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2014.01/30 理系女子の大発見

朝、ビッグニュースが飛び込んできた。

体の細胞に酸性の溶液で刺激を与えるだけで、人工多能性幹細胞(iPS細胞)などと同様、あらゆる臓器や組織になれる「万能細胞」を作ることに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市中央区)などのグループがマウスの実験で成功した。作製に2~3週間かかるiPS細胞に対し、最短2日間ででき、成功率や使う際の安全性も高いという。効率の良い万能細胞の作製に加え、生体内での臓器再生や細胞の若返りなど、医療の新たな応用に期待が高まる、という。

 

発見者は、理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーだ。今AKB48と同様にブレークしているリケジョだ。「刺激惹起性多能性獲得細胞(STAP)細胞」と名付けられたその細胞は、外からの刺激で多能性を与えることができる。さらに研究が進めば、機能の分化も外部刺激で制御できるようになるかもしれない。

 

この大発見の面白い点は、まだ科学で明らかになっていない分野における発見である点だ。柔軟な発想で大発見できた、とどこもが大ニュースで伝えているが、その柔軟な発想を技術者ができるようにする一つの方法が弊社の提供する研究開発必勝法である。

 

発見者の「リケジョ」は泣いたこともある、と記事に書かれている。恐らく科学的にできると保証されていない方法をただひたすら自分を信じて実験を進めたに違いない。もし科学的に明らかな方法であれば山中先生もその方法を試しただろうと思われる。

 

その山中先生は、実験を担当した大学院生の大胆な実験の提案を受け入れ実施しノーベル賞を受賞した。受賞するまでその方法は特許でも公開しなかった、という。特許ではヤマナカファクターの権利を確保すれば良いのだから、「驚くべき方法」で見つけた、と書けば良いのである。

 

山中先生がNHKの放送で明かされたiPS細胞発見にいたる戦略は弊社が販売している研究開発必勝法プログラムで立案できる。また、弊社のプログラムは、そのような戦略を導き出すための方法である。

 

科学的にサポートされた問題解決の方法にはTRIZあるいはUSITがあり、退職まで勤務した元写真会社で導入され、現場では面倒な方法で進めて当たり前の解しか得られない、との評判である。冷静に考えて欲しい。もし科学的に不明な解が、真理が一つである科学的方法を忠実に実行する問題解決法で得られるのかどうか、ということを。

 

TRIZやUSITを使って当たり前のこと以外が出てきたのなら、それは使い方が間違っているのである。TRIZやUSITは、50年以上前にロシアで開発された科学を忠実に再現する問題解決法である。定年前に担当したPPSと6ナイロンの混合されたコンパウンドを用いて半導体ベルトを製造する方法についてUSITで解いたところ、すでに担当者が実行し失敗していた方法しか解が得られなかった。

 

科学の時代では、誰でも最初に科学的に自明な方法を試すのである。そしてうまくゆかないから新たな発想が求められるのである。その新たな発想に科学をトレースするTRIZやUSITを用いることが適切であるかどうか考えて欲しい。科学を理解していない人には科学から得られる結論も必要なのでTRIZやUSITは少しありがたく写るのかもしれない。

 

弊社の問題解決法で解が得られたが周囲では「怪しい方法」と言う人もいたので単身赴任しその解を信じて技術を完成させた。ゴム会社から転職して20年間、「怪しい方法」と言われながら実践の場で活用し、科学で不明確な分野で技術成果をあげ日本化学協会や写真学会から賞を頂く成果もあげた。その基になったのは日本化学会化学技術賞を受賞した「高純度SiC技術」の企画開発手法である。

 

カテゴリー : 一般 宣伝

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2014.01/29 ケミカルアタック(1)

ケミカルアタックという名称は現象をわかりにくくする名称である。樹脂にオイルなどの「ケミカル製品」が付着し、それにより膨潤して、あるいは樹脂内部の添加剤が物理的影響を受けて樹脂が破壊に至る現象で、何も問題が無い状態における破壊応力よりも30%以上低い応力で材料が破壊する、化学的現象というよりも物理的現象と捉えた方が良いかもしれない。

