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2013.01/13 ホスファゼン

ホスファゼンの研究が最も進んだのは1970年代で、アメリカのDr.オールコックや日本の梶原鳴雪先生らにより精力的な研究が進められ、その特徴や考えられる応用分野が明確になりました。ファイアーストーン社で、耐熱性と耐寒性の優れたホスファゼンゴムが開発され、宇宙船ジェミニに初めて実用化されました。

 

ホスファゼンゴムはシリコーンゴムと同程度の耐熱性ですが、Tgはシリコーンゴムよりも低く、宇宙空間での使用には最適です。また難燃性もシリコーンゴムより高く、おそらく特殊ゴムとしては物性のバランスが優れたゴムだった、と思います。ただ値段はすこぶる高く商業的には成功しませんでした。

 

ホスファゼンは、P=N結合を持つ化合物群の総称で、PNが3つの6員環構造が有名で、無機ベンゼンと呼ばれていました。実際に気持ちの良い独特の香りがしますが、匂いをまともに味わいますとあとでひどい目にあいます。絶対に匂いを嗅いではいけません。

 

面白いのは、ホスファゼンポリマーの高分子量体を得たいときには、この6員環化合物を開環し重合させるルートしかない、ということです。直接ポリマーを合成するルートも開発されていますが分子量を上げられません。また、環状化合物の塩素をすべて有機物に置換した場合には開環重合しなくなります。

 

環状化合物のまま重合する試みもされましたが、開環重合したポリマーよりも耐熱性が低く実用化されていません。しかし、有機高分子を変性するには便利で、様々なコポリマーが検討されました。

 

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カテゴリー : 高分子

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2013.01/12 日中問題の影響

尖閣諸島国有化で勃発した中国の反日運動の影響が思わぬところへ出ている。弊社の中国語関係の書籍にさっぱりお客様のアクセスが無くなったのである。見本だけでも見て頂かなくてはその良さも分かって頂けません。おそらく国内企業の中国見直しが始まっているのでしょう。

 

中国から撤退するのか、チャイナ+1の戦略でいくのか各企業の置かれた状況にもよりますが、今後中国の比重が下がり、ベトナムやインドが注目を集めているとか報じられております。しかし、日中問題が当社の書籍にまで飛び火するとは考えてもみませんでした。

 

さて、中国語基本文型は、国内で販売されている中国語文法を解析し弊社で5文型に体系化したものです。あまりにもきれいに分かれたので近くの大学の中国語の先生に見て頂きましたら、誰でも知っていることです、との回答。それではなぜ体系化された本が売られていないのか不思議に思いましたら教育的配慮との理由です。すなわち中国語を初めて学ぶときに中国語文法をきちんと学んでもらいたいとの考えから、体系化された安直な中国語文法書が発行されていないのだとか。

 

しかし、言葉は覚えて使う世界でもあります。正しく文法を学ぶことを優先するのか、暗記することを優先するのか、の違いともお話ししてて感じました。覚えるには体系的に整理されていた方が便利です。それはその先生も認めてくださいました。そのような経緯の後、出版に踏み切った次第です。中国人の音読の無い無償版も公開していますから、一度ご覧ください。また、ご希望があれば、無償のダウンロード版の配布も考えてみようと思います。何かございましたら弊社までご連絡ください。

カテゴリー : 電子出版

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2013.01/11 Liイオン二次電池のエネルギー密度

Liイオン二次電池のエネルギー密度は、Li金属を負極に用いた時に最も大きくなるが、Liの針状結晶(デンドライト)が負極にでき電池内部でショートを起すので使用することができない。そのため様々な負極が検討され現在に至っている。

 

Liイオン二次電池が初めて上市されたのは1991年ソニーとされているが、1985年にブリヂストンがセイコー電子工業とともに共同開発し上市したのが世界初で日本化学会化学技術賞を受賞している。このあたりの状況を電池開発をやっている人に尋ねると、ブリヂストンの二次電池はコンデンサーに毛の生えた程度のデバイスだから現在の二次電池と異なる、という説明がされます。

 

