田口メソッドと書くのは間違いである。「タグチメソッド」とカタカナで書くのが正しい。田口先生から3年間直接ご指導を受ける幸運な機会に恵まれたが、田口メソッドとレポートに書いて叱られた思い出は強烈だった。
田口先生は、1979年に「実験計画法」と言う本を書かれている。87年にはその改訂版が出ているが、ばりばりの実験計画法の著書であり、そこに数ページだけSN比について説明がある。
この本を読むとタグチメソッドの生み出された背景をよく理解できる。当方は79年にゴム会社に入社し、日本科学技術連盟のBASICコースで1年学び、実験計画法を業務に導入して使っていたが、BASICコースで学んだ方法でなかなか良い成果を出せなかった。
理由は、最適条件がよく外れたためである。当方は日本科学技術連盟で教えられた方法を忠実に守り実験を行ってきて、科学こそ命と妄信している研究者集団の研究所で笑われたりしている。
このゴム会社の研究所では、統計手法さえその導入普及が難しかったアカデミアよりアカデミックな風土だった。当方はそのような風土の中でむしろかたくなになり、統計手法や数理モデルによる問題解決に傾倒していった。
その時実験計画法を行う時に外側へ相関係数を配置すると最適条件がよく当たるようになることを発見した。田口先生のように直交表の研究からのアプローチではなく、周囲からの嘲笑が引き金となった成果である。
この方法は、感度を外側因子として配置し、実験計画法を行うので、SN比を直交表の外側因子に配置する二段階のパラメーター設計を特徴とするタグチメソッドとは異なるが、機能を向上する最適条件を求める点では共通している。
但し、研究所では、効率を上げるための実験計画法で実験数を増やしているバカと陰口を言われたが、田口先生にこの手法をお話しした時に褒めていただいた。
その時に田口先生からは、感度ではなくSN比重視の機能設計が重要で、二段階パラメーター設計が正しい方法と諭されている。
タグチメソッドとは異なる方法ではあったが、フェノール樹脂天井材の開発やSiC基切削チップ、SiCヒーターなど配合がその機能を左右する開発で短期間に成果を出すことができた。
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タグチメソッドを毛嫌いされる技術者は一定数いるようだ。特に科学の方法こそ命と信じている技術者に多い。そのような技術者は科学の方法についてよく勉強してほしい。
バブル崩壊前の日本で科学論が盛んに議論されている。この時に科学専門のコンサルタントだけでなく怪しいサイエンスライターが登場している。
当時アメリカでも環境問題がきっかけとなり科学論が盛んであったが、日本のそれはJapan as No.1がベストセラーとなったようにバラ色の未来を約束する方法として議論されている。
この違いがバブル崩壊後の科学論の行方に影響を与えている。アメリカではトランスサイエンスが叫ばれたが、日本ではバブル崩壊で科学論そのものも空中分解し、多数のサイエンスライターが職を探すありさまとなった。
その後このサイエンスライター達は環境問題に飛びつき、海洋問題が世界のトレンドとなるや否や、脱プラスチックスなどという科学的に不可能なことを言い始めた。
昨年再生プラを基本方針とした法律が施行されるようになって脱プラスチックの声は沈静化したが、日本のサイエンスライターのその思想の貧困さに呆れている。
さて、アメリカでトランスサイエンスが叫ばれてから十数年後の日本で大阪大学の先生の著書「トランスサイエンス」が出版されたが、この出版不況のなか、少しは売れたらしい。
日本における科学のこの有様を理解できたならば、科学こそ命などという考え方を改めた方が良い。田口先生は、当方同様のこの日本における科学の状況の被害者かもしれない、と思っている。
田口先生は、タグチメソッドの考え方を日本で広めようとされたが、日本では日本科学技術連盟がそれを拒否したために渡米された。そして1980年代にアメリカでタグチメソッドを普及されデミング賞を受賞された。
そうすると日本も慌てて田口先生を呼び戻され、1990年代に田口先生が日本で活動されるや否や、自動車業界と複写機業界で一気に火がついた。
特に複写機業界では、科学で十分な解明が難しい帯電現象を機能に使っているので、タグチメソッドは不可欠だった。タグチメソッドの推進に活躍されている方がこの業界出身者が多いのもうなづける。
科学の方法の限界に気づかれた方々が、一斉にタグチメソッドに飛びつき広がったのだが、その限界に気がつかない、どちらかと言うと科学の方法の問題を考えようとしない技術者はなかなか科学の方法から卒業できずTMアレルギーとなるようだ。
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故田口玄一先生がアメリカでTMのご指導を始められた1980年代に、当方はTMもどきを発明している。この方法を1992年に先生と初めて面談した時、褒めていただいた。
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ゴム会社はQC手法に力を入れている企業の一つで、その製品品質は高く利益率もかつては世界一だった。しかし、その基礎研究所の風土は会社方針など管理職が率先して笑い飛ばすような状態だったので、QC手法は現場の方法として軽視されていた。