 

ケミカルアタックに初めて遭遇したのは小学生の頃である。プラモデル(「スーパーカー」というTV番組に登場した車)の自動車を組み立てて遊んでいたら、ギアボックスがはずれ壊れた。組み立て方法には、ギアボックスがスムーズに動くようにグリースを濡るように説明されている。そのグリースがギアボックスを支えていたボスに付着し、ケミカルアタックでボス割れを引き起こし壊れたのだ。

 

ギアボックスはモーターの動力をタイヤに伝える機能があり、常に応力がかかっている。ギアボックスは、ねじ釘でボスに固定されていた。今から考えると組み立て説明書が悪い、ということになる。また添付されたグリースもケミカルアタックを考慮されたグリ-スでなかった。

 

グリースに問題があるが、なぜ組み立て説明書が悪い、という結論をくだしたのか。ケミカルアタックの説明がされていなかったからだ。ケミカルアタックの問題は、このような問題なのだ。すなわち科学的にはケミカルアタックを起こさないグリースに変更すれば解決がつくように見える。しかし、添付されたグリース以外の油をユーザーが使用する可能性もあり、その注意を喚起するように対策を打たなければ防ぐことはできない。

 

すなわち科学だけでケミカルアタックを捉えると実技で失敗する問題である。それではケミカルアタックという問題はどのような問題なのか改めて考えてみる(続く)。

 

 

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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2014.01/28 科学的に明確でない問題を解く方法

高純度SiCの合成方法は1983年に生まれた。そしてその合成方法は6年間という開発の死の谷を乗り越えゴム会社で事業化され現在まで続いている。しかし1980年代にシリカ還元法の反応機構が明確になっていたわけではなく、さらに前駆体の合成条件に至っては、高分子の相溶で有名なフローリー・ハギンズ理論で否定される反応だった。

 

ところがこれらの科学的に明確になっていない問題を解き1週間で製造技術を創りだした。この例に限らず、最近ではノーベル賞を受賞したヤマナカファクターの発見も同様にiPS細胞を製造する因子発見という科学的に明確になっていない技術を創り出した例がある。

 

科学的に明確な問題は、科学的に解いてゆけば必ずゴールにたどり着ける。しかし、科学的に不明確な、あるいはできるかどうか分からない問題をどのように解いたらよいのか。一度科学的に不明確な問題を技術で解く経験をするとその一般則が見えてくる。

 

ただし誰でも見えてくるのではなく、科学と非科学を明確に意識して解いたときにおぼろげながら見えてくる。そしてそれを数回経験すると科学的に解決が難しい問題でも技術で解く事ができる自信が生まれる。

 

マッハは「マッハ力学史」の中で、科学的に明確になっていない問題を解く方法を示している。またイムレラカトシュは「方法の擁護」で、科学で容易にできるのは否定証明だけ、と明快に、科学的に不明確な問題を科学で説くのは難しいことを述べている。

 

弊社では、科学的に明確ではない問題を解く方法を指導しているが、この方法は科学的な問題でも解くことができる。ご興味のある方は問い合わせて頂きたい。この方法についてはゴム会社で経験を積み、写真会社でリーダーの立場で当時は専門外であった領域(注)で実践したところ多くの成果を出すことができた。

 

退職後、写真会社で実践した方法を豊田中研を退職されコンサルティングをされている方にお話ししたら、その方法は「マッハ力学史」に書かれている、と教えられた。あわてて「マッハ力学史」を書店で探し英語版を見つけて読んだら、確かに一部書かれていた。

 

そこで改めて世間の問題解決法について勉強しなおしまとめたのが弊社の研究開発必勝法プログラムである。

 

