大手自動車各社から販売されている。このハイブリッド車の技術は燃費を改善するための機能を実現したものと思っていたが、燃費の改善を最重要視しているタイプと車の運転の楽しさを重視したタイプの2種類があることを最近知った。前者の代表はトヨタで後者はスバルである。
おそらく自動車の大半は電気自動車に置き換わるだろうが、そのつなぎとしてハイブリッド車が位置づけられている、と思っていたら、そのトヨタがダウンサイジングターボ車を販売しだした。いろいろ調べてみると、ハイブリッド車が主流なのは日本だけで、欧米ではダウンサイジングターボやグリーンディーゼルと呼ばれる技術を採用した省燃費車が主流らしい。
これは化石資源を枯渇させないための技術を目指した過渡期の現象だが、ガソリンの置き換えが電気になるのかそれ以外かはユーザーが選択する時代に入ったようだ。デンソーはバイオディーゼルの開発を行っており、これが成功すればグリーンディーゼルも未来技術の視野に入ってくる。また、脱石油以外に地球温暖化対策として水素社会実現を目指した燃料電池車も未来の自動車として期待されている。
車の機能を実現するための動力として、ノーマルエンジン、ダウンサイジングターボ、グリーンディーゼル、ハイブリッド、燃料電池車やノーマル電池車が今市場に出てきており、ユーザーが未来の自動車を選択する、すなわち自動車メーカーと価値を共創する「実験の時代」なのだろう。
ノーマルエンジン以外のすべての省燃費車に試乗していないので動力源が車の価値へどのように影響するのか論じれる立場ではないが、一例としてハイブリッド車について市場評価を調べてみると、省燃費性が低いにもかかわらずスバルのハイブリッド車の評判が良い。ハイブリッド車としては出力が低いモーターとエンジンとを組み合わせており、大きなモーターと組み合わせているトヨタの技術の対極にある。
ホンダからハイブリッド車が初めて登場したときに用いられていたモーターと同じ出力で、トヨタが自社の車を腕力のある若者二人が自転車に乗っている姿で、ライバルをよぼよぼの老人二人が乗った自転車の姿で例えた比較広告を行っているが、1.5tもある車に用いるには小さな出力のモーターである。
しかし、スバルの場合に小さなモーターと組み合わせているのは、トヨタ86のエンジンの流れを組む2000ccの力強いボクサーエンジンである。エンジンの低回転域で不足するトルクを補うようにモーターは機能し、その結果レクサスのような高級感のある乗り心地になるという。すなわち、ハイブリッドの持っている機能を、省燃費ではなく自動車運転時の高級感という機能に転化した技術で、スバリストという独特のファンがいるのもうなづける。
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高熱伝導性高分子を微粒子分散系高分子として材料設計するときに、パーコレーション転移だけを考えているとうまく材料設計ができない。しかしその現象にはパーコレーションは関係している。複合材料の力学物性にもパーコレーションは関係しているが、その様子は電気抵抗測定の結果のように明確に観察されない。
微粒子分散系高分子において、微粒子の分散状態を科学的に論ずる場合には、クラスター生成を確率で取り扱うパーコレーションが科学の世界では一般的である。もう昔のような混合則で議論していては時代遅れである。
技術の世界では、現象をシミュレートするのにパーコレーションだろうが混合則だろうがかまわない。もし、ある微粒子分散系高分子にうまくフィットする混合則の式が見つかれば、それを用いて材料設計を行えば良い。現場の不良を考察するときには電卓を活用するが、そのようなときに混合則は便利である。
プロセスに異常があり、微粒子の添加量にエラーが生じているかどうか混合則で結論を出すことができる。技術では、機能が重要であり、微粒子のクラスター生成を議論することが目的ではない。このあたりを勘違いして大騒動になったのは、理研のSTAP細胞である。
STAP細胞を技術として扱っておれば、あのような結末にならなかった。もし技術として扱っていたならば、繰り返し再現性が上がるまで発表を控えただろうと思われる。STAP現象から再現性よく機能を取り出す手段が見つからなければ、STAP細胞ができないことは技術者ならばすぐに理解でき、実験をそのために計画する。
科学の研究を行っているのか技術開発を行っているのか自分の行為を明確に認識して取り組まなければ良い結果が生まれないのは高熱伝導性高分子の開発の場合も同様である。技術開発をやっているつもりで、パーコレーション理論にうまく合わないから、といって研究に取り組んでみるのは「時間とお金」があるならば良いことかもしれない。
しかし、パーコレーション理論にうまく合わない現象としてあきらめ、技術として試行錯誤で取り組むのも技術者ならば間違いではない。もしSTAP細胞についてそのように技術として取り組み技術として完成してから発表していたなら、あのような大騒動にならなかったろう。
