活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2022.12/24 高分子の難燃性(8)

昨日リンの難燃効果の線形性の高さを書こうとしたが、途中で脱線してタグチメソッドもどきの手法を1982年に工夫した体験を述べてしまった。


故田口先生にこの体験をお話しした時に感度を高めるために用いるとよいかもしれないが、ロバストを高めることが技術では重要なので、タグチメソッドを用いるように、と褒められた。


たしなめられた、と書くべきかもしれないが、誤差因子を割付けず、相関係数の高くなる条件を求める方法として認めていただいたので、褒められた、と捉えている。


PがLOIに対して高い線形性を示すのは、燃焼時に炭化促進触媒として機能していることを示している。Pの脱水機能で炭化が促進されることは、1970年代に明らかにされ、多数のリン酸エステル系難燃剤が1980年代にかけて開発された。


ところで、Pと同様に燃焼時に炭化促進効果が高い、塩ビと三酸化アンチモンの組み合わせについて、高い難燃効果が得られることは1970年以前に知られていた。


この難燃化機能について、気相で塩化アンチモンを生成し、それが燃焼面の空気を遮断してチャーと呼ばれる独特の炭素を生成することが科学的に確認されたのは、1980年前後のことである。


そして、塩素より重い臭素ならば、アンチモンを併用しなくても原子が重いため効果が高いだろうと着眼し、毒性の高い臭素ガスが燃焼面で漂い空気を遮断することを期待して、多数の臭素系難燃剤が1980年から90年にかけて開発された。


今は安価となったが、昔の臭素系難燃剤は高かった。臭素系難燃剤もアンチモン系化合物との併用効果が確認されている。しかし、このようなハロゲン系難燃剤の問題として、燃焼時に大量のすすが発生することだ。


当方のセミナーでは、それを示すために、ホスファゼン添加系の場合と塩ビとアンチモン系化合物との併用系との比較実験写真を見せている。その差に誰もが驚く写真である。

カテゴリー : 一般

pagetop

2022.12/23 高分子の難燃性(7)

高分子材料に対するリン(P)の難燃効果は、他の元素に比較して線形性が高く、添加量を増加させればLOIの値は、上昇する。


空気のLOIは、21であり、ゆえにこの値が21未満の高分子材料は空気中で燃焼し続ける。しかし、ローソクの炎程度の火炎による燃焼では、この値が21以上の高分子材料は自己消火性となる。


難燃剤無添加でもLOIが21以上であり、空気中で自己消火性を示す高分子材料には、ザイロン、PPS、プロセス制御されたフェノール樹脂、分子設計されプロセス制御されたPIなどがある。


フェノール樹脂で「プロセス制御された」と接頭辞をつけたのは、不適切なプロセスを選択するとLOIが21未満となるフェノール樹脂が合成される場合があるからだ。


同様に、PIでは適切な分子設計まで行わなければLOIが21以上のPIを製造することができない。困るのは、総説などでこれらの高分子のLOIについて注釈が無く21以上のLOIを示す、と書かれていたりすることだ。


フェノール樹脂天井材の開発を行ったときに、同一ロットのレジン原料でLOIが大きくばらついてびっくりした。さらにそのばらつきは製造条件により変動する。当時タグチメソッドなど知られていなかったので、当方は外側因子に信号因子としてLOIを割付け、実験計画法を行い、最適化している。


すなわち、データ駆動で安定したLOIが21以上となるフェノール樹脂を製造したのだが、LOIを信号因子として割付けず、実験値として用いた場合には、ロバストの再現実験を行っても再現しなかった。


タグチメソッドが実験計画法ではないことが知られているが、実験計画法よりもタグチメソッドのロバスト再現性が高いのは、誤差因子を外側に割付け、ラテン方格を用いたときにラテン方格が誤差変動へ与える影響を少なくしているためだ。


このことから、タグチメソッドを成功させるためには、可能な限り誤差変動に大きな影響を与える因子をすべて網羅し、調合誤差として用いる。

カテゴリー : 一般

pagetop

2022.12/22 高分子の難燃性(6)

高分子の難燃性にプロセス依存性が現れるのは、難燃剤の分散状態がその効果に影響を与えるためである。反応型難燃剤は、その問題解決のため考案された。


しかし、コストアップにつながるので普及していない。また、分散技術が進歩したので添加型と反応型の差が少なくなったのも一因である。


難燃剤は、その添加により大きく効果として現れるので、研究が進んだが、その他の高分子の一次構造の効果や組み合わせ効果について、難燃性への寄与が小さいのでよくわからないことが多い。