(注)転職当時はセラミックスや無機材料の専門家として活動していた。その後取得した学位で論文の半分は高純度SiCに関するテーマで単結晶に関しても少し触れている。写真会社では高分子技術の開発を担当した。20年間担当した結果、高分子の専門家としての執筆依頼や講演依頼が多い。来月2月には技術情報協会から依頼され高分子の難燃化技術について考え方を中心に講演する。また6月には高分子学会から招待講演を依頼され混練について講演を行うが、無機材料から有機材料まで、あるいは高度なノウハウが要求される分野まで弊社の問題解決法は何でも対応できます。

 

カテゴリー : 一般 宣伝

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2014.01/27 冷凍食品農薬混入事件

マルハニチロホールディングスで起きた冷凍食品農薬混入事件について犯人が逮捕され社長が辞任した。このような事件は日本では起きなかった、時代の流れ、という論調の記事が以前あった。また、この数日の新聞の論調には派遣社員が諸悪の根源のような記事もある。原因はいろいろあるだろうが、かつて企業内事件の被害者の立場から企業の風土が抑止力となる、健全な企業経営が重要である、という点を指摘したい。

 

おそらく今回の事件について犯人から事情聴取を行い、犯人の性格分析その他から事件に至った経緯と原因が説明されるだろう。しかしこのような調査分析から解析が難しい因子がある。企業風土である。職場環境についてはヒアリングなどの状況証拠で原因の幾つかが見つかるかもしれないが企業風土については難しい。

 

人間の行動や心理について科学的な研究が進んでいる。マズローの欲求五段階説などは、その一つの成果である。また、ドラッカーの著作は知識労働者がどのように社会に貢献したらよいのかを示した成果と読むこともできる。今回の事件もこれら成果から多くの学者がコメントを述べるだろうが企業風土の観点から考察できる学者はどれだけいるだろうか。

 

12年勤務したゴム会社は創業者の伝説が今でも生きている健全な企業風土の会社である。またその企業風土を信じることができたので、FDを壊された被害者でありながら誠実真摯に判断して事業を他の人に託し会社を去ることにした。そして高純度SiCの事業は今でもその会社で継続されている。健全な風土の会社でも大きなアメリカの会社を買収し、その負担から会社の建て直しを強引に進めなくてはいけない状況で従業員まで犠牲を強いるような事態になれば、職場環境が歪みおかしな事件も起きるのである。

 

しかし、もともと健全な企業風土の会社なので新聞沙汰になった事件が発生したところで社長が辞任し、昔ながらのすばらしい風土の会社に現在は回復している。サラリーマンは不測の事態に遭遇したら頭を隠してじっとしているのが一番、といった母の教えは健全な企業風土の会社では正しかった、と思う。すなわち創業者の伝説と健全な企業風土がある限り、いずれは改善されるからである。

 

昨今ブラック企業が騒がれておりその内容を読むと企業風土など念頭にない会社もあるようだ。一度良い企業風土の会社に勤務した経験があるとブラック企業という存在およびその経営者の感覚を理解できなくなる。今回の農薬混入事件では社長が辞任し新たな経営者になるが、その経営者に提案したい。企業風土の見直しに取り組まれてはいかがか。

 

 

 

カテゴリー : 一般

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2014.01/26 高純度SiC(9)

高純度SiCをフェノール樹脂とポリエチルシリケートから製造する技術は、前駆体の合成から高純度SiCの合成成功までたった4日でできあがった技術である。現在の製造方法は有機酸触媒が当時のスルフォン酸系からカルボン酸系に変更されたくらいである。

 

さらに技術構想や綿密に練られた事業シナリオが最初にあったわけではない。フェノールフォーム天井材の開発テーマが完了したときに、大量のフェノール樹脂を処分するつまらない作業を面白くするために遊びでフェノール樹脂のネットワークに分子レベルのシリカ成分を固定する作業をしていて思いついた。

 

