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2022.03/13 ウクライナ事変

ロシアによるウクライナ侵攻から16日が経過した。連日各放送局のニュースで状況が報じられており、プーチン大統領の暴走という見方が形成されつつある。さらにロシアからウクライナにおける米国が関わった細菌兵器の話が飛び出した。


戦争では昔から誤った情報で敵を攪乱する戦法が使われてきた。日本の戦国時代にも情報戦の記録があり、さらに「勝者により歴史は作られる」という名言があるように、戦争における真実はその後の学者による研究成果を待たなければいけない。


今確かなことは、ウクライナへのロシアの侵攻という事実とそれに対して国連に加盟する140ヵ国以上がロシア側の非を認め、その一部の国にによる経済制裁が厳しくなってきたことだけだろう。


TVやネットに映し出される戦闘シーンも真実かもしれないが、どのような視点で撮影されているのか明確でなければ、映像からの安直な判断は危ないのかもしれない。これだけ情報が公開されている戦争は初めてだ。


ただ国際世論において戦争を決断することそのことが悪いという見解が多いのは21世紀の光明だろう。そしてそのような国際世論があるにもかかわらず、ロシア人の大半が、ロシアの仕掛けた戦争を容認していることが不気味である。


あのプルシェンコのツイッター発言がいろいろとり沙汰されたりしているが、おそらくロシア人の多くがプーチン氏を支持しているらしいことは、16日間のデモ参加人数から真実かもしれない。


ここからは当方の推定になるが、この戦争はロシア人の大半が戦争反対という見解にならない限り終わらないのではないか、という懸念である。


攻め込まれているウクライナがどのような形で勝利するのか見えてこないが、ロシア国内で国民総意による戦争反対運動が起きない限り終わらないと仮定した場合に、戦争状態が長引く可能性があり、世界経済へ与える影響は大きい。


興味深いのは、ロシア寄りの中国が控えめの見解を述べている点である。ロシア支持を表明しているが積極的にこの戦争支持の見解を示していない。


中国とウクライナとの現代版シルクロード関係を指摘する意見があるが、それよりも国際世論への配慮が大きいように思われる。ロシアと同じ穴の貉に見られるのを避けているようにも感じられる。


ただ、ウクライナが追い詰められてゆく状況でも、欧米各国が第三次世界大戦だけは避けたいという思いが伝わってくるのは、救いである。

カテゴリー : 一般

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2022.03/12 ゴム屋と樹脂屋(6)

ゴム屋が一番びっくりするのは、樹脂屋のコンパウンドに対する考え方である。一言で表現すれば極めておおざっぱなのだ。ゴム屋は成形体の目標機能を実現できなければコンパウンド技術が未完成と捉えている。


しかし、樹脂屋はコンパウンドの分散混合さえ実現されておれば、それでコンパウンドの完成として満足している。それもペレット1個のほんの一部分の領域における分散状態で判断している。


押出成形でボツがあっても、押出機のフィルターワークが悪いからだという。その結果、小生が前任者から半導体無端ベルトの押出成形を引き継いだ時に押出機には、立派なフィルターがついていた。


前任者は、これはノウハウだから社外秘だという。恐らく完璧と思われるフィルターと思われたが、それでも正体不明のボツが発生していた。PETフィルム成膜で発生する目玉故障に近いボツだった。


原因が不明だが、コンパウンドが怪しい、と当方は疑っている。もう少し明確な事例として、半導体無端ベルトの周方向における抵抗ばらつきがある。


これは、パーコレーション転移のばらつきのために現れるので、コンパウンド段階でパーコレーション転移を制御し、安定化しておかない限り解決ができない問題である。


しかし、このような視点を素人だというのが樹脂屋である。組成で機能が決まる、などという間違った考え方をしている。高分子材料では、高次構造で機能が決まるので、コンパウンド段階で十分に高次構造を造りこんでおくのがゴム屋の作法であり思想である。


この辺りは、議論をしてもゴム屋と樹脂屋では議論が平行線となる。成形技術者は、コンパウンダーとしてどちらにコンパウンドの設計を依頼しますか?ゴム屋でも樹脂のコンパウンドを製造できます。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.03/11 割れた殺生石