例えば、硫黄(S)の難燃効果について、フェノール樹脂とポリウレタンで検討したが、効果の存在を確認できても量依存性について結論を出すことができなかった。


難燃性能の評価法としてLOIは、その評価原理から理解しやすく、また評価データにも多くのケースで線形性が現れるので扱いやすいが、Sの難燃効果を評価すると添加量に対して非線形となった。

カテゴリー : 一般

pagetop

2022.12/21 高分子の難燃性(5)

PPSの高い難燃性能では、分子構造に含まれるSも寄与している可能性が高い。また、PPSに含まれる芳香環の凝集性に着目するとPH01同様の難燃助剤としての機能を期待できる。


現在のところ、燃焼時に効率的にチャーを生成できる触媒はオルソリン酸を含むりん系化合物以外知られていないが、こうした難燃助剤と呼びたくなる化合物との組み合わせで、リン系化合物の添加量を減らすことが可能となる。


それではリン系化合物の添加量をどの程度添加すると空気中で自己消火性となる高分子材料を設計できるのか。これは高分子の種類と難燃剤であるリン系化合物との組み合わせで変化する。


また、リン系化合物の分散状態にも依存する。高分子材料へ低分子を分散するときに低分子のSP値がそれに関係しているようなデータも得られている。


SP値が関係しているとすると、PC/ABSのようなポリマーアロイの場合の難燃性高分子の設計をどのように行うのか、という疑問がわいてくる。


SUSHIを用いてシミュレーションをしてみると、どの高分子の相に難燃剤が分散するのか、という仮説により設計方針が変わる。PC/ABSの難燃剤としてBDPが良く用いられているが、これはシミュレーションによりPC相に分散しやすい傾向が示されることから納得できる。


このような工夫や思索をあれこれしてもカオス混合を用いるとびっくりする。難燃剤の種類の差をリン原子の含有率を揃えて比較して1%前後の違いとなる現象が観察されるからで、プロセスの寄与に関心が向く。すなわち二軸混練機を用いた場合にはプロセス条件が大きくかかわる。


このような経験知を獲得すると、射出成形条件によりLOIがばらつく現象を理解できる。射出成形では、二軸混練機で不十分だった混練がわずかに進むからである。


これは、過去に東京大学生産技術研究センターの研究において、金型内の樹脂流動の可視化データを見ればわかる。ゲート部分で剪断流動が起きている。


金型の設計により伸長流動も起きる場合があり、剪断流動と伸長流動が発生すれば混練が進行することになる。高分子の難燃性を向上できる金型設計という技術特許を出願することが可能である。

カテゴリー : 一般

pagetop

2022.12/20 労働生産性をあげる方法

日本生産性本部が19日発表した2021年の労働生産性の国際比較によると、日本の1時間あたりの労働生産性は49・9ドルで経済協力開発機構(OECD)加盟38か国中27位だったそうだ。


日本人の労働生産性の低さは、長時間労働がその原因と昔から言われており、20世紀末に総労働時間1800時間を目標に日本中がその削減に努力した。


当時ささやかれたのは中高年のデジタルリテラシーの低さだった。当方はすでに40となり、中高年の仲間入りをしていたが、驚いたのは部下に資料作成をさせている管理職が多かったことだ。


プレ資料ぐらい自分で作成せよ、と言いたかったが、転職者ゆえに我慢した。面白いのは10年後にはそのような管理職は周囲に少なくなった。


それから5年後2つの会社の統合のため生産性の高い仕事をしていた当方は何故かリストラされ、フィルム事業とは全く異なる事業部のある豊川へ単身赴任している。


腐ることなく気持ちを切り替え(注1)、たった3人で6カ月という短期間で、その基盤技術のない会社でコンパウンド工場を立ち上げた。これは工場立ち上げを経験された方なら、あるいはコンパウンド製造ラインをご存知の方ならば、異常な生産性の高さ(注3)であることをご理解いただけると思う。


当方はゴム会社でもたった一人で、高純度SiC半導体治工具事業を住友金属工業とのJVとして立ち上げている(注2)。さらに電気粘性流体の耐久性問題の解決やその性能向上のための傾斜機能粉体の合成はじめ3種の特殊粒子の開発を同時に行っている。当時の研究所の一人平均の4倍以上成果を出していた。上司の手紙が証拠として残っている。