たまたま世間でセラミックスフィーバーが起こり、会社の事業方針にファインセラミックス事業が設定され、無機材質研究所に派遣される、という状況で鼻歌まじりにゴミ捨て作業をしていた過程で技術シーズが生まれた。鼻歌を歌いながらSiCダイオードはじめ新規事業を推進する姿を想像しながら楽しんではいたが興奮するようなレベルまで至らなかった。

 

高純度SiCの事業をライフワークとして決意したのは無機材質研究所のI先生始め多くの先生方が真っ黄色のSiCをご覧になられて驚いたからである。1年前の白日夢が現実になったのである。留学前に無機材質研究所長と高純度SiCの事業の夢を語りあっても動機づけにはなったが、黄色い粉を見たI先生の「君はすごいよ」という一言ほどのインパクトは無かった。

 

もっともI先生の御指導を受けるためにI先生に高純度SiCの夢を入所前の面接で語ったが、語る本人も夢として語り、聞かれているI先生も若僧の背伸び程度に捉えていたと思う。ただ、実験に成功してからは、事業シナリオだけでなく学位取得に向けて研究シナリオも真剣に考えた。もしゴム会社で相手にされなかったとしても当時の状況から高純度SiCの技術を事業化したいメーカーが声をかけてくれる可能性が高いと期待できた30年前のことである。

 

Lely法は昔から知られており、SiCダイオードを開発するためにはSiCの結晶成長機構を解明する必要があった。当時諸説あったシリカ還元法の反応機構を解析すれば、ヒントが得られるのではないかと考えた。当時知られていたイビデンの縦型炉よりも高純度化に優れた電気炉を開発しなければならないと思った。一ヶ月ほどでおもしろい技術シナリオを作り上げることができたが、ゴム会社の研究所の管理職からは評価されなかった。

 

当時の人事部長はじめ本社の方々のご尽力がなければ、社長へ直接プレゼンテーションを行う機会も生まれなかった。周囲の方々の期待と努力を感じたのでゴム会社のためにJVを立ち上げるまで6年間頑張ることができた。そのため、研究所でFDを壊されるという妨害を受けたときに犯人捜しをしたことを今でも悔やんでいる。

 

長いサラリーマン生活で不測の事態が生じたら頭を隠して災難が通り過ぎるまでじっとしているのが一番である、と母親から教えられた。しかし研究の妨害をする犯人を黙認して許すことができなかった。静かにしていたら一度ならずも三度壊してきたのである。しかし企業内のこのような事件はうやむやになり、騒いだ人間が損をするのが日本社会である。事件を公にした結果ライフワークを諦めなければいけない事態になった。その数年後、この事件とは別の管理職による社長室乱入割腹事件がゴム会社で起きた。この事件は転職先の会社で臨時ニュースを見て知った。衛星放送でケネディー暗殺のニュースが伝えられたときよりもショックであった。

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料

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2014.01/25 高純度SiC(8)

高純度SiCの最もホットな用途は、SiCウェハーの原料である。SiCウェハーは、パワー半導体用基板として6インチウェハーが販売され、その競争は激化している。一年半前ゴム会社はSiCウェハー事業から撤退した。このニュースは、世界的に買収競争が激しくなっていた時期だけに驚いた。この分野ではトップのCree社と新日鉄住金が国内で提携したニュースが流れた直後だった。

 

SiCウェハーは、改良Lely法で主に生産されているが、新しい方法として液相から結晶成長する製造プロセスやCVDと同様の方法が知られている。液相から製造する方法は開発途上だが、結晶成長速度は改良Lely法並の1mm/hまで到達した。

 

改良Lely法では、昇華させるSiCに高純度原料を必要とする。この原料にはゴム会社で開発された高純度SiCの製造方法が最も経済的な方法として知られている。原料はフェノール樹脂とポリエチルシリケートであり安価である。さらに、昇華しやすい超微粒子をカーボンでサポートした原料も製造可能で改良Lely法の原料として優れている。