「九尾の狐(きつね)伝説」で知られる栃木県那須町湯本の国指定名勝「殺生石」が真っ二つに割れたことが分かったそうだ。先日5日のニュースでこれを知ったが、本欄で取り上げる問題ではないと思っていた。


しかし、TVニュースでも昨日扱われ、無視できない話であることを知った。この石の伝説についてはネット記事を読んでいただきたいが、割れた石の写真を見て、この話題をセミナーで使おうと考えた。


すなわち、石の破断面を見ると長年にわたりヒビが大きく成長し、今回自然に割れたということがよくわかる、フラクトグラフィーの題材になる、と思った。


すなわち、破断面には最初からひび割れていたところから次第にそこが大きく成長したと思われる汚れがきれいに残っているのだ。ニュースに掲載された写真でもそれがわかる。


ゆえにこの石の破壊は、九尾の狐が、復活しようとして暴れて割れたわけではないのだ。割れるべくして割れたのである。


実はN社のF100というハイアマチュア写真家に人気のあったフィルムカメラの裏蓋フックが防湿庫に保管中壊れた。その破壊機構は典型的なクリープ破壊であり、格好のセミナー題材となっている。


しかし、これは当方の体験談であり、もう少し一般的な話でフラクトグラフィーに使えないか題材を探していた。今回殺生石の割れた写真が何枚かネットで公開されていたので今後セミナーでこの話題も紹介してゆこうと考えた次第。

カテゴリー : 未分類

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2022.03/10 ゴム屋と樹脂屋(5)

ゴム会社の研究所においても混練に対する考え方が異なっていた。ゴムのコンパウンディングを現場においてバンバリーとロールで行う以上、研究開発段階もそのプロセスで行うべき、という考え方は少数派だった。


研究開発段階は、簡便なニーダーでコンパウンディングを行っても問題なし、という見解が主流だった。科学的にもっともらしく聞こえる蘊蓄をこねる研究者もいたが、当方は高分子のプロセス依存性が大きいことを考慮すると、簡便なニーダー使用に賛成しかねた。


ゴム屋の中でも50年近く前このような状況だった。50年近く前に二軸混練機の高性能化の技術開発が始まっているが、未だに高性能ゴムを製造したいならばバンバリーとロール混練のレベルまで二軸混練機1発でコンパウンディングは不可能である。


二軸混練機に、当方のカオス混合機をつけただけでもコンパウンドの性能は向上するが、バンバリーとロール混練のレベルまで上がっている自信は無い。


さて未だにバッチプロセスと連続プロセスでは、コンパウンディングにその性能差が存在するが、射出成型の用途では高いコンパウンディング性能が要求されないので、高性能化された二軸混練機で十分な混練ができると信じている樹脂屋は多い。


20年近く前に、半導体無端ベルトの押出成形技術の開発を担当した時に、前任者から国内トップメーカーのコンパウンドだから完成度は高い、と言われた。しかし、そのコンパウンドを用いて半導体無端ベルトの押出成形を行うとパーコレーション転移によるばらつきが発生し、歩留まりが10%前後となった。


この原因について、コンパウンドメーカーの技術者は、押出成形技術が未熟なためと説明してきた。さらに、コンパウンドは十分に分散混合されて技術として完成している、と主張していた。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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2022.03/09 ゴム屋と樹脂屋(4)

技術者のスタート時にバンバリーとロールによる本格的なコンパウンド開発を担当できたことは幸運だった。また、それが成功体験だったことも人生の大きな宝である。


さらに、1年のテーマを3か月で完了できて分厚い報告書にまとめることができたのも自信になった。学生時代から3か月あれば研究を一つまとめることができるようになれ、と指導されてきたが、それができたのだ。


これは、指導社員が極めて優秀だったからで、これまでこの指導社員以上に頭の良い人に出会ったことが無い。開発現場で困った問題が生じるとすぐにヒューリスティックな解を提示されるとともに、関数電卓で常微分方程式を解きながら現象を説明してくださった。


AIを近くにおいてゴムのコンパウンドを開発している景色を想像していただきたい。それに近い環境だったので、難易度の高い先端材料にもかかわらず、3か月という短期間に開発できている。1か月間の耐久データもそろえていたので、2か月で配合設計ができていたことになる。