これらを可能としたのは、デジタル技術である。ゴム会社では、主にLattice CとLOTUS123を駆使しFDがノート代わりだった。ゆえにそのFDをいたずらされた事件を隠蔽化されたので、高純度SiCのJVが立ち上がったところで転職している。


生産性を落とすような環境で仕事などできないと判断したのも理由の一つである。DXの進展で、本来は生産性が上がらなければいけない。まさか日本全国でデータ媒体のいたずら事件が起きているわけでもあるまい。


来年、当方の仕事のノウハウを公開するセミナーを企画している。確実に技術者の生産性が上がる方法である。余った時間で新しい技術の構想を練るようになれば、日本の将来は明るい。


(注1)この欄で投げ売りされていた新品のギブソンES335を購入した話を紹介している。ES335のおかげで自己の強みを再認識して単身赴任している。もちろんES335も単身赴任先に持っていったが、5年間一度も弾くことが無かった。その代わりカオス混合はじめ5年間に数多くの成果を出すことができた。早期退職の翌年には最後の仕事が社長賞を受賞している。元部下が記念のPETボトルを大量に送ってきてくれた。

(注2)Y本部長時代に社長方針1.電池、2.メカトロニクス、3ファインセラミックスが出されていたが、Y本部長はファインセラミックスに前向きではなかった。しかし、当方の活動により2億4千万円の先行投資が社長決裁で決まっている。U本部長になり、プロジェクトは縮小されたので生産効率を上げる工夫をしなければならなくなった。ただ、U本部長はそのためのアイデアをいろいろ指南してくださった。研究者が営業部員となって活動することもその一つだった。それだけではない。設備が無ければ外部機関の設備を借りて実験を進める活動も。機密の問題については、いわゆるアジャイル開発で特許出願して守ればよい、という指導だった。U本部長からI本部長に代わり、当方一人で推進していた高純度SiCの住友金属工業とのJVは、厳しい扱いを受けた。電気粘性流体の仕事も手伝うことになったのだ。おそらく人生で最大の生産効率だったと思っている。この経験を活かし、転職後コンパウンド工場を立ち上げている。ホワイトカラーの生産効率については、知識労働者が主体的に行動しない限り、上がらない。そのために職務権限をどうするかは重要である。このあたりの考え方については弊社にご相談ください。

(注3)コンパウンド工場の立ち上げは、予算外の業務だった。上司のセンター長は権限上限の決済を決断し、当方は本来のグループ運営の業務を部下の課長2人に任せ、自ら現場で中古機の組み立てを手伝って成し遂げた生産効率である。役職者がその役職にしがみついていては、いつまでも生産性は上がらない。

カテゴリー : 一般

pagetop

2022.12/19 高分子の難燃性(4)

燃焼時に炭化しやすい高次構造になっているかどうか、という点と、炭化した構造が層を形成し酸素と熱を遮断できる機能が生まれるかどうかが、高分子の難燃化では大切である。


この時、気相で空気を遮断して炭化を促進する機構の難燃剤と固相あるいは液相で有機物の脱水触媒として働き、炭化促進機能を発揮する難燃剤の2種が存在する。


PEやPPなどのポリオレフィンの難燃化において、これを満たすように添加剤を工夫すると、後者で用いられるリン酸エステル系難燃剤の添加量を減らすことが可能となる。


PH01という新たな難燃助剤を5年前に開発したが、難燃助剤としてだけでなく、流動性改質剤としても機能することがPPで確認された。


PPのガラス繊維補強樹脂のMFRは流動性が悪く、そのために流動性改質剤を添加するが、そのかわりとしてPH01を添加すると難燃性を向上するだけでなく流動性まで改善できるので便利である。


PPと異なる樹脂ではどうなるか。たまたま、炭素繊維をPPSで被覆し複合材料を製造する技術の相談を受けたときに、このPH01を試したところ、PP同様に流動性が改質され、押出成形温度を10℃下げることが可能となって炭素繊維の酸化劣化を防止できた。


面白いのは成形温度を10℃下げる機能があってもTgには影響を及ぼさないのだ。この理由は、成形後PH01が球晶を形成し、PPSの分子運動性に影響を与えないため、と想像している。