 

また、改良Lely法で種結晶の設置位置を上部ではなく下部にした製造方法の特許がゴム会社から出願公開されたが、これは結晶成長に必要なガス濃度の制御のしやすさも改善され良い方法である。ただ技術的な難しさは、上部に昇華させる原料を成形して設置しなければならない問題である。しかし、この問題も前駆体高分子を用いる高純度SiC製造方法であれば容易に解決できる。

 

このように現在SiCウェハー製造方法として主流の改良Lely法はノウハウの蓄積によりさらに改良され、液相法など新しい方法が登場してきてはいるが、まだ改良の余地があり技術の発展が期待される方法である。

 

液相法であるが、これはSi溶液にCrなどの金属を溶解させカーボンの溶解度を上げた液相を用いるが、Siウェハーと同様に種結晶を回転させて結晶成長させる。最近その回転を100rpm以上の高速で行うと成長速度が速くなるという技術が発表された。液相法は新日鉄住金が先行しているが将来改良Lely法を凌ぐ方法にまでなるかどうか不明である。理由は、結晶成長させる温度が100℃程度低いだけで高いエネルギーを必要とする。

 

しかし、技術開発では、際だった特徴が見つかると一気にその方向へ動くので、液相法も含め他の結晶成長技術から目が離せない。このような技術の過渡期にゴム会社が撤退した判断は、勇気ある正しい判断だったのか。ただ、開発の進め方として、半導体冶工具ではS社とJVですばやく事業立ち上げを行っているのに対し、SiCウェハーの開発では技術が先行しながらなかなか市場に出てこなかった不思議な戦略だった。学会賞の受賞でSiCウェハーの技術を公開していたにも関わらず、市場展開を積極的に行わなかったのが不思議である。

 

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料

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2014.01/24 高純度SiC(7)

前駆体を用いたシリカ還元法では、反応速度の解析により拡散律速でSiCが生じていることを示すことができた。有機物前駆体を炭化して得られた混合物を分析したところシリカとカーボンの混合物であることもわかっていた。ただシリカ粒子の大きさはナノオーダー以下(分子レベルと推定)で高解像度の電子顕微鏡観察(TEM)を行ってもシリカ粒子は見えなかった。

 

また恒温測定による熱重量分析で得られた重量減少曲線には、核生成過程と推定される重量減少が生じない時間が観察され、Si-Oの熱運動で構造が変わり、それが核に生成しているらしい様子まで現れていた。この生成した核へカーボンが拡散しCOを発生しながらSiC化してゆくのである。あるいは、拡散しているのはOやSiである、という議論も当時行っている。

 

恒温測定で得られた値、さらに精度をあげるため等速昇温測定まで行って得られた値などを比較し見積もると、400kJ/mol前後というカーボンの活性化エネルギーに相当する値が見積もられたので、この議論ではカーボンが拡散しているという結論になった。

 

この結果はSiCウェハーの製造に一般的に用いられている改良Lely法にも参考になる。改良Lely法で発生しているガス成分を調べると、SiやSi2Cであり、このまま析出したのではカーボンが不足する。しかし、反応をカーボンルツボ中で行っているので周囲にはカーボンが豊富に有り、活性化されたカーボンが拡散し結晶成長に使われていると思われる。すなわち、改良Lely法ではこのカーボンの拡散に着目したアイデアが重要で関心のある方は問い合わせていただきたい。

 

高純度SiCを有機物前駆体で製造するにあたり、その品質管理を熱重量分析で行う事を思いついたのだが、研究を進めたところSiCの結晶成長のヒントまで得られた。当時シリカ還元法のSiC化の機構では、気相のSiO生成が重要視され、カーボンを大過剰に用いるとともに、それをペレット化し、SiOガスが無駄にならないようにすることがノウハウとして知られていた。

 