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ゴム会社には、新入社員全員が日本科学技術連盟主催のBASICコースという統計手法に関するセミナーを1年間受講しなければならなかった。この仕組みの凄いところは1人50万円(当時新入社員の月給は10万円弱)かかる研修を全員に実施していた点である。
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さらに毎月行われるテスト結果が上司経由で手渡されていた。タイヤ部門へ配属された同期は戦々恐々としていたが、基礎研究所では管理職の関心が低かったので成績表は開封もされず手渡された。せっかく頑張って成績が良くてもこれではモラールは下がる。
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厄介だったのは、コース修了間際の職場実習である。基礎研究所では「科学こそ命」とばかりにダッシュポットとバネのモデルさえもすでに葬られていたぐらいなので、QC手法の実習を指導してくれる先輩社員がいるはずがない。
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とりあえず指導社員の名前を書いて実習計画を提出したのだが、上司が書くべき実習の感想も含めすべて下書きを作成する必要があった。この研修終了後、当方は実験計画法を積極的に業務に取り入れた。
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しかし、この結果が時々外れる。大外れはしないのだが、必ずしもベストの条件を見出せない。TMを理解すると、これが交絡している因子の配置が悪いとすぐに気がつき、また、配置した因子が誤差因子とした方が良い場合もあったので、それを交絡を評価する列に割り振り、交絡について正しく評価する手順をとるはずだ。
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実はこの点に気がつき、制御できない、あるいは難しい因子の内側割付を排除するとともに、信号因子を外部に割り付けて相関係数を使って実験計画法を行う手法を編み出した。
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この倉地法(日本で生まれたので漢字表記)による実験計画法でベスト条件が外れなくなった。高分子の難燃化研究を行っていた時で、信号因子としてはもっぱら難燃剤の添加量が用いられている。その結果、実験工数は増えた。
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研究所では、実験計画法を意地になって使っている、と笑われただけでなく、効率がいいはずの実験計画法でわざわざ実験工数を増やすアホとまで言われた。
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しかし、TMをご存知の方ならば、TMで1つの実験効率が飛躍的に上がるわけではなく、逆に効率が悪くなる場合があることを理解している。
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TMで大切なことはロバスト設計にあり、容易にその設計ができることで業務全体の効率は上がるのだ。倉地法も1セットの実験効率は悪いが、その1セットの実験でベスト条件が得られるので結局は効率が上がっているのだが、それは当方にしか理解できないことだった。
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ゆえに周囲からは自画自賛の方法と言われたりしたが、故田口先生からは信号因子を外部割り付けする方法を考案したところを褒めるが、それは感度重視の設計なので、その点は改めなくてはいけない、とご指導された。
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ちなみにタグチメソッドを田口法と言ってはいけない。先生は生前タグチメソッドはアメリカから輸入された方法なのでカタカナで書くように言われていた。この裏には日本特有の悲しい話がある。
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(補足)SiC焼結体の開発は倉地法で行われている。SiCヒーターや、SiC切削チップ、電気粘性流体用特殊な3種の粉体は倉地法で1か月の実験で最適化がなされている。切削チップでは当時東京工業試験所でその性能評価まで終えている(すなわち試作品レベルまで1か月でできたのである)。1セットの実験は大きくなるが、全体効率は倉地法で上がったのだ。
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銀行で硬貨1000枚をお札に換えると1100円の手数料がかかるのだそうだ。それで1円のお賽銭を受け付けないと書いた立札のある神社が出現したそうだ。