午前中座学で午後実務という状態で訓練されたおかげで、混練技術についてはたった3か月の訓練にも関わらず、ゴム会社の研究所ではトップと評価されたようだ。


10年後電気粘性流体用ゴム開発は当方にしかできないと指名され、住友金属工業との高純度SiCのJV立ち上げ業務に忙しいにもかかわらずゴム開発を依頼された。

カテゴリー : 未分類

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2022.03/08 ゴム屋と樹脂屋(3)

新入社員のテーマとして、当時最先端の樹脂補強ゴムを用いた防振ゴム用コンパウンドの開発をバンバリーとロール混練で行っている。


樹脂が海相でゴムが島相となったコンパウンドであるが、現在二軸混練機で動的加硫により製造される熱可塑性エラストマーとは圧縮永久歪や耐久性の点で大きな性能差が出るゴムを製造できる。


また、指導社員の指導で当方が開発し実用化されたコンパウンドは、ロール混練の条件でも物性が変化した極めて混練の難易度の高いコンパウンドである。


プロセス依存性の大きい難解なコンパウンドであったが、混練条件さえ再現できれば、樹脂とゴムの複合材料でありながら、圧縮永久歪が小さく耐久性の高い高性能ゴムを製造できた。


研究開発段階でバンバリーとロール混練プロセスを用いていたので、実用化の障壁は低く容易だった。久しぶりの研究所のアウトプットとなったが、なぜか開発グループは解散となった。


人生で本格的に混練を勉強したのは、この開発を担当した3か月間だけである。しかし、指導社員が熱心な方で、毎朝9時から12時まで混練の座学を行い、午後開発実務というスケジュールを組んでくださった。


3か月間ダッシュポットとバネのモデルと格闘しながら剪断流動と伸長流動の特徴はじめカオス混合まで習得できた。今レオロジーをダッシュポットとバネで説明されなくなったが、技術的ツールと捉えると現象理解には便利に使える。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.03/07 ゴム屋と樹脂屋(2)

長年バッチ式プロセスでコンパウンドを検討してきたゴム屋と連続式混練機で簡単にコンパウンドを製造してきた樹脂屋とが混練について議論するとかみ合わない。


また、ゴム会社の研究所のゴム屋どおしでも技術を追求する研究者と科学を追及する研究者でもロール混練に対する考え方が少し異なる。


ゴム屋と樹脂屋について比較する前に、技術者と科学の研究者との相違点から。ゴム会社の研究所に配属された時の指導社員は京都大学理学部修士課程出身の純粋のレオロジストだった。


科学の研究者ではあったが珍しい技術志向の考え方をしており、「研究所でゴムを扱っている人の大半は簡便なニーダーでゴムを練り上げているが、ゴムのコンパウンドを開発するときには面倒でもバンバリーとロール混練プロセスで行え」と厳しく指導された。


理由は、同一配合でも同じコンパウンドを絶対に作ることができないからだ、と指導された。当時の研究所は企業活動に貢献するアウトプットが出ていない部署として社内で有名だった。


指導社員は、研究所で開発されたコンパウンドを実用化しようとしても使い物にならないからで、その原因がニーダーを使ったコンパウンド開発にあるためだ、と説明された。

カテゴリー : 未分類

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2022.03/06 ゴム屋と樹脂屋(1)

動的加硫技術が開発されたので、ゴムの一部は二軸混練機でも製造されるようになったが、高性能ゴムは、未だにバンバリーとロールによるバッチプロセスを用いて混練される。


シリコーンゴムでも、LIMS はスタティックミキサーで製造されるが、ミラブルタイプはロールあるいはニーダーによるバッチ式で混練される場合が多い。


ところが樹脂材料は、その登場時から単軸押出機あるいは二軸混練機などの連続式自動混練機が使用される。樹脂材料をバッチプロセスで処理をしてはいけない、というルールは無い。


それどころか、樹脂材料でも高性能なコンパウンドを得たいならば、ロールを用いて混練すればよい。15年以上前、PPS半導体無端ベルト用のコンパウンドは、良い結果をとりあえず得たかったのでニーダーで混練している。