しかし、新たに考案されたフェノール樹脂とポリエチルシリケートから製造される有機物前駆体を用いるとシリカとカーボンが化学量論比において反応させることができる。さらに従来法で悩まされていたウィスカーの副生も無い。3Cタイプの結晶だけを選択して製造することが可能である。

 

さらに分子レベルのSiCが分散したカーボンまで合成することが可能で、これは改良Lely法の最良の原料となる。面白いことに1700℃以上2000℃未満では、3Cのみ生成する。ただしこの温度領域でできる結晶の最大粒径は、4時間反応させても500ミクロン前後である。

 

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料

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2014.01/23 高純度SiC(6)

シリカ還元法の反応速度論を研究するには、1600℃以上の高温度で恒温測定が可能な熱重量天秤が必要になる。1600℃から2000℃の分析装置を設計するときに困ったのは部品の材料である。この高温度に曝される材料に酸化物を用いることはできない。理由は酸素の拡散が生じ反応に影響を与えるためである。

 

カーボンが最も安価な材料で加工しやすいが強度が不足する。試料セルだけ加熱でき、周囲の部品が1000℃未満であれば、石英やアルミナを周囲の部品に使用可能である。なんやかんやと30年以上前に真空理工(株)の担当者と議論し、YAGレーザーで加熱する方式を考案した。

 

すなわち光熱変換して加熱するのである。電気ヒーターとの違いは、電気ヒーターでは、電極を通じて熱が伝わるので周辺の設計が難しくなるが、レーザー加熱ならば高温度になる領域を試料系だけにできる。実際に組み立てて実験を行うと熱量が不足し温度が1500℃まで上がらない。

 

そこで赤外線イメージ炉との組み合わせで加熱する方式を考案した。赤外線イメージ炉で1000℃前後まで雰囲気を加熱しておき、試料セル近傍だけを1秒以内に2000℃まで昇温することに成功した。恒温測定を行うには十分なスピードである。

 

完成した熱天秤は、汎用の熱天秤の3倍の大きさになった。レーザー発信器や安全なエリアを確保するために装置が大きくなった。しかし、苦労した甲斐があり、実験データは狙い通りの結果が得られ、前駆体の品質評価に使用可能である。当時室温から2000℃まで加熱重量減少を計測可能な装置がなかったので特許出願まで行った。

 

この熱重量天秤を用いたSiCの反応速度解析では予期せぬ実験結果も得られた。すなわち前駆体の高次構造が異なると反応機構が変化する。SiOが関与する2段階反応はともかくもアブラミの式で整理できない反応も観察された。

 

詳細は省略するが、前駆体が均一にできていれば、均一素反応で反応が進行するが、前駆体が不均一の時に2種以上の反応機構が存在することも分かってきた。この装置を用いた反応速度論の論文を10年後発表したが、この論文についても苦い思い出がある。論文を見て頂けば分かる。

 

 

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2014.01/22 高純度SiC(5)

フェノール樹脂とポリエチルシリケートを用いた高純度SiCの前駆体合成法は、第三者から見ると簡単に見える。しかし、ノウハウの塊で同じような反応物ができても良好な前駆体が合成されたわけではない。それでも1600℃以上で熱処理すれば高純度SiCとなり、問題が無いように見える。しかし、良好な前駆体を用いると粒度や結晶化度まで揃った高純度SiC粉末になる。

 

この技術を20年前学位論文にまとめたが、前駆体のノウハウについて記載していない。良好な前駆体ができたところから論文は始まっている。良好な前駆体を用いると均一素反応の取り扱いができ、SiC化の反応解析をできるのである。すなわち良好な前駆体とは、フェノール樹脂とポリエチルシリケートが分子レベルで均一に合成され、1000℃で熱処理を行ったときには、シリカとカーボンが分子レベルで化学量論的に均一に混合された状態を作り出す前駆体である。

 