確かに1円玉1000枚を1000円札に換えたなら100円の赤字になる。5円ならば22%減、10円ならば11%減これ以上算数の問題を続けないが、いっそのことお賽銭はお札に、と立札に書いたらどうだろうか。
地獄の沙汰も金次第、というセリフがある。昔日活のヤクザ映画でこのセリフを聞いたときに一瞬未来を暗く感じた。せめて死後の世界ぐらいお金から離れて暮らしたいと思っていた。
働く意味が貢献と自己実現と言っていたドラッカーは、働くときでさえお金から離れた価値観を持てと諭している。しかし、1円のお賽銭お断り、というのでは神様の世界でもお金次第と言っているようなものである。
どうせなら、お賽銭はお札だけ、お札以外はお気持ちだけ頂きます、と書いてくれると救われる。1年に1回1000円札を入れて、1年間お賽銭を入れない、というお願いの仕方もある。
毎日通えば1日あたり3円未満となる。良いご縁を願うために毎日通うならば1825円に近い2000円を支払えばよい。半年に一回1000円というお賽銭もありうる。
当方の両親は某永代供養のお寺で眠っているが、そこは1回行くと出口でお気持ちだけ頂戴します、と言われて1000円札以上を支払うことになる。硬貨は不要でお気持ちだけで結構です、と丁寧にお辞儀をされるのだが、今までその意味が不明だった。
一度一銭も支払わず帰ってみようかと出口まで来たが、深々と頭を下げられてはそのまま出口を出られなかった。逆に先に出た人が3000円支払ったので、当方も3000円支払うことになった。
金額など決まっていないのだが、東京まで車を運転するため、ここで1000円札1枚にするには多少の勇気が必要だった。これは何なのだろう。一度1000円札を束にして出してみようと思っている。続く人が何枚お札を出すのだろうか観察したい。
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タグチメソッド(TM)のパラメータ設計手法を数理モデルとしてとらえることが可能である。故田口玄一先生は1950年代実験計画法の名手だった。
基本機能のロバストと制御因子との交絡をラテン方格を用いて評価する方法を編み出し、伊奈製陶のタイル歩留まり向上問題を解いている。
このとき面白いのは、トンネル炉の温度を制御せず、タイルの配合因子等を制御し問題解決している。すなわち、一見制御因子に見えるトンネル炉の温度ムラをノイズすなわち誤差因子としてとらえて問題解決したのだ。
この時には、ラテン方格の内側因子に信号因子も制御因子も配置し、その交絡を評価するパラメーター設計手法を用いたのだが、信号因子を外側に配置し、制御因子については主効果で評価する方が便利であることに気がつき、SN比を編み出している。
今では、パラメータ設計と言えば外側因子として誤差因子と信号因子を配置し、内側因子に制御因子を配置する動特性のSN比を用いる方法が一般的であるが、静特性のSN比というものもある。
望大特性や望小特性、望目特性などのsN比が用いられる。弊社ではTMを数理モデルとして扱い指導しています。数理モデルとすることで理解が容易になります。
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昨日書いたように、ダッシュポットとバネのモデルを用いた問題解決法は非科学的な経験知の体系である。しかし、粘弾性データを測定し、それを用いて高分子の問題解決ができるならば、積極的に活用すべきである。
同様に他のデータサイエンスの手法で得られる数理モデルも、それが正しく検証されるまでは非科学的となるが、問題解決に活用できるならば、利用すべきである。
技術開発において重要なのは、遭遇する問題を解決し、新しい機能を開発することであって、開発された新機能が科学的成果かどうかは無関係である。これを勘違いしている人が多い。
アカデミアさえマテリアルズインフォマティクスと称して非科学的研究を推進している時代である。一昔前ならば、その研究者は生卵をぶつけられるかもしれないのだ。当方は、電気粘性流体の耐久性問題を解決したとたんに机の上にナイフが刺さっていたり、データフロッピーを壊されたりした。
高純度SiCの半導体治工具事業を住友金属工業とのJVとして立ち上げながらも命の危険を感じて写真会社へ転職しているが、今はいい時代である。
アカデミアがマテリアルズインフォマティクスに夢中なのだから。7月4日にデータサイエンスを俯瞰するセミナーをTH企画主催で行う。参加希望者は弊社へお問い合わせください。
また、高分子の劣化と寿命のセミナーについて申し込みに迷われている方は弊社へご相談ください。1980年代にアメリカでささやかれ始めたトランスサイエンスをこのセミナーでは扱っており弊社が得意とする領域である。技術で問題を解決するお手伝いをします。
ちなみに高純度SiCの粉末合成技術は未だに非科学的状態である。当方は速度論的研究を行っており、前駆体炭化物からSiC化するところまで科学的結論を出しているが、前駆体合成技術について40年経っても非科学的なままである。これは、iPS細胞のヤマナカファクターと同様である。詳細は弊社お問い合わせください。
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現象を理解するために数理モデルを利用する場合がある。ただしこの時注意しなければいけないのは、仮に数理モデルでうまく現象を説明できたからと言って、すぐにそのまま形式知にしてはいけない。