このPH01の分子設計では、主に難燃化助剤として思考実験により開発しているが、高分子の燃焼状態を観察して得られた妄想でも体系化すれば、経験知として科学の形式知同様に活用できる。

カテゴリー : 一般

pagetop

2022.12/18 高分子の難燃性(3)

PPSのLOIが非晶質状態と結晶化状態で同じという結果を見ると、かぐや姫に求婚されたわけではないにもかかわらず、30年以上高分子の難燃性について論文を読んできた立場からすると興奮する。


カオス混合で得られる相溶状態にも興味があるだけでなく、そもそもPPSという樹脂の溶融状態を知りたくなる。なぜなら、LOI測定時の最も高温部の樹脂温度は少なくとも300℃前後に到達しているからである。


ただ、溶融物が垂れていなかったと測定者から聞いているので、炭化するときの吸熱により流動性を示す温度以上に上がっていないと想像される。しかし、LOIよりも高濃度の酸素にすれば着火し、継続燃焼するので、LOIに相当する酸素濃度でも溶融して燃焼している、という妄想を描いても公序良俗に反しない。


そうすると、PPSの溶融状態が気になってくる。PPSの粘弾性データはT社の技術レポートに公開されているが、300℃から降温測定すると280℃ぐらいから動的粘度が上がる。


これは燃焼時の溶融状態観察結果と一致するが、カオス混合による6ナイロンの相溶現象を観察した結果と一致しない。技術レポートを疑うわけではないが自分で粘弾性測定器を用いて、ある方法で測定すると、動的粘度が250℃程度まで変化せず低粘度を示す結果が得られる。


この測定結果に驚いて、いろいろと実験を進めると、やはり興奮する妄想が見えてくる。今ならば冷静に実験を進めるが、若い時には興味に任せた実験となる。


この動的粘度の実験から、燃焼時におけるPPSの溶融状態では、球晶が完全に崩れずに架橋点となって流動しているかもしれないという想像をしている。6ナイロンを相溶させたPPSの同様の実験から、まったく球晶が存在しない状態からわずかにラメラ晶程度はできているかもしれない不均一構造の妄想を描くことができる。


モザイクがかかったような写真を説明しているようで申し訳ないが、粘弾性測定装置はその仕様から300℃以上の温度で測定ができない。


また、興味がわいてきてもう少し、もう少し、と思ってみても、周囲に楽しんで仕事をしろと強制しているような気持になり、一種のパワーハラスメントではないかと心配になってくる。


こうした制約のある中で得られたデータを見る限りでも、PPSはLOI測定時に溶融するが、ラメラ以上の凝集状態で燃焼している妄想を楽しむことができる。


これが非晶質状態で架橋硬化したフェノール樹脂よりもLOIが高くなる原因ではないかと密かに思っている。熱可塑性樹脂よりも熱硬化性樹脂のほうが難燃性が高い、という仮説よりも、燃焼時に炭化しやすい構造生成が難燃性の高さを決めているのかもしれない、知らんけど(大阪人でなくても使用される若い人の今年の流行語である)。

カテゴリー : 一般

pagetop

2022.12/17 高分子の難燃性(2)

フェノール樹脂は、耐熱性樹脂として知られているが、その難燃性は合成条件により大きく変化する。空気中で簡単に燃焼するようなフェノール樹脂から空気中では着火しにくく炭化するだけのフェノール樹脂までさまざまである。


PPSという樹脂は、典型的な結晶性樹脂でその成形体は脆い。球晶が十分に大きく成長するのでこの脆性が出てくる、と言われており、ナイロン例えば6ナイロンを添加すると球晶の成長が阻害され、脆性が改善される。


特許も出願されているのだが、この方法によりTgが数度下がることはあまり知られていない。添加された6ナイロンの一部が相溶しているかもしれない現象だが、6ナイロンのTgも現れるので、相分離していることが伺われる。


ところがこれは通常の二軸混練機で混練した時であり、カオス混合機を取り付けると、6ナイロンのTgが消失し、PPSのTgが10℃程度低下して1カ所だけTgが現れるポリマーアロイとなる。