この前駆体ができるまで、シリカ還元法によるSiC化の反応機構ではSiOの関与が示されていたが、良好な前駆体ではSiOを経由せず、直接SiC化まで進行することが解明された。すなわち、SiCの結晶成長はシリカを核として生じる。そしてSiC化の反応は拡散律速過程で進み、反応しながら結晶成長が進む。これはレーリー法でSiCウェハーを製造するときと同様の機構である。昇華法で結晶成長させるときには核がシリカと異なるだけである。

 

この研究成果を利用すると前駆体の品質管理が可能となる。すなわち良好な前駆体の場合にはSiC化の反応がアブラミの式で示される重量減少のプロファイルを示すが、うまく合成されなかった前駆体の場合には、従来のシリカ還元法の反応機構で反応が進行する重量減少を示す。

 

不良品ではどこが問題になるのか。それは不良品の状態によるが、1.副生成物としてウィスカーが生成、2.粒度分布が不均一、3.不純物酸素が残るなどの問題がある。このなかで3は、SiCウェハーの原料として使用するときに問題となる。

 

すでに基本特許の権利が無くなった技術であるが、多くのノウハウのためこの技術を実施している企業は少ない。特許情報によると某セメント会社はアルコール溶媒を用いて前駆体合成を行っているようだが、無溶媒で行う技術を開発できなかった可能性がある。

 

溶媒を使用すると経済性が悪くなる。本前駆体の原料価格は量産レベルで驚くべき低価格となる。ポリエチルシリケートは高純度であればゴミのシリケートでよく、フェノール樹脂もその原料は100円以下である。SiCウェハーの原料となる高純度SiCを、原料調達手段と合成ノウハウさえあれば、驚くべき低価格で合成できる。

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2014.01/21 高純度SiC(4)

SP値あるいはフローリー・ハギンズのχは、二種の高分子の混合状態を予測するときに用いられるが、混合しようとする系で反応を伴うときには、これらの理論は当てにならない。リアクティブブレンドでもこれらのパラメータは重要だ、と言われるが、重要視しすぎるとアイデアを否定するパラメーターとなる。これらのパラメーターを扱う時には少し経験が必要である。

 

液状のフェノール樹脂にSiOユニットを含む様々な化合物を分散しながら、フェノール樹脂が固まるまでの変化を観察した。同じような大きさのχなのに樹脂の中のドメインサイズが様々に変化する。それが目視で分かる程度の変化である。シリカのドメインサイズの大きいフェノール樹脂の中には空気中で燃え続ける組成も存在した。

 

ミクロンオーダーのシリカ粒子の分散ではフェノール樹脂の難燃性を改善できないことが分かっていたが、すべて空気中で自己消火性を示した。空気中で燃え続けるフェノール樹脂は、廃棄物処理の実験で初めての体験である。シリカの分散状態で難燃性が大きく変化する現象を観察して、これをSiC合成の前駆体に用いることとその反応機構を解析すると前駆体の品質管理を容易にできる、という2つのアイデアが同時に浮かんだ。

 

開発テーマが終了し、不要となった材料の処理を行いながら面白いアイデアが浮かんだので処分に手間をかけて良かった。また、フェノール樹脂とポリエチルシリケートの混合は、うまくゆかなかった経験があり諦めていたが、放置しても5時間程度は相分離しない液体が得られたり、透明のまま固化した組み合わせが得られたり、予想以上の実験成果がでた。

 

再現性の問題や、材料の同定など行っていないので研究発表できるレベルの成果ではないが、フェノール樹脂と珪素成分を含む材料との混合について概略の傾向を把握する事ができた。しかし、概略の傾向であって、実験結果を統一的に説明できる成果では無い複雑な点が多い。おそらくその目的のために実験計画を組み実験を行っても見落とす可能性が高い。

 

この廃棄物処理の実験の半年後、同様の実験を行うことになるのだが、この日の実験の再現性の無さに悩まされることになる。すなわち同一条件でフェノール樹脂とポリエチルシリケートを混合しても相分離し、シリカが析出したのだ。

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