しかし、これは間違っている。正極にポリアニリン、負極にカーボンを用いたこの電池は、れっきとしたLiイオン二次電池であり、コンデンサーのように大容量の電流を短時間に取り出すことができない。コンデンサーとしての動作ができないのでコンデンサーに毛が生えた程度という喩は間違っている。確かに400Wh/kg前後の世界初と皆が認める電池のエネルギー密度には及ばないが、動作は二次電池である。ブリヂストンの電池の負極はカーボンでインタカレーションで動作していたがエネルギー密度が低かった。これは正極の影響が大きいと推定しているが、2年ほどで二次電池事業から撤退している。

 

おそらくエネルギー密度は400Wh/kg前後が無ければLiイオン電池として認められないのでしょう。昨年上市された合金系負極の二次電池では1000Wh/kg前後のエネルギー密度であり20年前の2倍になっている。ニッケル水素二次電池のおよそ3倍以上である。現在このエネルギー密度がさらに倍の二次電池を目標に開発競争が激化しているのが二次電池の市場の状況です。

 

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カテゴリー : 電気/電子材料

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2013.01/10 スマートグリッドと二次電池

スマートグリッドが提唱されてからすでに10年以上経過した。某ガス会社がオール電化の流れに危機感を持ち、各家庭でガス発電システムを構築するという提案を2000年ころ初めて聞いた。クローズドセミナーだったのであまり注目はされなかったが、燃料電池を使ったそのシステムは魅力的なアイデアだった。

 

各家庭に燃料電池を設置しガスラインに水素を混ぜるのだそうです。ガスはそのまま従来の都市ガス同様に使用できて、もし各家庭の発電量に余剰部分ができたならそれを工場に売電する構想までありました。もしこれが現在実現していたなら、原発0も夢ではなかった、と思われます。

 

当時の技術は、テレビで「エネ***」という商品名で販売されていますが、2000年ころ聞いた話とは少しシナリオが変わっているように見えます。ガス会社が発電事業に乗り出すためには、送電と発電の分離が必要、とも10年以上前の講演では申されていましたがまだ実現していません。

 

ガス会社のシナリオに登場したのは燃料電池でしたが、この電池は触媒燃焼するための白金が不可欠で、資源リスクの問題を抱えている電池です。燃料電池なので二次電池を使用しないシステムを構築できます。現在太陽光発電システムの普及が始まっていますが、このシステムには二次電池が必要です。

 

スマートグリッドは分散発電システムなので、必ず二次電池が必要になりますが、問題は安全性と価格です。昨年NaS電池の爆発事故があり一部で心配されましたが、基本的にエネルギーを貯めるデバイスなので万が一の事故があれば、爆発するのは当たり前です。家庭で使用している1.5Vの乾電池でも使い方を誤れば事故が起きます。原発に限らすエネルギーデバイスは100%安全という保障はできないのです。

 

それではスマートグリッドは社会インフラとして危険なのか、というと、自動車でも飛行機でもすでに危険と隣り合わせの道具を人類は生活の中に持ち込んでしまっています。すなわちどのような二次電池がスマートグリッドに適しているのか真剣に皆で考えなければいけません。危険を前提に生活へ取り込むわけですから、安全に運転できる二次電池システムをユーザーが考える時代ではないかと思います。過去のように、使いながら安全システムを完璧なものにしてゆく時代ではないように思います。すでに危険な道具を使い慣れたユーザーがどこまでの危険ならば許容できるのか、二次電池の危険に関するアセスメントを行う必要を感じています。

 

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2013.01/09 Liイオン二次電池とNaイオン二次電池

Liイオン二次電池の開発競争が激化している。重量容量密度(mAh/g)が1000前後の合金系負極が実用化されたばかりだが、その2倍のエネルギー密度の二次電池の開発競争である。

 

昨年の電池討論会の予稿集を入手してお正月休みに読んでみたのだが、Naイオン二次電池でも現在の合金系のポテンシャルを達成できる技術シーズが揃いつつある。NaとLiの標準電極電位の差は高々0.3Vである。現在のLiイオン二次電池の出力を考慮すると、合金系負極のLiイオン二次電池レベルはNaイオン二次電池でできる可能性がありそうである。

 

もしエネルギー密度が合金系の2倍のLiイオン二次電池が登場したらどうなるか。価格が変わらなければ実質的にコストが半分になった場合と等価か?このような議論は実際には難しい。二次電池メーカーが価格競争をしてくれれば実質的に半分となるはずであるが、おそらく性能が上がった分だけ価格を上げる可能性がある。

