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2013.03/25 働く意味

労働環境が厳しさを増している、という記事が多い。WEB上にはソニーの中高年リストラの現場やユニクロの状況を問題として提起した記事がみられる。しかしこれらの記事を冷静に読むと少しおかしい、と気がつく。すなわち経済原理に基づき経営の効率化を進めるならば、当然経営側から出てくる手法であり、労働者側は働く意味をよく考え、その時に備え準備していなければならない。

 

ソニーについては「東京キャリアデザイン室」が問題となっている。記事を読む限り、企業で働く場所が無くなった、すなわち貢献できなくなった社員が新たな貢献する場所を見つけるために自主学習をする場所と説明されている。記事を読む限り大変恵まれた施策である。何を勉強していても、生活保護よりも多い最低の給与が保証されているのである。

 

かつてブリヂストンでリストラのために同様の施策が座敷牢として新聞に紹介されたことがあった。20年ほど前のバブルがはじける直前のことである。世の中がバブル景気にわいているさなかにリストラをやったので新聞で騒がれたのだろう。しかし社内では新聞ほどの騒ぎにはなっていなかった。また多くの社員も新聞のようなとらえ方をしていなかった。当方など新聞の取り上げ方を迷惑に感じていたほどである。ただし社内風土に劣化が始まっていた。

 

数年後とんでもない事件が起きた。子会社へ派遣されていた管理職による社長室乱入腹切り事件である。リストラにより悪化した風土の結末である。実は当方はその事件が起きる前にある事件に巻き込まれた。臥薪嘗胆死の谷を6年間歩き社外とのJVを開始するなど当方が成果をあげはじめていた時なので明らかに嫌がらせととらえ、事件の状況を上司に報告した。しかし事件として取り上げてもらえず、事件を公にした当方が会社を去ることになった。ブリヂストンの社内風土がおかしくなっている、という警鐘をならす気持ちもあった。

 

当方は半導体用高純度SiCや電気粘性流体の開発を担当していたので無機材料の専門家として位置づけられていた。当時バブルがはじける前で無機材料関係の会社から良いお話を幾つか頂いていたが、仕事の内容が重複しない高分子技術を担当する会社へ転職を決めた。これまでのキャリアを捨て再度勉強をし直さなければいけない不利な条件ではあったが、会社への貢献を第一義に考えた選択であった。

 

ブリヂストンという会社の基本的風土は創業時の伝統を大切にしているチャレンジ精神あふれる会社であり好きであった。しかし、そこで働けない状況が生じたので不利な状況でも会社を去る選択をしたのである。

 

企業と個人の関係には様々な考え方があるが、現在の社会のシステムではその会社で貢献できない社員は会社にとってお荷物であることを個人としてまず認識しなければならない。それを誰が決めるか、と言ったときに自己責任の視点から自分で決めるのが幸福である。

 

自分がどの程度会社に貢献できるのか考え、貢献度が不十分であればいずれ会社から退職勧奨がある、と考える。退職勧奨が来る前に会社から身を引く、という心がけは大会社に勤める社員ほど重要である。貢献も満足にできず会社にぶら下がって生きるのは、会社にとって迷惑であるが、ぶら下がっている本人も惨めではないか。日本の大会社の給与が半分になったとしても20年以上勤務していたなら生活保護よりも金額は多いはずで、惨めな気持ちで会社に勤めるよりも元気よく清貧な暮らしの方が実は幸せなのである。

 

会社で働く、とはその会社へ貢献することである。会社に貢献している人を大切にし、貢献していない人をどのように扱うかは会社の風土による。その風土がおかしくなれば信じられない事件が起きる。貢献場所を見つけるために、あるいはキャリアを磨くためにソニーのキャリアデザイン室は「社員に優しい」施策に見える。もしそれが社内風土を変質させ不幸な事件が社内に起きたならば、経営陣はその施策をとったことを反省し責任をとらなければならない。その覚悟の上での施策に思われる。

 

一番の問題は当事者が会社をどのようにとらえるかである。会社を辞めたいが辞めたら生活ができない、というのは政治の問題である。新しい貢献のできる場所へ移動しやすいような社会システムがまだ不足している。転職すると給与が下がるから嫌だ、というのは、大卒の就職率が100%を切っている現在の社会状況を考えたら我が儘、と思わなければならない。やや厳しい考え方かもしれないが、日本社会の変革の過渡期であることを認識し述べた。このような過渡期では中高年はどのような社会貢献ができるかを真摯に考えなければいけない。今若者の雇用を増やすことが一番大切なことである。ささやかであるが弊社もそのために頑張って新しい企画を準備中。

 

 

 

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