その数理モデルが、過去の形式知と矛盾なく整合するかどうか検証されなくてはいけない。物理化学という学問は、1970年代に分子論的視点で教科書が書き直された。
バーローあるいはムーアの教科書が当時先端の物理化学の専門書としてベストセラーになっている。これらの教科書では、物理現象のいくつかについて分子レベルからの論理展開による解説が成されていた。
ところで高分子のレオロジーについてダッシュポットとバネからなるモデルによる研究が1980年前後まで活発に行われたが、このモデルではクリープを説明できないことがわかり、学問の世界から排除された。
しかし、過去の研究で得られたいくつかの数理モデルは特定条件における高分子のレオロジーをうまく説明していたので、技術分野で今でも使われている。
現象を数理モデルで考察する手法は、それが非科学的であっても技術分野で問題解決に活用すると迅速な技術開発に役立つ。
この時重要なことは、本質的な精度を求めて数理モデルを使おうとしているのか、あるいは現象の理解を進め問題解決のアイデアを得るために活用したいのか、その使用目的に注意する必要がある。
すなわち、形式知を目指す目的で数理モデルを研究するのか、技術開発の効率化のために利用するのかにより、数理モデルの扱いが異なる。
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現象を数式で表現して数理モデルが得られる。コンピューターの無かった時代には、物理現象を長さや重量でモニターして求めていた。計測されたデータが化学反応と量的に関係していることがわかると化学反応速度論が展開されるが、これが経験知であることをご存知だろうか。
当方は半導体治工具用高純度SiCについてフェノール樹脂とポリエチルシリケートとの均一混合物から世界で初めて合成に成功したのだが、この反応の均一性を証明するために1983年に超高速昇温熱天秤を開発している(注)。
SiCはシリカと炭素との反応で合成されるシリカ還元法が量産プロセスで用いられている。アチソン法もシリカ還元法の一種であるが、シリカ源と炭素源に高純度化合物を用いても高純度SiCを得ることができない場合がある。
副生成物としてSiCウィスカーが得られたり、未反応のシリカが残ったりするからである。分子レベルの均一性が実現されない限り、高純度SiCの合成は難しい、と判断し、フェノール樹脂とポリエチルシリケートとの反応システムを開発している。
そして、その反応の均一性を証明するために2000℃まで1分以下で昇温可能な超高速昇温熱天秤を開発した。そしてシリカと炭素の反応で生成するCOの量を重量減少としてモニターし、高純度SiC生成の数理モデルを得ることに成功した。
反応は核生成が最初に起きるアブラミ・エロエーフの式と一致し、シリカと炭素が分子レベルで均一に混合されていることが経験知から求められた。
過去の反応速度式も含め、速度論的研究で得られている成果は大半が経験知である。高純度SiCの生成についても核生成の直接の確認は難しく、反応進行とともにモニターされた重量減少曲線を解析し誘導期間の存在を見出すことが精いっぱいできることである。
1650℃で反応している途中の物質を室温まで冷却し、核生成を観察してもわずかなSiCの生成とシリカと炭素の混合物以外を見出すことができなかった。
すなわち化学反応で数理モデルを組み立てたときのその証明が難しいのは、活性化状態の検証である。ゆえに得られた成果は経験知とせざるを得ないのだが、一部の有機化合物の反応では活性化状態で反応を停止させることが可能で、その活性化状態の観察に成功している事例も存在する。
(注)SiCの反応速度論については中部大学でまとめられた当方の学位論文に詳しく解説している。この研究は、ゴム会社で単独で行われたのだが、某国立大学の先生が学位を出すからデータを見せよというので見せたところ、勝手に論文を出されてしまった。一応末席に当方の名前はあるが、研究には全く関与していないこの先生はその後自分の成果の如く学会でも講演された。その後写真会社へ転職した時に他の先生から写真会社から奨学寄付金を、と言われたので丁重に学位の件をお断りした。その後についてはドラマのような話が展開されるのだが、当方はこのような経緯からSTAP細胞の一連の騒動について大変心を痛めている。小保方氏が本当に学位に値しないかどうかは当方の判断するところではないが、小保方氏にはもう一度学位にチャレンジしていただきたいと期待している。学問とは、他人の研究を自分の研究のようにしてしまう優秀な人により進歩しているわけではないのだ。今朝ドラで放送されている小卒の学者や雑草のようなたくましさで現象にチャレンジしている多くの無名の研究者の努力がその裏にあることを知っておくべきである。半導体治工具用高純度SiCの発明では、学位以外の栄誉を当方は受けていないが、この仕事では日本化学会技術賞をはじめセラミックス協会などからも多くの受賞がある。ただし、いずれの受賞にも住友金属工業とのJVについては触れられていない問題がある。日本化学会技術賞においては、当初無機材質研究所も入っていなかった。これも偶然であるが、その時審査委員として当方が自分の発明を評価することになった。