技術開発の現場で面白い現象に遭遇すると科学の世界に目を奪われたりするが、そこをぐっとこらえて技術開発ができるようになりたいと思っている。科学の世界は技術開発が終わってからの楽しみにするようなストイックな技術者でありたい、と努力してきた。
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高分子は絶縁体であるとともに熱を伝えにくい材料でもある。ゆえに高分子を熱の良導体にするには、半導体高分子の設計と類似しているが、微粒子を分散することになる。
面白いのはパーコレーション転移と同様の現象が現れることである。しかし、半導体材料を設計するときとその現象の様子は少し異なる。エレクトロンとフォノンでは性質が異なるためだが、これも教科書にうまく説明されていない。
具体的な現象として、高分子に電気抵抗が低い微粒子を分散すれば、その導電性に応じて、微粒子分散系高分子材料の抵抗が下がる。しかし、熱伝導性樹脂の場合には、いくら熱伝導性が低い粒子を添加しても、その微粒子の熱伝導性に見合うほど樹脂の熱伝導率が下がらないのだ。
この現象に初めて接するとパーコレーションのいたずらか、と考えてしまう。しかしそれだけではない。電子伝導はトンネル効果のおかげで微粒子が多少離れていても起きるが、伝熱では微粒子の不連続点で極端に伝わりにくくなるのだ。
その結果、熱伝導率が異なる微粒子を集めてきて添加量と熱伝導率の関係をプロットすると、皆同じ曲線にのってしまう。ゆえに効率よく熱伝導樹脂を設計したいなら、科学的に考えるよりも技術的に考えた方が良いアイデアが出てくる。実際に特許なども公開されており、この分野の特許は読んでいると少し面白い。
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ゴム会社で高純度SiCのJVを立ち上げ、写真会社に転職した。ヘッドハンティングのI社から転職を促されていた。頻繁にセラミックス関係の会社をいくつか紹介されていたが、転職するときに社内の規程にひっかかり躊躇していた。
騒動が起きて悩んでいることを伝えたら、すぐに専門と異なる高分子技術の開発センターマネージャーという役職を提示された。写真会社は高分子技術の開発センターを新規に立ち上げるため、高分子技術を事業としている会社から人材を集めていた。
そのセンター長は、フィルムや繊維で有名なT1社から10年ほど前に転職された定年間近の方で、次期センター長候補としてT1社のライバル関係にあるT2社から来られた方もいた。当方は、研究管理スタッフ主任研究員という肩書きで、専門は問わない、と言われたので転職を決意した。
お二人とも優しい方であった。また、センター長自ら担当者の研究ノートをご覧になられており、丁寧に一人ずつコメントを書かれていた。そのため、センターのモラールは高く、成果が出そうな雰囲気ではあった。ところがセンターの前身となる部署の時代も含め、3年ほど成果が出ていなかった。その結果、当方が転職した翌年には、センターの予算を組み立てることができない状態になった。
そのような状態でも上司は優しかったが、予算を立てられない状態では、その優しさは無意味であった。また、それでも研究ノートへコメントを書く作業を趣味のように続けられており、当方はあせってテーマを見直し組織の組み替え案や企画案を用意した。昭和35年に公開された酸化スズゾルの特許を見つけたのもこの頃である(注)。やがてセンターはつぶれ、他の不採算部門を集めた技術研究所へ改組された。センター長は退職され、次期センター長はスタッフ部長になられた。
P.F.ドラッカー「経営者の条件」(1966)には「仕事上の関係において成果が無ければ、温かな会話や感情も無意味である。貧しい関係のとりつくろいにすぎない。逆に関係者全員に成果をもたらす関係であれば、失礼な言葉があっても人間関係を壊すことはない。」とある。ゴム会社は厳しい会社であったが、今でも人脈はつながっており、このドラッカーの言葉は正しいと思っている。
*高純度SiCのJVを立ち上げるまで、大学の先輩に当たる本部長は大変厳しかった。今なら周囲から何か言われそうな「女学生よりも甘い」という迷言まで飛び出した。その一言で外部へ営業に出かけることになったが、大変勉強になったとともに成果も出た。人脈も広がった。
(注)金属酸化物微粒子をフィルムの帯電防止技術に用いた商品はライバル会社から販売されていた。100件以上の特許も出願されており、新たな技術開発は無理だという判断が転職先では出されていた。転職先ではやや性能が劣るイオン導電性高分子を用いた技術が帯電防止技術の中心であった。
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