 

Liイオン二次電池は現在高値で販売されている。例えばコイン型Liイオン一次電池は100円前後だが、電池容量等を換算してみると、5倍程度の値段がついている。明らかに付加価値がついているわけである。もしNaイオン二次電池で合金系負極と同等のエネルギー密度の電池を製造したら、1/5程度の価格でできるはずで、その価格でLiイオン二次電池の将来価格と比較してみると、充分に競争力のある電池と思われる。

 

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2013.01/08 Naイオン二次電池のポテンシャル

昨年話題になりましたNaイオン二次電池は下期あたりからさっぱり新聞記事に出なくなりました。起電力はじめエネルギー密度は現在最も普及しているLiイオン二次電池並みの性能が出る可能性があり期待しています。

 

現在のLiイオン電池は開発競争が激化し、エネルギー密度はブリヂストンが1980年代に実用化したポリアニリン正極のLiイオン電池の10倍近くになりそうな勢いです。しかし、Li金属を負極に用いることはできないので実際に騒がれているエネルギー密度まではLiイオン二次電池で到達できない。

 

Liイオン二次電池の起電力は4.2Vほど出てもよいはずですが実際の電池に組み上げた時に0.6V前後低くなります。Naイオン二次電池はすでに4V近くの起電力の電池が研究発表されています。

 

エネルギー密度や起電力はLiイオン電池に負けますが、経済性はNa資源が豊富にあるので優れています。また日本は四方を海で囲まれていますのでNaにつきましては無尽蔵にある、と言えます。すなわち経済性の優れた二次電池ができる可能性が高いのです。経済性も性能の一つと思っています。

 

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2013.01/07 二次電池

中国で鉛蓄電池が流行しているという。どこまで信ぴょう性があるかわからない情報なのだが、理解できる現象である。停電対策に二次電池を購入するならば、鉛蓄電池が一番安い。日本で自動車用の鉛蓄電池の値段は結構するが、自動車用品の投げ売り商品として鉛蓄電池が出ていた時にその値段を見てびっくりした。500円を切っているのである。

 

電気自動車の価格の半分以上は二次電池の値段だという。実際に電気自動車に乗ってみると、自動車としての性能は軽自動車よりも足回りが悪い。電気自動車の普及云々という話があるが、やはり自動車は足回りが重要で、運転する楽しみの半分は足回りにある。電気自動車を普及させるためには、自動車そのものにお金をかけられるように、二次電池のコストを下げない限り、普及しないと思う。

 

Liイオン二次電池の価格はLiの値段が影響します。すでにLiイオン二次電池が登場する前よりLiの値段は倍以上に上昇している。Liイオン二次電池の市場は5000億円を超えてしまいましたが、このLiの価格は将来も上がり続けると思います。Liはボリビアとチリで世界の70%以上の埋蔵量を占めている。中国は10%程度で、もちろん日本は1%以下である。

 

日本はLiを輸入しなければならないわけですが、将来を考えると不安です。Liを使用しないならば周期律表からNaが浮かびますが、Naは起電力はLiよりも0.2Vほど低くなる。またエネルギー密度は70%程度などと言われていますが、実際の電池性能は組み立ててみなければわからない部分もあります。

 

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カテゴリー : 電気/電子材料

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2013.01/06 名探偵ホームズ

探偵ホームズシリーズのほとんどの作品は、ワトソンを語り手としてベーカー街で始まり、そこへ依頼人が登場し、謎(問題)が提起されます。依頼人の説明が終わったところで、探偵ホームズとワトソンは、分析と調査に乗り出し、それが依頼人の持ち込んだ問題の解決へつながる、というパターンです。もし、最初のトライでうまくゆかない時には、ベーカー街の事務所に戻り、依頼人から再度話を聞くか推理をやり直します。

 

シャーロッキアンの好きな短編リストの上位に入る「赤髪組合」では、依頼人の相談内容が極めて不思議な相談であったため、正しい問題は他にあるのではないかと探偵ホームズは調査を進めます。しかし、それを発見した後、事件解決の準備のためワトソンと現場で別れますが、その後の待ち合わせ場所は、やはりベーカー街になっています。

 