省略するが当時審査員を途中で辞退している。この一連のささやかな醜いドラマのように日本における研究成果の扱いはいい加減なところがあり、小保方氏はその犠牲になったのかもしれない、という見方もできる。彼女の発表された著書ではマネジメントの正確な姿が見えにくいが、当方の体験では、マネジメントの視点で幾つか改善すべきところを学んでいるので、いつか体験を基にした研究開発マネジメントについての著書を書きたいと思っている。日本企業でイノベーションが生まれにくい原因の一つに研究の進め方とその成果の扱いにあると思っている。ゴム会社で高純度SiCの事業が30年続いた背景には、CTOらの経営努力がある。30年間進歩しなかった基盤技術フェノール樹脂とポリエチルシリケートの反応で高純度SiCを製造したり、炭素だけを助剤にして高純度SiC治工具をホットプレスで製造する技術は、ゴム会社で企画され無機材質研究所で芽を出した成果だ。当方は当初米国留学の話があったが人事部長のはからいで無機材質研究所留学の承認が得られている。その後研究所トップは「研究開発マネジメント」の著者である浦川卓也氏になり、住友金属工業とのJVとして事業が立ち上がっている。この名伯楽だったCTOが退職して交代後様々な事件が当方にふりかかり写真会社へ転職している。イノベーションにおいてトップリーダーの役割は重要である。当方が退職後は技術が進歩することなく30年間続いた。前駆体の処方は未だにフェノール樹脂とポリエチルシリケートと有機酸の組み合わせである。
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7月5日に日刊工業新聞主催により表題のセミナーが開催される。(https://corp.nikkan.co.jp/seminars/view/6553)
開催間際のPRとなるが、高分子材料の破壊と劣化の問題で悩まれている方は、ぜひ受講されることをお勧めします。
製品の信頼性について、損失関数を用いて許容差設計する方法はタグチメソッドとなるが、タグチメソッドを適用する以前の問題が高分子材料の耐久性問題では存在する。
20年ほど前の高分子学会誌にその特集があったが、あまり話題になっていない。金属やセラミックスに比較し、高分子材料の寿命予測はトランスサイエンスの問題となる。
タイタニック号の観光船、タイタンが爆発し沈没したが、FRP製だったという。金属ならば非破壊検査により疲労状態を予測できたが、FRPでは難しい。
御巣鷹山の飛行機事故では圧力隔壁の疲労状態から、墜落原因が特定されたが、材質が金属だからフラクトグラフィーを活用できたのである。さて、高分子材料ではーーーー。
セミナーでは教科書に書かれていない経験知も体系化し、形式知が不十分な高分子材料の劣化の問題に関して実務を進めるために知っておかなければいけない問題を整理して解説する。
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コンピューターで問題を解くときにはプログラミングスキルが必要になる。MS-エクセルのような表計算ソフトウェアーにもソルバーが用意されているので単純な問題であればそれで解くことができる。
少し込み入ってくるとビジュアルBASICを立ち上げる必要が出てくるが、一応MS-エクセルはそれなりの道具として使える。オブジェクト指向も実装しているので昔よりはバグを抱え込みにくくなっている。
もし、オブジェクト指向で問題を解きたいならばC#をお勧めする。おそらく安価なプログラミング環境としてC#はビジュアルBASICよりも使いやすい。
お金をかけたくないというならば、Pythonが唯一の選択肢となる。理由は各種ライブラリーも無償提供されているので、C#よりも費用がかからない。
Pythonを使うならばエディターはVisualStudioCode(VSC)をお勧めする。ジュピターノートブックとかその他無料エディターがあるが、VSC環境でもジュピターノートブック的プログラミングが可能だ。
おそらくPython用エディターとしてVSCが最も使用されているのではないか。無料にもかかわらず、どんどん機能アップされている。
C#とPythonの比較はナンセンスである。無償でガンガン使いたいならPythonと決まるからである。それではC#は不要か、というとそうではない。計測器の制御とか行おうとすると、PythonよりもC#の方が便利だ。
また、大規模プログラミングを行いたいならば、C#の方が安全だ。Pythonでもオブジェクト指向が実装されているので大規模プログラミングが可能だが、C#との比較になるとやはりC#となる。
ゆえに今の時代、大人がプログラミングスキルを学びたいならば、まずPythonを学び、それでオブジェクト指向に慣れてきたらC#を学ぶという手順が良いかもしれない。
Pythonが不得意なところをC#で記述し、両者の混合プログラミングも可能な仕掛けがそれぞれに用意されている。C#でPythonを呼び出す方がプログラミングしやすいので当方はC#で大枠を書き、細かいところをPythonで記述し、それを呼び出す手順であるが。
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