6ナイロンのスピノーダル分解速度は遅く、射出成形しても押出成形してもこの相溶状態は変化しないので、結晶化していないPPS成形体が得られる。


PPS単体のMITでは3000以下だが、6ナイロンを非相溶状態で押出ベルトとすると3200から3500程度となり、靭性が若干改善される。ところが6ナイロンが相溶状態の押出ベルトになるとMITは20000以上となり10倍近く靭性が向上し、MFPの高速ベルトとして使えるようになる。


面白いのは、LOIは変化しないのだ。自分で測定していない実験結果なので少し怪しいと思っているが、平均値は同じであり、標準偏差に違いがみられる程度である。


フェノール樹脂のLOIが、その原材料やプロセス条件が異なると、LOIが19から40程度まで変化する現象を体験した立場では、このPPSのLOIが非晶質状態のベルトと結晶状態のベルトで変わらない現象は、かぐや姫が目の前に現れたような驚きである。

カテゴリー : 一般

pagetop

2022.12/16 高分子の難燃性(1)

高分子の耐熱性や難燃性について、科学的に解説することは難しい。これは1970年代に当時の研究成果がまとめられた耐熱性高分子の研究に関する総説で中途半端なまとめになっていることからもその難しさに納得できる。


耐熱構造と呼びたくなる分子構造は存在するが、実火災において不燃となる高分子材料を合成することはできないので、「高分子の不燃化技術」とは言わず「難燃化技術」と当時から呼ぶようになった。


高分子の難燃化について、日本人は、かぐや姫が火ネズミの皮衣を要求した話を自慢できる。科学の存在しない当時から有機物の不燃化が困難であることを知っていたことを示す昔話だ。


もし、有機物の不燃化が可能なら、結婚をせまる虫の好かない軟派な皇子に火ネズミの皮衣を要求するようなことをしない。高分子の難燃性について知識の無い皇子は、必死に探し回る。


そして、科学者もかぐや姫の求婚に応えたいと思ったのかどうか知らないが、有機物の耐熱構造を工夫し有機物を不燃化しようとする研究を1960年代に行っている。これが難しいことが分かり、1970年代から高分子の難燃化という用語が一般に使われるようになった。


この歴史を理解できると熱可塑性樹脂よりも熱硬化性樹脂の方が難燃性が高い、という仮説について成り立たない場合があることに気がつく。熱可塑性樹脂でも十分に難燃性が高い樹脂が存在する。


例えばPPSという熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂よりもロバストの高い難燃性を示す。耐熱性については、その指標により優劣が変化するが、難燃性のロバストについては、フェノール樹脂よりもPPSの方が高い、という経験知がある。

カテゴリー : 一般

pagetop

2022.12/15 企業の基礎研究

事業存続のための基礎研究は重要である。高純度SiCの反応速度論の研究では、その前駆体がシリカとカーボンの分子レベルで均一に混合されていることを証明するための一つの方法として、重要と考えていた。


しかし、無機材質研究所へ留学する前には研究所で企画として提案したが認められず、予算もない状態でこの基礎研究よりも重要なのは、高純度SiCを経済的に合成できることを実証する必要があった。


ただし、これは既存事業の基礎研究の企画とは異なる判断基準であり、社長方針としてファインセラミックスが出されていても、研究所としてはそれをかたくなに反対している事情が反映していた。


ゴム会社には非参加雰囲気で稼働する電気炉など無かったので無機材質研究所へ留学し実証したい、と考えた。しかし、無機材研へ留学できても特定企業の研究のために研究企画を遂行することはできないと留学前には注意を受けていた。


昇進試験に落ちた連絡がたまたま無機材質研究所所長室にかかった偶然で、この実証実験をたった1週間でやり遂げることができた話を以前この欄で紹介している。


そして会社から先行投資を受け、現在は愛知県の(株)MARUWAで事業が継承されているが、ゴム会社では30年この事業が続けられた。当方が残っておればもう少し事業を拡大できたのだが、由々しき事件が続き研究活動の妨害を受け、それが隠蔽化されたので転職している。


しかし、高純度SiCの反応速度論的研究について、前駆体の均一性を管理するためにも活用できるので2000万円投資して超高速熱天秤を自作し転職前に研究を完成している。


すなわち、高純度SiCの技術はアジャイル開発で完成し、基礎研究が不十分のままゴム会社で2億4千万円の先行投資を受けてスタートしている。基礎研究が完成していなくても30年ゴム会社で続くような事業を立ち上げることができるのだ。その方法の詳細は弊社へお尋ねください。

カテゴリー : 未分類

pagetop