すなわち探偵ホームズは、ベーカー街で問題設定し、分析的思考で推理を進め問題解決する、という現在普及している科学的問題解決方法の典型プロセスで事件を解決していきます。このような物語展開の中で、読者はワトソン役になり、探偵ホームズから提供される分析や調査の結果を基に謎を推理し考えることになります。探偵ホームズシリーズが現代でも愛読される理由は、このような一般的に用いられている科学的な問題解決パターンで話が進められている安心感と読者の「解く力」とのバランスが良いためでしょう。

カテゴリー : 一般

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2013.01/05 樹脂の靱性

射出成形や押出成形、あるいはブロー成形において使用される樹脂には、耐候剤や難燃剤などの添加剤が必ず添加される。また導電性や熱伝導性を上げるために無機フィラーを添加する場合もある。

 

こうした添加剤の影響で樹脂本来の性質は変化する。樹脂がポリマーアロイであっても同様である。ポリマーアロイの場合には相分離構造も影響を受ける場合も出てくるので単一組成の場合よりも複雑になる。

 

添加剤による物性変化で見落としやすいのが靱性のわずかな変化である。たとえばアイゾットやシャルピーなどの衝撃試験を行い、規格値に入れば安心する。衝撃試験などはばらつきが大きい試験なので、多少平均値が下がっていても規格値内ならば問題としない場合が多い。

 

しかし同一条件で成形体を製造したのに物性が変化するのは、何か原因があり、その原因を明らかにしておかなければならない。樹脂を自社で成形している場合には問題が起きる確率は低くなるが、コンパウンディングした会社から外へ出た瞬間に問題が起きる確率が高くなる。

 

靱性は把握しにくいパラメーターではあるが、他の力学物性の動きと組み合わせてみるとおおよその理解ができる。例えば靱性が低下した場合には、強度も低下しているはずである。SSカーブには強度低下に対する靱性の効果の情報が表れている。しかし靱性が低下しているのに強度が上がっている場合がある。多くは弾性率が変化している。問題は弾性率がどうして変化したのか、という原因である。

 

添加剤による靱性のわずかな変化は、ばらつきの中に隠れてしまうことが多いが、お客様のところで大きな変化となって現れることがある。実験室で原因を把握しておかなければ、致命傷となる場合もある。ばらつきの大きい評価方法しか知られていないので注意が必要である。

 

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カテゴリー : 高分子

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2013.01/04 伸長流動装置

20世紀末にアメリカのウトラッキーにより、伸長流動装置が開発された。それは二軸混練機の先に取り付けるだけで、樹脂に効果的な伸長流動を発生させ、ナノオーダーの高次構造を作り出す装置です。

 

21世紀に入ると、高分子精密制御プロジェクトが国研で推進されこの装置も検討された。しかしこの装置は、大量の樹脂を流すことができず、生産性が悪いので普及しなかった。このプロジェクトではL/Dの大きな二軸混練機や高速剪断装置も検討されたが、いずれも実際の生産に用いられていない。

 

伸長流動というのはお正月に食べるお雑煮の餅を食いちぎる時のようにながーく引き伸ばされて切れる状態と同じように進行する剪断流動と並んで重要な混練プロセスで発生する力です。剪断流動が引きちぎられるような状態であるのに、伸長流動はながーく引き伸ばされなければならないので、この感覚表現だけでも、効率が悪いプロセスになることは想像がつきます。

 

剪断流動のほうが効率よく混練できることは昔からわかっていましたが、高分子の高次構造がミクロンオーダーまでの混練しかできないので、伸長流動に注目が集まったわけです。しかし、国研で同時に検討された高速剪断装置ではナノオーダーの構造が達成されていましたので、剪断流動だからナノオーダーの構造を作れない、というわけではないのです。

 

装置を工夫して高速剪断装置と同じような機構を効率よく実現すれば、ナノオーダーまで混練できる量産装置ができます。5年前すでにその1号機は稼働し量産に使用されており、20世紀に開発されたどのような量産型混練機を用いても達成できなかった混練レベルを量産機で達成しています。

 

高分子材料のツボには、これまで公開された先端の混練技術の一つカオス混合として紹介しております。ご興味のある方はそちらをご覧ください。

 

 

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カテゴリー : 高分子

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