また、高性能パルプ樹脂複合材料のパイロットプラントは、バンバリーとロール混練で立ち上げている。プロセスコストがかかってもバッチプロセスは連続式プロセスよりも高性能コンパウンドを製造できる、という理由で、難易度の高いコンパウンドを混練したい時には試してみる価値がある。


ただし、ロール混練は危険作業に属するので、それなりの訓練と、設備については信頼できるメーカーを選ぶ必要がある。小平製作所は、創業時からロール混練機を扱っている老舗の一つであり、実験機では安全対策が他社よりも充実している。

カテゴリー : 一般 高分子

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2022.03/05 情報化時代の戦争

連日ウクライナの様子がTVで放映されている。日本で放映されている映像は、すべて真実と信じているが、ロシアとウクライナ双方が情報戦を繰り広げている、というレポーターの説明がなされるとすべて信じてはいけないのかと一瞬思う。


しかし、スマホで撮影された原子力発電所砲撃の映像は、異常なほど恐怖感を与える。当方でさえ怖いのだから、実際に福島原発の被害を経験された方は、映像そのものを見ることができないかもしれない。


いくら戦争が政治の最後の手段と説明されたとしても、原子力発電所の砲撃だけは禁じ手として頂きたい。今のところ大事には至ってないが、ロシア側の原子力発電所そのものは狙っていない、という説明を信じることができない。


映像は、原子力発電所の一部破壊された様子とミサイルがまだ飛んでいる様子だ。さすがに世界も危険に感じたのかIAEAが動き出した。


先日のTV討論で橋下氏が戦争回避をできなかった愚についてウクライナ人の政治評論家に語っていたが、もう起きている状態では空しい意見だろう。


戦争の難しさはどちらかが負けるか譲歩しない限り終わらない点にある。ところで、NHKの大河ドラマでは戦国時代を描くと視聴率が高いと言われている。


日本史について苦手意識があったせいか、織田信長から徳川家康の時代までの流れをうまく理解できず不思議に感じている。織田家にも豊臣家にもチャンスがあったのだ。


また、戦国時代の終りに淀君という女性が登場する点もこの時代の流れを複雑にしている。秀頼が本当に秀吉の子供であったのかどうかDNA鑑定で結論を出していただきたいが、当時の栄養状態と秀吉の過去の女性遍歴から推定しても秀頼は秀吉の実子ではない可能性が高い。


秀吉もそのことに気づいていたのではないか、と当方は想像している。色ボケした老人が朝鮮出兵など指示したりする様子がドラマで描かれたりするが、歴史をゆがめているように思う。


しかし、この時の秀吉の精神状態について何も記録は残っていないので、色ボケ老人説を否定できない。一方で、石田光成と加藤清正の不仲の原因を朝鮮出兵当時の光成のマネジメントにあった、とする説が残っている。


光成ほどの知恵者であれば、色ボケ老人をコントロールできた可能性が高いので、もし秀吉が色ボケ状態だったなら朝鮮出兵をもっとうまく終結できたに違いない。


未だ終結への道筋が見えないロシアとウクライナの戦争だが、大国ロシアの思慮を欠くクレージーともとれる破壊行為について、指示したリーダーの精神状態をどのように説明したらよいのか。

 

 

カテゴリー : 一般

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2022.03/04 トランスサイエンス

50年ほど前にある物理学者が表題の言葉を唱えている。そして日本において科学に対する懐疑論の本が多数出版され始めたが、バブル崩壊でこれらのムーブメントも消えてしまった。


ところで、トランスサイエンスとは以前この欄で紹介したが、科学に問うことができるが、科学で答えられない問題のことを言う。


2011年東日本大震災で福島原発の事故があり、この表題をタイトルとした本がベストセラーとなっている。ただ残念なのがこの本で技術について述べられていない。


科学で答えられない問題については技術で答えなければいけない。当方が新入社員の時にゴム会社のCTOが「科学でタイヤはできない、タイヤは技術で作る」と述べたが至言である。


さて、高分子の耐久性予測についても同様であり、アーレニウスプロットのように科学に問うことは可能だが、科学は市場品質について保証してくれない。


市場品質については技術でその保証をしなければいけない。そのために何をすべきかは当方のセミナーで説明している。来月以降これまでの内容をさらに分かり易く書き直したセミナーを予定しているので是非参加いただきたい。

カテゴリー : 一般

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